ダンジョンに竜の騎士が現れるのは間違っているだろうか?   作:ダイ大好き

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時系列的にはようやく1巻冒頭に入ったといったところです


第8話 サポーター

その日、ギルドの掲示板にて、ランクアップした冒険者の一覧が貼りだされていた。

大勢の冒険者がその多数の記事を見て各ファミリアの戦力などを確認している中、1枚の記事に多くの冒険者や暇神(ひまじん)の注目が集まっていた。

 

「無名のLv5冒険者だと?」

「こんな小さいのにLv5なんてすごーい、小人族(パルゥム)じゃないのよね?」

「ヘスティアファミリア?どこだそれ」

「ほう…私好みの子だな…」

「ダイ……?聞いたことのない名前だぜ」

「噂じゃ迷宮都市(オラリオ)の外から来たって話だが」

「外でLv5になんてなれるのかよ?」

「無理だろ、戦争好きの王国(ラキア)だってLv3がせいぜいなんだぜ」

「でも実際にギルドが公式発表してる以上は真実なんだろ?」

「ぐげげげ、可愛い顔してるじゃないか、食っちまいたくなるね」

 

 

訝しげに見る者、素直に感嘆する者、下心を持つ者。

様々な思惑が交差し、拡散していく。

突如現れたLv5の冒険者の噂は、瞬く間に迷宮都市(オラリオ)全域へと広まっていった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

――数日後――

 

(なんだろう、今日は妙に視線を感じるような…)

 

ダイが迷宮都市(オラリオ)に来てから半月ほどの時間が経っていた。

早朝、ベルに日課の剣の稽古をつけたあと、朝食を取り、元の世界へ戻るための方法を探しに街へと出かけたのだが、すれ違う冒険者らしき人や、神と思しき人が妙にダイへ視線を送ってくるのだ。

好奇、嫉妬、憤怒、疑惑、なぜかたまに背筋がゾワッとするようなねちっこいモノも含め、様々な視線を感じていた。

以前、ベンガーナの街で超竜軍団に襲われた際、助けた街の人に向けられた化け物を見るかのような視線とは違うが、決して気持ちのいいものではない。

 

「ねぇねぇ君ぃ~、ダイ君だよね?巷で噂になってるLv5の冒険者っていう」

「え?うん、そうだけど…噂?」

 

視線を無視し、腹ごなしをしようと、じゃが丸君の屋台へ向かっている途中、軽薄そうな一柱の神が声をかけてくる。

噂とは何のことなのか、と問いかけようとすると、突如周囲から『うわ、あの野郎いきやがったな!』『ちくしょう先こされたぜ!』と言った叫び声があがる。

同時に、わらわらとどこからともなく現れた神々が一斉にダイへと襲いかかってきた。

 

「ほんとにLv5なのかい?」

「ヘスティアファミリアとか弱小なとこじゃなくてうちにこない?」

「ちょっとステイタス見せてよ、ちょっとだけ、先っぽだけだから!」

「坊やみたいな子、すっごく好み、ちょっと私のホームこない?可愛がってあげる」

「ちょ、なんだなんだ!?」

 

あっという間に集まってきた神に囲まれたダイは、わけも分からず質問攻めされる羽目になった。

最初こそ勧誘を断っていたダイだが、痺れを切らした神がダイの服を捲り、ステイタスを盗み見しようとした為、慌てて神の群れから抜け出し、全力で逃げ出した。

 

「逃げたぞ、追えー!」「あっちの路地裏にいったぞ」「さすがに速い、見逃すな!」

 

眷属の冒険者までをも引き連れてダイの追走劇が始まる。

ダイは建物の屋根へ飛び乗り、全力で駈け出した。

さすがに追いつけるほどの冒険者はいないようだが、数が数だ、知らぬ間にとんでもない人数に膨れ上がっていた。

騒ぎを嗅ぎ付けた暇神(ひまじん)までもが加わり始め、四方八方からダイを捕まえようと追手がかかる。

屋根から路地裏へ、路地裏から屋根へと縦横無尽に飛び回り、追手を翻弄する。

稀に接近してきた冒険者達は手刀の一撃で昏倒させた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

壮絶な鬼ごっこの末、約30分かけて追跡を振り切ったダイは見知らぬ路地裏に身を潜めていた。

 

「追ってきては…いないかな?」

 

角からそっと顔を出して周囲を見回すが、それらしい人影は見当たらない。

安心し、しばらくここで様子を見ようとしたダイの耳に、何かを殴ったような音と、小さな叫び声が聞こえた。

 

「―――――――!?」

 

自分が追われているという状況も忘れて、音がした方へ駈け出す。

路地裏の角を二つほど曲がった先、日の光が入り込まずジメっとした空間に、複数の冒険者らしき男と、倒れる一人の少女がいた。

状況を把握するため、手前の角に身を隠して様子を伺う。

 

「おいア~デ~?、お前が持ってる金はこの程度じゃないだろ?ちゃんと全部出してくれないと困るなぁ」

 

リーダー格らしき獣人の男が、おそらく少女から奪い取ったであろう、金貨が詰まっていると思われる布袋をチャラチャラと鳴らしながら、アーデと呼ばれた少女へ下卑た笑いを浮かべながら話しかける。

明らかに少女を見下した様子の男が、倒れた少女に近寄り小さな体を掴み上げようとしたところで、ダイは身を隠していた角から飛びだした。

 

「やめろ!」

 

ダイの一喝が男たちの動きを止める、振り向いたリーダー格の獣人は「あん?」と一瞬呆気にとられた顔をした後、愉快そうに笑いだした。

 

「おいおい、てめぇみたいなガキが騎士(ナイト)気取りか?勇気は認めるが怪我するぜ坊主」

 

ガハハハハハハッとリーダー格の犬人(シアンスロープ)に続いて取り巻きの男たちも笑い出す。

少女は助けを求めるでもなく、茫然とした様子でダイを見つめている。

 

「この女は薄汚ねぇサポーターのガキだぜ、助けたって一銭の得にもならねぇ、怪我しねぇうちにさっさと消えな」

 

右手でシッシッとジェスチャーをしてダイを追い払おうとする男だが、当然それで引き下がるダイではなかった。

 

「早くその子から離れろ!」

 

ダイの言葉に、チッと舌打ちしたリーダー格の男は、取り巻きの一人に「そいつを黙らせろ」と指示を出した。

 

「さっさと消えないお前が悪いんだぜ!」

 

指示を受けた男は、右腕を振りかぶり、ダイに殴りつける。

だが男の拳は頬にめり込むことなく、ダイの手のひらに受け止められていた。

 

「ぐっ、てめぇ…はなせ…って痛てえぇぇぇぇぇ!!ちくしょう放せ、放してくれえええ!」

 

掴まれた手を振りほどこうとする男だが、逆にダイの指が拳にめり込み、激痛のあまり情けない悲鳴を上げる。

ダイが手を放すと、男は右手を抑えて蹲った。

 

「こ、こいつただのガキじゃねぇな、冒険者か!?」

「そういえば…こいつどこかで……」

 

俄かに臨戦態勢を取る男たち、その中で取り巻きの一人が何かを思い出したように、叫び声をあげた。

 

「あ、あーー!思い出した、こいつ最近噂になってる、突然現れたLv5のガキだ!」

「なんだと、こいつが!?」

 

臨戦態勢を解き、1歩後退する男たち。

 

「やべぇぞカヌゥ、さっきの力を見る限り、Lv5ってのはマジかもしれねぇ」

 

カヌゥと呼ばれたリーダー格の犬人(シアンスロープ)は『ぐぐぐ…』と悔しげに顔を歪めた後、ダイに向かって問いかけた。

 

「お前、この女の知り合いなのか?」

「いいや、知らない子だ」

「ならなぜわざわざ助ける?屑みてぇなサポーターなんぞに恩を売ったってしかたねぇだろ」

「――――っ!」

 

その言葉を聞いた少女は、息をのんだ後、顔を歪め射殺すような視線をカヌゥに向けた、殴られ、金品を奪われたこと以上に、今の言葉は少女の琴線に触れたのだろう。

 

「大の男が数人がかりで、こんな子供からお金を巻き上げているような場面をみて、黙っていられるわけないだろう、早くそれをこの子に返すんだ」

 

ダイの言葉に、カヌゥは「ケッ、正義の味方気取りかよ」と吐き捨てて、金貨の入った布袋を少女へと放り投げ、逃げるように去っていく。

少女は、カヌゥ達の背中が見えなくなるまで睨み付けたあと、布袋を拾い、立ち上がった。

 

「危ないところを助けて頂き、ありがとうございます」

「大丈夫だった?はいこれ飲んで」

 

深々と頭を下げてお礼を言う小人族(パルゥム)の少女に、ダイはレッグホルスターに常備してあるポーションを手渡した。

少女は渡されたポーションとダイを交互に見比べた後、俯きがちに問いかける。

 

「なぜリリに親切にしてくださるのですか?リリはただのサポーターですよ?」

「サポーターってなに?あと女の子が襲われてたら助けるのが当然でしょ?」

「――――えっ?」

 

さらりとサポーターを知らないと言われ、少女は目を丸くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

リリエム・アーデルトと名乗る少女は、ダイにサポーターとは何なのかを説明してくれた。

 

「つまり、サポーターっていうのは、冒険者の代わりに荷物を運んでくれる人ってことでいい?」

「そうです、加えて言うのであれば、リリのような専業のサポーターは、落ちこぼれの冒険者として蔑まれています」

「…どうして?」

「才能がないからです、冒険者としてやっていける才能がなく、他の冒険者のお零れに預かることでしか生きていけませんから」

 

どこか作り物めいた笑顔でそう語る少女を、ダイは複雑な顔で見つめる。

そんなダイの心境を察したのか、リリは明るい声で別の話題を降ってきた。

 

「ところでダイ様は、もしかしてもしかすると、最近噂の突如現れたLv5冒険者のダイ様ですか?」

「う、うん、たぶんそのダイだと思うけど、噂って?」

 

唐突な話題転換に若干戸惑いつつも、先程も聞いた《噂》とはなんなのかを質問する。

 

「ギルドの先日、ギルドのランクアップ冒険者の発表があったのですが、その中にこれまで見たことのない冒険者が唐突にLv5として発表されました、それがダイ様です」

「あ、あー…なるほど」

 

そういえば、ギルドに登録した際、後日Lvは公式に発表されると言われた気がする。

ヘスティアにも、ギルドが公式発表したら注目されるから注意しろと言われていたことを思い出した。

先ほどの大騒ぎはそのためか、と疑問がひとつ解ける。

 

「なるほど、しかしLv5になってもサポーターのことをご存知ないとは、一体どうやってランクアップされたのでしょうか?」

「あ、いやーそれはその…ずっと遠い場所で同じ仲間と一緒に戦ってたんだ、サポーター知らなかったのは、この街に来てからは基本一人で潜ってるから…」

 

ダイの歯切れの悪い言い方に、何かあると察するリリだが、あえてそこは触れないようにした。

 

「そうだったんですかー、ダイ様、もしよろしければリリを雇って頂けませんか?サポーターがどんなものか実際に体験して頂くのが一番かと思います、先ほど助けて頂いたお礼も兼ねて、今回は無料で構いませんよ」

 

満面の営業スマイルを浮かべるリリに、ダイはしばし思案する。

リリの提案は、たった今サポーターのことを知ったダイにとっては非常にありがたい申し出に思える。

実際いつも中層で戦う時、荷物の問題で途中で帰還する羽目になるのだ。

 

「うん、それじゃお願いしようかな」

「ありがとうございます!あー、でもすみません、リリはよわっちぃので、あまり深い階層はろくに自衛もできず足手まといになってしまうのですが、よろしいでしょうか?」

 

リリが申し訳なさそうに上目遣いで謝罪をする。

ダイがLv5であるため、普段の行き先は深層域だと思っているのだろう。

 

「オレ、普段は17階層で戦ってるんだけど、それくらいなら大丈夫?」

「あ、はい…行ったことはありませんが、それくらいでしたらなんとか…ていうかLv5なのに17階層なんですか?」

 

リリが驚いたように問いかける。

本来Lv5であれば深層域に挑戦するような段階である、仮にソロだから慎重になっているとしても、17階層程度では物足りないし、ステイタスもまったく伸びないだろう。

 

「うん、オレはランクアップを目指したりしてるわけじゃない、だからそれなりのお金が稼げれば十分なんだ」

「はぁ…そうなんですか…」

 

釈然としない表情で頷くリリ、イマイチ納得はできないが、かといって深層に連れて行かれても困るため、むしろ都合がいいとポジティブに考えることにした。

 

「わかりました、それでは17階層が目標ということで、準備をしてまいります、30分後に中央広場の銅像前に集合でよろしいでしょうか?」

「うん、わかった、よろしくね」

 

そういってリリは大通りの方へ走っていった。

ダイもポーションの補充でもしておくか、とミアハファミリアの経営するアイテムショップ《青の薬舗》へ向かった。

幸い、ダイを追っていた神々も諦めたらしく、その後追い回されることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

(なんとも予想外の展開になりましたね…)

 

自分の体よりも大きなバックパックを背負い、ダイの後ろをついていくリリは先ほどの路地裏の件を思い返す。

いつもの通り、カヌゥ達には端金を渡して誤魔化そうとしたところ、今もっとも迷宮都市(オラリオ)で噂になっているダイが乱入してきたのだ。

その後、サポーターのことを知らないという彼に、サポーターの仕事と一般的な扱われ方を説明し、お礼という名目で同行させてもらうことになった。

 

名前は咄嗟に浮かんだ偽名で誤魔化したが、変身魔法(シンダー・エラ)を使っていなかった為、本来の小人族(パルゥム)の姿を見られてしまっている。

普段のように罠にハメて装備を盗むのは危険だろう。

いや、そもそもLv5の冒険者を17階層程度で罠にハメるのは無理だろうし、仮に装備を奪えたとしても、自分が帰還出来ずに死んでしまう。

 

つまり、リリは大人しくダイのサポーターを務めるしかないということだ。

それでもなぜ自分を売り込んだのかと言えば、第1級冒険者と何かしら交流をもって、伝手を作っておけば、何かの時に役立つかもしれないし、もし定期的に雇ってもらえるのであれば、下級冒険者等とは比較にならない安定した稼ぎになるだろうという打算があってのことだ。

 

(しかし、ダイ様は明らかに装備がレベルに見合っていないようですね…これでは仮に奪える状態だとしても旨味がありません)

 

ダイの使っている武装は、折れた支給品の剣の代わりに購入した10万ヴァリスのブロードソードだけだ。

防具の類も一切付けていない。装備品の質だけを見ればLv1冒険者と言われても納得するようなモノだ。

 

しかしそれでも現在地12階層、ダイは危なげなくすべての敵を一撃で瞬殺している、さすがは第1級冒険者と言える強さだ。

リリは必死に散らばるモンスターの死骸から魔石を抜き取っていく、本来は冒険者の援護などもするリリだが、ダイの圧倒的な強さの前ではそんなものは必要ない為、魔石回収のみに集中することができていた。

 

『ヴオオォォォォオオオオオオ!!!』

 

「――――今の咆哮は!?」

 

魔石を回収していたリリの耳に、聞き慣れない雄叫びが聞こえてくる、この声はまさか…と考えた直後、通路の先から牛頭人体のモンスター『ミノタウロス』が姿を現した。

本来15階層から出現するモンスターであり、12階層では出るはずのないモンスターである。

 

『ヴォオオオォ!!』

 

獲物を見つけたミノタウロスがドスンドスンと重厚な足音を立てて突進してくる、しかし、リリが身構えるよりも先に飛び出したダイが、ミノタウロスの体を袈裟斬りに両断していた。

 

「あ、ありがとうございますダイ様…」

「変だね、こいつはもう少し奥から出てくると思ってたんだけど」

「はい、本来このミノタウロスは15階層から出現するモンスターです、モンスターが階層を移動することもありますが、通常は±1程度のはずなんですが…」

 

イレギュラーな事態に困惑する2人の耳に、新たな足音が聞こえてくる。

新手のモンスターかと身構えた2人の前に、目付きの悪い狼人(ワーウルフ)の青年が慌てた様子で走ってきた。

 

「おいてめぇら、このへんにミノタウロスがこなかったか!?」

 

ダイ達に詰め寄る青年は、すぐに両断され、倒れているミノタウロスの死骸を発見し、瞠目する。

 

「こいつは、お前らがやったのか?」

「えぇ、こちらのダイ様が一撃で倒しました」

 

リリの言葉に、ダイを凝視する青年は、「へぇ」と呟くと、2人に背中を向ける。

 

「見かけによらずなかなかやるじゃねーか、んじゃオレは急ぐからよ、それじゃな!」

 

そういうと、凄まじい速さで上層への階段に向かって駆け出していった。

 

「今の人…ロキファミリアの《凶狼(ヴァナルガンド)》ベート様ですね」

 

呆然と青年の後ろ姿を見送っていたリリが、先ほどの青年について語りだす。

 

「知ってる人?」

「知り合いではありませんが、ダイ様と同じLv5の第1級冒険者として有名な方です」

「へぇ…さっきのミノタウロスは彼が原因なのかな?」

「おそらくは、何かしら関わってはいると思います」

 

上層にミノタウロスが現れたのはイレギュラーなことではあるが、先ほどの青年が追っていたのであれば問題はないだろう。

ダイは先程の青年に、かつての仲間たちにも引けをとらないであろう強さを感じていたダイはそう判断する。

ダイ達は本来の予定通り、17階層へと向かっていった。

 

 

 

 

なお、その後5階層にて兎が牛に襲われることになるのだが、この時点でダイが知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリは魔石を換金したお金の詰まった布袋を見つめていた。

あの後17階層まで潜り、リリのバックパックがいっぱいになるまでモンスターを倒した後帰還したのだが、その換金額がなんと30万ヴァリスを超えたのだ。

これまで見たことのないような成果にリリは唖然とする。

 

「すごいですねダイ様、さすがは第1級冒険者です…」

「リリのおかげだよ、1人で戦ってる時は持ちきれないし、魔石回収に時間食うしで、この半分も行かないんだ、サポーターって凄いんだね」

「お役に立てたようで何よりです、もしよろしければこれからお誘い頂けると嬉しいです」

 

今回はタダ働きとなるが、これでダイの信頼を得られるのであれば安いものだとリリは思う。

今後、定期的に雇ってもらえるようになれば、仮に1割程度しか分前を貰えなかったとしても、下手な冒険者の装備を奪うよりも低リスクで大きな収入となる。

そんなことを考えていたリリの前に、ダイがドスンと金貨の詰まった布袋を置く。

 

「それじゃこれはリリの分ね、半分こ」

 

何事かわからず「えっ」と声を漏らしたリリに、ダイは当然のように言った。

 

「言ったでしょ、オレ1人じゃ半分も稼げないって、つまりこれはリリの仕事分の正当な報酬だよ」

 

これまでカヌゥを始め、冒険者に搾取され続けてきたリリは、ダイの言葉を理解出来なかった。

 

「で、でも今回は助けて頂いたお礼も兼ねて無料と…」

「あんな程度はお礼を貰うほどのことじゃないし、これはオレが払いたいから払うんだよ、君は自分を貶めていたけど、立派な働きだったと思う、正当な報酬は貰うべきだよ」

「―――――――――」

 

押し付けられた布袋を思わず受け取ってしまう、これまでリリから搾取し、リリが騙して奪ってきた冒険者達とまるで違う存在に、どう対応していいのかわからない。

 

「それじゃリリ、またよろしくねー」

 

そんなリリの困惑を余所に、報酬を押し付けたダイはリリに手を降って換金所から出ていった。

しばらく金貨の詰まった布袋を抱えたまま呆然としていたリリだったが、ポツリと「変なの…」と呟いて自分の泊まっている宿へと帰っていった。




リリエム・アーデルトとは一体なにものなのか…

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