学園黙示録~とんでもない世界に迷い込んだんですけど~   作:富士の生存者

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お久しぶりです。

ようやく、1次選考、2次選考を無事に突破し最終選考が2日後に迫っている端部屋の生存者です!!

企業の人事の方との面接で、『趣味は何ですか?』と聞かれ『料理です』と答えたら爆笑されました。
やっぱり、ツキノワグマみたいなガタイしているからですかね?


第23話 『とんでもない家庭訪問』

 

 

 どうやらこの世界には、俺がFPSゲームで作成したNPC達が存在しているようだ。独自の意思を持って。シェリーの後ろには、見覚えのある装備をした兵士たちが周囲を警戒している。

 

 つまり、どういうことなのか……俺にもよくわからん。

 だって自分だけじゃなくて作成したNPCまでいるなんて思わないよ。

 

 

「後ろの“モノ“たちをどうしますか?」

 

 

 モノッ!?

 今、この子良い笑顔で孝君たちを〝モノ“呼ばわりしたよ!!

 コワッ!? こんな性格してたの!?

 

 それに後ろのNPC達も漏れなく銃口を孝君たちに向けているよ。

 

 

 銃口を向けるのやめいッ!!

 せっかくここまで上げてきた好感度が落ちるわ! 奈落の底まで落ちるわッ!!

 

 

「隊長がそうおっしゃるのなら」

 

 

 シェリーがハンドサインを出して銃口を下げさせる。

 これ本当に俺の部下であっているのか……。

 

 孝君たちにばれないようシェリーにこっそり聞いてみた。

 そしたらこんな回答をいただいた。

 

 

「もちろんです。何なりとお命じください」 

 

 

 忠誠心Maxやないかぁぁぁい!

 

 どっから俺への忠誠心が来ているのか知りたいよ。

 いやッ、やっぱり怖いからいいや。

 

 これで、調子こいて命令して撃たれるなんて嫌だよ俺……。

 

 装備を見ると衛生兵がいるようなので、ハンヴィーから落ちた麗さんを見るようにシェリーにお願いする。 

 

  

『こちらチャーリー。南側より人員を乗せた車輌が接近中、警戒せよ』

 

 

 ここまでうんともすんとも反応がなかった無線は絶好調のようだ。

 恐らく、何処かのビルの上から見張りについている狙撃手からだろう。周囲の警戒は基本だから。

 

 

「アルファ、了解。総員、配置に着け。ブラボーは引き続きその場で待機。チャーリー、合図を待て」

『ブラボー、了解』

『チャーリー、了解』

 

 

 テキパキとシェリーが指示を出していく。

 俺氏、唖然……。

 

 NPC達はハンヴィーを盾にしてワイヤーが張られた向う側に銃口を向ける。

 無線の報告通り、向こう側からトラックが近づいてくる。停車したトラックの荷台からゴーストバスターズのような恰好をしたオッサンたちが降りてきた。

 オッサンたちの持っている物は確か、消防の装備品である放水銃だった気がする。圧縮した水を勢いよく放出し、火災を鎮火する装備だ。

 なるほど、これなら銃弾を無駄にする事無くゾンビを牽制できる。音も銃声よりはマシだろう。

 

 オッサンたちは無数に向けられた銃口を目にして動きがピタリと止まる。

 そりゃ、そうだよね。

 

 オッサンたちが動けないなか、助手席からはしっかりした消防の出動服を着た人が降りてきた。

 この人がリーダーのなのだろう。

 

 

「そこで、止まりなさい。少しでも妙な動きをすれば射殺します」

 

 

 シェリーがよく通るきれいな声で、こちらに完全に近づく前に脅しをかける。 

 どうぞと言わんばかりにこっちにアイコンタクト送るのやめてほしい。 

 

 ここで、俺に振るのかよ……。

 

 

 こちらに敵対する意思はありません。この先に用があるだけです。

 

 妙な動きをしたら射殺しますなんて言っているのに、敵対する意思がないとか矛盾しすぎだろ。

 

 

「……敵対する意思がないなら銃口を下げていただけないかしら。それに、正体不明の敵か味方かわからない、武装集団を簡単に入れるわけにはいきません」 

 

 

 ヘルメットの所為で、声はくぐもっているが女性のようだ。

 

 確かにそうですよね。俺もそう思います。

 正体不明な武装集団じゃなきゃ入れてくれるかな。せめて孝君たちだけでも保護してほしいな。

 まぁ、最悪本気出すよ。俺が本気出せば土下座も靴舐めも余裕でできる。

 

 

 それでは、私がいま保護している民間人だけでもお願いできないでしょうか? 民間人を保護していただけるのなら我々はこの場を早急に去ります。

 

 

「……いいでしょう。民間人は私たちが保護します」

 

 

 ハンヴィーの影に屈んでいた孝君たちが姿を見せる。

 

 

「沙耶ッ!?」 

「え?」

 

 

 消防服の女性は、間違いなく沙耶さんの名前を呼んだ。沙耶さんも突然、自分の名前を呼ばれ反応する。

 女性は顔を覆うバイザー付のヘルメットを取りその素顔をあらわにする。

 紫の長い髪に優しそうな瞳が沙耶さんを捉える。

 

 

「ッ!? ママッ!!」

 

 

 沙耶さんのママさんでしたか……。

 確かに髪の色からして家族ってわかりますね。感動の親子の再会。いや~よかった。よかった。

 

 これで、めでたし、めでたしだね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 感動の再会から1日たった。どうやら親子の感動の再会でハッピーエンドなんてものは存在していなかったようだ。

 いろいろとあったが沙耶さんの自宅に孝君たちと俺+部下が、お世話になっています。

 

 孝君たちは沙耶さんの友人のため屋外の広い庭に張られた避難民用テントではなく、高城邸の部屋を宛がわれている。俺とシェリーは屋内の部屋に案内されたが、人数の多い部下は広い庭に張られたテントで過ごしている。

 

 ベットで寝ればHPもMPも全快だね。俺にMPがあるのか疑問ではあるが。

 それよりも、シェリーさんやあなたなんで俺のベットに紛れ込んでるんですかね? 

 あなたの部屋は隣でしょう。 

 

 とにかく服を着なさい。そんな生まれたままの姿でベットインしていたら他の人が誤解してしまう。

 俺が手を出したと思われる。思われてしまう。

 

 手だしてないよな俺……。

 手を出していたらそれは問題だが、こんな美女と夜を共にして手を出していなかったらそれはそれで問題があると思う。

 誰かに見つかる前に身支度を整える。

 

 正直、俺も警戒されているから屋外のテントで過ごすのかと思っていたが、沙耶さんと初期から行動していたから案外信用はされているのかなと思っていた時期もありました。

 常にスキンのオッサンが、見張りがついているのに気づいてしまったら、それは間違いだと気がつくね。

 

 部下がいるテントは、避難している人たちのテントから離れた位置に建てられており、目出し帽で顔を隠し自動小銃をぶら下げ、歩哨に立っている部下を避難民は恐る恐る見ているだけで近づこうとはしていない。

 

 

 なんでも沙耶さんの父親―――高城 壮一郎氏はかつて旧床主藩の藩主であり、憂国一心会と呼ばれるこの県の国粋右翼のトップを務めている。構成員も天道双厳流という壮一郎氏を師範とした流派を学んでおり極めて戦闘力は高い。

 消防の出動服を着ていた人が、高城 百合子さん。壮一郎氏の奥さんで沙耶さんの母親だ。独身時代は、ウォール街で有名な凄腕トレーダーだった。エグゼクティブの護身コースへ通っていた経験があり、銃火器の扱いに精通している模様。

 その他にも個人情報満載のタブレットをひとまず部屋にいるシェリーに返す。

 

 非常によろしくない状況だ。

 タブレットの中の個人の詳細な情報も問題だが、それよりも現在の問題はシェリーたちだ。

 

 シェリーは見るからに外国人。

 しかも、米国……。他の隊員も驚くことに日本人も数名いるが、ほとんどが外国人だ。

 

 部隊と国粋右翼は、例えるとすれば……。

 

 ――うなぎと梅干。

 ――検事と弁護士。

 ――嫁と姑。

 

 うおォォォォ!

 マッハで俺の胃が削られていく。

 

 それに、洋上空港を掌握した?

 パーデゥン? ゴメン、まだ耳が寝惚けているみたい。

 

 

「洋上空港は既に我々が掌握しました」

 

 

 ジーザス(まじかよ)……。

 

   

 




次の更新は、試験が続くので恐らく直ぐには載せられません。申し訳ありません。
同時に、オリジナルで連載しています『空から見る終わり』の方もよろしかったら見てください。
ご意見やご感想があればよろしくお願いします。

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