時間軸としてはレイジバーストの開始5か月前です。
あの後、無事適合試験を乗り切った俺は緊張と疲労からぶっ倒れて医務室に運ばれていた。
そこで俺は夢を見た。
俺には幼馴染の少女がいた。彼女は黄金の髪にサファイアのような青い瞳をした、美しい少女だった。
俺と妹と彼女、そしてもう一人……誰か居たような…?
まぁ、とにかく俺たちは仲が良かった。
外で遊ぶのは危ないので、家の中で出来る遊びをしていた。彼女は手芸と占い、あと何故かお祓いが得意だった。
ある日、俺たちはいつものように集まって、今日は何をしようかと、盛り上がっていた。
だが、防壁を越えてあのアラガミが現れた。
そのアラガミは漆黒の霧みたいな………あれ?
よく……思い出せない?あんなに衝撃的な事だったのに?
そうしている内にも場面が転換していく。
燃える家々。逃げ惑う人々。悲鳴と怒号。繋いだ手が離れた感触。悲しそうに笑う彼女。地面に拳を叩きつけ、己の無力さを怨む俺。
そして、笑った、としか言いようの無い表情をした黒いアラガミに対峙する険しい顔をした****。
あれは確か俺たちの………。
「いつまで寝てるんですか、兄さん?」
「…………何故ここにいる、妹」
「………きちゃった♪」
「棒読みで言われても嬉しくないし、そもそも理由になってねぇ‼︎」
後少しで思い出せそうだった記憶がまた闇の中に沈んだ。5000メートルくらい。
「ってかあれからどのくらい経った」
「ほんの30分くらいです。心配して損しました。私の心配を返して下さい。………現金で」
「あれ、急に生々しくなった⁉︎」
黒い笑みを浮かべる妹に戦慄する俺。
「まぁ、流石に冗談です。兄さんに金銭的な期待はしてません」
「それはそれで傷付くわ!」
事実だけどさぁ‼︎
昨日まで妹に養われるヒモ生活してたけどさぁ‼︎
妹は楽しそうにクスクスと笑う。そして俺の腕についた赤い腕輪を指差しながら話す。
「何はともあれ。これで兄さんもゴッドイーターになった訳ですが。むしろここからが本番です。死なない程度に頑張って下さいね」
「……わかってるよ」
「それじゃ、兄さん。私はこれで。そろそろバイトの時間ですし。私は私で生活費を稼ぐ必要があるので」
「おう」
俺は妹を見送ると、取り敢えずベッドで再び横になった。
「……さっきの夢。あれは一体、いつの話だ?」
俺に幼馴染の少女がいたのは覚えている。だが、黒いアラガミや、凄惨な光景には見覚えがなかった。
ただ、この頃の記憶は俺も妹もひどく曖昧で、しかもちょうど両親も死んだのもこの頃のことだったからショックで塞ぎ込みがちだった。
そんな俺たちを見ていた師匠が見るに見かねて体術の修行を行ない始めてから俺たちは少しずつ心を立て直していった。
だから余計に辛い記憶はおぼろげになった。
きっと今まで思い出さないよう厳重に封をした記憶があったのだろう。
それが、適合試験のショックで少し中身が漏れただけのこと。
俺はその時、そう思う事にした。
後々、これが重要な手がかりになる事をこの時俺はまだ知らなかった。
次回、二話 味覚破壊系飲料