IS/Zero   作:小説家先輩

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第九話 疑惑

3日後、切嗣とセシリアが教室に着くとクラスメイトたちが切嗣のもとに集まって来た。どうやらクラス内では、ある行事について話が盛り上がっているらしい。

 

「衛宮くんはもう誰と組むとか決まってるの?」

 

「もしよかったら、私と一緒に……」

 

「……何の話をしているんだい?」

 

「えぇ!?衛宮くん、あの噂知らな……むぐっ!」

 

「噂?何か変な話でも流れているのか?」

 

「い、いやぁ別にたいした事じゃないよ?本当に。私たちが言いたかったのは近々学年別のツーマンセルトーナメントが開催されるって事でさ」

 

「ツーマンセルトーナメントですわよ、切嗣さん!是非私と一緒に出場して優勝を勝ち取りましょう!」

 

セシリアが切嗣にくっつきながら話しかける。一方の切嗣もいい加減になれた様子でセシリアに返事をする。

 

「いや、ちょっと待ってくれ僕は━━━分かったよ、セシリア。一緒に出場するからそんな恐い顔でこっちを見るのをやめてくれ」

 

セシリアから発せられる無言の圧力に切嗣は屈する他無かった。そして自分の望む答えが得られたためか、セシリアはいつもの端正な顔立ちに戻っており、先程まで発せられていたオーラは跡形も無く消え去っていた。

 

「もう、切嗣さんたら素直じゃないんですから♪」

 

「あーあ、もうコンビが出来上がっちゃってたよ」

 

「パートナー選びどうしよっかな」

 

「……」

 

「そんなことはどうでもいい。お前ら、指導されたくないのなら早く教室に入れ」

 

「「!?」」

 

切嗣たちを取り囲んでいた女子たちが後ろを振り向くと、そこには魔王(千冬)が出席簿を持って立っており、教室に戻る以外の選択肢は用意されていなかった。

 

 

 

昼休み、切嗣たちは男子3人で屋上で食事をしていた。そしてお弁当の話題になったところで、一夏が切嗣に話しかける。

 

「なぁ切嗣、前から思ってたんだけどお前は自分で弁当を作ったりしないのか?」

 

「……弁当か。そういえば、そんなこと考えたこともなかったな」

 

「自分で料理とか作ってみろって。うまく作れると案外楽しいもんだぜ」

 

「……まあ、考えてみるよ」

 

「いきなりで申し訳ないけど、少し話を変えてもいいかな」

 

すると突然シャルルが話に入り込んできた。

 

「二人はなぜ女性しか使えないはずのISを操作することが出来るようになったの?」

 

「なぜって……。俺はIS学園に間違って入り込んで、ISに触れたら起動したとしか」

 

「僕も、一夏と同じでISに触れたら偶然起動しただけだからな」

 

「しかし、何でいきなりそんなことを聞くんだ?シャルルだって同じ条件だろうに……」

 

「―――」

 

一夏の質問にシャルルは一瞬、沈黙する。

 

「ま、まあ……そうだよね。僕ったらなんでこんな変な質問しちゃったんだろう……」

 

「おいおい、大丈夫か?もしかして体調が悪いとか?」

 

一夏が心配そうな表情を浮かべながら手を額に当てようとするが、シャルルは慌てて手でそれを制止した。

 

「ほ、本当に大丈夫だから!心配しないで!」

 

「まあ、シャルル自身がそういうなら大丈夫なんだろうけど……体調が悪くなったら、遠慮なく声を掛けてくれていいからな」

 

「ありがとう……もしそうなった時はお願いするよ」

 

「おう!まかしとけ!」

 

「……」

 

「しかし、偶然……ねぇ。そんな都合よく起こるものなのかな」

 

「?何か言ったか?」

 

シャルルが何か口走ったものの、一夏には聞こえていなかったらしく

 

「いや、なんでもないよ。それで二人のISの装備に関してなんだけど━━━」

 

そうして自分たちのISの話をしているうちに昼休みの時間は平和裏に過ぎていった。

 

「あの反応、やはりクロか……」

 

たった一人を除いて。

 

 

放課後、HRが終わり切嗣が帰る準備をしていると、切嗣の携帯が鳴る。ちなみにこの携帯は楯無が切嗣に支給したものであり、盗聴の心配の無い専用の回線が用いられている。

 

「やあ、きりちゃん。今から時間ある?」

 

「えぇ、大丈夫ですよ」

 

「それじゃあ突然で悪いんだけど、今から生徒会室まで来てくれるかな?」

 

「……分かりました」

 

切嗣は携帯の通話ボタンを押した。

 

「切嗣さん……」

 

「すまない、セシリア。今から生徒会室まで行かないといけなくなったので、先に帰っておいてくれ」

 

「生徒会長に呼ばれたのですか……仕方ありませんわね。それではごきげんよう、切嗣さん」

 

「また明日」

 

切嗣はセシリアと別れたあと、生徒会室に向かった。

 

 

「……それで、僕に何の用ですか?」

 

「まあまあ、そうあせらないで。ここはお姉さんと親睦を深めようでは「大した用事でなければ、僕は帰らせていただきます」そんな硬いこと言わないでさ」

 

「……で本当の用事はなんなんですか?」

 

「実はきりちゃんから受けていた調査だけど、結果が分かったの。かなりセキュリティが堅かったから、多少てこずったけどね」

 

「……続きをお願いします」

 

「実はデュノア社長には息子は存在しなかったの。その代わりにシャルロット・デュノアと言う娘がいるらしいんだよね」

 

「……つまり学園にいるシャルル・デュノアはシャルロット・デュノアであるということか」

 

「まあ、そうなるかな。しかし情報を渡しておいてなんだけど、随分と落ち着いているんだね」

 

「なんとなくそんな感じはしていたので。しかし、なぜデュノア社長は自分の娘の性別を偽ってまでIS学園に入学させたんでしょう?」

 

「……これはあくまで私の推測だけど、デュノア社はこのところ会社の業績が低迷しているらしく、フランス政府からの援助が受けられなくなるみたい。だからシャルロットちゃんを男として入学させることで、きりちゃんや織斑くんに近づいてISの情報を聞き出そうとしているんじゃないかしら」

 

「では、シャルル・デュノアの動向に関して僕はどう動いたほうがいいですか?」

 

「取り敢えずきりちゃんはシャルロットちゃんの制服にこれを仕掛けておいてくれる?」

 

楯無は切嗣に学園の制服のボタンのような物を渡す。

 

「これは?」

 

「それはね、うちの諜報員がよく使うボタンに偽装した盗聴器なの。とりあえずきりちゃんはシャルロットちゃんが制服を置いて出かけた隙にボタンを交換しておくだけでいいから」

 

「……了解」

 

そう言って切嗣は生徒会室から立ち去ろうとするが、楯無に呼び止められる。

 

「ああ、それと約束の事だけど」

 

「?僕に関する情報のことですか」

 

「そうそう。その情報はいつ頃教えてもらえるのかな?」

 

「取り敢えず、一段落ついてからだと助かるのですが」

 

「うん、いいよ。きりちゃんの話、楽しみにしてるから」

 

切嗣は後ろを振り返らずに手を振りながら、生徒会室の外へ出ていった。

 

 

深夜、切嗣が寝ているのを確認するとシャルルは外に出た。

 

「もしもし、社長ですか。こちらシャルル・デュノアです」

 

「遅い!ただでさえ何もできないお前が電話ひとつまともに出来なくてどうする!」

 

「す、すみません」

 

「まあいい。それで、衛宮切嗣および織斑一夏のどちらかと接触することに成功したのか?」

 

「はい。織斑一夏はまだ厳しいですが、衛宮切嗣に関しては同じ部屋になることに成功しました」

 

「よし、ならば次は衛宮切嗣のISを一時的に盗み出し、データをこちらに転送しろ」

 

「そ、そんな。僕が言われていたミッションは男子IS適合者に接触して、ISの情報を聞き出すだけのはずです」

 

「ええぃ、うるさい!フランス政府から援助も途絶えかけている今、悠長なことをしている暇などないのだ!機械の操作方法はお前に渡した機械についている。期限は三日以内だ。それまでにこちらにデータを送信しろ」 

 

「っ!……分かりました」

 

「お前の行動に社運がかかっているんだ!必ず成功させないとたたでは済まさんからな!!」

 

「……失礼します」

 

シャルルは通話を切ると、ため息をつきながら自分の部屋へと帰っていった。

 

 




いやぁ……何というか、シャルロットの父親が清清しいまでのクズになっちゃってますね。もし何か意見感想などありましたら、書いていただけるとありがたいです。それでは

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