学園黙示録~とんでもない世界に迷い込んだんですけど~   作:富士の生存者

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皆さま、お待たせしました。
今回はリカさん視点になります。
仕事のほうが忙しく、最近は点滴をしながら続けています。
点滴すると元気になりますね……。



第27話 『とんでもない警官と部下』

 南リカSIDE

 

 

 

 狭く埃っぽい通気口を物音を出さないよう慎重に這って進んでいく。

 先を照らすのは、小型のペンライトのみ。

 

 

(空港で通気口を這って通った警官は日本では私が初めてかもしれないわね)

 

 

 そういえば、昔の映画でハゲの親父刑事もクリスマスに悪態を突きながら通気口を通っていたわね。

 そんな事を思いながら小型ペンライトで照らした通気口を黙々と進んでいく。 

 まだ、先は長そうだ……。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 闇に照らされた誘導灯が滑走路を明るく照らす。そこに墨を垂らすように、黒い滴が次々と空港に降り立っていく。深夜にも関わらず空港の滑走路には、大型輸送機が降り立ち。機体から車輌、武器弾薬を運び出されていく。

 

 

「真新しいものばかり。本当にアイツら何をしようとしているのかしら?」

「第3次世界大戦じゃないか」

「もう始まってるわ。化け物と人間との戦争が……」

 

 

 第1ターミナルの待機ホールでは、生き残りの武装解除させられた警察関係者、避難民と空港職員が集められて、監視されている。今やすべての施設はアイツらに抑えられた。まだ、水と食料は配られているということは、あいつらは私たちを殺そうとはしないようだ。

 

 相棒の田島とお酒を飲みながら外を眺める。

 国際空港だけあって第1ターミナル待機ホールは、広く様々なテナントが置かれている。酒はそこからくすねてきたのだ。

 

 いったいあいつらの目的は何なのか……。

 

 

(まずは、アイツらが何をしようとしているのか探ることから始めようかしら)

 

 

 3つ目の缶ビールの蓋を開けて一気にあおる。

 

 

(また、忙しくなりそうね)

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 通気口を物音を立てない様に這いつくばりながら進むのもだいぶ慣れてきた。

 通路は定期的に武装した兵士が巡回し、定時連絡を入れている。

 これでは兵士を無力化しても、すぐにバレてしまう。

 

 情報を得るためにはコイツ等の本部を探す必要がある。

 どこに本部があるのかは、アイツらが教えてくれる。警備が厳重な区画が本部として使われているはずだ。

 

 途中、通気口が三方向に別れており直感で選んだ方に進んだが、正解だったようだ。

 

 

(ビンゴ)

 

 

 そこは私たちが作戦本部で使っていた区画だ。

 アイツらによって持ち込まれた多くの機材が置かれ、中央のテーブル型のモニターには世界地図が映し出されている。

 ボブカットの黒い髪の女が空港の見取り図を見ながら無線で指揮をとっている。

 

 

「搬入を急ぎなさい。こんなことで時間を無駄にしてる暇はないのよ……あの女、私に面倒な事を押し付けて先行するなんて。どさくさに紛れて殺してやろうかしら」 

 

 

 どうやら既に市街の方に先遣隊が出ているようだ。

 それにテーブルの中央のモニターには世界地図の各地が赤で表示されており広がり続けている。

 

 世界で感染が拡大しているのだろう。

 これほどの情報を集められるコイツ等は間違いなくただの組織ではない。

 

 

「報告します。先遣隊は無事隊長と合流、ランデブーポイントを確保し待機するそうです。なお、生存者を移送する為、移送ヘリの要請がきています」

「それは隊長からの指示ですか?」

「はい」 

「わかりました。隊長の命令は絶対です。すぐにヘリの準備に取り掛かりなさい」

「了解しました」 

 

 

 市街地の方で動きがあったようだ。

 人の動きが慌ただしくなる。

 

 

(そろそろ、潮時ね)

 

 

 トップが市街地に入っており、生存者を移送するためにヘリの要請を行う。

 空港を制圧しておきながら、人道的な行為をする。

 

 まったくもって目的が分からない。

 来た道を引き返し、外を確認してから女子トイレの通気口から床に着地する。

 

 女子トイレから出ると、無数の銃口が私を出迎えた。

 

 

(クソッ!)  

 

 

 内心、悪態を突きながら両手を上げてひざまずく。

 目の前には先ほどまで本部にいたボブカットの女がいた。

 

 

「ただでさえ時間が限られているのに、面倒なことを……そんなに死にたいんですか?」

 

 

 ホールに集められている避難民にも銃口が向けられる。

 嫌な汗が背中を滴り落ちる。

 

 

「本当なら全員を処理して、これ以上面倒を起こさないようにするんですが……あの方があなた達を殺さないようにとおっしゃったので、今回は見逃しましょう」

 

 

 向けられていた銃口が下げられ、元の配置に戻っていく。

 危機は一旦過ぎ去ったようだ。

 周りから非難の視線が向けられるがそれを気にすることなく田島と合流する。

 

 

「何してんだよ。もう少しで俺たちは、全員仲良く蜂の巣になるところだったぜ」

「そうならなくて良かったわ。あの女、私に気付いた上で泳がせたのね……」

 

 

 避難民を移送するといっていたが、その中に友人もいるかもしれない。

 昔からどこか抜けているところはあったが、ここぞという時は頼りになる友人。

 

 隠し持っていた携帯を取り出して友人からの連絡がないかどうか確認する。

 

 

(着信は……ないわね。生きているんなら連絡ぐらいしなさいよね、静香)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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