迫るヴィーナス、動けない俺。
そんな絶望的な状況の中、呆れたような少女の声が、聞こえるはずのない彼女の声が聞こえた。
『仕方ないわね、
「カヤ?」
神機から仄暗い輝きが発生する。
動かなかった身体が勝手に動き出した。
『スキル《妖刀憑依》。この力の真の使い方、教えてあげる』
「《妖刀憑依》? まさか今までの取り憑かれる様な感覚って……⁉︎」
向かってくるヴィーナスをステップで回避してブラッドアーツを発動する。
この間、僅か二秒。明らかに俺の動きじゃない。
『《呪怨の太刀・黒》、ね。
なかなか本質を突いてるじゃない。
まぁ、正式名称は他にあるんだけど……』
「ちょ、これ使ったら体力やらスタミナやらが……⁉︎」
『大丈夫、私を信じなさい』
呪刀から黒い霧が発生する。
そこまではいつもと同じだった。
だが、その後がまるで違う。
『
黒い霧が元の刀身や俺に吸い込まれていく。刀身から漂う嫌な気配が更に強く、凝縮されるように。
『
「何だ、これ……?」
全身が重く禍々しい気配を纏った。
脱力感は無いが一刻も早くこの神機を手放したくなる。
更に霧を吸収したせいか、まるで身体の内側の深い部分まで侵食されるような感覚がある。
「お、おい。これどうなって……」
『ちょっと収束が甘かったかしら?
少し呪いが抑えきれてないわね。
まぁ、すぐにケリをつければいいだけか。
ほら、構えて
来るわよ』
KYAaaaaaaaa‼︎
紫電を纏ったヴィーナスが再び突進してくる。
「くそ、後で話を聞かせてもらうからな」
俺の身体は怪我する前より滑らかに動いた。その結果、紫電を躱しつつ、突っ込んできたヴィーナスの左足のゼリー体を切り裂くという荒技に成功する。
「あとひとつ」
バランスを崩し、倒れるヴィーナス。しかし臀部のゼリー体からグボロ・グボロの頭部が現れる。
「無駄だ。今の俺には通用しない」
確信を持って言える。今の俺はさっきまでとは明らかに異なる、何か別のものへと変化していることに。
「《呪怨の太刀・黒》レベルⅡ」
言葉を紡ぐ、導かれるように。
霧で構成される黒衣がいつの間にか身に纏われていた。
「発動。《
グボロの口から水弾が発射される。
だが、俺は既に空中に身を躍らせていた。
斬‼︎
そのまま一刀両断。最後のゼリー体も破壊する。
KYAaaaaaaaa⁉︎
「どうした? 余裕がなくなってきたじゃないか」
ヴィーナスの叫びが先ほどまでのこちらを嘲笑うようなものではなく、命の危険を感じてのものに変わっていた。
次回、二十三話 狂気と憤激の剣閃