IS/Zero   作:小説家先輩

1 / 47
どうも、はじめまして。小説家先輩と申します。Fate/Zeroを見た瞬間に「小説を書かなければ!」という衝動に駆られついつい書き始めてしまいました。あと、この物語にはいくつかオリジナル設定が含まれており、「それは違うだろ!」とか色々と言いたいことはあると思いますが、生暖かい目で見てもらえると嬉しいです。


prologue 夢の終わり

聖杯戦争集結から数年後のある夜、衛宮切嗣は軒下で月を見ていた。

 

「……爺さん、こんなところにいたのかよ。ちゃんと布団で寝ないと風邪を引いても知らないぞ」

 

「あぁ、士郎か。済まない。少し月を見ていたんだ」

 

「月か……」

 

そう言うと士郎は切嗣の隣に腰掛ける。

 

「……子供の頃、僕は正義の味方に憧れていた」

 

ふと、そんな言葉が口を衝いて出る。それは長い長い間ずっと心の中に置き去りにした忘れていた言葉だった━━━いつか誰かに言おうとして言い出せなかった。だが切嗣にそれを思い出すことは出来ない。その言葉を聞いた途端に、士郎の顔が不機嫌になる。

 

「なんだよそれ。憧れてたって、諦めたのかよ」

 

士郎は、切嗣が自らを否定するような言葉を嫌う。そしてその思いに対し、切嗣は内心で常に何とも言えない感情を抱いている。それは士郎が義父である自分のことを偉大な人物だと思い込んでいる。衛宮切嗣の過去━━彼の生涯がもたらした災禍と喪失、を何一つ知りもせずに。もし、切嗣が士郎と過ごした過去に後悔があるとするなら、自分に対して的外れな憧れをもった士郎にそれがどんなに愚かなことかを教えることできなかったことだ。

 

切嗣は遠い月を眺めるフリをしながら、悲痛な思いを苦笑で誤魔化す。

 

「うん、残念ながらね。ヒーローは期間限定で、大人になると名乗るのが難しくなるんだ。そんな事、もっと早くに気が付けばよかった」

 

もっと早くに気づいていれば━━━願望機による奇跡などという甘言にも釣られることはなかっただろう。士郎は、さっきの切嗣の苦し紛れの説明について、やがて彼なりに納得したらしく神妙な面持ちで頷いている。

 

「そっか。それじゃしょうがないな」

 

「そうだね。本当に、しょうがない」

 

切嗣も悼みをこめて頷く。そんな言葉を言っても今更どうしようもないと分かっていながら、ただ遠い月を眺めている。切嗣は自分が過ごしてきた中で最も綺麗な景色を士郎が胸に深く刻み込んでくれることがたまらなく嬉しかった。

 

「うん。しょうがないから俺が代わりになってやるよ」

 

淡々と夜を照らす月明かりの中で、士郎は、ごくさりげない口調で誓いを立てる。かつて切嗣が夢半ばで諦めたモノに”なる”と。

 

「爺さんはオトナだからもう無理だけど、俺なら大丈夫だろ。まかせろって、じいさんの夢は━━━」

 

士郎は誓いの言葉を続ける。今夜この景色とともに、忘れようもない思い出として、自らの胸に刻み込んでゆく。それは━━━いつしか始まりを忘れ、ただ磨り減っていくしかなかった切嗣には望むべくもなかった救済だ。

 

「そうか。ああ……安心した」

 

彼は自分のように生きようとも、この自分のように過つことはない。その理解に、胸の内の全ての傷が癒されていくのを感じながら、衛宮切嗣は目を閉じる。

 

そして、正義の味方を目指しその夢半ばで諦めた男は眠るようにその生涯を閉じた。




なんといいますか、fateのまんまですね。……えっ?パクリ乙?いえいえ、これはあくまでプロローグですから心配なさらないでください。今度こそIS世界に入ることになりますので。因みに次の話から司会進行を手伝ってくれる出演者の方をお呼びする予定なので、それも含めて楽しみにしていただけると幸いです。それでは次の話をお楽しみに。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。