魔法少女リリカルなのは~踏み台、(強制的に)任されました~   作:妖刀終焉

8 / 19
他人家の庭で全力全壊兄妹喧嘩


第8話

「もう一度だけいうぞ、『ジュエルシードを渡してくれ』」

 

「お兄ちゃんがどいてくれたら考えてあげる(渡すとは言ってない)」

 

 話し合いの余地はなさそうだなと思い、皇帝(エンペラー)のトリガーを連続で6度引く。そして撃鉄の音と共に6発の銃弾が射出されて智葉へと向かっていく。

 

 普通の人間ならば銃弾が放たれれば恐怖して身を屈めるなり、避けるためにその場から移動するだろう。しかし智葉はその場から微動だにしなかった。

 

 する必要がなかったのだ。

 

「うふふふふふふ。お兄ちゃん、この素晴らしい力があればこんなこともできちゃうんだよ」

 

<おいおい、あんなのありかよ!?>

 

 意外! それは髪の毛ッ!

 

 智葉の長い髪はさらに伸びてまるで手足のように動かし飛来してきた銃弾5発を包みこんだ。包まれた状態では銃弾の操作が出来ない。おまけに弾丸が吸収されてしまったことから魔力吸収能力もあるかもしれない。皇帝(エンペラー)との相性は悪そうだがこれで相手の特性の一つはわかった。やりようはある。

 

「ご馳走様。でももっと食べたいな」

 

「そうか、お前が大人しく降参してくれたら家に帰って一緒に昼飯食べられるんだけどな」

 

 皇帝(エンペラー)を腰のホルダーにしまい、剣を地面に刺してから両手を合わせる。

 

「これならどうだ! シャボンランチャー!」

 

 巨大なシャボン玉が分裂して多数の小さなシャボン玉となり、智葉を取り囲む。

 

「まあ、綺麗なシャボン玉」

 

 シーザーの技と原理は同じだが、こいつには波紋ではなく魔力が流してある。スフィアのように思うように動かすことが出来る上にシャボン玉の弱点であるスピードの遅さもある程度カバー出来る。実戦で使うのはこれが初めてだが上手くいった。

 

「でもこれで一体どうしようというのかしら?」

 

「そいつは見てのお楽しみってやつだ。ところでお前、さっき俺の銃弾をいくつ食った?」

 

「え? 5つだよ……あれ? でも撃鉄の音は6回……」

 

 そうだ。智葉は一発だけ吸収し損ねている。元々全弾当てるつもりで俺は6発撃ったわけじゃない。『下手な鉄砲数撃ちゃ当たる』ってやつだ。

 

 最後の一発は地中に隠してあった。そして今は智葉の真下にある。

 

「ひゃあ?」

 

 全く速度が衰えていない銃弾が智葉の真下から発射される。彼女は反射的に髪で防がずに上体を右に逸らして銃弾を回避した。その際に俺が放ったシャボン玉に触れた(・・・)。 

 

 衝撃を与えられたシャボン玉は地雷の如く爆発し、さらにその爆発が連鎖して周りのシャボン玉も爆発していった。気がついたときにはもう爆破からは逃げられない俺の新技、名づけて『シャボンマイン』。起爆機能を持ったシャボンは軌道が変化する銃弾とは相性抜群だぜ。

 

「い、いたい……」

 

 爆破によって生まれた煙がはれると服や露出していた肌が少し焦げている智葉が片膝をついている。まだ試作段階なためにまだまだ改善点は多そうだ。

 

「でもこれがお兄ちゃんの愛なんだね。知ってるよ、傷つけ合って生まれる愛もあるんだよね」

 

 どこでそんなことを知ったのかを小一時間問い詰めたいところだが、それはまたの機会にしよう。

 

 さっきの爆発で発射したシャボンは全て消えてしまった。なのに片膝をついたまま地面に顔を向けて起き上がらない。髪を伸ばしすぎたせいか地面についてしまっている。

 

「……まさかッ!?」 

 

 地面に刺してあった絶世の名剣(デュランダル)の原典を抜いて回転斬りのように周囲を切り払う。俺の予想は当たっていた。俺の後ろに智葉の髪の毛が迫っていたのだ。危うく自分の策でやられるところだった。

 

「あーあ、あと少しだったのに」

 

「今のはやばかったな」

 

「やっぱり一個だけじゃお兄ちゃんに私の愛は伝えられないよね」

 

 智葉はポケットから取り出した5つのジュエルシードを髪に貼り付けていく……って智葉の髪は魔力を吸収するからやばいじゃねーかッ!

 

「うおおおおおおおおおおお!」

 

 絶世の名剣(デュランダル)を構えて走り出す。吸収が終わる前に髪を切ってジュエルシードを切り離す。

 

「な、なんだ!? 足が!?」

 

 足が動かない。と思ったらさっき斬った髪が俺の足に纏わりついている。なんてことだ、切り離しても操作可能なのかよ。

 

「すごい! すごいすごいすごいすごい!!」

 

<なんつー魔力だ。これがジュエルシード6個分の魔力……か>

 

 原作でなのはとフェイトが海のジュエルシード6個を封印する話があるが、あれは意思を持たない水にとりついている。しかし今回は強い想いを持つ智葉にとりついているのだ。やばいとしか言いようがない。

 

 纏わりつかれてたのはそれ程長い間ではなかった。切り離すと動かすことは出来てもパワーは激減するみたいだ。

 

「さあお兄ちゃん、もっと愛死合おう!」

 

「なんか恐い言葉が聞こえた気がするんだけど気のせいだよね?」

 

 彼女が先程とはうって変わって臨戦態勢に入る。髪の毛は刃物のように先が尖った形へと変化。髪の色が銀色なだけに本物の刃に見える。しかもそれが複数だ。

 

 俺はもうなりふり構ってられないと思い、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を発動させる。そしてランクの低い宝具を3艇射出した。

 

 しかし向こうも髪でつくった武器で迎え撃つ。宝具は叩き落されたが向こうの髪で出来た剣はボロボロだ。

 

「すごーい! お兄ちゃんってそんなことも出来るんだね」

 

 ボロボロになった部分は抜け落ちて、また新たに髪の毛が生えて武器となる。魔力が続く限り無限に武器をつくることが出来るなんて恐ろしい能力だ。ランクの高い武器をぶつけても剣を使い捨てに出来る以上意味はなさそうだ。

 

「こうやったら私にも出来るかな?」

 

 髪で出来た剣が王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)のように射出されてきた。

 

「くっ」

 

 一瞬驚いて硬直してしまったがすぐに持ち直して剣で叩き落す。

 

「やった! 私にも出来た!」

 

 嫌な予感がした。俺は後ろから全ての選定の剣の原典とされる原罪(メロダック)を取り出して絶世の名剣(デュランダル)の原典と共に構えた。

 

 俺の嫌な予感は的中した。彼女はまるで無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)のように髪の毛で武器をつくっては投擲、つくっては投擲を繰り返しての連続攻撃を繰り出してきた。俺は投擲された武器二本の宝剣で切り裂き、撃ち落し、薙ぎ払い、それでも防ぎきれなかった分は防御用の宝具を展開して防ぐ。勿論防戦一方というわけじゃなく、こちらも分割思考を使って宝具を射出しているが、向こうの限界がわからないし宝具の数だって無限じゃない。故にこの我慢比べがいつまでつづくのかなんてわからない。おまけに向こうは髪の毛だけで攻撃と防御が同時に出来るというインチキ能力だ。

 

 我慢比べは時間間隔がおかしくなるほどに続く。そういえばここすずかの家の庭だったな。封鎖結界が無けりゃ宝具と硬化した髪の毛の流れ弾でえらいことになってたな。とかどうでもいいことを考えていたら突然向こうの攻撃が止まった。まさか魔力が切れたのか。それとも我慢比べをすることに飽きて別の戦法に変えてくるのか。どちらにしろ相手から目を離すのは危険極まりない。

 

 智葉がスタスタとゆっくり俺に近づいてくる。警戒をせずにニコニコと笑いかけて俺の警戒心を煽った。

 

「何のつもりだ?」

 

「もう……勝負はつきましたから」

 

「は?」

 

 王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の中の宝具はまだ半分も撃ちつくしていない。それなのに勝負がついた?

 

「すぐわかりますよ。もう仕込みは終わりました。あとはゆっくり料理するだけです」

 

「何言って……なっ!?」

 

 髪が腕に巻きついて剣が地面に落ちる。今まで撃ち落してきた髪の毛全てが今俺に襲い掛かっている。気がついたときには足にも巻きついて動けない。弱い力でもそれがさっきの数十倍あったらそれは充分脅威となる。

 

「くそっ! このっ!」

 

 急いで巻きついた髪の毛を振り払い、近くにあった新たな宝具を手に取り髪の毛を迎え撃つ。先程まで宝具と撃ち合ってた量は半端ではない。四方八方全方位から襲い掛かってくるから逃げることも出来ない。

 

「そうだ!」

 

 俺は絶世の名剣(デュランダル)から炎を出す宝具に持ち替えて辺りの髪の毛を焼き払う。何故もっと早く気がつかなかったんだろう。

 

「これで「そう、これでお終いです」なっ!?」

 

 すでに智葉は目の前にいた。そして俺が逃げられないように抱きしめる。腕だけじゃない、髪を巻きついて身体を動かすことが出来ない。この至近距離で宝具を撃ったら自爆する。

 

「つ~かまえたっ♪」

 

「ううっ」

 

 魔力が髪から、いや全身から奪われていく。力がどんどん抜けていく。

 

「あ……あ……」

 

「die好きですよお兄ちゃん。私だけのお兄ちゃんずっと離さない誰にも渡さないこれは私だけのもの誰にも触らせない愛死てるよおにいちゃん」

 

「フハハッ! クックックッヒヒヒヒヒケケケケケ! ノォホホノォホヘラヘラヘラヘラアヘアヘアヘ!」

 

「あれ? 壊れちゃったのかな……?」

 

 別に壊れてるわけじゃない。力が残り少ないから喋らないし笑ったのもこっちに注意を引きつける為。6発目の弾丸はまだ生きてるんだぜーッ。操作の方は皇帝(エンペラー)に任せてたけどな。

 

「はぐぅ!?」

 

 上空に打ち上げたままの弾丸は今になって智葉の頭に着弾する。その髪の毛は魔力は吸い取れるだろうがそれは彼女の任意。シャボンでの不意打ちでそれは証明されている。

 

 そして一瞬の隙をついて俺は拘束を逃れ

 

「いたたた……――っ!?」

 

 最後まで落とさなかった短剣を智葉の胸に突き刺す。

 

「…………あはっ、あははははははは! もしかして最後の手段ですかお兄ちゃん? そんな小さな剣で私がどうにか……どうにか……あれ? あれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれ?」

 

 智葉は自分の力が急激に抜けていくことに戸惑っていることだろう。さっきこの短剣を抜いた時にこの作戦を閃いた。

 

「ルールブレイカー……な~んてな」

 

 破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)はメディアの逸話から生まれた宝具であり、原典は存在しない。しかし古今東西を探せば魔術無効化、契約解除の宝具なぞいくらでもある。たまたま短剣の形状をした宝具があったのは運がいい。殺傷力の低さから相手はきっとセイバーみたく油断してくれるだろうから。近づいて刺さなきゃいけないのが玉に瑕だけどな。

 

 智葉は気を失い元の9歳の姿へと戻る。ジュエルシード6個が封印された状態で彼女から分離されたからだ。記憶の処理もしておかないと。

 

<最強だ! 俺達は最強無敵のコンビだぜぇーッ!>

 

 別に悪い気はしないけど、デバイスでもコンビって言うのだろうか? 

 

「魔力を吸われ過ぎた」

 

 魔力回復薬を取り出し一気飲みしたら咽た。不味い、絶対にもう一杯なんて言わないぞ。

 

 

 

 

 智葉に記憶の処理を施した後、彼女を背負ってユーノの気配を辿った。ユーノはかなり遠くまで離れていたようで探すまでに少し時間がかかった。

 

「劉牙、大丈夫だった?」

 

「ああ、ほら」

 

 6個に増えたジュエルシードをユーノに手渡す。封印してあるし別に手渡しでも大丈夫だろう。 

 

「なのはは?」

 

「応急処置はしてあるけど、やっぱり病院に連れて行ったほうがいいかもしれないよ」

 

 そこまで酷いのか。と思い、智葉の治療にも使った回復薬をなのはに振り掛ける。死に掛けてても治せるものだしこれで病院に行く必要もないだろう。

 

「それは?」

 

「俺がレアスキルでつくった回復薬だ。近いうちに目を覚ますだろう」

 

「良かった」

 

「なあ、ユーノ。このことは俺達だけの秘密にしないか?」

 

「……へ?」

 

 ユーノはあっけにとられた表情で俺を見ている。

 

「『今回暴れてたのは智葉だ』ってこと秘密にしておいてくれないかってことだよ。いくらなのはが俺に惚れてるっていっても妹が重症負わせちまったらもしかしたら俺のイメージが悪くなるかもしれないだろ? だからだよ。今回暴れてたのは赤の他人で、俺は颯爽となのはを助け出したってことにすr「君は……何を言ってるんだ」」

 

「君はなのはに申し訳ないとは思ってないのか! イメージダウン? 惚れている? ふざけるな! なのははもう少しで死ぬかもしれなかったんだぞ!」

 

 俺の自分勝手な言動にユーノはキレていた。いい、それでいいんだ。

 

「だから助けたじゃねーかよ! おまけにジュエルシードも増えた! お前だって人のこと言える立場じゃねーだろーがよ。なのはに危険なジュエルシード探しさせてさ。そもそもお前がジュエルシードを見つけたんじゃないかよ! そうでなきゃ智葉だってこんな目に合わずに済んだんじゃねーかよ! 俺は悪くねえ!」

 

「それは……そうだ」

 

 ユーノは悔しそうに奥歯を噛んでいる。

 

「ジュエルシードがここ(海鳴)に散らばったのは僕のせいだ。それはとても申し訳ないことだと思ってる。確かになのはに謝れだとか僕が言えた義理じゃない。だけど君の妹がこんなになるまで放っておいたのは君じゃないか! なのは達に言い寄ってばかりでその子に構ってあげなかったことについてはその子に謝るべきだ!」

 

「んだとでめぇ! 話変えんじゃねえよ!」

 

 それから何回か平行線で話が続いた後ユーノは「君とはしばらく顔を合わせたくない」と言ってなのはを背負い何処かへ飛んでいった。

 

 俺はいつまでもよそ様の家に無断で居座るわけにもいかず、智葉を背負って家へと帰った。両親には遊びつかれて寝ている智葉を見つけて連れ帰ったと言い訳をした。

 

 そして俺は現在智葉の部屋で智葉が目を覚ますのを待っている。

 

「おい、皇帝(エンペラー)

 

<あ、なんだよ?>

 

「笑えよ」

 

<イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!>

 

「ワッハハハハハハハハハハハーーッ! ……はぁ」

 

<よくもまぁあんな心にもねえことをペラペラと……>

 

 全く本音が無かったわけでもないけどな。『ジュエルシードが落ちてこなけりゃ智葉がこんな目に合わずに済んだ』っていうのは事実だし。だからといってユーノが憎いわけではないが。

 

「ううん……誰? うるさい……」

 

 ちょっと煩くしすぎたようだ。目を擦りながら智葉が目覚める。安心した。いつもの智葉だ。さっきまで戦ってたのが悪い夢みたい。

 

「智葉、ごめん!」

 

「へ? お兄ちゃん?」

 

「もっとちゃんとお前に気を配ってやれれば……」

 

「何言ってるの? というか頭上げてよ」

 

 記憶を消したせいで今日のことは覚えてないだろう。今の智葉に謝っても自己満足以外の何者でもないだろう。でも謝りたい。

 

「正直に言おう。なのは達のことは別になんとも思ってない」

 

「じゃ、じゃあなんで言い寄ってるの? いっつもいっつも」

 

「それは……」

 

「それは?」

 

「すまん、言えない。……でもこれだけは言える。今年中に全部終わる。終わったらあいつらと関わることはなくなる。これは絶対だ。だから来年まで待ってて欲しい」

 

 智葉は何も言わない。怒っているのか困惑しているのか。それとも喜んでいるのか。

 

「本当に?」

 

「本当だ」

 

「絶対?」

 

「絶対零度より絶対だ」

 

「ふふっ、なにそれ」

 

 その微笑に大人の姿の彼女が重なり不意にドキリとさせられた。今思えば大人智葉は非の打ち所の無い美女だったな。

 

「わかった。その代わりちょっとだけ目を瞑って?」

 

「ん? ……こうか?」

 

 言われたとおりに目を瞑った。何だろう。そういえばギャルゲーとか恋愛系のラノベだとこの後……

 

「――――ン」

 

「……え?」

 

 気がつけば、俺の唇は智葉に塞がれていた。

 

 俺のファーストキスの相手は義理の妹だった。

 

 

 踏み台ポイント 現在5000ポイント突破




ご褒美くらいないとやってけないですよね

2013/2/21 無毀なる湖光を原罪に変更
      ユーノとの言い合い改訂
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。