魔法少女リリカルなのは~踏み台、(強制的に)任されました~   作:妖刀終焉

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やっと就職が決まった。涙が出そう。

それと簒奪の意味が違っていたようなので、能力を強奪に変更しました。


第17話

 リインフォースを見送ったその夜、俺は無印編後にもあったふわっと浮き上がるような感覚を味わう。神が俺を連れて行くのだろう。

 

 先手必勝だ。第一希望の殺害が無理でもせめて腕の一本くらいは斬りおとす。一太刀入れられれば能力を奪うことができるし、それである程度優位になるかもしれない。

 

 俺は白い空間に来たと同時に神喰らいの魔剣(ゴッド・イーター)を構えて人影に斬りかかる。

 

「あー初めましてになるかな? 僕は」

 

「死ねぇーーーーーーッ!!」

 

 何か言う前に斬り捨てる。直に斬る。間接的に斬るとかこのチート魔剣を持ってしても不確定なことはせず切裂いてやる。

 

 しかし魔剣は神に掴まれてしまった。だが、能力を奪うことには成功した。

 

 これで、

 

「……いやお前誰!?」

 

 目の前にいたのは老人ではなく前世の俺と同じくらいの若い男。

 

「いきなり斬りかかって来て第一声がそれって正直どうなのさ?」

 

 俺が力を抜くと男も剣を放して、俺は一歩退く。

 

「あのクソ爺はどこだ?」

 

 辺りを見回したがこの男だけしかいない。

 

「クソ爺? ああ、前任者の爺さんだったらやりすぎてクビ。それだけじゃなく無間地獄に落とされたよ。僕はその後釜に就いただけ」

 

 あの爺さんが無間地獄に落とされただと?

 

「……信じられん」

 

「信じる信じないは君の勝手かな。あっ、僕、鷹丸。まっ、座りなよ。何も無いけど」

 

 鷹丸と名乗った男は俺が斬りかかってきたことにもまるで動じずに床に胡坐をかいた。

 

 俺は剣を構えたままで警戒を解かない。

 

 クソ神に何かあったのかというのは折木の状態を見てなんとなく分かっていた。こいつの言うことを信用していいか分からない。クソ神と結託して俺を騙しているだけかもしれん。

 

「……折木、もう一人の転生者のことだが。あいつの神の奇跡ってやつが使えなくなったのはお前が何かやったのか?」

 

「正確には『何もやってないから使えなくなった』というのが正しいかな。そもそも『神の奇跡』っていうのは転生者の願いを神が世界の理を無理やり歪めて叶えるものだし、普通は禁止だよ」

 

「あの爺は禁止行為を行ってたってことか?」

 

「そだよ、ついでに言えば君達以外にも転生者創って遊んでいたらしくてね。輪廻転生の輪から無理やり魂を持ってきたり、遊びすぎてボロボロになった魂をゴミを捨てるかのごとく輪にポイ捨てしていたらしくてね。無間地獄からあと2000年くらい出てこないんじゃないかな?」

 

 もしこの鷹丸とかいうやつの言っていることが事実なのであれば、解放されて嬉しいのが半分。もう半分はクソ神を斬ることができないことになりそうだ。

 

「アンタを信じるに足りる証拠が欲しい」

 

 しかし神を信じるきにはもうなれない。それにクソ神が消えたとしてこの男が俺を玩具にしないとは限らないのだ。

 

「う~ん……別に信用する必要も信頼する必要もないかな。僕はあの爺引き摺り下ろして昇格したかっただけだし。別段君達になにかをするつもりは無いよ。あの爺さんの二の舞にはなりたくないしね」

 

 俺はとりあえず一番気になっていたことを聞いてみる。

 

「俺の呪いはどうなった?」

 

「それなら君が条件を満たしたんだから解けたに決まっているさ。確証が欲しいかい? なら朝起きたら家族に会ってみるといい。君のことは覚えているからさ」

 

「年が明けてからという可能性も捨てきれん」

 

「疑り深いね~君。あの爺さんはどんだけ性悪だったんだか」

 

 鷹丸はやれやれといった表情で肩を竦めている。

 

「じゃあさ、何でも一つだけ君の要望に応えてあげようか。あ、新しい特典とか人を生き返らせてとかはなしだから」

 

 いや、俺にどうしろっていうんだよ。

 

「俺の呪いを解除しろ」

 

「だから君の呪いはもうなくなってるんだってば!」

 

 信じられるか。

 

「……本当になんでも叶えることができるんだな?」

 

「さっき言ったのはなしだけどね」

 

 正直こいつのことは信用できんが言うだけならただだ。

 

「誰にもばれずに折木のクソ野郎と一対一で対決。俺が今望むのはこれだけだ」

 

 

 

 

「――以上が闇の書事件の顛末だ」 

 

「そうか」

 

 俺はクロノに公園へ呼び出され、闇の書事件が解決されたことを知らされる。家族は俺のことを覚えている。クロノや他のやつらも俺のことを覚えている。皇帝(エンペラー)に確認させたところ呪いはなくなっていたそうだ。鷹丸の言ってたことは本当だったようだ。

 

 俺は既に知ってるし、というかナハト消したの俺なんだけどね。クロノ達にはばれてはいないようだ。

 

「仮面の男は?」

 

「……僕が駆けつけたときには真っ黒焦げ状態だったよ。一体誰がやったのやら」

 

 そう言いつつもクロノはジト目で俺を見ていた。

 

「何故俺を見る? 俺はもうたいした魔法使えないぞ?」

 

「なんとなくだ。闇の書の防衛プログラムを消した灰色の閃光についても目下捜索中だ。君は何か知らないのか?」

 

「いや、全く分からん。俺の知る未来ではなのは達が結託して化け物を弱らせてアースラの荷電粒子砲で倒してた」

 

「あれにはアルカンシェルって名前があるんだが」

 

 いやいやあれは荷電粒子砲とか名前ついてもおかしくないって。

 

「闇……じゃないか、夜天の書の主と守護騎士、それと折木のクソ野郎の処遇はどうなるんだ?」

 

 原作では保護観察処分で済んだんだっけか。だが折木が加担している以上罪が増えるかもしれないからな。

 

「彼女達には闇の書事件解決の功績もあるし、保護観察処分程度で済みそうだ。しばらくは奉仕活動だろう」

 

 なんだ、結局奉仕活動で済むのか。死人が出てないというのもあるし、俺が言っても仕方ないかもしれんがリンカーコアを砕いたのはリーゼ姉妹のどっちかだし、こいつらはグレアムのおっさんが責任とって辞職すりゃモーマンタイだろ。だからこそドサクサに紛れて爆殺したんだからな。あのシアハもどきは結構使えるからまた作ろう。

 

 それに管理局も夜天の書の主とその守護騎士、それにニアSランクの魔導師を加入させることができるのだからこれくらいはするだろう。

 

 フェイトはプレシアさんの裁判が終わり次第一緒に住むことができるらしいが、それまではハラオウン家が預かることになっているとか、両親がいない折木はあのまま八神家に居候することになるとか、今回の件でなのは達に管理局から勧誘の話があったこととか、ちなみに俺はリンカーコアをダメにしたことになってるから勧誘はない。

 

「……そういえば、さっきから気になってたんだが、髪はどうした?」

 

「切ったに決まってるだろ」

 

 やることが終わった俺が真っ先にやったのは散髪。髪が長くて鬱陶しいし、洗うのは大変だし、慣れればそうでもないが動き辛い。もう踏み台演じることもないしバッサリ切ってすっきりした。長さはクロノやユーノと大して変わらない。両親や智葉からもこっちの方が似合ってるとか言われたし切って良かった。

 

「そうだ、仮面の男に伝言頼めるか?」

 

「は? まあ、いいが」

 

「皮肉を込めてこう言っといてくれ『災難だったな』ってさ」

 

 さて、クロノと別れて暇になってしまった。もうやることといえば鍛錬くらいしか思いつかない。魔力はもう鍛えても仕方ない領域まできてるし、しばらくはまた波紋と黄金長方形探しでもするか。

 

 鷹丸は俺と折木が戦う場を用意して指定の時間にそこへ俺と折木を送ることを約束した。世界から隔離されているから誰も邪魔できない、誰も気づくことはない、正々堂々一対一の勝負ができると言っていた。他にやることもないし、もし折木をボコボコにする機会が巡ってくるのなら嬉しい限りだし、何より俺自身の因縁に決着をつけたい。

 

 年が明けた午前0時に戦いは始まる。

 

 魔剣に関しては5日じゃどうしようもない。

 

 今思えば波紋や黄金長方形の回転って便利過ぎて下手な幽波紋(スタンド)よりも使えるよな。とにかく寝る時以外は波紋の呼吸で生活し、全てに最大限の感謝をして自然界から黄金長方形を探し出す。騎兵の回転は無理だが足りない分は波紋と魔力の相乗効果で補え、理論上はいける筈。あれは人一人では回転のエネルギーに限界があるから馬の力を借りるのであって、それは必ずしも馬でなければいけない理由はない。

 

 今更鉄球を使ったって仕方ない。だから割れないシャボンを回す。これぞダブルシーザーのコラボレーション(ジャイロの本名は英語読みでジュリアス・シーザー・ツェペリ)だ。以前できた抉るような一撃をできるだけコンスタントに放つことができるよう特訓しまくる。

 

 切った髪は何かに使えないかととっておいてあるけど何に使おう。昔は綺麗な髪って桂とかの原料になるから高く売れたらしいね。今でも髪の毛を買い取ってくれる店はあるけどあんまり聞かないし。洗った後にマフラーにでも縫い付けて波紋の伝導率が上げられるか試してみよう。

 

 

 

 

 決戦って今さッ!

 

 俺は指定の時間に何処かへと飛ばされる。場所はローマのコロッセオみたいな歴史ある闘技場だ。コロッセオってよおおおお、『殺せよ』って聞こえねえかあああ。

 

「なっ、神代!」

 

 目の前にいるのは既に来ていた折木。

 

「俺が戦う相手はお前なのか?」

 

「お前が何を聞かされたのかは知らんがてめぇが戦う相手は俺だ」

 

 折木は少し沈んだ表情でこちらを見ている。罪悪感でも感じているなら今すぐ喉を掻き切って自害するといい。

 

「済まなかった。俺のせいでお前のリンカーコアが……」

 

 俺は何も言わずにただただ折木を冷たい表情で見ているだけ。

 

「でも仕方なかったんだ。俺ははやてを助けたかった。だから「言いたいことはそれだけか?」」

 

 俺は指をパチンッと鳴らして王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から宝具を数本展開し投擲する。

 

「うわっ!?」

 

 だがそんな簡単に当たる筈もなく、折木はいとも容易く宝具を回避した。

 

「な、何をするんだ!?」

 

「謝るだけならインコでもできる。反省だけならサルでもできる。本当に悪いと思ってるんならその罪悪感でさっきの攻撃を受けるべきだったんじゃないか? できないよな? 後、八神はやてをてめぇの免罪符に使ってんじゃねぇよ。つまり『はやてのせいだから憎むんならはやてを憎め』ってことだろ?」

 

「ち、違う!」

 

「何が違うのかはっきり教えて貰いたいもんだね」

 

 波紋の呼吸で肉体を強化して折木に殴りかかる。折木は受け止めるが、俺は波紋を纏って攻撃しているからまともにくらえばかなり痺れる。

 

「うぐっ!? 今のは一体?」

 

「またガードしたな? 結局お前は自分の身が可愛いから他人を犠牲にしておいて、『救う救う』とほざくただの独善者なんだよ」

 

「違う! 俺は皆を助けたいだけだ! でもお前はハーレムハーレムって皆を困らせてただけじゃないか! 皆は人形じゃない、生きた人間なんだよ!」

 

 折木は俺の発言に対してとうとう頭にきたのか、逆切れした。

 

 よし、殺そう。

 

皇帝(エンペラー)、全リミッター解除。全力でやつの心を折るぞ」

 

<今の発言には正直俺もカッチーンて来たぜぇ>

 

 身体が軽い。全身につけていた重りがなくなってさっぱりとした気分だ。力が間欠泉のように噴出してくるようだ。この一年間で俺は相当強くなっていたらしい。

 

「な、なんだこの桁外れの魔力は!? お前はリンカーコアがダメになってた筈じゃ……」

 

 折木は動揺を隠せない。無意識の内に俺を警戒してデバイスを起動。バリアジャケットを着て戦闘態勢になる。

 

「お前の中じゃそうなんじゃねぇの? お前の中ではな」

 

 全力で戦うのは俺も初めてかもしれない。俺もバリアジャケットを着て戦闘態勢になる。あの頃の自分とは決別するという意味でデザインは変更してFFのザックスの服。背には神喰らいの魔剣(ゴッド・イーター)を帯剣し、右腰には皇帝(エンペラー)のホルスター、手に嵌めてるグローブは石鹸水が染み込ませている特別製を使っている。そしてザックスはつけていないがこれまた特別製のマフラーを首に巻いている。

 

<マスター、落ち着いてください。貴方は今まであいつと戦って負けたことがありましたか? 魔力は高くても技術は大した事ありません。それにシグナムに師事した半年間で貴方は今まで以上に強くなった筈。臆していては勝てる勝負も勝てませんよ>

 

「……ああ、そうだな。落ち着いて戦えば負けることはないよな」

 

 やつのデバイスが余計なことを言って折木を落ち着かせてしまった。だが、これはこれで改めてあいつの心をへし折ることができるから良かったかもしれない。それにどうせ叩き潰すなら本気のあいつを叩き潰したい。

 

 俺は開戦の合図として王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から宝具を一本上に投擲した。

 

「あれが落ちてきたら試合開始だ」

 

 打ち上げられた宝具は回転しながら下へと落下していき、地面に突き刺さる。

 

 最後の勝負が始まった。




Fate/Extra ccc買ってこよう

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