学園黙示録~とんでもない世界に迷い込んだんですけど~   作:富士の生存者

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第1話 『とんでもない学園』

 

 主人公SIDE

 

 

 現在の状況を簡単に説明しよう。

 

 いざ目を覚ますとそこは自分の部屋の天井でもなく病院の天井でもなく限りなく青空の広がる場所であった。どうやらここはどこかの学校のようだ。

 なぜわかったのかというと、スーツを着た男性教師と思われる人物が制服を着た女子生徒と思わしき人物に首にかぶりつかれるというなんともショッキングなものを見てしまったからだ。

 

 食べたいほど女子生徒が男性教師を愛していたと思う程、自分は現実から目をそらしていない。

 

 あり得る可能性としては女子生徒が麻薬を使用していることだろう。

 

 実際にアメリカで麻薬の副作用によって幻覚をみて人を食べていた事件があったことを頭に思い浮かべながらその光景をみまもる。

 どうやらこの学校中で先ほどと同じ光景が繰り返されているようだ。

 

 最悪だ。

 しかも今の自分の姿にも問題がある。

 

 目だし帽(バラクラバ)に迷彩服、その上にプレート・キャリアーを着ている。プレート・キャリアーには弾倉がぎっちりと入ったマガジンポーチがつけられている。

 さらにアメリカ軍の正式自動小銃『M4 カービン』、太もものホルスターには45口径を使用する『Mk23』が収まっている。

 あれ? 

 この装備、確か俺がしていたゲームの装備だ。

 一体全体どうなっているんだ。

 

 

「きゃぁぁぁぁ!? やめて、食べないで!!」

 

 

 悲鳴を聞いた瞬間には自分の意志とは関係なく体は動き出していた。

 

 中庭で女子生徒を覆いかぶさり襲っていた太った男子生徒に照準を合わせ引金を絞る。

『M4 カービン』に装着された抑制機(サプレッサー)が発射時のマズルガスの一部を可能な限り抑えることで、『バスッ!』 とくぐもった音と共に男子生徒の頭に穴が穿たれる。

 

 女子生徒は何が起きたのかわかっていなかったが、動きを止めた男子生徒を退けるとそのまま中庭を走って後にする。

 

 自分の意志とは関係なく銃が使えることがさっそく証明された。

 ひとまず今後の計画は、「安全な場所の確保」、「可能な限りの情報収集」だ。

 

 順応性を高めなければ。

 

 さてひとまずここから降りよう。

 円形の天窓があるってことは天文台のようだ。

 

 確認しても下には…敵はいないようなので潔く飛び降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 小室孝SIDE

 

 

 

 階段を勢いよく降りていく。

 廊下は走らない、というポスターに喧嘩を売るかの如く廊下を疾走する。

 

 非常階段でボンヤリ過ごしていたら校門にいた不審者が体育教師の一部を腕を食いちぎった。

 離れたところからでも血しぶきが見えた。

 

 そしたら倒れていた体育教師が突然他の教師の首に噛みついた。

 

 その瞬間に僕は全速力で廊下を走っていた。

 体が勝手に動いた。

 早く麗を連れて逃げなくては。

 

 授業中の教室に駆け込み、真っ直ぐ麗の机に向かう。

 教師が何か言ったがそんなことはどうでもいい。

 

 

「来い麗、逃げるぞ!」

「ッ! ちょっと、いきなり何ッ!」

「いいから、来い!」

 

 

 麗の腕を掴んで無理やり連れて行こうとする。

 そんな光景を見てクラスの中はざわめく。

 

 

『何考えてんだ、アイツ?』

『さあ、イカれてるんじゃね』

『あれって、告白?』

『超強引~』

 

 そうだ、僕は「元彼女」の麗を連れ出そうとしている。いまの彼氏は僕ではないに―――。

 麗を掴んでいる僕の腕を誰かが掴む。

 

 

「孝、麗をいったいどうするつもりだ!」

 

 そう今の彼氏は彼だ。

 井豪(いごう)(ひさし)。僕の同級生にして親友。

 頭脳明晰で空手の有段者、顔だちは整っており人当たりもいい、非の打ちどころのない好人物。

 それに比べ僕は不良というレッテルを張られた落ちこぼれ。

 小声で永には、校門であったことを話す。

 

 

「校門で殺人事件だ、ヤバいぜ」

「ッ! 本当なのか?」

「嘘をついてなんか得があんのか」

 

 

 話をしている時に少し麗の腕を掴んでいる力が緩み、手を振りほどかれる。

 

 

「ちょっと待ってよ!! ちゃんとした説明をしない限り、私は……」

 

 

 パチン!!

 僕は麗が言葉を言い終わる前に頬を叩いた。

 永と叩かれた本人()も驚いた顔をした。

 女子に手を挙げたことなんんてなかった。でも、それでもここから早く連れ出すために叩いた。

 

 

「「!?」」

「いいから言うことを聞け!!」

 

 

 僕らは先生の静止を振り切り教室を後にした。

 移動しながら校門で起こったことを話すと、永が武器をあったほうがいいと言った。

 

 僕は野球部の私物だろう掃除用具のロッカーの隣に置いてあったバットを拝借した。金属バットでなかなかの重量がある。麗は永が掃除用具のモップの先端を強引に捻じり取って作った、先の尖った槍を持っている。

 

 

「お前、武器はいいのか?」

「俺はこれでも空手の有段者だぜ」

 

 

 永は自分は空手の有段者だら大丈夫だと笑いながら言った。その時の僕は永なら大丈夫だろうと、楽観的な思考をしていた。いや、もしかしたら心のどこかでは思ってしまったのかもしれない。

 

 永が死んでくれれば麗の心は僕に向くのではないかと―――。

 

 その時、スピーカーから放送が入った。

 

 

『全職員、全生徒にお知らせします。現在、学園内で暴力事件が発生中です! 繰り返します。現在、学園内で暴力事件が発生中です! 生徒はッ!?』

 

 

 突然放送が途切れた。

 ……まさか。

 

 

『ッ!? やめてくれ! 助けて!? 痛い! あぁぁぁぁ!?』

 

 

 ブツン!!

 悲鳴と共に放送が終了した。

 

 生徒は放送から聞こえてきた悲鳴で混乱の渦にのまれた。

 我先にと教室に出入り口に殺到し、廊下に出る。転倒するもの、階段から落ちる者さまざまだ。

 

 僕は永と顔を見合わせ頷き、教室棟から外に通じる方とは別の出入り口に向かう。

 その際、現国の授業の担当の教師に遭遇した。

 

 足から出血しており、顔色は悪く、眼球が白く濁っている。

 さらには麗に襲い掛かろうとし、心臓を鋭利なモップの柄に突かれたのにも関わらず死なない。麗を助けに永が教師を後ろから羽交い絞めにして引き離す。しかし、教師の腕力は凄まじく羽交い絞めにしていた永は驚愕した。離れようとしようとするが制服をしっかりとつかまれており離れようにも離れられない。教師が標的を永にしその口が永の腕に噛みついた。永は引き離そうと必死にもがくが教師の歯はどんどん制服に食い込んでいく。

 麗と僕が必死で槍で突いたり、バットで殴るが一向に離れない。

 

 僕の3度目のバットが教師の頭を捉えた。

 手と腕に衝撃が走り痺れる。

 教師は右の眼球が飛び出し頭部をバットの形が付くほど凹ませようやく永から離れた。

 

 永は肉をそがれていた。

 

 教師は『死んでいるのに』動いていた。

 ありえないことだがそれ以外は考えられない。

 原理はわからないがあんな者を何体も相手にしていられない。

 

 教師が来た方向を見ると、服を血に染めたり、ひじから先がない腕をこちらに突き出しながら歩いてくる生徒、教師の姿があった。

 急いで一階に降りようとすると一階から女子生徒らしき悲鳴が聞こえてくる。

 まずい! まずい!

 

 

「屋上に立て籠もるんだ。救助来るまで……」

「立て籠もるっていったいどこに……」

「天文台がある!」

 

 

 その時、無理にでも外に出るべきだったのかもしれない。だけど、その時はそれが一番いいように思えたんだ。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

主人公SIDE

 

 

 さて、どうしよう。

 現在、俺はある問題に直面している。

 人間に遭遇した。

 

 天文台の中を物色し必要になりそうなものを拝借し、ずらかろうとしようとしたときに天文台に通じる唯一の階段から現れた、肩を支えられている男子生徒とその生徒の肩を支えている男子生徒。

 

 さて、どうする。

 

 

 ①銃を突き付けて脅して逃げる。

 

 ゲスいな。これはないな。

 

 ②何事もないようにスル―する。

 

 これも無理がある。俺の見た目でアウトだ。

 

 ③とりあえず助けて恩を売る。

 

 よし、これで行こう。

 

 

「きゃぁぁぁ! やめて!!」

「麗!」

「どいてろ」

 

 

 どうやらまだ仲間がいたようだ。しかも、今の悲鳴は女子生徒。

 すぐに走り出し階段にいる女子生徒に襲い掛かろうとしている男子生徒の頭を自動小銃で吹き飛ばす。男子生徒はそのまま階段を滑り落ちて階段を登ろうとしていた他のゾンビを巻き込んだ。

 女子生徒は、呆然と俺を見ている。

 当たり前か展望台から全身迷彩服の顔を隠した完全武装の人間を見れば。

 

 だけど、呆然とする余裕はないよお嬢さん。 

 手を掴んで無理やり立ち上がらせ階段を上っていく。

 

 

「部屋にテーブルがあるから急いで持ってきてくれ、バリケードを作る」

「…はいッ!」

 

 

 男子生徒を支えていたもう片方の男子生徒が次々と机を運び出してくる。

 

 時間稼ぎをしなきゃな。

 取りあえず5体ほど生徒の頭を自動小銃で吹き飛ばし。机を使いバリケードを築いていく。

 これなら数時間は持つだろう。

 

 この数時間が今の俺にとって何よりも大切である。

 

 さて、口下手な俺の尋問タイムが始まるよ~。

 

 

 

 

 

 

 




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