学園黙示録~とんでもない世界に迷い込んだんですけど~   作:富士の生存者

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第2話 『とんでもない第一印象』

 小室SIDE

 

 

 屋上に着いた僕たちは町を見て言葉を失った。

 町の至るところで黒煙が立ち上り、サイレンが鳴り響いている。さらにそれに混じって銃声のような音まで聞こえる。

 いったい何が起きてるんだ!

 

 自衛隊のヘリが頭上を通過していくが僕たちを助けようとはしてくれなかった。

 

 屋上に続く階段の扉は鍵が壊れており塞ぐことはできない。

 

 僕たちはすぐに展望台に続く階段に走る。なぜなら別の階段から大勢の血まみれの生徒が出てくるからだ。

 

 永に肩を貸しながら階段を上る。

 もうすぐそこまであいつらが来ている。  

 

 天文台に通じる階段をようやく上りきると銃口を向けられていた。

 銃口を向けているのは、軍で使うような迷彩服を着た人だ。

 鉄砲のことは、詳しくは知らないが人を容易く殺すことができるぐらいは知っている。しかも、その銃口が僕と永を向いており、心臓の鼓動が更に早くなる。

 

 相手は強盗がよくつける目出し帽を被っており表情はわからないがその鋭い視線が突き刺さる。

 一歩も動けない。隣の永も同じように体が硬直している。

 

 その硬直が突如、麗の悲鳴で終わる。

 

 

「きゃぁぁぁ! やめて!!」

「麗!」

 

 

 とっさに麗の方に向かおうとするが、それを遮るように先ほどまで僕たちに銃口を向けていた人物が遮る。

 

 

「どいてろ」

 

 

 その人は、麗に襲い掛かろうとする男子生徒に銃を向けて撃った。

 『バスッ!』といった音と共に男子生徒の頭から血しぶきが舞う。

 

 一瞬の事だった。

 脳味噌をまき散らした男子生徒は階段を転げ落ちて他の血だらけの生徒を巻き込んでいった。

 

 麗が謎の人物に連れられて階段を上がりきる。

 

 

「そこの君、部屋にテーブルがあるから急いで持ってきてくれバリケードを作る」

「…はいッ!」

 

 

 一瞬、何を言われたかわからなかったが僕は急いで天文台へと駆け込んでいき長机を運び出す。机でバリケードを作っている間は、迷彩服を着た人が奴らに向かって銃を撃って近づけさせないようにしてくれた。ようやくバリケードを作り終えたことにより少しの間休むことができる。

 

 僕は思わずへたりこんでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 主人公SIDE

 

 

 

 

 さて何から聞き出そうか……。

 

 

「あの…さっきはありがとうございました。助けてくれて」

「…いいや、気にするな」

 

 

 さっき助けた少女がお礼を言ってきた。

 なんていい子なんだ。

 最近の日本人は『すみません』はよく聞くが、『ありがとう』はあまり聞かない。

 そんな子から尋問しようなんてさっきまでの俺はバカだった。

 

 

「あの、あなたは自衛隊の方なんですか?」

 

 

 腕を怪我したイケメン君が質問してくる。

 

 

「いや、俺は自衛隊ではない」

「そうですか…」

 

 

 自衛隊ではないよ。ごめんね期待させちゃって。それはそうと君、大丈夫?

 顔色真っ青だよ。

 

 確実に感染しているよね。

 

 

「ガフッ! ゲホッ! ガハッ!」

「永! どうしたの! 孝、永が!!」

「なんでだよ、ちょっと噛まれただけだろ。なんでこんなに酷く…」

 

 

 思っているそばから、吐血してるよ。

 自動小銃の銃口を向けようとすると女子生徒が射線に入り込む。

 

 

「やめてください、永は感染してません! 永は奴らになんかならないっ」

 

 

 彼女と吐血している彼は恋人同士の様だ。

 おのれ彼女もちとは許すまじ。

 リア充は、俺が排除する。

 

 

「ぐふっ! よせ麗、映画と同じだ。噛まれただけで駄目なんだ」

「永!? でもっ!」

「僕は人間のまま死にたい。奴らになんかなりたくない! ガフッ! ゲホッ! ガハッ!」 

「永、しっかりして!」

「お願いです僕を撃ってください。みんなに襲い掛かる前に…」

 

 

 リア充……じゃなくて感染した少年の目には覚悟があった。しかし、少年を撃ち殺せば彼女から俺刺されるかもしれない。

 

 出来れば俺を巻き込まないでくれ。彼女、ヤンデレ化しちゃうよ…。

 

 仕方ない、ここは年上として悪役になろうか。

 

 

「…わかった。そこをどいてくれ」

「っ!? 嫌ですっ! どきません!」

「麗ッ! 退くんだ。永が決めたことだ」

「孝は、永が死んでもいいの!?」

「いいわけないだろ!!」

 

 

 早く、しなきゃ彼もゾンビになっちゃうよ。

 ここは強引にいくべきか。

 

 俺は女子生徒を無理やり押しのけて銃口を向ける。

 

 

「2人を…頼みます」

「わかった」

 

 

 彼との短いやり取りを終え、躊躇なく引き金を引いた。

 弾丸は少年の頭を撃ち抜く。

 

 

「いやぁぁぁぁ!」  

 

 

 天文台に少女の悲鳴と薬莢が転がる音が上がる。少女は撃ち殺した少年に縋り付き涙を流す。もう一人の男子生徒は少女を落ち着かせようと声をかける。彼女のことは彼に任せよう。

 

 はぁ…嫌われるのはわかっているが、やっぱり女の子に嫌われるのは答えるなぁ。

 豆腐メンタルがぁぁぁ。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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