ダンジョンに竜の騎士が現れるのは間違っているだろうか? 作:ダイ大好き
「悪いな、うちは今団員募集はしてねーよ」
そういってガラの悪いヒューマンの青年は乱暴にドアを閉じる。
残されたダイとベルはため息を着いてすっかりと暗くなった夜道を歩き出した。
「案外入れてくれるファミリアは見つからないものなんだね」
「そうですね…」
ダイの呟きに肩を落として力なく答えるベル。
どこのファミリアも二人の姿を見るなり門前払い、主神への面会にも1件も漕ぎ着けられなかったのだ。
見るからに冒険者に向いていなさそうな少年二人では仕方がないのかもしれない。
「今ので何件目だっけ?」
「確か20は超えたはずです…」
20連敗、それだけ門前払いされれば身体的だけじゃなく精神的にも疲労がたまるだろう。
ダイは平然としていたが、ベルの方は疲労の影が色濃く見えていた。
それもそうだろう、夕暮れ時に
「今日はどこか泊まる場所を探して休みましょうか、あまりお金はないので安い宿か、最悪野宿になりますが…」
「うん、野宿は構わないんだけど、その前にちょっといいかな?」
「え、はい、なんですか?」
ダイはベルを連れて路地裏へ入るとベルを抱えて建物の屋根へと飛び上がった。
「な、なにをんぐぅ!?」
「しっ!静かに」
ダイはベルの口を塞ぎ、声を出さないよう注意してから開放する。
そして今しがた自分たちが曲がった角を見下ろした。
「ダイさん、突然どうしたんですか?」
「少し前くらいから、誰かがオレ達を付け回してるみたいなんだ。」
「えっ!?」
突然のダイの発言に目を丸くするベル。
ファミリアの門前払いを繰り返していた自分たちは、明らかに他の街から来たばかりの田舎者で、お金もロクに持っていないだろうことは予想できるだろう。
だというのに、つけ回すというのはどういう狙いがあるのか、ベルには予想がつかなかった。
「悪意は感じなかったから、しばらくすれば辞めるだろうと思って放置していたんだけどさ、ずっと付け回されるとは思わなかったよ、さすがに寝る場所まで尾行されるのは勘弁してほしいから、ここで一度理由を聞こうかな、と思ってね」
「なるほど…」
納得したベルは一緒になって眼下の路地裏を見下ろす。
すると、ほとんど間をおかずに、長い髪をツインテールにした一人の少女が路地裏に現れた。
ダイ達を見失ったことに気付いたのだろう、辺りをキョロキョロと見回したあと、ぐぬぬぬーと悔しそうな声を上げて俯いてしまった。
ダイはすかさず少女の背後へと飛び降り、問いかけた。
「ねぇ、どうしてオレ達の後を付けていたんだい?」
「うひょわあぁ!!」
突然背後から話しかけられた少女は、妙な叫び声を上げて飛び上がる。
ツインテールも一緒に飛び上がっているのを見て、髪も動かせるのか、凄いな…などとずれた感想をもつダイだった。
「なっ…き、君は…!いつの間に後ろに!?」
「ちょっと屋根の上に隠れてたんだよ、ずっと付けられてるのは気付いてたからさ、そろそろ理由を聞いておこうかなと思って。」
「ずっと前からバレてたのかい!?」
少女はタハー、と言いながら肩を落とした。
しかしふと疑問に思う、なぜ尾行に気付いていながらこれまで放置していたのかと。
「なんでもっと早くにこうしなかったんだい?最初から気付いてたんだろう?」
「悪意は感じなかったから、放っておけば諦めるか、それでも諦めないなら何か理由があるんだろうと思ったんだ。」
少女は目を見開く、見た目は子供なのになかなかどうして鋭い、と感心した。
「何か困っているなら、言ってもらえればもしかしたら力になれるかもしれない。」
「ほ、ほんとかい!?」
少女の、童顔だが恐ろしく整った美貌がぱぁ~っと明るくなる。
やはり自分の見る目は間違っていなかった、と確信した少女は理由を説明しようと口を開きかけたその時。
頭上から非常に情けない声が響いた。
「ダ、ダイさ~~~ん、僕も下ろしてくださいよー!」
「あ、いけね忘れてた!」
屋根の上に置き去りにされたベルが泣きそうな声で助けを呼ぶ。
ダイは慌てて飛び上がりベルを軽々背負うと、また路地裏へと降り立った。
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「ボクの名前はヘスティア、これでも神なんだぜ!」
ダイとベルが自己紹介したあと、少女=ヘスティアはそういって、身長の割にやたらと大きい胸を張った。
ベルは驚き、慌てて態度を改めていたが、ダイはほんとに普通の人間みたいなんだなーと別の意味で驚いていた。
「それで、君達に頼みたいことっていうのは、その…なんだ。」
歯切れの悪い言い方をするヘスティアに不思議そうな表情をするベル。
「その前に確認したいんだけど、君達はファミリアを探しているんだよね?」
「はい、僕は冒険者になりたいんです!」
「オレはちょっとこの街で探したい物があるんだけど、それには冒険者になるのが手っ取り早そうだから…」
「そっか、それならいいんだけど、その…」
ヘスティアは若干迷ったような素振りを見せた後、意を決した様に話しだした。
「実はボクは今、ファミリアの構成員になってくれる子を探していてね、色んな子に声をかけたんだけど断られちゃって、ホームに帰って不貞寝しようと思ってたところで君達を見かけたんだ。」
ファミリアのホーム玄関で、門前払いを食らっている少年二人を見て、ピーンときたヘスティアは二人をしばらく付けて様子を見たという。
その後もファミリアの門を叩いては門前払いされるのを確認し、ファミリアを探してるんだと確信し、いよいよ声をかけようと思っていたところでダイに声をかけられたんだと語った。
「つまり、お願いというのは…」
「そうなんだ…ねぇ二人共、良ければボクのファミリアに入ってくれないかい?」
手をもじもじさせながら上目遣いでお願いするという究極奥義を、無意識に発動するヘスティア。
それが効いたのかは不明だが、ベルは飛びつくようにヘスティアの手を握りしめ、叫ぶ。
「入ります、入らせてください!」
「ほ、ほんとかい、ほんとにボクのファミリアなんかでいいのかい!?」
「いいです、全然大丈夫です!むしろ僕みたいな奴が入っても大丈夫ですか!?」
盛り上がる二人に置いてけぼりにされるダイ。
ダイとしてはヘスティアのファミリアに入ること自体は問題はない、だが水を差すようで心苦しいが、一つ確認を取っておかなければならないことがあった。
「ごめん、ちょっといいかな?」
「なんだいダイ君!君もボクのファミリアに入ってもらえるのかい!?」
「うん、入るのはいいんだけど一つ条件があるんだ。」
「なんだい、なんでも言ってくれよ!」
「えっと、ちょっと長くなるかもしれないんだけど…」
ダイは自分が異世界からやってきたこと、そして戻る方法を探すために
方法が見つかったら帰ることを伝える。
「だから、申し訳ないけどファミリアに入るのは帰る方法が見つかるまで、そして方法が見つかった時にはファミリアを脱退させてもらいたい。」
「………」
まさかの話に沈黙するヘスティア。
異世界から来たという話はとても信じがたいし、それ以上に帰る方法など想像もつかない。
だが先ほどダイが見せたジャンプ力は
先ほどのダイの発言が、嘘かホントかわからなかったという事実に。
ダイの発言が嘘にせよホントにせよ、本来ならその話を聞いた時点でわかっているはずなのだ。
なのにヘスティアには【わからなかった】。
これは一体どういうことなのか、異世界の子供にはこの世界の神の力が通じないと考えるのが無難か、そうなると先程の話はホントということになるが…。
「あの、ヘスティア様?」
「あ、ごめんよ、ちょっと考え事を…」
思考の海に沈んでいたヘスティアはダイの呼びかけで我に帰る。
考えてもわからない、まずはダイに言うべきことを言っておこうと、ヘスティアは思考を切り替えた。
「気分を害したらごめんよ、ボクは君が異世界から来たという話を素直に信じるのは難しい、けどとりあえず信じる、その上で言っておきたい。」
「…」
「異世界へ渡る方法なんて
異世界へ渡る方法なら、もしかしたらあるのかもしれない、だが狙った世界へピンポイントに渡れる方法なんてさすがにないだろう、そう言われたダイは反論もできず口を噤む。
「それがわかった上で、諦めずに方法を探すのかい?」
ヘスティアとて意地悪で言っているのではない、それはダイにもわかっている、だがだからといって諦めるわけにはいかなかった。
「可能性が低いのはわかってる、でもオレは元の世界が好きなんだ。」
共に死闘をくぐり抜けてきた仲間たちを思い出す、ダイ達はこれまで仲間たちと何度も奇跡を起こしてきたのだ、バーンとの戦いでは絶対に回避不能だったはずの地上破滅を食い止めた、この世に『絶対』などない、ならば今回だって可能性はある、例え0%に等しいとしても諦めなければ方法は見つかる。
ダイはそう信じていた。
「オレは諦めない、必ず方法を見つけてみせる。」
「そっか…」
ダイが意思の篭った瞳でヘスティアを見つめる。
ヘスティアはその瞳を見て満足そうに答えた。
「分かった、ダイ君の条件を呑むよ、ボクも出来る限り協力するし、方法が見つかった時は脱退を許可するよ。」
「僕も協力します、ダイさんがいなくなっちゃうのは寂しいですけど、お仲間が待っているんですもんね!」
「ありがとう二人共!」
ダイは二人に頭を下げお礼を言う、これで話はまとまった。
ヘスティアは二人に
今宵、団員2名のヘスティア・ファミリアが発足されることになる。
なんだかお気に入りが100件近くになっててびっくりしています。
感想もたくさん頂いてありがたいです。
やっぱりダイの大冒険はいまだに人気あるんだなー。