今回から登場人物が増え始めます。
次の日、俺は極東支部の支部長であるサカキ博士のいる支部長室に向かった。
どうやら今日から訓練が始まるらしい。
俺が部屋に入ると、胡散臭そうな笑みを浮かべる男性と同い年か、少し上くらいの快活そうな少女がいた。
「おや、来たね。はじめまして、ここの支部長のペイラー・榊だ。こっちの茶髪の子は特殊部隊《ブラッド》の隊長で、君の教官役になる春日 綾佳(かすが あやか)くんだ」
「あ、どうもはじめまして。天霊 斬騎です」
意外とマトモな人だな。
隣の少女ーー春日さんはにっこり笑ってよろしく、と言う。
「さて、早速だが喉は乾いてないかい? 今、とっておきのものを出そう」
「え、あ、ありがとうございます?」
サカキ博士は何処からかラベルのついていない缶ジュース(?)を取り出した。
あれ? 今、缶を見た春日さんが一瞬ビクッとしたような?
「さぁ飲みたまえ。ここの名物なんだ」
「? いただきます」
…ふむふむ、この混沌としたグロテスクな味、そして何故かドロドロとした修羅場を連想させる香り。これは………!
「まっずうぅぅぅぅ‼︎‼︎」
常軌を逸した不味さだ‼︎ うわっ! まず‼︎ おえぇぇぇ‼︎
「はっはっはー。気に入ってくれたかい? 極東新名物《初恋ジュース 修羅場ver》」
「うわぁ、やっぱり。斬騎君、大丈夫? ごめんね。博士、初対面の人の緊張を解そうとしてこういうトラップ仕込んだりするから……!」
前言撤回。やっぱりこの人、信用できん。
ってか口の中がヤバイ‼︎水、みずうぅぅぅぅ‼︎
「と、取り敢えず食堂に連れて行きますね。このままだと話、進みませんし」
「ふむ、それもそうだね。じゃあ行ってくるといいよ」
「相変わらず美味しいなぁ。何度食べても飽きないよ」
「ありがとうございます、コウタさん」
食堂には赤い髪の青年と割烹着姿の小さな少女がいた。青年の方は大皿に盛られた大きなオムライスをガツガツと食べまくっている。
「お、綾佳と……誰?新人?」
「うん、彼は天霊 斬騎君。えっと今さっき、洗礼を受けたところかな?」
「洗礼って………あ、《初恋ジュース》か」
「そう。だからお水をもらいに来たんだ。ムツミちゃん、お願いね」
「は〜い」
割烹着姿の少女ーームツミちゃんが水を入れたコップを渡してくれた。
俺はそれを一気に飲み干すと一息ついた。
「はぁ、死ぬかと思った。……改めまして、天霊 斬騎です」
「おう、災難だったな。俺は藤木 コウタ。第一部隊の隊長やってる」
「結構ベテランだから、分からないことがあったら教えてもらうといいよ」
「はい、よろしくお願いします、藤木さん」
「コウタでいいよ」
「あ、じゃあ私も。綾佳って呼んで」
「あー、はい。わかりました。コウタさん、綾佳さん」
「うん、それじゃあ戻ろっか。コウタさん、また後で」
「おう」
「お、戻ってきたね。どうだい、調子は?」
「最悪ですよ」
俺が水を飲んだことで幾分か楽になったので支部長室に戻ってきた。
「さて、では本題に移ろうか。君にはこれからしばらく訓練を受けてもらう。もちろんこれは戦闘訓練だ。ゴッドイーターとしていきなり戦場に出て死んでもらうのはこちらも本意ではないからね」
そこでサカキ博士は綾佳さんの方を見て、
「彼の教官役を任せるよ、綾佳くん。何、心配はいらない。君は既に一度カノンくんの教官役もしっかりやりきった実績もあるからね」
「………あれはやりきった内に入るんですかね? この前、ハルさんからなんか余計酷くなった、って言われたんですけど」
「まぁ、大丈夫だろうね。カテゴリ的には彼も
「今、物騒なルビ振りませんでしたか⁉︎ 」
サカキ博士の言葉に思わずツッコミを入れる綾佳さん。
「というわけで、これからすぐに訓練を受けてもらうけど大丈夫だよね?」
「いや、まだ話は途中…「いいですよ。気分も良くなってきましたし」私の意思は⁉︎」
「じゃあ頑張りたまえ」
「はい!」
「はぁ、やっぱり私の意思は無視ですか」
次回、三話 最初の訓練