嘆きの平原にて、天霊斬騎
「その呼び方、お前カナか?」
巫女装束と占い師の衣装を足して二で割ったような衣装をした金髪碧眼の少女が袋の中から出てきた。
間違いない、彼女は……。
「! やっぱりきー君だ! きー君ヘルプ!」
「あ、『生贄』が逃げるッス!」
うん間違いない。芋虫のような体勢で高速移動出来る人間はコイツ以外心当たりがない。
「うえぇぇん‼︎ 怖かったよぅ‼︎」
「よしよし、分かったから。今、縄解くから」
えっと? この結び目がこうで……。
「?」
「ちょっ⁉︎ きー君、結び目キツくなってる⁉︎」
「………あー、もう面倒くせぇ」
呪刀でスパッと。
「危なっ⁉︎」
「よし、切れた」
「よし、切れた、じゃないよ⁉︎」
さて、人の幼なじみを攫って『生贄』にしようとした連中をどうしてやろうか。
「おい、お前らー。俺の幼なじみを危険に晒しやがって」
「「「たった今お前が一番危険に晒してた(ッス)よ‼︎⁉︎」」」
おろ? マジで?
「縄切るのに何で神機使ったし⁉︎」
「手頃な刃物がコレだったので」
「わたしまで切れるわ‼︎」
「大丈夫だ……」
「え? まさかロープだけを切るのは造作もないほど神機を使いこなして……?」
「お前ごと切れたとしてもさっきそこで拾った賢者の石で……な?」
「「「人体錬成かよ⁉︎」」」
その場にいた俺以外の全員がツッコミを入れると同時に…。
ゴスッ‼︎
一番の被害者であるカナは俺の後頭部を思いっきりぶん殴った。痛い。
「まぁ、冗談はさておき……。
ここにはもうすぐお前らの言う《女神様》とやらが来るらしいな?」
「ククク、その通りだ。
そこの小娘を『生贄』に捧げてこの世界に平和をもたらしてみせよう!」
駄目だコイツ早くなんとかしないと。
「アラガミをコントロールできるわけないだろ。
ここは危険だ。さっさとお前らも帰れ」
「ふん、《女神様》を普通のアラガミと一緒にするとは笑止千万。
それにもう遅い。
《女神様》はもう、ここに……」
ズズン‼︎
地響き?
何か大きなものが降ってきたような音がした。
「《女神様》ッス! これで我らの悲願がついに果たされるッス!」
男が見ている方向には…。
美しい女性の上半身と醜い肉塊のような下半身の巨大なアラガミがいた。
コイツは確か、ヴィーナス‼︎
「これ、もっとスピード出ないんですか⁉︎」
「無茶言うな、綾佳。これが限界だ」
私とリンドウさん、アリサさんとコウタさんは今、嘆きの平原に向かっていた。
巨大なオラクル反応を感知したためだ。
「また斬騎が無茶してないといいけどな」
「それにしてもアラガミを信仰するなんてドン引きです」
「まぁ、仕方ないさ。アイツらにとっての希望はゴッドイーターじゃなくて、《女神様》とやらなんだ」
「彼らにも彼らなりの事情がある、ということですか?」
「だろうな。ま、俺らには関係のない話だ。その《女神様》を討伐してさっさと帰るぞ」
「狂信者はどうでもいいので車の速度を……!」
「「「過保護すぎる⁉︎」」」
次回、二十話 無慈悲なる女神