ダンジョンに竜の騎士が現れるのは間違っているだろうか?   作:ダイ大好き

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ベルの話から、自分が異世界へと飛ばされたことを悟るダイ。
元の世界へ戻るため、ベルと共に迷宮都市(オラリオ)へ向かうのだった


第2話 迷宮都市へ

「ここは、どこなのかな?」

「えっ…?」

 

あまりに予想外の質問に少年はどう返事をしていいのかわからず硬直してしまう。

そんな姿を見たダイは慌てて補足説明をする。

 

「ご、ごめん、ちょっと森の中で迷っちゃってね、やっと外に出られたところだったんだ」

「あ、そうだったんですか」

 

若干の罪悪感を覚えつつ、適当に誤魔化すダイの言葉を素直に信じる少年。

 

「えーっと、ここは迷宮都市(オラリオ)に続く街道です、半日ほど歩くと着くと思いますよ」

迷宮都市(オラリオ)…?」

 

聞き覚えのない街の名前に首を傾げるダイ。

 

「ごめん、知らない街の名前だ…それって小さな街なのかな?」

「えぇ!?」

 

知らないと断言するダイの言葉に、少年は些かオーバーなほど驚きを露わにした。

 

「小さいなんてとんでもない、世界の中心と言われるほどの都市ですよ!?」

「世界の中心?」

 

少年の言葉に、今度はダイが驚愕する番だった。

以前に新しい装備を買いに行ったベンガーナ王国が軍事力、経済力等で世界トップクラスと、レオナから聞いたことがある。

迷宮都市(オラリオ)など名前も聞いたことがない街が世界の中心とはとても信じられなかった。

 

「本当に知らないんですか?地下に広大なダンジョンを保有し、世界中の冒険者達が集まる都市ですよ?」

「広大なダンジョン?それってカール王国の近くにある破邪の洞窟のこと?」

「カール王国ってどこですか…?」

「え?」

「え?」

 

話が咬み合わない、ここにきてダイはようやく何かがおかしいと気付く。

目が覚めた時に知らない場所にいた事、聞いたことのない都市の名前に、一度滅びたとは言え有名な王国の名を知らない少年、そして見たことのない魔物に、なぜか使えないルーラ。

ここまで材料が揃えば、さすがのダイもある程度現状を察することが出来た。

 

ダイは意を決して、疑念の確信に迫ることを少年に尋ねる。

 

「ねぇ、ちょっと質問いいかな?」

「はい、なんでしょう?」

「魔王ハドラーや、大魔王バーンって知ってる?」

「え、魔王ハドラーと大魔王バーンですか?うーんと、色んな英雄譚は読みましたけどそんな名前の魔王は聞いたことないです」

「……そっか」

 

確定だった、昔、全世界を恐怖に陥れたハドラーと、先の決戦前に世界を滅ぼしかけたバーンの名前はどんな子供でも知っているはずのことだ。

少なくともダイのいた世界において、魔王と言われて物語の登場人物だと真っ先に考える者はいないだろう。

つまり、ここは自分のいた世界とは別の世界…異世界なのだと、ようやくダイは気付いた。

 

(マズイぞ…どうして違う世界にきちゃったりしたんだ、黒の核晶(コア)が爆発した時に、何が起きたんだ!?)

 

あまりに想定外の事態に混乱するダイ、しかしそんなダイを余所に少年は好奇心に満ちた目で問いかけてきた。

 

「魔王ハドラーや大魔王バーンってどんな物語に出てくるんですか、よければ教えて貰えませんか!?」

「え…っと」

「僕、昔から英雄が出てくる物語がすごく好きなんです、まだ知らない物語があったらぜひ読んでみたくって!」

 

ルベライトの瞳をキラキラと輝かせて、質問してくる少年に苦笑するダイ。

 

(物語じゃなくて、オレの世界で本当に存在した魔王だって言ったらどんな反応をするかな?)

 

ダイは考える、現状自分はこの世界のことを何も知らない、ならば信じてもらえるか分からないが、この少年に全てを話して色々と教えてもらうのが得策ではないか、と

少年はどうみても悪人には思えないし、人を騙すようなタイプではないだろう、ならばやってみる価値はある、と判断する。

 

(あ、そういえば…)

 

そこで気付く、なんだかんだと焦っていたせいで、少年の名前も聞いていなかったことに。

 

「んっと、まだ名前を聞いてなかったよね、オレはダイっていうんだ、君は?」

「あ、すみません助けていただいたのに名前も名乗らず、僕はベル・クラネルって言います。」

「よろしくベル、それでね、さっきの話だけど…」

 

慌てて佇まいを正し、自己紹介をする少年=ベルに、ダイは自分が異世界の人間であることを説明する。

大魔王バーンとの死闘、そして黒の核晶(コア)による爆発に巻き込まれ、なぜかこの世界で目を覚ましたこと。

 

全てを語り終えたダイはベルを見る。

彼は俯いていて表情が伺えないが、肩が震えているのはわかった。

やっぱり信じてもらえないか…と落胆するダイ。

 

「ごめんね、こんな話とても信j」

「すごいですダイさん、いえダイ様!」

「ダ、ダイさまぁ!?」

 

突然ラーハルトのように様付で呼ばれたダイは目を白黒させる。

 

「ダイ様は異世界の勇者で、世界を救った英雄なんですね!!うわぁ感激だ、本物の英雄に出会えるなんて!!」

「英雄って…」

 

確かにダイは自分の世界では勇者として知られていたし、世界を救った英雄であることは間違いないだろう。

だが面と向かってこうまで感激されてしまうとなんだか照れくさい。

そして、こんな荒唐無稽な話をあっさりと信じてしまうベルの素直さに、少々危機感を覚えてしまうダイだった。

 

「とりあえずダイ様って呼び方はやめてよ、柄じゃないから呼び捨てでいいよ」

「とんでもない、英雄様を呼び捨てなんてできるはずありませんよ!?」

「そ、そっか…じゃせめてダイさんで…」

「……わかりました、ダイ様…いえダイさんがそう言うのでしたら…」

 

若干むず痒さは残るが様付で呼ばれるよりは大分マシだと諦めるダイ。

 

「それでね、オレはこの元の世界に戻る方法を探したいんだけど、まだこの世界のことを何も知らないんだ、このままじゃ探すにも当てがなさすぎて…ちょっとこの世界について教えてもらえないかな?」

「なるほど、わかりました、何でも聞いてください!!」

 

憧れていた英雄の役に立てることが嬉しいのだろう、ベルはノリノリでこの世界について教えてくれる。

通貨単位等の基本的なことから、神が下界へ降りてきてファミリアといった組織を作っていることなど、ダイが心底驚くようなこともあった。

 

「凄いね、神が地上に来ているなんて…」

「そうですね、でも神様は地上に居るときは神の力(アルカナム)を使えませんから、能力的にはほとんど僕達人間と変わらないんですよ。」

「そうなんだ…」

 

ダイにとって神々といえば、あの大魔王バーンと同格の超越存在(デウスデア)だ。

天地を揺るがす圧倒的な力をもつ存在が地上に降りている。

神の力(アルカナム)を封印しているとは言え、バーンの恐ろしさを体感した身としては緊張してしまうのは仕方なかった。

 

「そうだ、ダイさんは元の世界に戻る方法を探すんですよね?」

「うん、方法は検討もつかないけれど、仲間が心配しているだろうし、このままって訳にはいかないからね。」

「それなら、僕と一緒に迷宮都市(オラリオ)へ向かいませんか?」

迷宮都市(オラリオ)か…」

 

ベルの提案にしばし考えこむダイ。

先ほどの話では迷宮都市(オラリオ)とはこの世界での中心都市、ダンジョンの魔物から採取される魔石と呼ばれる結晶で様々な技術を生み出しているという…

ならばもしかしたら異世界へと渡る手段があるかもしれない、少なくとも現状最も可能性が高いのは確かだろう。

 

「そうだね、オレも一緒に迷宮都市(オラリオ)へ向かうよ、よろしくベル!」

「はい、よろしくお願いします!」

 

そう考えたダイはベルの提案を承諾したのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「実は僕、迷宮都市(オラリオ)で冒険者になるつもりだったんです。」

「冒険者、君が?」

 

二人で迷宮都市(オラリオ)へ向かう道すがら、ベルは迷宮都市(オラリオ)へ向かう理由を語った。

彼は田舎で祖父と二人暮らしをしていたところ、1年前に事故で祖父が亡くなってしまった為、これを期に全財産を持って飛び出してきたらしい。

ダイから見たベルは、純朴そうで、いかにも頼りなさそうな普通の少年であり、どうみても冒険者に向いているようには見えなかったが、思い切ったことをするもんだと感心した。

もっとも外見だけならダイのほうがよほど頼りなさそうではあるが。

 

「はい、冒険者になってダンジョンに潜り、女の子と運命的な出会いをする、それが僕の夢なんです!」

「女の子との出会いぃ!?」

 

あんまりといえばあんまりな動機に開いた口が塞がらないダイ。

ダンジョンで出会った女の子といえば、魔の森で出会ったマァムだなぁ、運命的ではあったけど、そんな色気のある話じゃなかったな、などと益体もないことを考える。

 

「はい!そしていずれはハーレムを作りたいです!」

「ハ、ハーレム?」

「ハーレムは男の夢だっておじいちゃんが言ってました!」

「…」

 

純朴そうな顔をしてる割に、とんでもない野望をもってるんだな、と驚くダイだが、なんとなく諸悪の根源はベルの言う【おじいちゃん】なんだろう、と察する。

孫になんて教育(せんのう)を施すんだ、と呆れてしまった。

 

「そんな理由でダンジョンに潜るのかい?危険な場所なんだろ?」

「立派な理由ですよ!物語に出てくる英雄達も、女の子との運命的な出会いをするじゃないですか、だから出会いっていうのはやっぱり偉大なものなんですよ!」

 

熱弁を振るうベルを生暖かい目で見る。

そういえば初めて竜の紋章の力に目覚めたのもレオナと出会った時だったな、と考えるとベルの言うこともなんだか納得してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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街道を進むこと半日、ようやく二人は迷宮都市(オラリオ)へと辿り着いていた

 

「着きましたよダイさん!ここが迷宮都市(オラリオ)です!なんて言って、僕も初めてなんですが」

「凄いな…」

 

ダイは感嘆の声を上げる、迷宮都市(オラリオ)の町並みは、かつて見たことがないほど大勢の人で溢れかえっていた。

中には耳やしっぽが生えている人や、妙に小柄な人たちもいる、ベルから聞いていたキャットピープル、パルゥム、ドワーフなどの亜人種なのだろう。

街の中央には、迷宮都市(オラリオ)の象徴とも言えるバベルがそびえ立っていた。

かつでベンガーナで見かけたデパートよりもはるかに高い、それこそ大魔宮(バーンパレス)にあった天魔の塔に匹敵するほどの建造物に、本当にこれを人間が作ったのか、と圧倒される。

 

「それじゃダイさん、僕達を入れてくれるファミリアを探しましょう!」

「え、う…うん…」

 

これからのことを夢見て、やる気を漲らせるベルに対して、ダイは歯切れの悪い返事をする。

実はダイは迷っていたのだ、ファミリアに入るべきかどうかを。

ベルの話を聞いた限りでは、ファミリアは一度入ると簡単には脱退出来ないらしい。

仮に元の世界に戻る方法が見つかっても、ファミリアの主神が脱退を認めなかったら厄介なことになるかもしれない。

無視して出て行くことも出来るだろうが、お世話になるであろうファミリアを無碍にするようなことは、あまりやりたくなかった。

しかしファミリアに入らなければダンジョンへ入ることもできない可能性がある、様々な方法を模索する上で、それはできるだけ避けたかった。

となれば残された道は、入団時に事情を説明して脱退の許可を得ておくしかないだろう。

入団できるファミリアがさらに減ってしまうかもしれないが、背に腹は変えられない。

 

そう方針を決めたダイは、ファミリアを探すため、ベルの後を追うのだった。




1話目から感想を頂きありがとうございます。

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