IS/Zero   作:小説家先輩

19 / 47
(銀の福音編)はい、よーいスタート(棒)


第十七話 臨海学校

8月上旬、切嗣たちは臨海学校のためバスに乗って移動していた。室内にはクーラーが完備されており、生徒たちは快適なバスの旅もとい束の間の平和を過ごしている……訳でもないらしい。いつものように(?)一夏と切嗣の周辺は常に緊張状態にあった。

 

「一夏の隣は私がもらうんだから!」

 

「何を言っている!お前は2組だろ!早く自分のクラスに戻れ!」

 

「何よ!大体、あんた一夏の最初の幼馴染だからって調子に乗ってるんじゃないの?」

 

「そういうお前こそ!私よりも長く一夏と過ごしていたからといっていい気なっているんじゃないか?」

 

例によって困惑する一夏を尻目に、二人の争いはどんどんエキサイトしていく。その様子は、まるで水と油。こと、一夏のことに関して、決して譲歩することはない。このまま戦況(?)の悪化を見ているしかないのか……周りの生徒達も固唾を呑んで見守る。がしかし、意外なところから救いの手が差し伸べられた。

 

「お前たち、私からの制裁を受けたくないのなら今すぐに争いを中止しろ。なお、罰として織斑は私の隣に来るように」

 

「「そんな無茶な!?」」

 

「……分かった、千冬姉。俺、箒たちの邪魔にならないようにそっちに来ておくよ」

 

「学校では織斑先生と呼べといっただろうが……まあいい、取り敢えず今のは勘弁しておいてやろう」

 

結局、一夏は千冬の席へと保護(という名の移動)され、後には鈴と箒が残される。鳥と貝の争い。やはり軍配は漁夫(千冬)に上がった。二人に残された選択肢は━━━

 

「……とりあえず、私たちも座ろう」

 

「そうね」

 

一時休戦、そうするしかない。二人は、気まずさを感じて空いている席に着いた。

 

 

一方で切嗣の方は割とあっさりと決まった。というより、林間学校が始まる数日前から決まっていた(無論、切嗣は知らない)らしく段取り通りにセシリアが最初に切嗣の隣に来る。

 

「━━━では、最初は私が切嗣さんの隣でよろしいですわね?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「僕も異議なし」

 

ちなみに配置であるが、窓側に切嗣が座り、その隣にセシリア、そして後ろの席にラウラとシャルロットという感じになっていた。

 

「ところで切嗣さん、私、今回は気合を入れて水着を選んできましたの。楽しみにしていてくださいまし♪」

 

「あ、あぁ……。楽しみにさせてもらうよ」

 

「「…………」」

 

セシリアはここぞとばかりに、切嗣の腕に胸を押し付けるようにしてくっつく。がしかし、それを黙って見ているほど大人しい二人ではない。ラウラはシートの隙間から手を入れると、切嗣の背中を指で思い切りつねる。

 

「痛っ!?」

 

「?どうなさいましたの、切嗣さん」

 

「いや……なんでもない」

 

切嗣は何をするんだとばかりに、ラウラに非難の視線を向けるが、ラウラは何食わぬ顔で切嗣の方に視線を向けてきた。

 

「?どうしたんだ、切嗣?私の顔に何かついているのか?」

 

「…………」

 

疑わしきは罰せず。切嗣はため息をつきながら、顔を前に向けた。とそこで━━━

 

「まもなく、当バスはサービスエリアに入ります。ここでの停車時間は20分となっておりますので、買い物などをなされるお客様は遅れることのないようお願いします」

 

サービスエリアに到着したことを示すアナウンスが流れる。そしてバスが停車した途端、ラウラがセシリアに話しかける。

 

「次は私の番だ。早く代わってくれ」

 

「ちょ、ちょっと!分かりましたから、そんなに急かさないでくださいまし」

 

セシリアが席を開けると、間髪いれずにラウラが切嗣の隣に入り込む。どうやら切嗣に休む時間は与えられないようだ。

 

「次は私の番だぞ、切嗣!どんどん私に話しかけるがいい!!」

 

「……早く目的地に着かないかな」

 

切嗣が窓の外の景色を見ながら、そう呟く。どうやら先はまだまだ長い様子である。

 

 

目的地である海岸沿いの旅館に着くと、旅館の前に整列した。

 

「ここが、これから数日間私たちがお世話になる旅館だ。間違っても騒いだりして迷惑をかけないように。それでは女将さんに挨拶をする。気をつけ、礼!」

 

「「よろしくお願いします!!」」

 

「はい、こちらこそよろしくお願いしますね。私、この旅館で女将をしております久宇です」

 

「……では、荷物を自分の部屋に置いたら夕御飯までの時間は自由時間とする。各自節度を持って行動するように!」

 

「「はい!!」」

 

男女比率の関係上、切嗣は一夏と二人部屋になっていた。与えられた束の間の休息。

 

「ふぅ、お互い男子同士短い時間だがよろしく頼むわ」

 

「……あぁ。こちらこそ」

 

一夏と切嗣は部屋に着くと、窓際の椅子に座ってお茶を飲んでいた。するとドアの外がにわかに騒がしくなる。

 

「切嗣さん、そこにいるのは分かっていますよ!早く入れて下さいな!」

 

「一夏、早く海に行くぞ!」

 

「何やってんだよぅ、切嗣!早くしないと遊ぶ時間がなくなっちゃうよ?」

 

「……あと3分以内に出て来い、切嗣。さもないと強制的に突入を開始する」

 

切嗣と一夏は外の面子をどうするかを話し合っている。やむを得ないとばかりに準備を始める切嗣に対し、一夏は中々用意をしようとしない。それを見た切嗣は、このあと一夏に降りかかるであろう災難を避けるために、一夏に進言する。

 

「一夏。僕は面倒なことになる前にさっさと済ませておいたほうがいいと思うが……」

 

「何言ってんだよ、切嗣。もうすでに面倒なことになってるだろ?……そうだ!俺は部屋で休んでおくからお前が外に行けばいい!!」

 

そんな頓珍漢な発言をする一夏に、切嗣はため息をつきながらも忠告をする。

 

「何寝ぼけたこと言ってるんだい一夏。いいからさっさと海水浴の準備をするぞ」

 

「えぇ〜?お前一人だけ行けばいいだろ?」

 

「……分かった。今のセリフをそのまま篠ノ之と凰に伝えておこう」

 

「だぁ!分かったよ!さっさと準備していこうぜ!」

 

箒と鈴のイイ笑顔を思い出したようで、一夏は急いで海水浴の準備を始めた。

 

 

切嗣たちが浜辺に着くと、数十人の生徒たちが浜辺でビーチバレーをしたり水遊びをしている。そして切嗣と一夏は、水着に着替えに行った女性陣のために、パラソルを敷いて場所取り係をしていた。

 

「おぉ!おりむーにえみやんだ~!やっほ~!」

 

友人たちと水遊びをしていた本音だが、切嗣たちに気がつくと、急いで走って来た。

 

「……本音さんたちも海水浴をしにきたのかい?」

 

「そうそう。えみやんたちも暇だったら一緒に遊ぼうよ~」

 

「……こっちのほうが楽しそうだし俺たちも一緒に混ぜてもらおうぜ、切嗣」

 

またしても、危険な発言をする一夏に切嗣は絶対零度の視線を浴びせる。

 

「……君は何を言っているんだい、一夏。僕たちは篠ノ之たちからここで待っておくようにと言われたばかりだろう?」

 

「っと、そうだったな。そういうわけで、悪いが俺たちは箒たちと先約があるから一緒には遊べないんだ」

 

「……先約があるならしょうがないかぁ」

 

「私たちを放置して何処に行ってるの、布仏さん」

 

「これはお仕置きが必要ね」

 

いつの間にか、布仏は他のクラスの女子に両腕を抱えられている。どうやら、さきほど本音が放置してきたメンバーたちのようだ。

 

「あちゃー、ばれたか。そういう訳だから、また後でね~」

 

本音は一緒に遊んでいた生徒たちに引きずられながら、捕らえられた宇宙人のように去っていく。

 

「……なんだったんだ今のは?」

 

「さぁ?」

 

残された切嗣と一夏は首をかしげながら、それを見ていた。

 

「お待たせしました」

 

切嗣たちが振り向くと、そこには水着に着替えたセシリアたちの姿があった。因みにセシリアの水着は青のビキニ、シャルロットはオレンジ、ラウラは黒、鈴は赤、箒は白である。彼女たちが自分の機体の色を意識したことは言うまでもない。

 

「ど、どうでしょうか、切嗣さん?」

 

「せっかくの海水浴だから、僕も結構頑張ってみたんだけど……」

 

「……何か言ってくれ、一夏」

 

「私たちがこんな格好をしてるのに、一夏は何か気の利いた一言とかないわけ?」

 

「なんで俺だけなんだよ!?」

 

「だって衛宮はセシリアたちの担当だし……」

 

「……そうだな。一夏にはほかにも答えてもらわなければいかんことがあるし」

 

「お、お手柔らかにお願いします……」

 

 

一方で切嗣もセシリアたちにがっちり捕まっていた。どうやら逃がすつもりはないらしい。

 

「さあ、切嗣!この前の分も含めて私たちに付き合ってもらうよ?」

 

「え!?この前の分って……二人とも私の知らない間に何があったんですの?」

 

「素直に答えるんだ、切嗣。そうすれば楽になれるぞ?」

 

シャルロットのきわどい発言に、セシリアとラウラの様子が大きく変化する。

 

「……ちょっと待ってくれ。別に僕とシャルロットの間には何もないし、この前だって一緒に臨海学校の服とかを買いに行っただけなんだ」

 

「買いに行っただけって……それってデートと何が違うんですの?」

 

セシリアの一言でシャルロットと切嗣の動きがピタリと止まる。

 

「嫌だなぁ、セシリア。僕たちはただ一緒に買い物をしただけだし、君たちの思っているようなそんな深い仲には“まだ”発展してないよ」

 

「まだ……ねぇ?」

 

セシリアは口では納得したような感じだったが、目ではシャルロットの様子を疑っていた。一方、言い切ったシャルロットは頬を赤らめながら、切嗣にぴったりと寄り添う。

 

「……シャルロット。照れ隠しに僕の足を踏むはやめてくれないか?いくら裸足とはいえ、かなり痛いんだが……」

 

「でーと?それはどういうミッションだ? 敵は? 地形はどうなっている?」

 

「ラウラさんは静かになさっていてくださいまし。この話し合いが終わったら教えて差し上げますわ」

 

「……むぅ。何か仲間はずれにされた感じがする……」

 

切嗣とシャルロットはそんなラウラの様子を微笑ましく感じていた。

 

「なんか揉めるのが馬鹿らしくなってきたな。すまないシャルロット、僕が変な言い方をしたばかりに」

 

「いやいや、僕の方こそ照れ隠しとは言え切嗣さんの足を踏んでしまい、本当にごめんね。こんなことで喧嘩するなんて、いつもの僕たちらしくないよね」

 

「私も、うかうかしていられませんわね……」

 

セシリアの独り言は幸い誰にも聞かれることはなかった。

 

 

「切嗣さん。日焼けどめのクリームを背中に塗って頂けませんか?」

 

「あぁ、構わないよ」

 

一段落ついたところで、セシリアが早速切嗣に攻勢を仕掛ける。セシリアは切嗣の隣に来ると、クリームを渡して、うつ伏せになり、背中の部分の紐を解いた。すると、セシリアのキュッと引き締まった背中が浮かび上がる。

 

「それでは、お願いしますわ」

 

「……分かった」

 

切嗣はセシリアの背中にクリームを数滴垂らして、まんべんなく塗り始める。途中でセシリアが悩ましい声を上げたりしたものの、切嗣は手を止めることなく黙々と作業を遂行した。

 

「終わったよ、セシリア……って、なんでそんな不満そうな顔をしているんだい?」

 

切嗣は作業が終わったことをセシリアに伝えるが、当のセシリアは不満そうに切嗣を見つめる。

 

「……はぁ。ありがとうございます」

 

セシリアはため息をつきながら棒読みとしか思えない声で返事をする。そして背中の紐を結び直すと、上体を起こした。

 

(ひょっとして、切嗣さんはこういった事には慣れていらっしゃるのかしら?)

 

一人考え事をしているセシリアを尻目に、一連の行動を見ていたシャルロットとラウラが日焼け止めを持って、切嗣に詰め寄る。

 

「セシリアにも塗ったんだから、僕達も塗ってもらえるよね?」

 

「そうだぞ切嗣。私に塗らないで、誰に塗るというのだ」

 

「……少し待っていてくれ」

 

切嗣の夏の試練が始まる。

 

 

夕食の時間、自由時間のあいだにジャンケンで決まった通りに、切嗣の隣にはシャルロットとラウラが座っていた。セシリアとシャルロットはお箸を使うのが苦手らしく、なかなか食事を食べれないでいる。

 

「……違う、シャルロット。お箸は中指をあいだに入れて親指と人差し指で動かすんだ」

 

「切嗣は簡単に言うけど、これはかなり難しいよ?と言うか、なんでラウラはそんなに上手にお箸を使えるのさ?」

 

「……なに、簡単な話だ。私はドイツで織斑教官から1年間ISの訓練を受けていたから、その過程でお箸の使い方も習ったんだ」

 

シャルロットの問いにラウラは誇らしげに答える。

 

「くっ、ジャンケンで負けたばかりに……」

 

そんな3人の様子をセシリアが少し離れたところで悔しそうに眺めていた。

 

 

夕食が終わり、お風呂に入った後、一夏と切嗣は浜辺を散歩している。

 

「……色々あったが、やはり仲間がいるのはありがたいことだね」

 

「どうしたんだ切嗣?いきなりそんなことを言い出すなんて……何か悪いものでも食べたのか?」

 

「一夏にそんなことを言われるとは……どうやら僕もかなり重症らしい」

 

「どう言う意味だよ!?」

 

切嗣と一夏はそんなことを話しながら浜辺を歩いていると、地面から大きな兎の耳を模した何かが生えていた。その横には「引っ張ってね♪」と書かれた看板が置かれている。

 

「……一夏、どうする?」

 

「引っ張ってみるか?」

 

「……だな」

 

切嗣と一夏はその耳の片方づつ持つと同時に引っ張る。その瞬間、耳の生えていたところに巨大な人参が落ちた。一夏と切嗣は待機状態のISを構え、いつでも迎撃が出来るように戦闘態勢をとる。緊張の一瞬━━━すると、人参の扉の部分が開き、中から兎の耳をつけた女性が出てきた。

 

「は~い♪世界で二人だけの選ばれし男性諸君。私が世界一の天才科学者、篠ノ之束さんだよ。よろしくね♪」

 

「束さん、こんなところで何やってるんですか!?」

 

「…………」

 

篠ノ之束。現存する全てのISコアの開発者。ISに関する情報は全て彼女が握っており、彼女が一言「もうISのコアや新世代機の情報を提供するのをやめる」と言うだけで、ほぼ確実に世界中でパニックが起こりうる。一人の身勝手な都合により、振り回される世界中の人々。一人と世界。より多くの人間を救う”彼”が、迷うことはない。切嗣はコンテンダーに弾丸を装填すると、銃口を束の方に向けた。一方で銃口を向けられた束は先ほどの笑みを崩してはいないものの、彼女と切嗣の間の空気が緊張したものに変わる。

 

「……もう、きりきりったらこの私に銃をむけるなんてぇ♪……なんのつもり?場合によっては、プチっと殺っちゃうよ?」

 

すると束の後ろから、突然無人ISの腕のようなものが出現し切嗣に狙いを定める。一方でそれを見た一夏の表情が驚きに変わった。それも当然なのかもしれない。自分たちを追い詰めた相手、それが幼馴染の姉のものだと知ったのだから。

 

「なんで……束さんが“それ”を持っているんです?」

 

「…………」

 

おそらく束が指示を出せば、切嗣がISを展開する前にビームが切嗣の体を射抜くだろう。がしかし、切嗣はなんの感情も感じさせない昏い目で束を見据えながら、返事をする。

 

「篠ノ之束、“おふざけ”も大概にしておいた方がいい。もし今度あのような巫山戯た真似をした場合は……分かっているな?」

 

「面白い冗談を言うんだね、きりきりは」

 

一瞬、切嗣と束の間に緊張が走った。しかし、切嗣はコンテンダーを下ろして胸のホルスターにしまうと、束に背を向けて旅館の方へと歩き出す。もちろん、背後からの奇襲の警戒は怠らない。

 

「……警告はした。では僕は先に戻っているよ」

 

「お、おい!切嗣!」

 

切嗣は一夏の言葉には答えずに旅館に戻っていった。

 

「束さん、さっきの切嗣の反応はいったいどういう事なんだ?そもそも“おふざけ”って?」

 

「ごめんね。いっくんの質問に答えてあげたいのは山々なんだけど、今回は箒ちゃんにプレゼントを渡さないといけないから……また後で」

 

束はものすごい速さで巨大人参の中に戻ると、そのままドアを閉めてしまった。

 

「何なんだ一体……」

 

残された一夏は一人で旅館の方へと歩いて行った。

 

 

━━━同時刻、ハワイ沖ではアメリカ・イスラエル軍によるISを使った軍事演習が行なわれていた。

 

「ではこれより、第3世代型軍事IS『銀の福音』を用いた演習を行う。ナターシャ・ファイルス及びイーリス・コーリング両名は既定高度まで速やかに上昇せよ」

 

「「了解!」」

 

通信回戦からの指示にナターシャとイーリスは元気よく返事を返す。この二人は同じ『地図にない基地』の出身であり、親友同士である。

 

「ナタル!それじゃ、一気に加速しようかね?」

 

「……ごめん、イーリ。少しシステムに障害が出ているみたい」

 

「何?大丈夫なの、それ?」

 

「ちょっと待って……なにこれ?いったいどういう事?こ、これは━━━!!?」

 

突然、ナターシャが上昇するのをやめ、空中に停止する。

 

「お、おい。どうしたんだよ、ナタル?早くしないと上官に怒られるぞ!」

 

イーリスが回線を使ってナターシャに呼びかけるが、ナターシャからの返事はない。そして、ナターシャは態勢を入れ替えると、どこかに飛翔を始めた。

 

「おい!ナタル!聞こえてるなら返事をしろ!それ以上先に行けば、領空侵犯になるんだぞ!早く戻ってくれ!!」

 

イーリスの懸命な呼び掛けにも関わらず、ナターシャの駆る『銀の福音』は制止を振り切り、境界線を超えて飛び去ってしまった。

 

「……イーリス・コーリング、大至急本部に戻れ。これから緊急の対策会議をはじめる」

 

「……了解」

 

「……くそっ!どうしてこんなことに……」

 

イーリスはナターシャの飛び去った方角を見ながら悔しそうに呟いた。

 

 

銀の福音が動き出す10分ほど前、千冬と箒たちは旅館の外で束たちと話をしていた。

 

「……何しに来た」

 

「やだなあ、ちーちゃん。私が愛しのちーちゃんに会いに来るのに理由なんているだろうか、いや━━━━痛い痛い、アイアンクローはやめて」

 

千冬は束の頭を掴んでいた手を離す。

 

「……まあいい。それで本当の用事はなんだ?」

 

「うん。実は箒ちゃんにプレゼントを用意したんだ♪」

 

「プレゼント……だと?」

 

「そうそう。箒ちゃんにプレゼントするのは……これ!」

 

束が指を鳴らした瞬間、空から赤い“何か”が降ってきた。

 

「!?これは……?」

 

「第四世代型IS『紅椿』。現在、世界のどの国のISを凌駕する性能を秘めているんだよ~♪さあさあ、箒ちゃん。試しに装着してみてよ♪」

 

箒は束の言葉に頷くと、ISを装着する。

 

「……さて、それでは箒ちゃんのお披露目と行こうか♪」

 

「……篠ノ之箒『紅椿』、出る!」

 

その瞬間、箒の姿は一瞬で見えなくなる。

 

「……なんですの、あのスピードは」

 

「あれが、第四世代の性能……!」

 

「……正直、相手にしたくないな」

 

目の前で圧倒的な性能の違いを見せつけられた切嗣たちの反応は様々だった。

 

「どう♪これが天才科学者束さんが作り上げた傑作機『紅椿』。……驚いた?」

 

「お前は一体、何をしようとしているんだ……?」

 

「やだなあ、ちーちゃん。そんな怖い目でこっちを見ないでよ。今からちょっとした性能実験をしてもらうだけだから」

 

束の言葉を裏付けるように、千冬の携帯が鳴る。

 

「もしもし織斑です。……えぇ、そうですが……何ですって!?……はい、はい。では専用機を持つ生徒に伝えておきます。……それでは」

 

「……どうしたのちーちゃん、なんだか顔色が悪そうだねぇ?」

 

「……一夏は箒に連絡してすぐにこちらに戻ってくるように伝えろ。ほかの専用機持ちは話があるから私の部屋に来い」

 

白々しい様子で千冬に声をかける束に対し、千冬は内心毒づきながらも急いで一夏たちを集める。

 

「織斑先生。何があったんですの?」

 

「事情は後ほど説明する。私について来い」

 

「頑張ってねー、ちーちゃん♪」

 

「……っ!」

 

千冬たちは束の方を一瞥すると、急ぎ足で旅館の中に入っていった。その際、切嗣が“なんの感情も感じさせない”目で束を見ていることに気づいたのは、ラウラとシャルロットの2人だけであった。




10秒で思いついた小ネタ

きりつぐはたてなしからにげだした。しかし、まわりこまれてしまった。
たてなしのだきつく。
きりつぐのSAN値にかいしんのいちげき。きりつぐのかおがやわらかいものでつつまれる。きりつぐはめのまえがまっくらになった……
………
……


楯無「━━━と言うゲームを考えたんだけど」
切嗣「そんなことして、誰が得するんですか(ジト目)」
楯無「それはもちろん━━━わ・た・し(ドヤ顔)」
切嗣「…………」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。