領地も増え、国も大きくなってきたことによって起きる弊害。
それは華琳様の覇道によって潰された者達の恨み。
先日、元袁紹配下の者に風が襲われるという事件が起きた。
たまたまと必死に言い訳をする北郷一刀の活躍によって運良く難を逃れたが、華琳様はこの事件を重く受け止め各自護衛、そして自衛の手段を持つようにと通達された。
軍師、という者は襲撃者にとっては格好の的だ。
武力のないものが多く、死ねば国にとって損害は計り知れない。
例外として呉は軍師も武器を持ち、戦うすべを持っている。
そんな訳で魏の軍師である、荀彧、程昱、郭嘉にも武器を持ち多少なりとも訓練をするべきという意見が軍部から多く上がったのだ。
やたら主張してきた春蘭はあとで仕返しするとして、華琳様から直々に説得されれば仕方がない。
『桂花。あなたも武器を手に持つことで兵についてより深く知ることがあると思うわ。やりなさい』
今更、とも思うが指揮することはあっても直接武器をぶつけあった経験はない。
理論的にも間違ってはいない、もちろん華琳様がおっしゃることなんだから間違っているはずはない。
とりあえず使えそうな武器を探してみます、とこの場は逃げた。
さっきから『ほら、さっさと剣を持って外に出ろ』と挑発してくる馬鹿春蘭が正直うざかった。
ちなみに風は
「風は宝慧がいるので問題ありませんね~」
「いやいや全然襲われてたやん。一刀が助けんかったらえらいことになってたで」
「ではおに~さんが常に風と一緒にいれば問題ありませんね~」
という発言によって一部が爆発した。
凛もぶつぶつ呟きながら鼻血を出してぶっ倒れたのでそのままグダグダと解散になった。
そして忘れもしない出来事。
今日、魏の主要な者たちが集まった朝礼にて。
息を弾ませ、駆け込んできた北郷一刀。
遅刻してきたことを謝りつつ、この間の武器の案件でいいことを考えた、と。
その顔はいつもの春蘭に追いかけられている時の情けないものではなく、戦場で見せるような真剣な眼差しで。
不覚にも少しドキッとしてしまったことに激しい自己嫌悪。
乱れていた息を整え、差し出された右手に持っていたものは。
―――私のパンツだった。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「桂花、その、災難、だったな」
速攻北郷一刀を簀巻きにして傷めつけた春蘭がこの中で一番有情という珍しい現実。
心配そうにこちらを伺う春蘭に少しだけ、少しだけ今度何かあったら助け舟を出そうと思う。
「たいちょー、さすがにそれはドン引きなのー」
「見損ないました隊長。その、女性の下着を手に、駆け込むというのはさすがに度を越していると思います」
「せやせや。それになんで桂花のやの?うちの凪ならむしろ喜んであ」
「真桜、な何を言ってるんだ!」
三羽烏はいつも通り楽しそうに簀巻きにされた北郷一刀をネタに笑い合い、いつの間にか季衣と流琉はこの場から消えていた。
秋蘭?あそこで腹を抱えて悶えくるしんでるけど?
「で?一刀、桂花のパンツがどうしたの?」
華琳様は今でこそ落ち着いているが、ある意味1番ひどかった。
なにがどうなったかは察して欲しい。口に出すのも憚れる。
「だから最初に言ったよ!ほら前に桂花でも使える武器を探すって話」
「その武器が桂花のパンツなのかしら?一刀、あなたまさか桂花が誘惑して・・・」
その言葉を聞いて背筋が寒くなる。
暗殺者を誘惑して難を逃れる?男の気を惹いて?ありえない。
そんなことをするくらいなら舌を噛みきって死んでやるっ!
「たいしょー、そりゃ無理とちゃいますか?」
「確かに、桂花様では難しいかと」
即座に否定する真桜と凪。
そうね、そんなことをするくらいなら死んだほうがマシよ。
「いやできるって!桂花は確かに胸は貧相だしお尻もちっさいけど、かん」
「この変態、黙りなさい!」
とっさに一刀が擁護を入れてくるのを顔を踏み潰すことで黙らせる。
言葉よりも手が出たのは本当に久しぶりだ、それだけ焦っていたのが自分でもわかる。
自分自身に女性的な魅力が足りないのはわかっているし、性格的にも無理なことは解ってる。
ただ華琳様だけが愛してくださればいい。
しかしまさかこの変態に擁護されるとは、しかも余計なことを口走りそうだったし。
「・・・はぁ、仲がいいのは結構なことだけど話が先に進まないわね」
「え、あ、申し訳ありません」
「さすが華琳様ですねー。自ら脱線させたのに責任転換ですかー」
踏んでいた足を急ぎ離すと変態がほっと息をついていた。
すると風がすぐさま変態に駆け寄り布で顔を拭う。布がもったいない。
うちの陣営で華琳様にさらっと毒を吐けるのは風くらいだが、それを気にするような華琳様ではなかった。
「で、お兄さん。どういうことなのですか?」
「俺が言いたかったのはパンツのことじゃなくて、ゴム!ほらここの伸び縮みする部分!」
縛られている変態のかわりに風が私のパンツを引っ張る。
女性+変態しかいない空間だが、かなり恥ずかしい。
「おおぅ、さすが桂花ちゃんのおぱんつですねー。とってもよく伸びるのです」
「当たり前でしょう!華琳様の前で安物なんて履けるわけがないでしょう!」
「さすが桂花、いい心がけね。で一刀、このゴムがどう武器となるのかしら?」
さすがの華琳様でもまるで検討がつかないようだ。
春蘭はもちろん、秋蘭たちも顔に疑問符がついていた。
「ゴムの反動を利用した武器なんだ。俺の世界ではパチンコっていって・・・」
変態の熱弁虚しく、名称が出た瞬間この場が凍る。
そして恐らく顔を真赤にした私が叫ぶことによって時が動き出す。
「パチンコ?ち○こはあんたのことでしょ、この変態!」
「隊長、さすがにそれはおふざけが・・・」
「あー、なんや隊長。溜まっとるん?」
「やっぱり沙和はドン引きなのー・・・」
「ほんごぉぉぉぉぉぉぉ!」
「あはっ、あは、あはははっ」
罵倒の嵐、そして馬鹿笑いが巻き起こる。
三羽烏は面白半分だが春蘭なんかはもう条件反射のごとく武器を持ち出し威嚇する。
春蘭のこういった場面は結構見るのだが、未だにこの変態が死んでいないことが不思議でならない。
華琳様、お願いですから自重して!
「いやそういう卑猥な意味じゃないって!ちょ、ま、やめて蹴らないで、春蘭あた、あたってるから。それ峰じゃなくて刃だから。しゃれになってねぇぇぇぇ!」
なんだかんだ言ってこれが最近の魏の平常運転である。大変遺憾ながら。
ちなみに後日北郷一刀と真桜によってパチンコの試作品が完成され、一部ではかなり使い勝手のいい武器としていざというときのために持ち歩く運びとなった。
簡単に持ち運べ、服の中に隠すこともできる。弾は真桜が作ったビー玉を使い、またはそこら辺に落ちてるものを代用することもできる。
秋蘭なんかは特に気に入ったようで、こっそりと練習する姿が見受けられた。
そしてとある一部のでは『天の国は女性の下着すら武器として使用する』という噂が流れ始め、考案者である北郷一刀は
『変態御使い』
と崇め立てられたとかなんとか。
(内容について)反省している (公開したことに)後悔はしていない