魔法少女リリカルなのは~踏み台、(強制的に)任されました~   作:妖刀終焉

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この物語は一先ずこれで終わりです。

今までお付き合いいただいてありがとうございました。


最終話

 私、高町なのはです。この一年間は本当にとっても色んなことがありました。

 

 フェイトちゃんやユーノ君と出会ったジュエルシード事件。最初はユーノ君に素質があるとか言われて驚いたけど、今思えば少し懐かしい気分になります。ちゃんとお話ができなかったフェイトちゃんともちょっとずつだけど心を通わせることができるようになりました。それに和人君の頑張りもあってプレシアさんとも仲直りすることができて良かったです。でも、虚数空間に仲良しの和人君が落ちちゃったことはとっても辛いことでした。

 

 そんな彼と再会したのはその半年後に起きた闇の書事件、その時和人君は敵となって私達の前に姿を現しました。神代君が戦ってくれたお陰で和人君とは戦わずに済んだけれど、実際に戦ったら動揺して戦えなくなっていたと思います。和人君はリインフォースさんを助けたかったけど、それは叶わぬ願いと諭されて、私もとっても悲しい気持ちになりました。リインフォースさんが消えてからはやてちゃんや守護騎士さん達は少し沈んでいましたけど、いつまでもそうしてられないって、とっても強い人達です。

 

 それと私達の周りにも変化がありました。さっき言った和人君と神代君です。和人君は年が明けてからしばらく部屋に引きこもってしまい、私達はとっても心配です。冬休みが終わってからもしばらく学校には来ないし、顔は青白いし、それに訳を聞いても話してくれません。

 

 でも一番変わったのは神代君だと思います。リンカーコアが砕かれてしまって、とっても辛い思いをしてるんだろうって、お見舞いに行っても曖昧に頷くだけでした。クロノ君は「放っておいてやれ」と言って、あんまり関与しようとしません。そして学校が始まって神代君が登校して来て私達は神代君の変わりように驚きました。長かった髪の毛をバッサリ切っているし、いつものように馴れ馴れしく話しかけてこなくなりました。おまけに「今まで迷惑かけてごめん」って謝られてしまいました。最初はこういう日もあるだろうってアリサちゃんが言ってましたけど、それが一ヶ月続くと反って不気味になります。それに、気になって声をかけて見たら、私のことを『なのは』じゃなくて『高町』って呼んでいるんです。リンカーコアがダメになっちゃったことが神代君にどんな影響を与えたんだろうって思いました。

 

 和人君は学校に復帰してからはいつもと違って、何だか男の子らしくなっていました。それで、登校した日に神代君を屋上に呼び出して、それから少しすっきりした表情で帰ってきました。一体何の話をしてたんだろう。

 

 私は今回の事件を通して、こんな私でもできることがあるんだって夢を見つけることができました。きっと簡単な道じゃないかもしれないけど、他のみんなも自分の道を進み始めてる。私もフェイトちゃんやはやてちゃん、そして和人君達とこの魔法使いって夢を追いかけてみたいって思います。

 

 

 

 

 決戦からしばらく時間がたって、正直あの時の俺はテンションがおかしくなってたと数日ほど悶絶する日々が続いた。そして折木は精神的ショックでしばらく学校を休んでいる。やっちゃったぜ。なのは達にも謝罪はしたけど、まあ好感度アップとか望んでるわけじゃない、というより智葉との約束もあるしこれからほとんど話すことも無くなるだろう。

 

 そして今、俺は復活した折木に屋上に呼び出されている。何というか目つきが違うね。

 

「今まで済まなかった。俺のせいで神代が辛い思いをしてたなんて知らなかったんだ。俺もちゃんとお前と向き合うべきだって思ったんだ」

 

 頭を下げられた。正直どう返していいか分からない。俺の中ではもう終わらせたことだ。今更蒸し返されても困る。というよりよく半殺しにした相手と顔合わせようって気になれたな。

 

「……目的は何だ?」

 

「ただ、謝りたかった。それと……」

 

「?」

 

「いつか、お前に勝ってみせる!」

 

 突然何を言い出したかと思って一瞬ポカンとした顔になったんだろう。そしておかしくて少し笑ってしまった。勝利宣言されたのに、不思議と嫌な気分ではない。寧ろ少し愉快な気持ちになった。相変わらずコイツのことは好きになれないが、その挑戦意欲は買ってやる。

 

「また、勝負する機会があったらな」

 

 もしまた勝負をすることがあるのなら、今度は純粋に自分達が身につけた技術だけで戦おう。言葉は交わさなかったが、その気持ちは心で理解できた。まあ、勝負する機会があればの話だけど。

 

 とまあこんなカンジに色々自分が仕出かしたことについての精算もできる限りしてきた。

 

 おっと、もう一つ約束が残ってたな。

 

「フフッ、約束覚えててくれたんだね」

 

 智葉が持っているのはバーゲンダッシュ春の新作、桜味。前回食べた時よりも気候は暖かい。俺もスパーカップの抹茶味を食べる。うん、美味い。

 

「美味いか?」

 

「うん、ちょっとしょっぱいのがきた後に甘くなる。ほら」

 

 智葉はあの時のようにスプーンで掬って俺に差し出した。俺はちょっと笑ってアイスを食べる。美味いけどどの辺が桜なのかよく分からん。

 

「ホレ、お返し」

 

 俺も抹茶味のアイスを少し多めに掬って差し出そうとしたら智葉が食いついてきた。

 

(お兄ちゃんと間接キスお兄ちゃんと間接キスお兄ちゃんと間接キスお兄ちゃんと間接キスお兄ちゃんと間接キスお兄ちゃんと間接キスお兄ちゃんと間接キスお兄ちゃんと間接キス)

 

「……スプーン咥えたまま何してんだ?」

 

「はっ、ごめん!」

 

 恍惚の表情から正気に戻った智葉はスプーンから口を離す。

 

 しばらくは会話も無く、二人はアイスを食べていた。

 

「……お兄ちゃん」

 

「?」

 

 智葉はいつになく真剣な表情でこちらを向いている。

 

「お兄ちゃんは、私がお兄ちゃんのことが好きって知ってた?」

 

「……それは兄妹として……って意味でか? それとも」

 

「うん、私はお兄ちゃんのことが男として好き」

 

 智葉が俺に好意を寄せてくれていることは分かっていた。子ども同士だけれどキスもしているし、少なくとも何とも思ってない相手とキスするほど安くないだろう。

 

「ごめん、兄妹だしこんなの変だってことくらい分かってる」

 

「……確かに兄妹同士で結婚は法律で禁止されてるな」

 

「でも、ちゃんと告白したかった。他の女にむざむざ掠め盗られるのは嫌だった。後悔だけはしたくなかった」

 

 気がつけば智葉の目から涙が零れ落ちていた。俺は無意識の内に彼女を抱き寄せていた。

 

「ひゃ!?」

 

 抱き寄せればほのかなラベンダーの香りが鼻腔をくすぐる。そういえばこの前母さんの目を盗んで香水使ってたのを思い出してクスリと笑った。

 

「ああ可愛いなぁもう!」

 

「え!? え!?」

 

 彼女の身体の柔らかい感触が全身で感じられて、その体温は俺を幸福な気持ちにさせてくれた。

 

(わ、私お兄ちゃんに抱きしめられるううううううううううううううう!!?)

 

 この娘が心の底から愛おしい。心の支えになってくれた彼女を今度は俺が全身全霊で守り抜く。

 

「あわわわわわわわ」

 

「俺も好きだよ、智葉」

 

 俺は生まれて初めて心からの告白をした。そして智葉は気を失った。

 

 

 

 

 あれから10年。智葉と正式に付き合ってからもう10年だ。俺達二人は私立聖祥大学付属高等学校を卒業後は都内の大学へと進学。そして入籍した。今は都内のマンションで二人とも暮らしている。

 

 両親は反対するかと思ったが、大賛成だった。というか俺と智葉が血が繋がってないことを知って彼女はショックを受けるかと思ったが「大勝利!!」驚喜していた。その経験談を元に『お兄ちゃんだけど血が繋がってなければ問題ないよねっ』とかいう小説を書いているとかいないとか。

 

 あれから大して魔法は使っていない。波紋の呼吸は止めてないが、黄金長方形探しも止めてしまった。智葉に波紋を教えるべきかちょっと悩み中だ。

 

 魔導師組みが今何やっているのかはもう知らない。中学からはほとんど話さなくなったし、あいつらは中卒だし、だんだん疎遠になっていった。だが、折木のやつは何度か俺にメールを送ってくる。

 

 俺ももう19歳か、そういえば19歳って何かあったような。……と思ったが、忘れてしまった。忘れるくらいだから別に大した事じゃないだろう。

 

 智葉は美しく、大人っぽくなっている。中学、高校と何人も告白されたらしいが、全員撃沈。俺以外愛するつもりはないと断ったそうだ。逆恨みされて闇討ちされたこともあるが、正直鉄パイプくらいじゃ俺はどうにもならん。機関銃でも持ってこられたら少し話は変わるけど。

 

<平和だなぁおい>

 

「ああ、そうだな」

 

 すっかり出番がなくなった皇帝(エンペラー)はもっぱら話し相手をしてくれる。あの鷹丸とかいう神も俺に連絡を寄越すことはなくなった。

 

「ふわぁ、兄さんおはよう」

 

「おはよう」

 

 隣で寝ていた彼女を起こしてしまった。中学に上がった頃から子どもっぽいからという理由で『兄さん』と呼び方を変えている。結婚してもその呼び方は変わらない。何故かと聞いてみたら『どんな関係になっても兄さんは兄さんだから』らしい。

 

「今日って一限目に何かあったっけ?」

 

「何もなかったと思う。もうちょっとのんびりしていられるね」

 

 二人は向かい合って微笑みを交わした。

 

 

 

――魔法少女リリカルなのは~踏み台、(強制的に)任されました~ 完――  




これから彼はどうなるでしょうか。

この平和も一時だけのものかもしれないし、永遠に続くかもしれません

もしかしたらひょんなことからSTS編に巻き込まれるかもしれませんし、死んだ後にまた別の世界に転生させられるかもしれません。

それでは一先ずさようなら


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