魔法少女リリカルなのは～踏み台、（強制的に）任されました～

プロローグ 第1話

　――踏み台転生者。

　かませ転生者、厨二オリ主、オリ主（笑）等々呼び名は様々だが、要は神様転生系の二次創作に登場する真のオリ主を引き立てるために踏み台となる者達。

　自己中心的な言動が多く、原作キャラ以外をモブと軽視していたり、恵まれた容姿を手に入れたことでヒロイン達に好かれていると勘違いして馴れ馴れしくして嫌われていることに気がつかない。

　能力は強力なモノ（例、バカ高い魔力や無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)や王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)）だったりするが、修行を怠けているせいで能力に振り回されることも頻繁にある。

　容姿としてはイケメンで銀髪や金髪のオッドアイ。まれにそいつが好きなキャラクターそっくり（例、エミヤ、ギルガメッシュ）だったりすることもある。

　ゲームでもやっているかのような感覚で生きているから命を軽視しており最終的には自暴自棄になって犯罪を犯したりして物語の中盤辺りでフェードアウトするか改心してオリ主や原作キャラ達と和解するかのどちらかくらいしかないという本人にしてみればとっても嫌な、しかし妥当な扱いを受ける。

「というわけでお前に踏み台転生者をやってもらおうと思うんじゃが？」

　理解不能理解不能理解不能。

　気がついたら真っ白い空間で目の前の初老の男に話しかけられていた。

　何これ？　

「いや～、最近神の間で好きなアニメに自分が創った転生者を送り込んで物語を改変するのが流行っておってな。ワシもそのブームに乗っかっておこうと思ったんじゃよ。それに神様転生モノといえば正統オリ主と踏み台転生者じゃろう？　正統オリ主はさっき決まったからお前にはかませ役をやってもらおうと思ってな」

　じゃろう？　とドヤ顔で言われても困るとしか言えない。

　転生先が分からない以上は危険か否かの判断もつかないがこれだけは分かる。この爺さんは俺にどこの誰かも知らない奴の引き立て役になれと言っている。

　とりあえずそれは御免だと反論しようとしたが……あれ？　口がパクパクするだけで声が出ない！？

「喋ろうとしても無駄じゃよ。お前に拒否権はないからな。また輪廻の中から魂探して引っ張り出してくるのも面倒じゃし。……ふむ、特典は何にしようかの。まあ適当にその世界にあったチートを適当につけておくか」

　今適当って言葉を2回使ったぞ！？　どんだけ投げやりなんだこの爺さん！

　仕方ない。出来る限り面倒は避ける方向で行くか。

「あ、仮に知ってる作品だからといって原作介入しないのは無しじゃぞ。介入しないといけない呪いをかけたからな」

　その言葉を最後に俺の意識は暗転した。

　とりあえず次にあの爺さんに会うことがあったら一発ぶん殴ろうと心に誓う俺だった。

◆

　次に目が覚めたときには見知らぬ白い天井。内装を見る限りだと何処かの病院か。巨大な銀髪の美女に優しく抱かれて、同じく巨大なイケメンの男性に優しく見つめられていました。いや、二人が巨大なんじゃなくて俺が小さいだけなのか。

　本能で理解した。この二人が俺の新しい両親なのだと。この二人から俺が生まれたのだと。

「あぅぅ……あー」

　さっきと違って声は出るものの、まともに喋ることが出来ない。赤ん坊になったことによる弊害か。

　とりあえずこの状態じゃ何も出来やしない。

（おーい、ちゃんと生まれて来たかー）

　頭にさっきの爺さんの声がした。反応しても碌な事が無さそうだし無視だ無視。

　父親らしき人が俺の手をつんつんついてくるので握ってあげたらものすごく喜んでいる。赤ちゃんに手を握られるのってなんか嬉しくなるよね。

（聞こえておるかー？　どっちでもいいがワシがお前につけた転生特典の情報を頭の中に送るぞー？）

転生先、魔法少女リリカルなのは

転生特典

・魔力S（成長すればEXも夢じゃない）

・高い魔力にも耐えられる強靭な肉体。鍛えれば鍛えただけ強くなれる

・王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)（中身ありだがエアはかなり危険なので無し。非殺傷にも設定出来るゾ）

・原作介入及び踏み台っぽいことしないとTS（性転換のこと）する呪い

・高性能デバイス

　おい！　4つ目！　おい！

　何さらっと恐ろしい呪いかけてんだよ！　性転換とか冗談じゃない。

（呪いについては5歳の時にデバイス送るからそいつに聞くんじゃぞー）

　また一方的に言いたいことだけ言ってあの爺さんは連絡を断ってしまった。

　お父様、お母様。あなた達の息子は下手すれば娘になってしまうそうです。

　とりあえず分かった情報だけでもまとめよう。俺が転生したのは魔法少女リリカルなのは。屈指の人気を誇る魔法少女系アニメ。高町なのはという普通の少女が魔法がある世界の住人の少年ユーノ・スクライアと出会うことから物語は始まる。無印編、A's編、STS編とシリーズ化している。

　かわいい女の子、美しい女性が多く登場して二次創作も多い。

　俺の能力は王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)か。踏み台転生者がよく選ぶであろう典型的なチートスキルの一つだな。あくまで自分の蔵につなげるだけの能力、故に古今東西ありとあらゆる宝を集めたギルガメッシュが使うから意味がある訳で、一般人が持っても空っぽの蔵になってたりする。これを誤解してよくミスをする踏み台も多い。

　しかし中身ありなら宝具を数本ばら撒くだけでも反則級のパワーを誇る。上手く使うことが出来れば色々応用は利きそうだ。エアなんてなくてもデュランダル、ヴァジュラ、ハルペー、グングニル、グラム等々ありとあらゆる宝具の原点が収められているのだから強力な武器は幾らでもある。

　問題は4つ目だ。なんて恐ろしい呪いつけてくれてやがるんですか！

　俺は女体化願望も女装癖も無いし普通にノンケだし全世も今世も願わくば男のまま人生を終えたい。つまり強制的に原作介入及び踏み台役を強いられているんだ。

　とりあえず今俺が出来ることは一つ

　眠いから寝る。おやすみ。

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