FUSION!ST   作:SHIPS

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第一章『未知との遭遇』
1. Fus!on


1. Fus!on

 

西暦1950年代、世界初のインターネットが誕生した。当初は軍事開発の一環として誕生したこのシステムは時間の経過と共に拡大、発展。今なお成長し続けている。あらゆる情報、あらゆるプログラムが電脳領域に溢れ、人々の暮らしは飛躍的な進化を遂げた。高度な計算を可能にし、必要な情報を瞬時に選び出し、遠い国の人々とのコミュニケーションを可能にする。

 

世界は飛躍的な発展を遂げた。世界中の情報から常に理想を割り出すコンピュータに、人々はあらゆるものを任せ始めた。夕食のメニューから国家予算まで、あらゆるものをコンピュータが決める、そんな世界を見て昔の人間は何を思うのだろうか。

 

「いや、訂正しよう。あらゆるものをコンピュータに任せていても、俺たち自身が時として選択しなきゃならない時もある。例えば、このまま俺の志望大学のレベルを落とすか否か、とか」

 

長々とインターネットの歴史についてひとしきり語ったあと、東道旭は鳥居の下で大きなため息をついた。白い煙が上っていきやがて見えなくなるのを見届けていると、石段の方から彼と同じぐらいの年頃の少女が声をかけた。

 

「この間の直前模試、C判定だったもんね……本当に大丈夫なの旭?」

 

マフラーを巻き、コートに耳あて、手袋をはめ

た茶色いショートヘアの少女はこの少年の幼なじみであった。親同士が仲良しで小さい時から一緒に遊んでいたこのふたりは、今日も新年のお祝いをするために待ち合わせをしていた所だ。

 

「よう! なあに今回の模試はちょっと俺の苦手な分野だっただけのことさ。心配するな千歳」

「本番でその苦手が響いたらどうするのさ……それに、最近引退した剣道部にも顔だしてるらしいじゃん。ほんと勉強した方がいいよ?」

 

滝寺千歳もまた、鳥居の下にたどり着くと、旭のそれに負けない白い煙を吐いた。

天候、交通、経済とあらゆるものがコンピュータ管理されたこの都市で、アナログを貫くこの神社は古くから続く先祖の強い意向により昔ながらの風習を守り続けていた。一切の天候管理プログラムの干渉を受けないこの土地はお天道様の気の向くまま大雪だって降るし、何日も雨が降らないこともある。

 

「インターネット様の誕生から2000年以上経ってるってのに、学力の是非が未だに神頼みとはね……」

「学力は神頼みじゃないよ!きちんと努力した者だけが東大に合格できる!って旭のお父さんも言ってたじゃない」

「はあ……なんでこう、睡眠学習のテクノロジーとかは発展しなかったんだろうね」

「いいから、お参りの列に並ぼうよ。じきに新年だよ? 西暦4000年! こんな時勢に生まれてくるなんて私達はほんとついてるね!」

 

西暦3999年の大晦日、ついに4000という大台を迎えようとする地球、コンピュータやネットワークの発達によって世界中のあらゆるものが精密に管理される新しい社会が始まる。二人にとってもこれまで想像しえないような新たな時代が始まろうとしていた。だが同時に世界にはもう一つ、この節目を迎えるに当たって懸念すべき問題があった。

 

「そう言えば、アレが落ちてくるのも1月1日のスタートと同時なんだよな」

 

旭がゆっくりと頭をあげ、空を指さしながら呟いた。辺りの街のネオンライトや街頭で空はそれなりに明るいが、その中でもひときわ大きく輝いた。隕石が今なお、地球に向かって来ているのだ。

 

「あ、今落ちるって言った……」

「学力は努力なんだろ? 自分で言ってたじゃないか……とにかく、記念すべきこの節目の年に地球に衝突するとは、空気の読めない隕石さんだな!」

「しかもその中のひとつ、この近くに落ちてくるんでしょ? なんていうか、波乱の年明けって感じよね」

 

数ヶ月前のニュースにより、地球にいくつもの隕石が今日この日に衝突することが世界中の人々に知られた。パニックに陥る者も少なからずいたが、その後の専門機関の調査によって隕石の規模は小さく、しかもそれらは世界の様々な地に散らばって落ちてくるということも判明していた。隕石の落下が予測される時間、0時まではあと30分残されている。

 

「並ぶのもいいけど、とりあえず屋台とか見て回ろうぜ。お腹すいてるんだ俺」

「そうだったの? まあ、どうせ隕石騒ぎで年明け直後はそんな和やかなムードにはならないだろうし、先に食べちゃおうか!」

 

両手を後ろに組みながら千歳と呼ばれたその少女は参拝客の列から外れて、出店の多く開かれていた広場の方へ歩き出した。この神社では毎年大晦日には多くの出店が開かれ、たこ焼き、焼きそばなどあらゆる料理がでる。「お正月だってのに風流がない」と東道旭の祖父天城は言うが、環境管理プログラムの影響を受けず周りよりも格段に気温の低いこの神社で、熱い料理を頬張ることは彼にとって年末の楽しみの一つでもある。

 

出店を回ってめぼしい料理を購入し、再び参拝の列に並ぶ頃には新年は目前であった。空に見えていた例の隕石もかなり大きく見えてきた。

 

「ねえ、旭? みんなスマホ見てるよ。隕石の情報でも何か分かったのかな?」

 

千歳に言われて旭も周りを見渡すと、参拝客の多くがスマホに釘付けになっていた。流行りのSNSで隕石の情報を集めているようだが、その中の一人が興奮気味に友人と会話しているのが二人の耳にも聞こえてきた。

 

「あの隕石、ズームで撮るとどうも光ってるんだよ!」

「はあ? 隕石が光ってるなんて当たり前だろ? もう大気圏突入してるし燃えてるだけだろ」

「そうじゃなくて、マジでネオンライトみたいにカラフルに光ってるんだよ! ほら見て!」

「……えっ? うおおすごい! なんでだ? UFOみたいだな」

「このタイミングで地球にくるあたり、マジでこれ宇宙人なんじゃねえ?」

「いや、流石に宇宙人はないだろ……でも気になるな」

 

二人の会話にしばらく耳を傾けたあと、二人の意識は例の隕石に向けられた。着地点はこの神社の裏とニュースで言われていて、その影響もあってますます神社には人が増えた。

 

「みんな隕石見に来たのか、初詣に来たのか……?」

「多分どっちもじゃないかな……あ、新年あけましておめでとうございます、旭!」

 

ふと、時計を確認するとデジタルが0時をさしていて、慌てて千年は旭にかしこまった様子で新年の挨拶をした。それに釣られるように旭も挨拶をかえした。

 

「お、おう。もう元日か、あけましておめでとうございます、千歳。今年もよろしく! 同じ大学入れるように、きちんとお願いしないとな」

「勉強も、ちゃんとしてよね!」

「わかってるよ。勉強もする」

 

こうして世界は紀元4000年の節目を迎えた。世界にとっては大きな変化でも、この二人にとっては毎年続いてきた習慣の1つ。姿かたち、彼らの境遇は変わっても根本的なところは何ひとつ変わることはない。コンピュータで管理され、テクノロジーが物を言う世界で、自分たちで考え、決断し、願い、努力する瞬間は昔より少なくなった。だからこそこの祖父の神社で幼なじみと過ごす時間を彼は愛していた。

 

そんな新しい世界が、まさかそんな彼らの生活すら侵食するほどの衝撃をこの後二人は目撃することになる。

 

日付が変わって数分。いよいよ隕石がこの神社の裏の林に落ちる時間が来た。新年の祝いと合わさって参拝客兼野次馬のボルテージは頂点に達していた。

 

神社の裏には警察もやってきて、安全のため着地点付近に黄色いテープを張り巡らせていた。そのすぐそばで彼らはスマホを片手に群がる。

 

「いよいよだな……」

「宇宙人とか現れたりして!」

「ただの隕石だろ?」

「あ、もう落ちるぞ!」

「落ちる言うな!」

 

轟音と共にどんどん近くなる隕石。旭が目を凝らして隕石をよく見ると、確かに先程の参拝客が言ったように赤や青、黄色に緑、紫に白、黒など様々な光が入り交じって隕石の周りで輝いているのが見える。しばらく眺めていると、突然それらの光はそれぞれの色を独立させると赤色を除いて隕石を離れ、別方向に散らばって見えなくなった。

 

(えっ?)

 

旭は自身の見た光景に目を疑った。今の光の分裂はなんだったのだろうか、隕石が砕けたのとはまた違う異様な光景に彼は目を奪われた。だが、それもつかの間。ついに隕石は耳をつんざく轟音を立てて計算通り着地点に落ちてきたのだ。

 

辺りに沸き上がる大量の土煙、やがて煙が収まるに連れてやじうまの一人が指をさして叫んだ。

 

「あ、あれ宇宙人か? 何か影が見えるぞ!」

 

土煙が収まると、野次馬と警官たちは騒然とした。落ちてきた隕石とともにもう一つの影が見えたのだ。体は金属や岩で覆われていていびつだが、それは確かに人間に似た生き物のような形をしていて、首のような部分をこちらに向けて立っていた。しばらく沈黙が続いたが、その沈黙を破ったのはその生き物のような金属物体の不快な音声だった。

 

「01001011011001!」

「な、なんて言った?」

「宇宙人の言葉なんてわかるわけ無いでしょ」

「どうせテレビのやらせじゃないの?」

 

ざわめく野次馬に囲まれる中、その地球外生命体は手と思われる部分と宙にかざした。どこからともなくディスプレイが現れ、さらに文字列が入力されるとディスプレイの隅から新しいプログラムが飛び出し、そこに手を当てた。まるで今しがたダウンロードしたプログラムを、現実世界の体が吸収しているように彼らには見えた。

 

「……翻訳プログラム起動。言語コード確認、日本語、インストール完了。あー……ご、ご機嫌うるわしゅー!」

「しゃ、喋った!」

「あー、もしそこの青い服のお兄さん? よろしいかしら?」

衆人環視の中、隕石と共に飛来したその地球外生命体は腕のような部分で警戒中の警官を呼び止めた。ゴツゴツした見た目に反して、それはまるでどこかの令嬢かお姫様のような声と言葉遣いである。

 

「よ、ようこそ宇宙人! こ、ここは地球という星で……」

「ああ!どうかお構いなく。ファトリアと申します。でもごめんなさい、わたくしたちはこの星をぶっ壊しに来たんですの。あなた一人に構っている暇はありませんことよ?」

「ああ、なるほど! これは失礼しま……こ、壊っ!?」

 

次の瞬間ファトリアと名乗ったその地球外生命体は機械の体を変形させると、風呂敷のように警官の体に多いかぶさった。警官の男は声を上げる暇もなく機械の体に取り込まれてしまった。平和ボケしていた警官はついに状況を飲み込み声にならない悲鳴を上げてもがくが、しばらく機械に取り込まれているうちにその体が光っていくと粒子となってどこかへ消えてしまった。

 

次の瞬間神社内はパニックに陥った。目の前の野次馬達にはあの機械が警官の男を未知のテクノロジーか何かで殺したように見えたからだ。加えて「地球をぶっ壊しにきた」という発言がパニックに拍車をかける。辺りは騒然とし、逃げ惑う人々で一斉にごった返した。

 

「に、逃げろおお!」

「宇宙人だ! 警官を殺しやがった!」

「け、警察! 自衛隊でもいいからなんとかしてくれ!」

 

野次馬の中にいた千歳と旭は揉みくちゃにされながら群衆に押されていた。

 

「ち、千歳! やばいことになったな。早くここから逃げるぞ!」

「う、うん……ちょ、ちょっと押さないで……きゃっ!」

 

離れ離れになる二人、群衆から外れた千歳は隕石のすぐそばに立つ古い蔵の前に押し出されてしまった。運の悪いことにファトリアはその無防備になった千歳の姿を視界に捉えてしまったようだ。

 

「千歳!」

慌てて旭も野次馬の中を抜け出し、蔵前で座り込んでいる千歳の元へ駆け寄った。そのあいだにも地球外生命体のあのおぞましい機械の腕が迫ってくる。

 

「こっちだ!」

 

蔵の鍵が開いていたのを見つけると、旭は石の扉を開けた。千歳を抱えると一目散に蔵の中に飛び込み、扉につっかえ棒をかけた。

 

「この扉ならそう簡単には開けられまい。応援が来るのを待とう……」

「あの宇宙人、一体何者なの? 地球をぶっ壊すとか言って……ひっ!?」

 

旭が抑えていた分厚い石の扉を外からあの機械の腕がドンドンと叩いているようだった。強烈な衝撃だな、どうやら扉を破ることが今のところは出来ずにいるようだ。

 

「よかった、意外と非力で。だがなんとかしないとこのままじゃ二人とも……」

「あ、旭〜これからどうしよう!?」

「落ち着け。千歳、この蔵で何かあいつの気を引きそうなものとか探してくれ! 俺は扉を抑えてるから!」

「わ、分かった!」

 

千歳はすぐに蔵の中を物色し始めた。そうこうしている間にも地球外生命体が扉を破ろうと石壁を強く叩く。

 

(落ち着け……何か手を考えろ……)

 

思考を巡らせて、旭はあの機械の弱点を考えることにした。先程隕石とともに現れ、機械の体で警官を包み込んで粒子にしてしまったあの存在を映像のように回想する。やがて回想の中でファトリアが何もない空間にディスプレイを出し、プログラムを手に持っていたのを彼は思い出した。

 

「あの宇宙人、よく分からないが地球のネットワークと繋がっているのか……ネットワークから言語データを抽出してたのか?」

「あ、旭……だめだよ。そんな都合よく助かるアイテムなんて見つからないよ……」

 

ガラクタの山から千歳が再び顔を出した。顔が土で汚れている。

 

「……くそ!何か思いつきそうなんだが。千歳、もっと考えろ! 使い道を変えてみるとか、考え方を変えるとか……」

「考え方を変えるってなに?」

「例えば……」

 

戦うとか、そう言いかけて旭は自分が恐ろしいことを考えていることに頭を振った。

 

「無理無理、絶対にあんな機械女?と戦うなんてゴメンだ……待てよ、機械?」

 

旭の中にひとつのアイデアが浮かんだ。ジーンズのポケットからスマホを取り出して流行りのロックミュージシャンの音楽を大音量で鳴らし始めた。

 

(もしかして……)

「あ、旭! これでどう? ってかこんな時に音楽なんて聞いてどうしたの?」

 

千歳が持ってきたのは古ぼけた日本刀だった。蔵にあったのだから旭の祖父がしまっていたものなのだろう。

 

「おい馬鹿、まさかあれを相手に戦うなんて思ってるんじゃないだろうな……?」

「考え方を変えろって言ったの旭だよ! だから、逃げずに戦うの。旭なら大丈夫だよ、全国大会ベスト4の実力なんだからさ! 」

「相手は宇宙人だぞ、分かってるのか……」

 

蔵の中で睨み合う男女。青年は子どもの頃この神社で幼なじみとよく遊んでいたことを何故か思い出した。蔵に二人で閉じ込められたり、林の中で迷子になったり、他にも様々なことがあった。彼にとってコンピュータ色の少ないこの小さな世界は特別なものであったのだ。その世界が今、崩壊しようとしている。

 

「……でもまあ、どのみちこのままじゃやられるしな。借りるぞじいちゃん! やってやるぜ!」

 

ファトリアは今なお蔵の扉を開けようと機械の腕を叩きつけていた。しかし、やがて動きを止めると石の扉が内側から開かれた。ファトリアが中をのぞき込むと、蔵の中から日本刀を構えた青年が飛び出したのが見えた。

 

「わたくしにたてつくとはいい度胸ですね。ほめて差し上げます」

 

ファトリアは旭の態度を見て、機械の腕を縮めると再び体を人間のような形に変形させた。人間の女性のようなフォルムで近づいてくる。

 

「お前、原理は分からんが生身の体でネットワークやコンピュータプログラムに干渉できるみてえだな?」

「ふふ、物分りのいい生き物ですね。その通り、電脳領域とデータはわたくしたちモルガンの大好物ですから、この星の電脳は実に素晴らしいですわ」

「モルガン?」

 

旭が聞き返すと、ファトリアは声のトーンを上げた。

 

「そう、わたくしたちはモルガン。この広い宇宙の支配者の一種族に過ぎませんが、我々は銀河でも最強の能力を持つ存在。誰にも我々の野望は食い止められません」

「野望だかなんだか知らないけど、俺の思い出のつまった神社でなにしてくれてんだ!? 絶対に許さないぞ!」

「ふふ、いきがってなさい。この……下等生物!」

 

不意にファトリアが腕を伸ばして旭に襲いかかる。しかし、動きが大振りであったために難なくこれをかわす。腕は地面を叩いたが、その部分は深く土が抉れ、小規模なクレーターが出来上がった。直撃すればひとたまりもないだろう。

 

続いて旭が反撃に出る。ファトリアに対して刀を構えたまま一直線に突進すると頭部と思しき場所を切り付けようとした。しかし、金属質の体は彼の想像以上に固く、傷一つ付けることができない。虚しい金属音が響いて彼はすり足で再び距離をとる。

 

「くそっやっぱり刀じゃダメか!」

「そんな古臭い野蛮な武器でわたくしを倒そうとは愚かな……」

「こうなったら一か八かだ……」

 

ポケットに入れていたスマホを握り締める。再びファトリアの腕が旭目掛けて伸びてくる。これもかわすと、旭は持っていたスマホをファトリア目掛けて投げつけた。

 

「そんなものが聞くとお思いですか?」

 

ファトリアは投げられたスマホを見て何か思うところがあったのか、先程警官を吸収したのと同じように体を広げてそれを取り込んだ。

 

「……な、なんですのこれは!?」

 

突然スマホを取り込んだファトリアが苦しそうなうめき声上げて膝から崩れ落ちた。取り込んだスマホから大音量でパンクロックが流れていて、その振動がファトリアの体を包み込んでいた。

 

「地球の音楽は凄いだろ? しっちゃかめっちゃかで振動もヤバイしうるさいし。千歳もこんなバンドのどこがいいんだか……流行りに乗って聞いてみたはいいけど訳が分からない……」

「ぐうっ……や、やめろ、やめろおおお!!」

「やっぱりコンピュータにも悪影響だったんだな。このビートは!」

 

あまりの苦しさにファトリアが人型の体を維持できないくらいに暴れだした。立体パズルのようにパーツをボコボコと動かしていて、今しがた吸収してしまったスマートフォンと音楽データを吐き出そうともがいている。その中からまた機械の腕が2本現れ、旭に襲いかかる。

 

「う、うわっ!」

 

回避が間に合わないと判断した旭は咄嗟に刀で腕を受け止めようとするが、衝撃が強く後ろに吹き飛ばされてしまった。

 

「ぼ、暴走してるのか? やり過ぎたか……」

「ウゥ……ウワアアア!!」

 

我を忘れたファトリアが再び腕を振り回す。手のひらと思われる部分に赤く光る部分が露出していて、旭は瞬時に閃いた。そのまま突進する腕の、赤く光るガラス体の物体に刀を突き刺そうとした。

 

刀はガラス体に深く突き刺さった。しかし彼自身に手応えがない。突き刺さったというよりは吸い込まれるように剣先が赤いガラス体に吸い込まれていった。

 

「な、なにぃ!? あなた、何をして……」

「こんな弱点みたいな部位見たら普通に狙うだろ!」

直後、赤いガラス体が激しく光出す。どこからともなく無数のディスプレイと文字列が現れ、旭の持っていた日本刀を包み込んだ。かなり慌てた様子でファトリアが腕から刀を引き離した。激しい光が収まると、旭の持っていた日本刀に変化が起こっていた。

 

刀身が黒くなり、赤いネオンライトの光る派手なデザインの、刀と呼ぶべきかも迷うそれが旭の手に握られていたのだ。

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