次に目を覚ました瞬間、目の当たりにしたのは三流ホラーのようなスプラッタなありさまだった。
具体的に言えば肉片はなかったけど周りに大量の血液がバケツをひっくり返したように付着していた。
「うっわ、自分でやったんだろうけど引くわー」
爆発するように、ではなく自爆したんだろうか。
なんて、滑稽。
今更ながら自分の体質が空恐ろしくなってきた、血だけドパッと溢れ出たのかそれとも木っ端微塵になったのか…周りが爆心地みたいになっているから後者なんだろうなぁ。ウェップ。
せっかく魔力だか気だかわからない不思議な力を手に入れたけど使わないほうが良さそう。
強大な力は、それだけで害なんですねわかります
仕方ない、保留にしておこう。
にしてもどうしようか、このまま山を下ってもいいけどまた変なのに絡まれたら嫌だな。
何か状況が好転する材料があればいいんだけど。
あゝ、空はあんなに青いのに、鳥も群れを成してこちらに向かってきてるの…に?
何だろ?鳥、じゃないよね。なにかどんどん近づいてきて…ゲェ、魔導師の大群!?
なぜかわからないけどこっちに勢いよく迫ってきてる!?
隠れる暇もなく、あっという間に距離がゼロになった。
魔導師の一人がこちらを嘲るようにせせら笑っている。
「おいおい、まさかこんな貧弱なお子様に負けたのか?オリ主さま?」
「煩い、そんなことより油断するなよ、何を隠し持っているか…」
おそらく、偽物のほうが仕掛けてきたんだろうけど、そんなことは問題じゃない。
不味いー拙い、マズイ。
例の如く死ねないとは思うけど、このままだと嬲られ続けた挙句捕まって、最悪別の研究機関に放り込まれる未来しか思い浮かべられない。
落ち着くんだ、僕、
戦場ではパニックになったやつから死んでいくんだから、ここは今の僕にとっての戦場で、彼らは僕にとっての敵なんだ。
こういう時こそ、ワラえ。不敵に大胆に相手が訝しむくらいにね。
「フフ…」
「何だこいつ、いきなり笑いだしたぞ。」
「気持ち悪」
そうだ、もっと不快に思え。
それだけ心に隙ができる、その分僕の選択肢も増えるんだ。
そして、僕はおもむろに右手を挙げる。
それに合わせて、彼らにもちょっとした緊張が走った。
ふふ、実に愉快だ。
さあ、僕の奥義を見せてあげるよ。
「シャッフルタイム、スタート!」
声を張り上げ、高らかに技の名前を言い放つ。
それと同時に掲げた右手からパチン、と軽快なフィンガースナップの音が鳴り響いた。
目の前の彼らは何が起こったのか確認するように自らの姿を省みたり互いに確認し合ったりと大忙しだ。
さて、一体どこが変わったのかな?位置関係かもしれないし五感かもしれないし、もしかしたら精神かもね。
でも今更何をしたって遅いよ、もう僕の術中。
蜘蛛の巣の中だ、怯え戦いて混乱するがいいよ。
まぁ
ただのハッタリなんだけどね!
説明しよう、シャッフルタイムとは!声高らかに宣言することで相手になにか入れ替わったと誤認させる逃げ選の最終奥義なのだ!
ありがとう、棗(兄)。
あなたのお陰で時間を稼げます。
「あ、あいついつの間に逃げてやがる!」
おっと気づかれた、もう少し混乱しててもいいのにもう少しで完全にバックレたんだけど…
「おい待て!まだ何か変わったのか分かってないんだぞ!」
「うっせぇ!ただのハッタリだろあんなの!」
「いや、レアスキルかもしれん!」
…思ったより混乱しているようで何より、それじゃあ今のうちに、逃げるんだよおぉぉぉぉ!
アレから数分して彼らはようやく状況確認を終えたようですごい勢いでこちらに向かってきた。
それはもう、鬼の様な形相で。
「待てやクソガキ!絞め殺したらぁ!」
「そんなのは嫌だァァァ!」
まさに今、捕まったら即、死を意味するようなデッドレース、若しくはリアル鬼ごっこが展開している。
逃げるのが僕一人に対して鬼が数人単位、全員が秘密道具持ちとか難易度Lunatic。
ここが山奥じゃなかったらとっくに捕まっていただろう。
今はこの山の斜面も雑木林も僕の味方だ。
逆説的に言えばそれ以外に味方足りうるものがいないこの現状、誰か、助けてくだち…!
それでも無慈悲に、湊(偽物)は回り込んで退路を塞ぐ。
もたついた瞬間に他の魔導師も追いついて完全に囲まれてしまった。
「ここまでだ、化物。お前は死ぬまで、いや死なないように調整しながら魔力タンクにしてやる。」
そんな鬱型ファンタジーエロゲみたいな最後は嫌だ!?
せめて一思いに殺してぇ!
反射的に目をつぶり、来る衝撃に備える。
けれど予想に反して、来たのは衝撃ではなく
湊(偽物)たちの苦悶の声と、遅れてふわっと体が浮くような感覚、もとい誰かに空から掬い上げられたような感覚。
つまりは第三者の介入だった。
「君、大丈夫?」
「―え?」
頭上からの声、振り向いてみれば金に輝く髪を横に束ねた超絶美人が見下ろしている。
異なる両の瞳がアクセントが聞いていて何とも言い難い神々しさを醸し出していた。
そして、どこかで、そう、本か何かで見たような容姿だ。
「えっと、聖王様?」
「アハハ、私は違うよ。高町ヴィヴィオっていうんだ。君は?」
苦笑いをしながら少女-ヴィヴィオがこちらに名前を訪ねてくる。
本来だったらそのまま事項紹介の後にできれば連絡先の交換を要求するのだけど、この時、見た目では完全にフリーズしていて、でも頭の中はその分高速稼働中であった。
何故かって?
「香取だけど…高町…なのはの親戚、さん?」
「なのはママのことを知っているの?」
「ああ、やっぱり…てわけが分からないよ!?」
ええと、彼女はなのはの娘で聖王のクローンで、いやまだ養子縁組してなくて、というかまだ6歳だったはずだ、聖王モードだって制御できるかどうかな年のはず。
「えと、君はもしかしてなのはママのお友達ですか?」
「そのつもりだけど…何がどうなってるのさ…」
原作知識と現実がない混ぜになってる、でも彼女がここまで成長するまで研究所に閉じ込められていたと考えれば、不自然じゃない、のか?
そう考えると一寸来るものがあるな…
「ごめんなさい、積もる話もあると思いますけど先にあの偽物たちをどうにかしなくちゃ、香取は戦えるのかな。」
「戦闘力が無いから逃げていたわけで。」
せめて空を飛べれば話は別なんだけど、届かない距離からの飽和射撃とかマジ勘弁です。
死なないだけでトラウマはできるんですよ…。
「そっか、じゃあ一寸待っててください、私の友達と一緒に片づけちゃいますから」
そう言って離れたところに僕を下して、彼女は僕が先程まで逃げ惑っていた場所までさっそうと飛んでいってしまった。
未だに状況が理解できないけど、味方になってくれそうな人がいてくれたのは素直にうれしい。
遠くで、大規模な戦闘音が響く中、これから一体どうなるのか今の状況はいったい何なのか、考えることしかできない自分が何とももどかしかった。