タグにつけた師匠はチートがようやく本領を発揮しはじめます。
「に、逃げ切ったッスか?」
女神狂信者の内、生き残った方の男はゴッドイーターから逃げ切っていた。
再びアジトに戻って新たな計画を立てるためだ。
幸い、教祖死亡以外に痛手は無かったし若いメンバーたちもまだアジトに集まっているだろう。
あのゴッドイーターと戦闘していたヴィーナスは倒されてしまったようだし新たなヴィーナスを探し、一刻も早く我々を救っていただかなくては。
男はアジトに戻るとドアを開けた。
そして仲間に声を掛けようとして止まった。
いや、正確には凍りついた。
「お、残党か?
別荘とはいえ人ん家の隣でぎゃあぎゃあうるさいからコイツらまとめてぶっ潰しちまった。
ま、お前も同じ末路を辿れや」
そこにいたのは死屍累々のメンバーたちとその中で唯一立っているフード付きパーカーにジーンズと動きやすい格好をした小柄な人物。
声からして少女、だが口調は荒々しく不良のそれだった。
「な、なんでこんな……。おい、お前ら! 立て、逃げるぞ!」
男は思わず素の口調で仲間たちに呼びかけるが呻き声が上がるだけで立つ者はいない。
「あー、無駄無駄。オレがそいつら全員の足の骨折っといたから。
逃げらんねぇし、逃がさねぇよ一人残らず潰してやる」
見た所少女は生身。しかも腕輪がないからゴッドイーターですらない。
しかし信じがたいが素手で人の骨を軽々と砕いたのだろう。この部屋に転がる仲間の数や、武器になるようなものが周囲にないことが見ればわかる。
「あ、あんたは一体……何者ッスか?」
少女は男を見たあと、笑って言った。
「くくっ。ただの化け物さ。……失敗作の、な」
男は素早く胸ポケットからハンドガンを取り出し、少女に狙いを定め撃つ。
話をしていたのは油断させるためだ。
「……ほう。不意打ちとは中々やるじゃないか。
だが、無駄だ。オレは人じゃない。
化け物だ」
パーカーが赤く染まる。男は少女に確実に弾丸を当てた。
だが少女の放つ雰囲気はあくまで変わらなかった。
「オレは死なない。死ねない」
少女の姿がふっと揺らいで消えた。
男が驚愕に目を見開いた瞬間、衝撃。
「がッ⁉︎ あ、ぁあ、ぁぁ……」
がっくりと倒れこむ男。その後ろには少女がいた。だが、先ほど血で染まったはずのパーカーが綺麗なままの状態に戻っている。
「さて、アラガミ信仰者団体をまた一つぶっ潰しちまったワケだが。
あとの事後処理は最近ゴッドイーターになったとか言うバカ弟子に任せるか……」
ヴィーナス戦後一夜明け、医務室
「で? このジュースは一体……?」
「サカキ博士からのお見舞い」
綾佳さんは俺に死ねと言ってるのだろうか?
その両手には箱いっぱいに詰まった得体の知れないジュース。
「ねぇ、斬騎君? 世の中にはどうにかなることとどうにもならないことの二種類あるんだよ?」
「で、今がそのどうにもならないことですか。ちくせう」
がっくりとうな垂れた後、ダンボールから一本缶ジュースを取り出し、プルタブを開け、飲み干す。
切なさと優しさとそして、どうにもならない理不尽さの味がした。
「う、ぅぅうううぅうぅう?まず、い」
殺人的な不味さが際立った味付けですね。
というか病人に飲ませる味じゃない。
「ざ、斬騎君? 顔が青を通り越して透明になってきてるよ⁉︎
や、やっぱり駄目だったかなぁ。サカキ博士監修の元、リッカさんとナナが共同開発した得体の知れない混沌としたジュース」
俺の退院が延期になったのは言うまでもない。
病室で泡を吹いて倒れた俺はこの後、カヤに『昨日ぶりね。何回くだらない死に方繰り返すのかしら、
ぶっちゃけそろそろジュースがアラガミよりタチ悪いものの気がしてくる。
次回、二十八話 再起の呪刃