黎明の亡都
マルドゥークは獲物ににじり寄っていた。この爪で刺し殺し、駄目押しに地面に叩きつけた。
間抜けな仲間を尻目に悠々と獲物を喰らうことができる。
そう考えていた。
だと言うのに………。
マルドゥークの目の前で、確実に殺したはずの獲物が再び立ち上がった。
しかも先程までとはまるで違う、被食者ではなく、捕食者の気配を纏って。
「どうやらさっきまでのは夢じゃなかったぽいなぁ」
意識が戻ると身体の痛みが少しだけ和らいでいた。どうやらリンクサポートの黄泉返りが発動した結果みたいだ。
地面に落ちていた神機を拾い上げ、銃モードから剣モードに変形させる。
「さて、と。カヤの言ってた『構え』ってのはまだよくわかんないから取り敢えず一旦逃げる」
GUAAAAAAAAAAAAA‼︎
「ってのは無理ですよねー。うん」
マルドゥークはこちらを睨んでいる。完全に狙われてるわ、これ。
構えに思い当たるものを思い出すっきゃない。
「構え……構え……? あ、もしかしてゼロスタンス⁉︎」
マニュアルに載ってたスタミナを回復させつつ、色んな動作に繋げられるアレか!
俺はマルドゥークに向かって構えた。
すると刀身から黒い霧が出現し、周囲一帯を薄く覆っていく。
そして霧が広まるにつれて呪刀から漂う嫌な気配が更に強くなる。
マルドゥークはこの異変を警戒しているのか、こちらに寄ってこなくなった。
まるで呪いや怨念が太刀の中から黒い霧となって具現化しているみたいだ。
このブラッドアーツに名前を付けるなら……呪怨の太刀。
呪怨の太刀・黒。これが俺の覚悟の具現化。
と言ってもこのブラッドアーツの元は未だ謎多き
しかし、これなら……。
「圧倒は出来なくても五分の勝負くらいなら……!」
出来る!
俺は黒い霧を纏った呪刀を手に、
斬騎's Misson 黒霧の中の捕食者たち
難易度 8
勝利条件 マルドゥーク一体の討伐
「っ! 急いでみんな。斬騎君が一回死んだ! これ以上は黄泉返りも使えない!」
リンクサポートの発動を確認した私は更に速度を上げ、斬騎君の元へと急ぐ。
「これ以上、仲間をマルドゥークにやられてたまるかよ…! あんな思いはもうしたくねぇんだ」
「ロミオ先輩みたいに斬騎君も死んじゃうなんてそんなの嫌だよ! シエルちゃん、あとどのくらいで着くの⁉︎」
「交戦地点まであと300メートルほどです……! 急ぎましょう、隊長!」
「うん、斬騎君はやらせない……!」
そして、十数秒後、交戦地点の目前まで辿り着いた。
しかし、そこで繰り広げられていた戦闘は私たちの思いもよらない光景が広がっていた。
黒い霧が立ち込めるなか、斬騎君が少し離れた場所にいるマルドゥークにむかって神機を振るう。
すると、刀身に纏われた黒いオーラが呪刀の刀身を伸ばして、遠距離にいるマルドゥークの目を切り裂く。
「なんだ……これは?」
ギルが驚いたように呟く声が聞こえる。
私も、いや、この場にいる全員がそう思っただろう。
あの黒い輝きを纏った少年は、本当にあの天霊 斬騎なのか?と。
「
マルドゥークの斬られた傷口から黒い輝きが放たれる。
「
そして、斬られた傷口からヒビが広がった。
「
言葉とともにバキンッ!と硝子が砕け散るような音がして、目のヒビ割れていたところが完全に結合崩壊した。
GUAAAAaaaaaa⁉︎
苦悶の声を上げるマルドゥーク。
しかし、その声はアラガミを集めない。
むしろ黒い霧の濃度が上がってマルドゥークの姿が見えなくなっていく。
この霧、発せられたオラクルを喰らってる⁉︎
『霧の解析が完了……これは、霧内部でオラクルを使用すると斬騎さんの使用したもの以外のオラクルは全て霧に捕食されるようです。また、斬騎さんに近づくのも危険です。神機が細胞同士を【崩壊】させる力場を放っています……!』
「で、でもこのまま黙って見ているわけにも……!」
「! 隊長、あれを」
「……霧が晴れていく…? いや、神機に吸い込まれていく」
「時間制限があるのか……?」
「何にせよ、今がチャンス!」
「うん、そうだねナナ。皆、行こう!」
霧が晴れて視界が開けると、そこには著しく消耗した斬騎君と片目、後ろ足をやられたマルドゥークがそれでも前足の爪で斬騎君を切り裂こうとしている姿があった。
次回、十二話 終結、波乱の実地訓練