魔法少女リリカルなのは~踏み台、(強制的に)任されました~ 作:妖刀終焉
なのはは原作通りリンカーコアを蒐集され時空管理局の本局にある医療施設へと運び込まれる。無論魔法がしばらく使えなくなるだけで命に別状はない。魔法だってリンカーコアが回復すれば以前と同じように使用できる。
しかし彼女達がダメージを受けているのは折木の存在。
何故奴が生きていて、しかも敵に回っているのかだ。
「何で和人君が……」
「分からない……でもきっと何か理由が」
二人の希望的観測。特にフェイトが自分が助けて貰っていた前例もあるためきっとそうだと自分に言い聞かせていることだろう。だが、どちらにしろあいつがあっちゃこっちゃフラフラと味方につく蝙蝠じみた行為をしていることに変わりはない。
「はあ、なのはもフェイトもいい加減現実を見ろ。あいつは屑だ。犯罪者に手を貸している屑だよ」
「で、でも! もしかしたらあの人達に脅されてるのかもしれないし」
「そんな風には見えなかったぜ。そもそも何故あいつは生きているのに何の連絡も寄越さなかった? そんなの連絡して生存がバレることを嫌がったからだろ。虚数空間に落ちた振りをして死を装い裏でコソコソ動いてたんじゃねーの? お前ら結局あいつに騙されてたんだよ」
二人は俺の言葉に目を伏せた。
半分は唯あいつに悪口が言いたかっただけで、もう半分はもし自分が何も知らなかったらと仮定してあくまで予想できる範囲の事柄を述べただけだ。
「大体初めて会ったときからふざけた野郎だとは思ってたぜ。まあ? あいつが犯罪者だって大義名分もできたから今度は容赦なくぶっ殺すことができるって――」
乾いた破裂音が病室に響いた。
俺がフェイトに頬を打たれた音だ。フェイトは目に涙を溜めながら俺を睨んでいる。なのはもどこか俺を避難しているような目つきだった。
「和人のことそんなふうに言わないで……」
理屈ではなく感情論なのか、組織に属するのならそれは甘いと思うんだが。
オリ主ってなのはの味方したりフェイトの味方したりはやての味方したりと大忙しですねー、反吐が出るぜ。
「チッ、皆して和人和人ってよぉ……」
俺は居心地が悪くなり病室を出る。
いや~正論を言ってるだけなのに嫌われる。これだから踏み台転生者はやってられん。やることもないし散策でもするか。どうせだから監視用の虫をこの辺に一匹放っておくのもいいかもしれない。
プラプラ歩いてたらクロノに会った。これからなのはの様子でも見に行くつもりだったのだろう。
レイハさんとバルさんの強化フラグクルー?
「劉牙か……後で聞こうかと思ってたが今でいいか」
「何が?」
「あの襲撃のことだ」
こいつもか。
つーか知ってることは話せる範囲でさっき話したし、これ以上話すことなんてないんだが。
「君の目的は何だ? 一体何を狙ってるんだ?」
「……はぁ?」
クロノの質問の意図が分からない。
「正直、君の戦いは真面目にやってるのかふざけているのかよく分からない、なのはやフェイトへの勘違い甚だしい対応についてもそうだ。時の庭園での戦いでのこともある。君はもっと聡い人間だと思うんだ」
クロノ・ハラオウン! 貴様ッ! 気づいているなッ!
時の庭園でちょっと真面目になりすぎたか。なのはやフェイトはそうでもないだろうがクロノは薄々感づいていたようだ。
クロノが気づいているのならリンディさんも感づいていると想定しておいた方が良さそうだ。
「ふざけてる? 俺がいつふざけたっていうんだよ。俺はいつだって真面目だぜ」
「君に強力なリミッターがかかっているのも分かってる」
「はあ!? 何でそれを知――あ、やべッ」
慌てて口を塞ぐがもう遅かった。クロノはニヤリと口を歪ませている。カマかけられた。よくよく考えれば直接調べさせてもいないのにリミッターの有無や強弱なんて分かる筈もない。
ぬかったぜ。
「やっぱりそうか」
「ケッ、だったら何だっていうんだよ」
「急に態度悪くなったな」
「嵌められれば誰だって気分悪くなるだろ」
こいつも社会の荒波に揉まれてるんだなーと今更ながらに思う。チート貰っただけの一般人とは違うんだね。
「安心しろ……と言っても信じないかもしれんけど時空管理局に敵対するつもりもお前らに敵対するつもりもない。ついでに言えば管理局に入るつもりはない」
敵対したっていいことないしね。
「……そうか、いい魔導師になると思ったんだが」
「諦め早いな、もっとしつこいかと思ったんだが」
時空管理局はもっと強引に話を進めるイメージがあったからクロノがあっさり引き下がったのに少し驚いた。
「やる気のないやつをスカウトしても仕方がない。幾ら人材不足だからって誰でも入れるわけじゃないんだ」
「そりゃ違いねえ」
イヒヒッと悪そうに笑い出す俺。
「そういやプレシアさんどうなった?」
この場にいないってことはやっぱ無罪にはならなかったんだろうか。
「プレシアはまだ裁判の途中だ。フェイトは比較的早く終わったんだが、彼女はやらかしたことがことだからな。だが、彼女の持っていたデータの裏づけがとれた。上手くいけば執行猶予がつくかもしれない」
「ふーん」
「それと、彼女は娘の遺体を埋葬する決意を固めたようだ」
「……そうか」
プレシアさんにとってはそれが一番なのかもしれない。普通死んだ人は生き返らない、
転生者である俺がそんなこと言う資格なんてないだろうけど。
横目でクロノをチラッと見た後に頭をポリポリ掻いていたらあることを思いついた。
クロノを味方につけられないだろうか。できればリンディさんも。協力者がいればもっと動きやすくポイントも溜まり易くなるかもしれないし、誤魔化しも効く。嫌われることに重点を置いていたせいでいままで気づかなかった。
「すまんクロノ。そのことはリンディさんも知っているのか?」
「あ、ああそうだ。というよりリンディ艦長に言われて考え直したのがきっかけだ」
「後でお前とリンディさんに話がある。重要な話だ、今後にも関わる」
俺のいつになく真剣な表情にただ事ではないことを悟ったようで、「会わせたい人がいるからまた後でと」約束を取り付けることに成功した。
さて、
「
◆
クロノが言っていた会わせたい人、ギル・グレアム提督との会談は滞りなく終わった。特別な話、というか俺は簡単な受け答えくらいしかしていない。別に嫌いな人ではないがボロが出て後の行動に支障を出したくなかった。
はやてを犠牲に闇の書を封印するという計画のせいで嫌われがちなおじさんではあるものの、やってること事態は『10を救うのが無理だから1を犠牲にして9を救う』という理に適ったやり方だ。
騎士王時代のセイバーもエミヤも他の為政者達も同じことをしてる。
仮に許せないことがあるとすれば闇の書を地球で発動させたことくらいだと思う。
「それで? 話って何かしら?」
この場にいるのは俺、リンディさん、クロノのみ。他は飯でも食いに行ってるんだろう。
「その前に、この話は二人の胸に留めておいて欲しいんです。記録や他人に話すというのは止めていただきたい」
「聞かれると困る話なのか?」
俺はクロノの質問にコクリと頷いた。ちなみに監視カメラこそないにしろ記録はされている様だったので宝具を使ってジャミングをかけている。サーチャーにはハラオウン親子が愉快に談笑している映像しか映らない。
「まず言いたいのは俺が呪われているっていうことです」
いきなりグレーゾーンに突入しそうな話の入り方をする。しかしこれがアウトではないという確信があった。
どこまでならOKでどの線を越えたらOUTなのかを
この原理はちょっと違うがダービー弟のアトゥム神がそれに近い。
例えば、『神代劉牙は踏み台転生者である』と言えば、判定は
OUT! OUT! OUT! OUT!
となり。
『神代劉牙はなのは達に嫌われなければならない』と言えば、判定は
OK! OK! OK! OK!
となる。
「……いきなりそんなこと言われても正直信じられないわね」
「まぁ、普通はそう思うでしょうね。そして俺は特定の人達に嫌われなければその呪いを解くことができません」
「辻褄が合わないこともないが……」
やはり疑わしいのだろう。
普通は「俺は呪われているのだッ!」とか言っても「厨二乙」と返されるのがオチだし。
「証拠とかはあるのかしら?」
「証拠……証拠……う~ん」
目に見える証拠なんてない。未来の知識ならあるけど、少し試してみるか。
「仮面の男」
「『仮面の男』って何かしら?」
「言葉の通りです。もし次になのは達が闇の書の騎士達と戦う時にそいつが現れたら俺の話を聞いてください」
仮面の男とはグレアム提督の使い魔、リーゼロッテ、リーゼアリアのことだ。
そんなこと二人は知る筈もないだろう。裏で糸を引いている人間がついさっき会った男だとは予想できる訳がない。
「一つ聞きたい。君は何を知っている?」
「信じられないんじゃなかったの?」
クロノは俺の言葉に何か確信めいたものがあることを感じ取ったようだ。まさか自分の師匠が事件解決の邪魔をしてくるなんて夢にも思わないだろうね。
この場での話はこれ以上先に進まずに終了。
俺はまた守護騎士が行動を起こしたら教えてくれと言って帰った。
◆
本日、フェイトが転校してきました。
まーだからどうって訳でもないけど。俺が近づいて気安く声をかけようものならアリサに噛み付かんばかりの顔で睨まれるわ、フェイトには冷たい目で見られるわで完全に嫌われてるわな。もうこいつらはどうでもいいや好きに生きてろ。
あとギアッチョのやつが、
「恋人ができたことをよォ……『春が来た』とか言うだろォ……恋をするのが冬が終わって春が来るくらい嬉しいって比喩表現だ。でも何で失恋しても誰も『冬が来た』なんて言わねぇんだよォーーッ。何で『夏が来た』とも『秋が来た』とも言わねぇんだよォーーッ」
と言っていた。知らんがな。
その後あいつも質問の列に並んでいた。
「ねえ、お兄ちゃん。お兄ちゃんに転校してきた金髪の人のことなんだけどさ」
原作組み一行は携帯でも買うんだろうが俺はもう知らん。ついて行ってもまかれるだけだし智葉と一緒に帰る。
「あの人。夢の中で逢った、ような……」
「やめい」
と彼女のデコを人差し指で軽く弾く。
そういやこいつはよく覚えてないだろうがフェイトと一度顔合わせしてたな。フェイトも見たのは黒化バージョンの智葉だし覚えてないといいんだけど。
「痛いな~もう」
「アイス奢るから許せ」
「バーゲンダッシュ」
「……スパーカップで」
「バーゲンダッシュ一択」
「そ、そうだ、もう冬だし肉まんの方が「バーゲンダッシュ」……わかったよ」
美味いんだけど高いんだよな~あれ。手痛い出費だ。
まあいいか。
コンビニでスパーカップ1個とバーゲンダッシュ1個、俺はクッキーバニラで智葉がストロベリーだ。
「甘くておいひ~」
アイスの甘さに顔を緩ませる智葉。
そら普通のアイスの2倍以上の価格なんだから美味いだろうさ。
俺もクッキーバニラを口に含む。アイスに入っているからチョコクッキーが柔らかくしっとりとしている。そしてバニラとの相性も最高で言うことなし。
「クッキーバニラ美味しそう。もーらい」
「あ、こら」
「あははっ」
ボーっとしてたら横からアイスを一口掻っ攫われた。
「私のもあげるから、ホラ」
と言ってスプーンですくって俺の口に近づける。
俺はちょっと躊躇ったが、思い切ってそれを食べた。
甘い、ストロベリーアイスってあんまり食べないけど果肉も入ってて結構美味いな。
「春にさ、新作の桜味が出るんだって」
「ふ~ん」
「だからさ、出たらまた奢って欲しいなって」
要は、「また来年も一緒にアイス食べたい」って言いたいのか。
状況が状況だし、正直確約はできないな。
でも心配はかけたくないなぁ。
「わかったよ」
そうとしか言えなかった。
――はぁ、まだ消えたくねぇなぁ……。
帰った後、しばらく暇になるんで最近波紋修行にかまけて剣を振ってなかったのを思い出し素振りを始めようとする。しかし相変わらずどの剣を振っていいかで迷う。
剣が一本なら迷わないんだが。
「いっそのこと一本に纏めるか」
モンハンでも元の武器に素材を足して強力な武器に生まれ変わらせていた。なら宝具に宝具を足して強化してみよう。数え切れないほどあるし数百本なくなったところで被害軽微。
基盤になるのは
炎はレーヴァティンを使って、叩くのはミョルニルでいいや。
ここで問題発生。
「手が足りない」
足りないなら増やせばいいじゃないと傀儡兵を出現させて手伝わせる。
レーヴァティンに油を塗って波紋を流し炎の出力を上げる。その炎で宝具の刀身部分を熱して溶かしミョルニルで叩いて
叩くのは傀儡兵にやらせればいいや。
後、折木に折られた宝具数本も加えてみる。
俺の都合で折れてしまったとはいえこのままにしておくのは少々可哀想だ。こいつらからも折木への怨念らしきものが感じられるし。
これとこれと、あとこの宝具も入れちまおう。どうせ創るんなら自重せずに高ランクの宝具のオンパレードと行こうじゃないか。
最後に込めるのは俺の波紋と血液、俺をどん底に落としたやつらへの恨み辛み、そして未来への希望。
自分で言うのもなんだがすさまじい剣ができそう。それに新しく創った宝具なら屑神の影響を受けないという可能性があるかもしれないし名のある宝具数百本分を凝縮すれば神殺しくらいできそうな気がする。
一日じゃ無理だな。この辺に結界張っておこう。こういうときにネギまのダイオラマ魔法球みたいなのが欲しくなる。
やばい剣が出来上がりそう