ダンジョンに竜の騎士が現れるのは間違っているだろうか?   作:ダイ大好き

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ベル君の特訓回にしようと思ってたんですが、その前が長くなっちゃったので次回に回します。


第6話 帰還

すっかり日も落ち、暗くなった時間帯、ダイはようやくギルドへと戻ってきていた。

 

今朝方に冒険者登録していった少年が、ギルドの業務終了直前に、山ほど魔石を持ち帰ってきたことに、ギルドは騒然とし、換金担当者とアドバイザーであるエイナは頬を引き攣らせる。

持ち込まれた特大の魔石を見た換金担当者は、「こいついったい何を倒してきやがった?」と言うような目でダイを見たあと、無言で換金額を計算し始めた。

 

結局、ダイが持ち帰った大量の魔石は合計で50万ヴァリスを超えた。

その金額の大半は、階層主(ゴライアス)の魔石によるものだ、あれ一つで40万ヴァリスにもなったのだ。

換金額を渡されたダイは、聞いたこともないような大金に若干挙動不審になり、周りから不審な目で見られる羽目になったが。

ちなみにゴライアスの歯牙は、貴重な武器の素材だと聞き、いつか鍛冶師の知り合いが出来た時、武器を作ってもらえるよう、売らずに取っておくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

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ダイは魔石を換金した後、受付に居たエイナに呼ばれ、話があると言われた。

なんだろうと思いつつエイナの後について歩き、個別の相談室に入る。

ダイの対面に座ったエイナは複雑な表情でダイへと注意をした。

 

「ダイ君、君は今日何階層まで行ってたの?」

「えっと、確か17階層だったかな」

 

ダイの到達階層を聞いて困惑するエイナ、よくも道もわからないのにそこまで潜ったものだと思う。

 

「はぁ…ダイ君、君がいくら第1級冒険者とはいえ、ロクな準備もしないで中層に潜るなんて危ないわ」

「ごめん、ちょっと夢中になってたらいつの間にか結構深くまで行っちゃってて」

 

エイナはやれやれ、とため息をつく。通常Lv5の冒険者にアドバイザーはついていない、本来アドバイザーは新米冒険者に助言をするのが仕事なのだ、Lv5になるほどのベテラン冒険者にはまさに釈迦に説法と言える。

しかしダイは信じがたいことに、ダンジョンに入ったことがないという、そのため特例としてベルと一緒に、エイナが担当することになったのだ。

しかしダンジョン知識皆無の第1級冒険者など過去に例がないため、エイナもどう扱っていいかわからず、戸惑ってしまう。

 

駆け出しのような扱いをしても仕方がないのはわかっているが、さりとてステイタスに見合った階層へ行かせるのは、不安すぎる。

そもそもステイタスに対して装備が貧弱すぎるのだ。第1級冒険者が支給品の装備しかもっていないという状況では、絶対にステイタスに見合った階層へは行かせられない。

やはり、まずは先ほどの換金で得たであろうお金で装備を整えさせて…

 

と、ここまで考えたところでエイナはダイの装備を見て「んっ?」と首を傾げた。

今朝方、冒険者登録をした際に購入していった支給品(ブロードソード)が見当たらないのだ。

 

「ねぇダイ君?今朝買った武器はどうしたの?」

「あぁ、ごめん、それならゴライアスとかいうでっかい奴に折られちゃった」

「………」

 

軽い口調でとんでもないことを言われたエイナは、眩暈で机に突っ伏しそうになるのを辛うじて耐える。

剣1本で何の物資も持たずに17階層まで潜った上に、階層主と戦っていたとは…想像の斜め上をエンジン全開の錐もみ回転で、すっ飛んで行かれた気分だ。

しかし、無事に戻ってきたということは、武器が壊されたあと、上手く逃げられたのだろう、とホッとする。

 

「無事に逃げられてよかったわ、今後は奥に行くならちゃんと準備してからね」

「ん?まぁ他の奴よりちょっと強かったけど、なんとかね」

「そう、あともうちょっとダンジョンについて知識を…ん?」

 

おかしい、今何か言葉のニュアンスが違ったような?

今のはまるで、逃げずに戦ったかのような言い方じゃなかったか…?

恐ろしい想像をしてしまったエイナは震える声でダイへ確認を取る。

 

「ね、ねぇダイ君?ゴライアスに武器を折られたのよね?それで逃げたんじゃ?」

「え?いや、多少強かったけどあれくらいなら大丈夫さ」

「一人で倒したの?素手で?」

「うん」

 

ゴライアスが【迷宮の孤王】(モンスターレックス)であることなど露知らず、あっさりと頷くダイに、今度こそエイナの目は点、口は【△】となった。

 

 

 

 

正気に戻ったエイナは、ダンジョンには【迷宮の孤王】(モンスターレックス)という存在がいることを教え、今後、決して一人で挑んではいけないと言い聞かせた。

さらに「いい?騒ぎになるからゴライアスを素手で倒したことは同じファミリアの仲間以外、誰にも言ってはダメよ」と何度も強く言い聞かせ、最後に「今度時間があるときに、みっちり勉強会をしようね」と締めくくり、ようやくダイを解放した。

 

心なしかげっそりとした表情で帰っていくダイを見送り、エイナは考える。

Lv5がLv4にカテゴライズされるゴライアスを一人で倒す、これ自体は可能だろう。

だが素手でとなれば話は別だ。

強力な長文詠唱の魔法を並行詠唱で唱えられるのだとすれば可能なのだろうか?

だが先ほどの口ぶりでは素手の格闘戦で倒したように受け取れた。

 

(何にせよあの子にはもうちょっと、自分が周囲から注目されるということを自覚させないとダメかな…)

 

ギルドがダイのLvを公式発表すれば、どうあれ彼が注目されるのは間違いない、できるだけ余計な騒ぎにならないようにしなくては、彼もベルも危ない目に合ってしまう。

 

冒険者の無事を何より願う、ハーフエルフの美女は、まずはダイにLvに見合った知識を徹底的に叩き込もうと、再度心に決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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「ただいまー」

「おかえり、遅かったねダイ君」

「おかえりなさいダイさん」

 

ホームへ帰宅したダイを、夕食の片付けをしていたベルと、ソファーで本を読んでいたヘスティアが、顔を上げてどこかホッとした表情で出迎えた。

しかし、すぐに一転して、若干拗ねた表情になったヘスティアは、ダイに詰め寄る。

 

「まったく初日からどこまで行ってたんだい、ベル君はずっと前に戻ってきてたっていうのに」

「ごめんよ、ちょっと夢中になっちゃったんだ」

「まぁ君は強いし、モンスターに関しては、それほど心配はしていなかったけど、迷子にでもなったら大変だろう」

「子供じゃないんだから…」

「いや子供じゃないか、どうみても」

 

なんだかんだと内心では結構心配していたヘスティアは、それからしばらく、ダイに小言を言い続けた。

傍で見ていたベルは、少年が幼女に怒られて小さくなっている姿をみて、どこかオママゴトみたいだなーと本人たちに聞かれたら激怒されるようなことを考えていた。

 

「まぁまぁ神様、無事に帰ってきたんですからいいじゃないですか」

「むぅ、ベル君がそう言うなら、これくらいで許してあげよう」

 

そろそろダイが可哀想だと思ったベルが仲裁に入る、お説教から逃れたダイはぐったりとソファーに座り込んだ。

エイナとヘスティアの説教コンボで、ダイのライフはとっくに0になっていた。

 

「ありがとうベル、エイナさんにも怒られたし、もうヘトヘトだよ、ダンジョン潜ってる時より疲れた」

「あはははは、晩ご飯温めてきましたよ、どうぞ」

 

ベルは、先ほど作っておいた晩ご飯を温めなおし、テーブルに並べ始める。

食欲を刺激するシチューの匂いが鼻孔をくすぐり、ダイのお腹がぐぅ~と鳴り始める。

お昼ごはんも食べずにダンジョンへ潜っていた為、お腹がペコペコだったのだ。

 

ベルにお礼を言ってパンとシチューを物凄い勢いで食べ始めるダイ。

ヘスティアはその光景を温かい目で見つめていた。

元の世界で、Lv5に達するほどの経験をこの歳でしてきたダイは、普段からベルよりもよほど大人びているのだが、パンとシチューを夢中で食べる、今の姿だけは歳相応に見えたのだ。

 

 

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまです」

 

食べ終えた食器をベルが台所へ持っていく。

片付けくらい自分でやると言うダイだが、ベルは「今日は疲れてるでしょうからゆっくりしてください」と言って断った。

手持ち無沙汰になったダイは、何をしようかと周りを見回した時、自分が使っていたバックパックを見て、換金してきたお金をヘスティアに渡していないことを思い出した。

 

「そうだヘスティア様、これが今日ダンジョンで稼いできたお金だよ」

 

バックパックに仕舞っていた、金貨の詰まった袋を取り出してドスン、とテーブルへ乗せる。

その予想外の大きさと重量に、ヘスティアは目を見開く。

 

「なんだいこの量は…一体いくら入ってるんだ?」

「えっと、確か50万ちょっとだったかな?正確には忘れたけど、それくらい」

「「50万!?」」

 

ありえないような金額に、ヘスティアとベルが同時に叫ぶ。

ヘスティアは慌てて袋の中身を確認するが、びっしりと詰まった金貨を見て、瞠目し息を呑んだ。

駆け寄ってきたベルも、袋の中を除いて言葉を失う。

 

(僕なんて1500ヴァリスしか稼げなかったのに、ダイさんは1日で50万…)

 

冒険者になって1日目、Lv1の初期ステイタスである自分と、Lv5のダイを比較するのが烏滸がましいのはわかっている、わかっているがさすがにこの差はショックだった。

ゴブリンを倒せたーなどとはしゃいでいた自分が恥ずかしくなる。

 

「ベル君、君はダイ君と違ってまだ恩恵を得たばかりだ、ショックなのはわかるけど、それで無茶はしないでくれ、せっかく出来た家族に何かあったりしたら、ボクはしばらく立ち直れないよ?」

 

ベルの様子をみて、ヘスティアは内心を悟ったのだろう、フォローすると共にダイに追いつこうと無茶しないように釘を刺す。

ヘスティアの言葉に、ハッとして顔を上げると、ヘスティアとダイが心配そうな顔でベルを見つめていた。

 

「す、すみません、僕はそんな自分とダイさんと比べるなんて…」

「焦ることはないんだ、ベル君はベル君のペースで強くなっていけばいい、強くなろうと無茶して怪我をされるよりも、無事に帰ってきてくれるほうが僕はずっと嬉しい」

 

聖母のような優しい笑みを浮かべるヘスティアの言葉に、ベルは知らぬ間に握りしめていた拳の力を抜く。

無茶をしてこの(ひと)を悲しませるわけにはいかない、そう心に誓う。

 

「ダイさん、お願いがあります」

「なに?」

 

背筋を伸ばしてダイの方を向いたベルは、そのまま勢い良く頭を下げた。

 

「今朝戦い方を教えてくれるって言いましたよね?明日からお願いしてもいいでしょうか?」

「うん、いいよ」

「え、そんなにあっさり!?」

 

あまりにもあっさりと承諾されたベルは、拍子抜けした表情でダイを見つめる。

 

「最初に戦い方を教えるって言ったのはオレだしね、それが明日からでも全然構わないさ」

「ありがとうございます、よろしくお願いします!」

 

ダイの言葉に、再度深く頭を下げるベル。

 

「そんなに早く強くなりたいの?」

「はい!」

「そっか、わかった」

 

ダイのつぶやきになぜかベルの全身を悪寒が走った。

なぜか、ダンジョンに潜る以上の身の危険を感じてしまうベルだが、強くなりたいという思いは本物で、後には引けなかった。

翌日より、ベルにダイ流、特別(スペシャル)ハードコースの特訓メニューが追加されることになる。




アイズのシゴキにも耐えるベル君なら、スペシャルハードコースもきっと耐えれるはず

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