魔法少女リリカルなのは~踏み台、(強制的に)任されました~   作:妖刀終焉

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こんがり肉クッション当たった


第14話

 クロノから守護騎士たちを結界に閉じ込めたとの連絡を受けて俺は夜中に駆けつける。合成宝具はまだ完成していない、進行度は精々50%ところだ。仮に完成してたとしても使えないけど。

 

 ミョルニルだけでは無理が出てきたので何かないかと探したら鍛冶道具一式があった。誰のかは知らないが、きっと名のある鍛冶師が後に使う鍛冶道具なのだろう。それも使ってより作業のスピードもアップした。

 

 なのは達はカートリッジシステムを搭載したレイジングハート・エクセリオンとバルディッシュ・アサルトを携えてシグナム、ヴィータに一騎打ちを申し込む。そしてアルフも前回のリベンジにとザフィーラと戦っている。

 

 そして俺は

 

「ハロー、美人のお姉さんとクソ野郎」

 

 シャマルとその護衛をしている折木(ヌケサク)と対峙している。

 

「もうここが!?」

 

「くっ、ここは俺が引きつける。シャマルは「おーっと行かせないよお姉さん、一緒にダンスでも踊らない?」」

 

「ごめんなさいね、今お仕事中なの」

 

 俺のニッコリとした表情のお誘いにシャマルは苦笑いしながらどこぞのOLのような返しで断ってきた。

 

「やっぱりアンタもそいつに何かされてるね、やっぱ邪魔だよテメェは!」

 

 俺はまたもや折木と戦う。まあ負けるんだけどね。

 

 その間にクロノがシャマルの背後を取ったが、謎の仮面の男(猫姉妹のどっちか)に蹴り飛ばされる。そしてシャマルは仮面の男に闇の書を使って結界を破壊して逃げ出すように示唆。上空が黒い雲に覆われるとそこから紫色の雷が振り、結界は破壊され、守護騎士たちに逃げられてしまうのであった。 

 舞台は移ってハラオウン邸。

 今回のことで俺の話を聞いてくれるようになったようだ。

 

「まさか、本当に『仮面の男』が出てくるなんて……」

 

 リンディさんも俺の予言が当たったことに驚きを隠せない様子。ただ、守護騎士に協力者がいるのならまだしもそれを具体的な姿で言い当てたのだから尚更だ。

 

「やっぱり、『仮面の男』の正体も知ってるのか」

 

 クロノの質問に対して俺は首を縦に振る。

 

「なら教えて貰えないかしら?」

 

「教えたところで貴女方は信じられないだろうし、仮に信じたとしても証拠がないんで捕まえることなんてできません。それに、知っていると返って不自然な行動をされる恐れがあるんでそれは遠慮したいですね」

 

 二人もなるほどと少し不満げではあったが納得はしてくれた様子。仮に今、グレアムのおっさんを問い詰めたとしても知らぬ存ぜぬでかわされてしまうのが関の山だ。

 

「しかし、闇の書を起動させる権限を持っているのは主だけだ。完成を妨害させるならまだ分かるが完成を手伝うなんて正気の沙汰とは思えない。完成させたら暴走して世界を滅ぼすだけだというのに」

 

 クロノの言う通り、記憶をリセット、正確にはリセットとは違うが、されている守護騎士ならともかく、闇の書がどういうものか知っている者であれば危険性は重々承知の筈。

 

「クロノ、逆に考えるんだ、『完成させちゃってもいいさ』と考えるんだ」

 

「こんな時に君は何をふざけ……いや、ちょっと待てよ」

 

 ジョースター卿の教えが功を奏したのか、クロノとリンディさんは何かに気がついたようで考え始める。『完成させてはいけない』という固定概念に捕らわれているから目的には気づきにくいんだよな。

 

「……『完成させた後、強力な氷結魔法か封印魔法で闇の書を主ごと封印する』、そんなところかしらね」

 

「艦長もやはりそう思いますか。それで……」

 

Exactly(そのとおりでございます)、グレートですよ二人とも」

 

 付け加える点があるとすれば封印するためのデバイスを開発しているって位か。流石にそんなことまでは分からないだろう。

 

「(何で英語?)しかし、それが事実だとしたら闇の書の遺族全員が『仮面の男』の正体の候補にあがってしまうわね」

 

「それに、封印するにしてもそんなことができる魔法なんてそれこそオーバーSランクの魔法でもない限り不可能だ。それが真実だと仮定すると向こうはそれ程の魔法が使えるやり手ってことになる」

 

 二人とも長考に入ってしまった。

 

「すいませんが、俺が話したいのはそういうことじゃないんですが?」

 

 二人は俺の言葉にハッとなりこちらを向いた。

 

「え、ああそうね。それで、あなたが予言染みたことができることはさっきの件でよく分かったわ。それで、あなたはどうしたいのかしら? 少なくとも協力はしてくれるとは思うけど」

 

「そうですね、基本は俺がすることに対して見て見ぬ振りをしてくれればいいだけです。少なくとも折木は俺が引き付けるんで他の守護騎士を警戒さえしていればOKかと」

 

 俺を除いたイレギュラーはあいつだけだし、俺とあいつが争っていれば他は特に問題なく進む筈。勝つことはできなくともあいつが他を援護できなくすることはできる。

 

「……そういえば何やかんやで君は折木和人と毎回戦ってたな。それに彼はフェイトと対立していた時や今回も守護騎士をサポートをしているところを見たことがない、最初見たときはただ無鉄砲に暴れてるだけかとも思っていたが」

 

「後は俺が印象悪くなるように情報操作してくれればなお良いですね」

 

 俺が魔力ランクが高いだけの木偶の棒だと思えば管理局もわざわざ俺を入局させる気にはならないだろうし、周りの俺への評価が下がれば、それだけポイントにも繋がる。

 

「君は……それでいいのか?」

 

「?」

 

 クロノの言葉に疑問符を浮かべる。

 

「確か呪いとか言っていたな。そんな境遇にされて君は何故そんな風に自然に振舞っていられるんだ?」

 

「……もう、慣れたから、かな」

 

 クロノ、というより俺の今の現状を知ったら多分10人が10人似たような質問をすると思う。俺は「もう慣れたから」としか答えられない。

 

「全てを失うのと、少なくとも大切なものが残るのと、どちらかを選べと言われれば俺は後者を選ぶ。俺はそういう人間です。なのはだって利用します。フェイトだって利用します。ユーノも、闇の書の主も、胸糞悪いですけど折木も、勿論管理局も利用します。解決さえすれば事態をいい方向に持っていこうとは考えていません。呪いさえ解ければ俺は未来を知っていてもその通りに出来事が起こるように全力で取り組むだけです」

 

 クロノは俺の言葉にあっけに取られていたが、リンディさんは俺を真っ直ぐ見つめている。俺の真意でも読み取ろうとしているのか。

 

「仮にあなたの言葉に従ったとして、私達に得るものは?」

 

「闇の書事件の解決による功績は勿論。闇の書の主と守護騎士たち、古代ベルカの歴戦の勇者とそれを束ねる古代ベルカの使い手、それで不服であれば――」

 

 俺は王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)からきめ細かい布で包まれた武具10本を取り出してテーブルの上に置く。全てCランク程度の代物だが干将・莫耶のランクがCであることを考えると結構なもんだと思う。

 

「俺のレアスキルで取り出した武器10本、できる限り使いやすいものを選びました。これを差し上げましょう。管理局に献上するも良し、あなた達のものにするも良し、お好きにどうぞ。足りないのであれば追加いたしますが?」

 

「賄賂のつもりかしら?」

 

「いえいえプレゼントですよ」

 

「あなた、本当に9歳?」

 

「ええ、何なら保険証でも見せましょうか?」

 

 一瞬静まり返った後、俺はケラケラ笑い、リンディさんもクスリと笑う。

 

「私達は特別なことはしなくても大丈夫、変に犯人探しはせずに今まで通り守護騎士の動向を探っていれば良い。これでいいのかしら?」

 

「はい、充分です。クロノは?」

 

 クロノは何やら複雑そうな顔をしていた。

 

「何だか、誰かが書いたシナリオ通りに動く役者みたいで正直あまり気は進まないが、少なくとも事件が解決できるのなら協力はさせてもらう。その代わり、君にとっても予想外の事態が起きたらその時は――」

 

「ああ、そうなったらクロノ達が思ったように動いてくれて構わない。もしそうなりそうなら俺から連絡させてもらうし」

 

 イレギュラーな事態が起きないように頑張っているとはいえ智葉の件もあるし、警戒しておくに越したことはないからな。

 

「それと、これは返却させてもらうわ」

 

 リンディさんから宝具をつっ返される。売れば一財産どころではない金額になりそうなモンだが。

 

「差し上げるつもりだったんですけど、気に入りませんでしたか?」

 

「そうね、生憎だけど息子より年齢が下の子から賄賂をもらうほど落ちぶれていないのよ」

 

 彼女なりの矜持だということか、逆に心象を悪くしたか? 

 こっちが本気だということを誠意で表そうとしたのだが。協力してくれると言ってたし大丈夫かな。

 

 

 

 

「ふんっ、浅知恵の回る男じゃわい」

 

 ここは神のいる世界、仮に神世界とさせていただこう。

 

 このテレビで神代劉牙の動向を見ている老人こそ転生者を生み出しては玩具にして遊んでいる神なのだ。この老人は彼がちゃくちゃくとポイントを稼ぎ、尚且つ無印よりも上手く立ち回っていることを良く思ってはいないのだ。

 

「9080ptじゃと? 減らしたポイントをこうも早く取り戻すか。それに何が『神を殺せる剣』じゃ、イライラさせてくれるわい」

 

 彼はこの短期間で既に3000pt以上稼いでいる。A's編の期間が無印編と比べて短いということや、既に原作キャラ達の印象がかなり悪く、一挙手一頭がポイントに繋がっているのだ。

 

「まぁ? ワシにかかれば関係ないんじゃがの~。こやつは今までよりもった方じゃが、A's編が終われば用無しじゃな。スカリエッティ側に面白いやつを送りこんだしの~」

 

 先程までの不機嫌な顔とは対照的にクククと下卑た笑いを堪えながらもう一つの画面を見ていた。

 映っているのは白衣の男が円柱型のガラスケースに入っている我が子を見て高笑いを上げている画像。

 

「いや~楽しくなってきたわい、あやつの顔が絶望に変わるのが待ちきれん」

 

「ほぅ、一体何が待ちきれんのかな?」

 

「それは……」

 

 神は振り返ってまるで石化したかのように固まった。そこにいたのは神よりも威厳のある格好をした老人。それを視認すると神はマッサージ器の如くガクガクと震えだした。

 

「さ、ささささ、最高神様ァ!?」

 

 なんとこの威厳ある老人は神よりも位の高い最高神だったのだ。

 

「な、何故ここに!?」

 

「最近輪廻転生の輪に劣化した魂をよく見るなと思えば貴様の仕業だったか! この愚か者がァ!!」

 

「ヒィィィィィ!!」

 

 その怒声、まるで雷が落ちたかの如く。神は先程までの余裕は何処へやら、雷に怯える子どもの如き醜態を晒している。

 

「全く、貴様の部下の鷹丸から報告が無ければもっと気づくのに遅れていたかもしれん」

 

「(くっ、あやつかッ! 目をかけてやった恩を忘れおって)し、しかしですね最高神様、人間なぞ蟻のように増える種族、その中から数十人ダメになろうと代わりは幾らでも……」

 

 この神は本当に人間を玩具や実験動物程度にしか考えていないようだ。

 

「確かに、数十億人いる中でのたかが数十人」

 

「で、ではっ!?」

 

「そう、代わりがいるのは何も人間だけではないぞ? 貴様の代わりも幾らでもいるのだからな」

 

 神の希望を取り戻した顔は一瞬の内に絶望へと変わる。

 

 段々と神の視線が低くなってきていることに神自身が気がついた。原因は、下が沼のようにぬかるんでいること、しかもただの沼では無さそうだ。

 

「こ、これは底なし沼!?」

 

「無限地獄への入り口じゃ。貴様は少々やりすぎた。弄ばれる立場を経験してくるがいい!」

 

 神はみっともなく足掻くも底なし沼は神の身体を少しずつ、少しずつ飲み込んでいく。

 

「もう一度! もう一度チャンスを下され! もう一度ォォォオオオ!」

 

 神は底なし沼に完全に飲み込まれて、もう見る影も無い。

 

「全ては貴様の思惑通りということか、鷹丸よ?」

 

「思惑って、人聞き悪いな~、あの爺さんの不正を報告しただけじゃないですか」

 

 いつの間にかいた見た目20代前半くらいの青年、はニコニコ笑いながら帽子を取って礼をする。

 

「貴様にはあやつがいたポストを任せよう、担当していた転生者達も一緒にな」

 

「嬉しいな~、神に就任していきなり大仕事を任されるなんてっ」

 

 全てがわざとらしい。笑っているが本心がつかめない男だ。

 

「貴様もあやつと同じことをすれば……分かるな?」

 

 まるで脅しているかのようなドスの利いた声は流石にニコニコしているこの男の顔を引き攣らせるのに充分だった。

 

「……分かってますって、『転生者の不正な作成』、『転生者の不正な間引き』、『人間界への過剰な干渉』あの爺さんが行ってたことですよね~……っていないし」

 

 いつの間にやら最高神と呼ばれた老人はこの空間から消えていた。

 

 鷹丸はつけっぱなしのテレビ3つを順に眺める。

 

 一つ目は神代劉牙のもの。

 二つ目は折木和人が八神はやてや守護騎士達と談笑をしているもの。

 三つ目は神が新たに創った転生者(女)のもの。

 

「劉牙君、という訳でボクは君の呪いを今すぐ解くことはできないんだよね~、まあ後1000pt程度だし頑張ってね~。聞こえるわけ無いけど」

 

 担当が替わったのは彼らにとって吉と出るか凶と出るか、それはこの男にしか分からない。




担当は交代しましたが踏み台はそれを知らない上に呪いが解かれた訳じゃありません

それと今回出た新しい転生者はこれ以降出番ないです

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