学園黙示録~とんでもない世界に迷い込んだんですけど~   作:富士の生存者

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この作品を読んでいただきありがとうございます。
鞠川先生SIDEを入れるか迷いましたが、結局は入れることにしました。
追々、見直していきます。





第4話 『とんでもないツインテール少女と木刀少女』

 主人公SIDE

 

 

 お食事中の皆様、ご注意ください。

 

 校内を完全武装の不審者が通ります。

 

 

 手榴弾で階段のゾンビを駆除した俺は生徒2人を連れて職員室を目指し、移動しながら感染者の頭を自動小銃で吹き飛ばしている。

 移動しながらの射撃はどうしても命中精度が落ちてしまうが俺のこのチートボディーがあれば難なくできる。

 

 恐るべき俺のチートボディー。

 

 

 後ろからは男子生徒と女子生徒が続く。

 

 しかし、どこも感染した生徒だらけだ。さらにいたるところに血がついているので滑りやすいしむせかえる匂いがする。|目出し帽(バラクラバ)越しでも感じられるほど強烈だ。

 

  

「きゃあぁぁぁぁ!」

 

 

 女性の悲鳴が廊下に響き渡る。

 

 

「職員室の方からです」

「急ごう」

 

 

 そういえば俺、職員室の場所知らないや。

 一応、方向は合っているようだ。

 

 

「そこの角を右に曲がって真っ直ぐ進めば職員室です」

 

 

 職員室の入り口に着くとそこではツインテールの少女が教師のゾンビに追い詰められていた。

 もう一人の男子生徒はくぎ打ち機を構え、ツインテールの女性生徒に迫る教師ゾンビに釘を撃とうとするがどうやら釘が切れてしまったようだ。

 

 ツインテールの女子生徒が床の袋を踏み尻餅を付く。

 そろそろ、不味いな。

 

 自動小銃を構えるが、何かがゾンビ教師を超えてこっちに飛んでくる。

 俺に飛来してきた物は、トロフィーだ。

 

 どうやら女子生徒が投げているようだ。

 

 

「くるなぁぁ!」

 

 

 ちょ!?

 お願いしっかり相手を狙って投げてくれ。

 俺に飛んできてるから!

 

 盾形のトロフィーの角が頭を直撃する。

 

 誰のかって?

 

 俺のだよ。

 でもヘッチャラさなんたってヘルメット被ってるから!

 

 次々と飛来するトロフィー。

 ヘルメットは『頭』を守ってくれる道具であって『顔面』は防衛外だ。

 

 目がぁぁぁぁぁ!

 顔面は無防備だからやめてぇぇぇぇ!

 

 

 自動小銃を下ろして山刀(マチェット)を抜き放つ。

 これ以上、平凡な顔からランクダウンした顔になりたくはない。

 何事も平凡が一番である。

 

 

 教師ゾンビの首めがけ振りかぶって、斬ったぁぁぁぁ!

 

 

 ゾンビ教師の頭部が壁に飛び、最後に投げられたトロフィーが俺の鼻を直撃。胴体は女子生徒の方に倒れる。

 

 

「いやぁぁぁぁ!!」

「(鼻があぁぁぁぁぁ!!)」

 

 

 女子生徒は首なし教師に悲鳴を上げる。俺は鼻の痛みで悲鳴を上げそうになるが我慢する。女子生徒の悲鳴でゾンビが集まってきてしまった。

 

 仕方がない、片付けよう。

 

 

「そっちの2体は、君達に任せた。こっちは俺が片づける」

 

 

 前言撤回!

 本当にすみません。押し付けます。

 

 

「はいッ!」

「わかりましたッ!」 

 

 

 やる気に満ち溢れた返事をもらったが、心の中では『あんたが、片付けろよ。持ってるモノ()はただの飾りか』なんて思われていることだろう。

 

 向こうに2体押し付けたはいいが…あれ?

 こっちのゾンビ増えてね?

 さっきまで1体だけでしたよね。

 

 それが、総数にして5体。

 さっそく押し付けた罰が下ったよ。

 

 

 諦めて近くにいた1体を片付けていると木刀(ぼくとう)を持った女子生徒ともう1人は女性教師だろうか、俺たちとは反対の廊下から現れる。

 

 

 木刀を持っている時点で見るからに剣士の女子生徒が繰り出す一撃はゾンビを無力化していく。

 女子生徒の木刀さばきは凄まじいの一言だ。しかも、表情がヤバい。一瞬であるがゾンビを葬る顔がまさに快感のような表情になっている。他の人間では気が付くのは難しいだろう。 

 

 中学、高校時代伊達に趣味で人間観察して過ごしていた訳ではない。

 

 言っとくがボッチではなかったぞ!

 本当に!

 

 

 ひとまず職員室で一時的な休息と自己紹介をすることになった。

 

 

 自己紹介と聞いて俺は今後の事が頭から消え去り、自己紹介の内容で埋め尽くされることになった。

 自己紹介、苦手なんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 高城沙耶SIDE

 

 

 本当に私って不幸!

 混乱に陥る前に教室を抜け出し、軍事オタクである男子生徒『平野コータ』と共に技術室で武器を手に入れたが今まさに窮地に追い込まれている。

 

 目の前には血を流す男性教師。

 見ただけでその男性教師が追っている傷は致命傷だということはわかる。

 

 人が人を食ってる。

 冗談じゃない!!

 

 

「くるなぁぁぁぁ!!」

 

 

 私は、明確な脅威を必死に遠ざけようとする。

 背後にあるトロフィーなどをひたすら投げる。

 

 焦ってしまいうまく当たらない。当たっても男性教師はこちらに近づいてくる。

 このまま私も食べられてしまうのだろうか。

 

 

 だれか助けて・・・・。

 

 男性教師の体が私に伸し掛かってくる。

 悲鳴を上げて体を押しのけようとするが先ほどと何かが違う。

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!」

 

 

 教師の体には『頭』がなかった。

 その時、なぜ頭がないのか理解ができなかったが視線を上げると大きな刃物を振りかぶった人物がいつの間にか私の前に立っていた。その人物の服装は、迷彩服を着ており装備している物も一般人とはかけ離れたものだ。

 体格からして男性であることはわかるが、どうしてこの場にいるのかわからない。

 

 

「そっちの2体は君達に任せた。こっちは俺が片づける」

「はいッ!」

「わかりましたッ!」 

 

 

 私を助けてくれた男性は誰かに指示を出し、集まってきた血だらけの生徒の方に向かう。指示を出したのは彼の連れだろう声に聞き覚えがあったが彼から目を離すことはできなかった。

 彼の姿には、危ういところはなく的確に近づいてくる血だらけの生徒の頭に刃物を突き入れ無力化していく。

 

 その場に3年の毒島冴子、保健医の鞠川静香先生が合流しひとまず職員室で休息と簡単な自己紹介が行われることになった。

 

 ようやく気持ちが落ち着いていろいろと考えることができるようになった。

 私を助けてくれた彼は恐らく軍関係者だろう。そうでなければ平和である日本で銃を所持できる訳はない。ならばこの異常事態についてなんらかの情報を持っているはず。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 毒島冴子SIDE

 

 

 

 

 剣道場にいた私は教室棟の混乱には巻き込まれずにすんだ。さらに愛用の木刀も手元にある。

 学校のいたるところで人が人を喰らうことが行われている。

 血まみれの姿でこちらに手を突き出してくる生徒の姿はどう見ても無事とは言えない。

 

 首の肉を大きくそがれ普通なら叫び出していても可笑しくない怪我を負っている。

 

 もはや人ではないのだろう。

 さらに力が恐ろしく強い。

 

 1体程度なら余裕をもって倒せるが、囲まれでもすれば勝機はないだろう。

 

 生存者を探していくなかで保健室で保険医の鞠川校医を助けることができた。しかし、鞠川校医を守って戦った男子生徒―――石井君は間に合わなかった。

 噛まれた彼は、私が人である内にとどめをさした。

 

 普通なら錯乱しても可笑しくないが、彼は最後に鞠川校医を守れたことで満足したのだろう。取り乱すことなくむしろ堂々とし満足した笑顔と共にその生涯を閉じた。

 

 保健室を出た私と鞠川校医は職員室に血だらけの生徒を避けながら進んだ。鞠川校医の車の鍵が職員室にあるのだ。

 

 

「職員室とは、全く面倒な」

「仕方ないでしょ、車の鍵があるんだから」

 

 

 職員室の近くまで来ると廊下に女子の悲鳴が轟く。

 どうやらまだ、生存者がいたようだ。

 

 職員室前に着くとそこには山刀を生徒の頭に叩き込む迷彩服の人間がいた。 

 私も身近にいた男子生徒の頭部に木刀を叩き込む。

 

 その時、迷彩服の人物から視線を感じた。

 ふと目を向けると視線が合った。

 鈍色(ガンメタル)のような瞳が私を捉える。目をただ見られた、というだけで感じるこの重圧。私がどれだけの人間であるかを誤魔化しようもなく見透かされているかのような感じがした……。

 その時の私には、それがどうしてなのかとても怖かった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 鞠川静香SIDE

 

 

 

 

 毒島さんに助けてもらったのはよかった。でもブランド物のスカートを破られたのは痛い。

 確かに走りにくい格好をしているけど、ブランド物も命も両方大事なのよ。

 

 

 職員室に着くと鉄砲を持った兵隊さんみたいな人がいたのは驚いた。

 

 最初は顔を隠して怖くてあまり話しかけたり近づくことができなかったが、彼は他の男性と違った。

 私は、どうしても男性が苦手だ。理由は、この身体にある。

 

 胸が異様に大きいのだ。

 親友の女の子にも言われるし自分でもそのことは自覚している。私を見る男性の目が胸に集中するのも理解はできるが、納得はできない。

 

 しかし、彼の視線が胸に集中することはなかった。彼は、私の目を見ていた。

 ただ、真っ直ぐに。

 

 彼なら信用できる。

 いくらお気楽そうな私でも誰かを簡単には信じたりしない。だけど、そんな私でも信用させる何かを彼は持っている。そう思えてしまう。

 

 はっきりとはわからない。

 

 女の勘、なのかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 




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