「……………これでよしっと」
ヴィーナス戦後から3日。ようやく退院だ。いつもの飾り気のない黒のTシャツを着て、自室を改めて見まわす。
殺人ジュースで無駄に時間を取られたが今日から再び任務に就くことができる。
「さて、そして………」
俺は机の上に置かれた資料を見る。
そこには先日の狂信者たちが無条件降伏した旨の内容が書かれていた。
場所はヴィーナスと戦った場所からは少し離れたアラガミの出現が少ない特殊区域。
狂信者たちは一人残らず足の骨を念入りに複雑骨折していた。
こんな人外なことができるのは恐らく師匠だろう。
というかこの資料の送り主が師匠だ。
「多分、師匠のことだから俺に後始末させる気なんだろうな…。はぁ、カナといい、師匠といいどっから俺がゴッドイーターになったって聞き付けてるんだか?」
めんどくさいなぁ、と思いながらどうにかこうにか報告書をまとめて、ターミナルから提出する。
「えいやー」
斬!
グボロ・グボロの砲塔を綺麗に切断。
返す刃で顔面を斬り裂いた。
苦悶の声をあげ倒れこむグボロに間髪入れず捕食。
コアを取り出した。
「おーい、斬騎! そっちは終わったか?」
「あ、コウタさん。はーい! 終わりましたー!」
第一部隊での任務もそれなりに慣れてきたが……。
「ちょっとエミール! 退いてよ、アンタごと串刺しにするわよ⁉︎」
「いや、退かん! このアラガミは僕との一騎打ちを望んでいるようだからな! 逃げる訳にはいかないのだよ!」
「それはアンタがしつこくハンマーで叩くから怒って攻撃してきてるだけよ!」
「いくぞ、我が神機ポラーシュターン!」
「聞きなさいよぉぉぉぉ‼︎」
「あれは慣れないんですよねぇ。
毎回毎回やってますけど彼らは飽きないんですかね?」
「そうだなぁ。……なぁ、斬騎?」
「なんですか?」
「人はどうして争うのかな?」
「コウタさん⁉︎ あ、コウタさんが遠い目をしてる⁉︎
お、おーい、エリナ先輩、エミールその辺で喧嘩やめてぇぇぇ‼︎」
この部隊はコウタさんのメンタルを代償に成り立ってるのかもしれない。
「……もうすっかり大丈夫そうだな。あれから乗っ取られる感覚はなくなったし」
右手の神機を見て反応が特にないのを確認して俺は呟く。
どうやらスキル《妖刀憑依》は鳴りをひそめたようだ。
「はぁ、あのスキル助かるっちゃ助かるんだけどなんか使い続けてるとロクなことにならない気がするんだよなぁ」
意識ごと身体乗っ取られるとか。
あり得そうで凄い嫌だ。
「でも、これからどうしようかな?
本格的に強いアラガミと戦う時に毎度毎度都合良く綾香さんが来てくれるわけでもないし……」
そもそもマルドゥーグもヴィーナスも弱らせることは出来たが、決定打を叩き込むことは出来なかった。
せめてあのブラッドアーツを使いこなすことが出来れば……。
「お困りのようだな、バカ弟子」
「……何故このタイミングで出てくるんですかとか、ここ危険地帯ですよって言うツッコミは置いときます。
お久しぶりですね、師匠」
突如として師匠が現れた。
……うん、自分でも何が起こってるのかよく分からない。
「おう。調べ物も終わったから帰ってきた」
「調べ物?」
「世界を狂わせてる要因に会ってきたってだけだ」
「ちょっ⁉︎ それかなり重要な話⁉︎」
世界を狂わせてる要因⁉︎ なんか壮大なの出てきた⁉︎
「まぁ、《
「ごめんなさい、まるっきりよく分かんねぇです。
というか人の妹をそんな怪しげな連中の見張り(?)に使わないでください」
師匠は俺の妹を賢妹と呼ぶ。そして俺はバカ弟子だ。この違い、差別でしょうか?まぁ、師匠のことだから区別だと言い張るだろう。
「とにかく、今はおめーだバカ弟子。
制御不能のブラッドアーツを扱えるように特訓だな」
なんでこの人こんなに事情に詳しいんだろ? どっかで見られてんのかな?
次回、二十九話 修行パートとか見てて楽しいの?