魔法少女リリカルなのは~踏み台、(強制的に)任されました~ 作:妖刀終焉
聖祥大附属小学校へと入学、そして幸か不幸かあの三人娘と同じクラスに配属されることになった。
あのオリ主はわからん、名前知らんし。でも多分一緒のクラスだろうと思ってたら本当に同じクラスだった。これはやり易い。その内あいつの能力についても調べておこう。
智葉は別のクラスになったことに納得いかなかったようだが、こちらとしては兄のみっともない姿を見せずに済むのでありがたい。
「よう俺の嫁達~」
「ゲッ! また来た」
俺を見て顔を青くする多分美少女の部類に入るであろう金髪の少女、名をアリサ・バニングス。日米で大企業を経営する家の一人娘で本人もかなりの天才児だ。とらハ3にもアリサという少女は出てくるが……うん、とりあえず目の前にいるアリサとアリサ・ローウェルは関係ない。
彼女のまた来たという言葉通り、俺は何度もこの三人に言い寄っている。
「つれないこと言うなよ~、まったくツンデレだなアリサは」
「違うって言ってるでしょうが!」
頭を撫でようとした手をアリサは侮蔑の表情で払いのける。
本気で撫でようなんて思ってないよ、あくまでポイント稼ぎのためだから逆に払いのけて貰わないと困る。こうやって言い寄るのは一体何度目になるだろう。半年を過ぎた辺りから数えるのは止めた。
今度は縮こまっているなのはに目を向ける。以前ほど怯えられなくなってきたけどやはり友好的な態度には見えない。
「恥ずかしがっちゃって、そんなところも可愛いぜ!」
「だからそうじゃないって言ってるのにぃ」
「照れんなよ、可愛い子猫ちゃん」
なのは達は一斉にドン引きし始める。誰だってそうなる俺だってそうなる。
今ここで吐いてもいいですか。もしくは泣いてもいいですか。
最後に俺と目線を合わせないようにしている、月村すずかに顔を向けた。彼女も工業関係の会社のご令嬢で、アリサほどではないけれど頭がいい。『夜の一族』と呼ばれる吸血鬼の一族で驚異的な身体能力を持っている。吸血鬼といっても日光の下を平然と歩いているから型月やジョジョに出てくる吸血鬼とは別のものだろうと思う。
「おう、すずか。そんな情熱的に見つめないでくれ。照れるじゃないか」
「別に……そんなことないけど(寧ろそらしてるんですけど!)」
「二人に嫉妬してるのか? 安心しろよ、皆大好きだぜ」
「うぅ」
嫌がらせをする俺が言うのも変だが、三人とも、もっと冷たくにあしらえばいいのに。この手の嫌がらせは過剰に反応するから加害者側も面白がって止めないんだよ。
そして引き際も大事だ。なのははともかくアリサとすずかが本気になれば俺だけじゃなく家族にも迷惑が掛かる。やりすぎは禁物だ。周りにも嫌われないように配慮しながらというのはなかなか難しい。俺の人生はこの9年間で終わりじゃないんだから、全てが終わった後で、『周りは敵だらけでした』じゃ話にならない。
とまあ若干不安はあるものの、俺は順調にこの三人から嫌われている。ポイントもやっとのことで2000を超えた。
「ちょっと和人! 見てないで助けなさいよ!」
「えっ、俺!?」
「あアん!? またテメエか、このモブがッ!」
ちなみに俺がモブ呼ばわりしているのはこいつだけ。他は普通に名前で呼んでる。
だから周りからは俺と折木の仲がすこぶる悪いふうに見られてる程度に収まっている。
◆
「……まただ」
いつものようにドアの隙間からお兄ちゃんのクラスを覗く。
今日もお兄ちゃんはあの三人にちょっかいを出していた。
お兄ちゃんがあの三人に言い寄っているのを知ったのは小学生になって半年を過ぎてからだった。その時はただの悪ふざけだと思ってなんとも思わなかったけど、これでもう三年目。
おかしい。こんなことは許されない。
そうだ これは夢なんだ 私は今、悪い夢を見ているんだ。目が覚めたとき、私はお兄ちゃんと一緒に公園で遊んで帰りに駄菓子屋に寄って二人のお小遣いでちょっと贅沢なもの買って(以下略)
何であんなことをしているのか聞きたいと思ったけど、なんだか恐くて聞けないや。
「お兄ちゃん……」
私の大好きなお兄ちゃん、私があげたプレゼントをどれも大事にしてくれるお兄ちゃん、一緒に遊んでくれるお兄ちゃん、なんだかんだいって宿題を手伝ってくれる優しいお兄ちゃん、とっても強くて地球一かっこいいお兄ちゃん。
そんなお兄ちゃんがああいう風に他の女に笑顔を振りまいているのを見ると胸が苦しくなって……あいつらに殺意が沸く。
あんなぽっと出のやつらに私のお兄ちゃんを渡してたまるか。
あいつらが憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい 憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい 憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい 憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい 憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい憎たらしい 。
「あの」
ちょっとした気の迷いだよね。あいつらより私の方がよっぽど美人だよ。あんなお兄ちゃんを貶す様な態度は絶対にとらないし、私の方がお兄ちゃんといる時間だって長いし、私の方がお兄ちゃんのことを何百倍も知ってるんだよ。
「あの!」
「煩いな誰!?」
そこにいるのは教室に入れなくて困っている先生でした。
やばっ、もうホームルームの時間!?
「あなたこのクラスの子じゃないわよね?」
「あ……あはは……――失礼します」
すぐに正気に戻してあげるから、待っててねお兄ちゃん。私はいつだってお兄ちゃんの味方だからね。
◆
ふう、やっと今日の授業も終わった。私立の小学校だけあって前世の時とは比べ物にならないくらい難易度も上っている。中学生までならなんとかなるけど一応予習は忘れずやっている。予習といっても高校入試の問題だけどね。
「おーい、帰ろ……いねえ」
「あの三人なら折木と一緒に先に帰ったぞ」
俺の後ろの席にいる
「いつ?」
「授業終わってお前が教科書かばんに詰めてる間」
と、こんなふうにいつもあの四人からは逃げられる。
嫌われすぎワロタ。
「全く、なんで折木ばっかりモテるんだコンチクショーーーッ!」
ギアッチョをなだめた後に俺は学校を出ると家には戻らずに海鳴で一番高いビルの屋上へ移動。
「ふう、いい風が吹いてるなぁ」
<相変わらず旦那は高いところが好きだねぇ>
「いいじゃないかよ。何もない時くらい好きにさせてくれ」
しかし見た目だけでなく性能もすごい、この双眼鏡は数km先の鳥の羽の本数までアップで見ることが出来るしピント合わせもそれほど難しくなく便利。最初は海鳴の地理を覚えるために始めたことだが、今となっては単なる娯楽。暇な時にこれで野鳥や動物の観察をして癒されている。
喫茶翠屋が目に入る。そういえば転生してからここに行った事ないんだよな。コーヒーとシュークリームが絶品らしいから機会があれば母さんか智葉に買ってきてもらおう。
次に嫌でも目に入る二つの豪邸。言うまでもなくバニングス邸と月村邸。月村邸では猫が、バニングス邸では犬が大小様々放し飼いにされている。行ってみたいなーでも追い返されそうだなー。
<おい旦那!>
「何?」
<その双眼鏡をゆっくり左へ移動させてみな>
言われたとおりに双眼鏡を左へと移動させてみた。
「あれって!」
見えたのは下校途中と思われる例の四人組み――――が黒服の男達に取り押さえられている光景だった。人気の無い場所にいるせいで叫んでも誰も助けに来てくれない。この距離じゃ俺が行っても間に合わないな。
あの四人のうち二人は大金持ちのお嬢様、身代金目的や会社関係のことで誘拐されても不思議じゃない。全員を捕まえようとしているのは目撃者を無くすためかな。ナンバーは……流石に隠してあるか。
こんなものまであるとは、芸が細かいぜ英雄王。
折木のやつは抵抗して自動車の外に逃げ出したもよう。携帯で何処かへ連絡した後に自分もあの自動車を追っていったのか。魔法で強化しているのか自動車を見失わないくらいのスピードが出ている。
「俺達も行くぞ」
<あいよ>
姿を消すマントと空を飛ぶ靴(俺に飛行適正が無かったから使ってる)を着けて空を飛べば誰にも気づかれずに、かつ一直線で敵のアジトまで行ける。なんと素晴らしいことだろう。
「神代 劉牙いっきまーす!」
助走をつけてガンダムのパイロットの掛け声と共に勢い良く屋上から飛び上がる。空を飛ぶのは難しい。ちょっと集中力を乱せば建物にぶつかりそうで危険なのだ。最初の頃は失敗してよく顔に擦り傷や切り傷をつくったよ。
折木にばれないように別ルートを辿ってあの黒塗りの自動車を追跡している黄金虫を見失わないように飛ぶ。今日の夕飯までに片をつけちまおう
到着したのは誰も寄り付かないだろう廃工場。数年前まで何かを造ってたらしいが経営なんで閉鎖したらしい。秘密の隠れ家にはもってこいの場所だな。
「人はどれくらいいるとか分かるか?」
<今調べるぜ………………三人が監禁されてるだろう部屋に四人、他の部屋に十八人待機してやがる>
なるほど、何かあったときに援軍を呼び出す手筈になっているのか。なかなかどうして隙が無い。
<オリ主の野郎は三人がいる方へ行ったみてぇだぜ>
「じゃあ俺達は先に待機組みを片付けるか」
これくらいの修羅場を乗り越えられなきゃこれからやっていけないぜ。
俺は正体がばれないように仮面を被って廃工場へと乗り込んでいった。
◆
「……こんなもんか」
首をコキコキと鳴らして武器をしまう。
全員油断してたお陰で三分で終わったぜ。実質ほとんど不意打ちだったしな。
「ぐ……うぅ……」
「いてえよぉ」
「あが……」
目の前には死屍累々……は言い過ぎだな、全員生きてるし。しばらく再起不能だろうけどね。
拳銃などの重火器も全部破壊してある。といっても普通の拳銃に当たっても俺のチートボディじゃ屁でもないんだよね。恐いから思わず避けちまうけどさ。
そして
縄で縛っておこう、俺は用心深いんだ。侵入した際に見つけた工場で使ってたと思われる頑丈そうなロープを持ってきてその辺に縛り付けておいた。
「向こうはどうなってるかね、ちょっと見てくるか」
まさかやられてねえだろうな。
一抹の不安を覚えながら、俺は出来るだけ物音を立てないように三人が監禁されているであろう部屋まで辿りつく。
『全くおめでたい頭してるよなお前ぇ~、態々化け物を助けようとするなんてよぉ~』
『何を言ってるんだお前は!?』
壁越しに折木と知らない男の声が聞こえる。
<四人のうち三人はもう倒してるみてえだな。だが、どうやら中は現在進行形で膠着状態のようだぜぇ>
迂闊に動けば、それは人質の死を意味する。ここであの四人を死なせるわけにもいかない。
『あぁ、知らねえよなぁ~、知ってるわけないよなぁ~。月村の一族が吸血鬼って化けモンの一族だってことをな!!』
なーる、あの男達は身代金だけが目的じゃなかったってことか。
『何出鱈目言ってるのよ!』
『……アリサちゃん、本当のことなの。今まで秘密にしててごめん』
『そんな……すずかちゃん』
魔物娘とか人外美少女とか一種の萌え要素だと思うんだけどな~。でもすずかは美少女吸血鬼ってカンジはしないんだよね。吸血鬼といえば金髪か銀髪だし、目も赤くないし、ほのかに見える犬歯もない。もしかしたらあるかもしれんけど、見えないんじゃあねぇ。やっぱセクシーな犬歯がないと。
『化け物? だったら何だって言うんだ!』
『和人君……』
『たとえすずかが何であろうと俺達の友達だ!』
『そうよ! 吸血鬼だから何だって言うのよ!』
『すずかちゃんは私達の大切な友達だよ! 今までも、これからも!』
『アリサちゃん……なのはちゃん……』
彼女達の絆はすずかの正体だけでは揺るぎはしなかった。寧ろ結束はより強くなったのかもしれない。
『お涙頂戴エピソードをどうもありがとう、そしてくたばりやがれ糞ガキ!』
『みんなは下がっててくれ!』
男は拳銃を構え、折木は鉄パイプを構える。
向こうは拳銃を持っているってのに、あいつはデバイスも持たないでこの状況をどう打破するつもりだ。
男は何のためらいもなく折木に向かって発砲した。皆がもうダメかと思った時。
折木はそれを予知していたかのように鉄パイプで滑らせて弾丸の軌道を変えてやり過ごした。勿論後ろの三人には当たっていない。
『な……にィ!?』
『これで終わりだ!』
折木の鉄パイプの一撃は男のアバラへと命中。あまりの痛みに男は拳銃を落とした。
それを見逃すわけもなく、拳銃を蹴り飛ばして男の手の届かないところまでおいやる。
『皆、早く逃げるぞ! さっきここのことは警察に連絡した。もうすぐ来てくれる』
ポケットから取り出した十得ナイフで三人を拘束している縄を切って、この部屋から連れ出す。
おっと危ない。俺も早くここから脱出したほうが良さそうだな。
「へ……へへ。せめてあの糞ガキだけでも」
何ィイイイイ!? あの男、上着の裏ポケットに拳銃を隠し持ってやがったのか。
しかもあの四人は逃げるのに必死でこのことに気づいてない様子。
仕方ないことだがこいつはいかーん!
「死にやが「チョイナーッ!!」ガハッ!」
さっき鉄パイプをくらった部位への跳び蹴りだ。こいつは痛かろう。
「クソッ……ついてねえぜ」
男はそう言い残して意識を失った。
「帰るか、腹減った」
後に
強すぎワロタ。
正統オリ主の能力が一つ判明しました。
予知眼
数秒先の未来を見ることが出来るが、使いすぎると視力が落ちていくというデメリットあり。
任意で発動可能。
次回から無印編に突入です。