IS/Zero   作:小説家先輩

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作者「ああ逃れられない!(締切)」


第二十六話 天秤

「……逃げられたか」

 

切嗣は、まだ血だまりが残る場所を見ながらつぶやく。完全に相手の隙を突いた奇襲。そして、相手を仕留めるか最悪でも身柄の拘束。そこまでは、切嗣の描くシナリオ通りだった。誤算があったとすれば一夏。一度奪われた白式のコアを拾い上げ、再びオータムを追撃すべく壊れた窓から外に出ようとするが、そこに切嗣が待ったをかける。

 

「……どこに行くつもりだい?」

 

「あいつを追いかける。邪魔をしないでくれ」

 

「やめておけ。君が行ったところでどうにもならない」

 

「なんだと?」

 

切嗣の言葉に一夏が向き直る。その顔には、切嗣に対するはっきりと不快感が現れていた。

 

「聞こえなかったのかい?君では役に立たな「うるせぇ!」……」

 

「いちいちそんなこと言われなくったって、今の俺じゃあいつに勝てないことぐらい分かってる!! けど、俺はお前とは違う!俺は目の前にいる悪を自分より強いからという理由で見逃すようなことは絶対にしたくない! 」

 

「……そうか。だが、君の都合など知ったことではないんでね。ここで止めさせてもらう」

 

切嗣の言葉を無視して、窓から飛び出そうとする一夏。がしかし、どこからか伸びてきたワイヤーが一夏の体を拘束する。そしてそのワイヤーを射出した相手は━━━

 

「凄い音がしたから、それを辿ってここまで来てみたが……一体ここで何があったんだ、切嗣?」

 

先程まで切嗣を探していたはずのラウラであった。但し、先程までの学園祭を楽しむ一学生の雰囲気はそこにはなく、ISを部分展開している彼女はまさに“兵士”としてのオーラを醸し出している。

 

「実は、ついさっき織斑が亡国機業の連中から襲撃を受けたんだ。そこに僕が駆けつけ、追い払うことに成功したのだが━━━」

 

そこで切嗣は、一旦話しを切り地面に落ちた血まみれの何かを拾い上げる。それを見た一夏はハッと目を逸らし、ラウラは顔をしかめる。

 

「”これ”の持ち主には、隙を突かれて逃げられてしまったよ。全く、とんだ失態だ」

 

切嗣が拾い上げたもの。それは、オータムの右肘から下の部位であった。オータム自身が生きているとは言え、切り落とされた人の腕を何でも無いもののように拾い上げる切嗣に、一夏は今更ながらショックを受けていた。あまりにも見慣れないモノを見てしまったせいか、呆然としている一夏に代わりラウラが切嗣に質問を浴びせる。

 

「━━━それで、切嗣はこの後どうする?」

 

「流石に、これを持って学園の中を歩くわけにもいかないからね。千冬先生か生徒会長あたりに連絡をつけようかと思っていたところだ」

 

「近頃の生徒さんは、随分と場慣れしとるね」

 

「「!?」」

 

不意に近くから聞こえてきた声に、切嗣達は驚いてしまう。

 

「あぁ、警戒させてしまったようだ。私はこの学校の用務員をやらせてもらっとる轡木十三と言うものです、一つ宜しく頼みます」

 

「あ、あぁ……こちらこそ」

 

「よろしくお願いします」

 

「…………」

 

ぎこちないながらも、轡木と握手を交わす二人とは対象的に、切嗣は沈黙を保ったまま、その様子を見つめる。やがて、自分への視線に気がついたようで、轡木は切嗣の方に向き直った。

 

「一つ、宜しくお願いしますね」

 

「どうも……」

 

差し出された轡木の手を、握る。彼の目の前には、どこにでも居そうな初老の男性。しかし、切嗣は男性の態度に疑念を抱いていた。

 

(目の前には、血溜まりと誰かの腕を持った生徒。普通であれば、先程の一夏同様に恐怖の感情を浮かべるのが自然なはず。しかし、この男は、そういった様子を一切見せずに自然な態度で僕達に話し掛けてきた。警戒をしておくに越したことはないだろう……)

 

そんな切嗣の様子を知ってか知らずか、男性は切嗣に再び話しかける。

 

「あの……私の顔に何かついてます?」

 

「あっ……いえいえ、初めて用務員さんをお見かけので、よく顔を覚えておこうかと思いまして」

 

 

「そうですか……ところで、この腕はどうします?」

 

轡木からの質問に切嗣達は何も答えることが出来ない。轡木は黙ってその様子を眺めていたが、タイミングを見計らって、話を切り出した。

 

「もし、宜しければ私がビニール袋に入れて回収しておきましょうか?」

 

「……よろしくお願いします」

 

半ば強引に押し切られる形で、切嗣は轡木にオータムの腕を渡す。腕を受け取った轡木は、それを丁寧にビニールに詰めると、その場を後にした。

 

「何だったんだ、あの人は?」

 

「分からん。が、あの人が纏う空気は決して唯の一般人のそれではない、と言うのは確かだな」

 

「…………」

 

三者三様の反応を示した所で、ラウラは本来自分が何故、切嗣を探していたのかを思い出した。

 

「そうだ!思い出したぞ切嗣。私はお前を探していたのだ!」

 

「?」

 

「先ほど生徒会長から連絡があり、侵入していたと思われる亡国機業の工作員が撤収したらしい。私達も警戒のために学園の中を見回ることにするぞ」

 

「分かった」

 

わざとらしく一夏に聞こえるくらいの声で切嗣に呼びかけるラウラ。ラウラは一夏が抵抗しなくなったのを確認、縛っていたワイヤーブレードを回収して、切嗣の手を握るとそのまま会議室を出ていった。

 

 

ーーー同時刻、南米コロンビア

 

そこに広がるのは広大なジャングル。アマゾン川の流域に広がる自然豊かな土地。その一角に、決して自然の物ではない、人参の形をした謎の造形物が地面に突き刺さっていた。

 

「あ あ、せっかくいっくんの強化イベントを起こす為に、色々準備をしたのになぁ……。また『コイツ』に邪魔されちゃうなんて、いくら温厚な束さんでも流石に我慢出来なくなっちゃうよ」

 

巨大な人参の形をした移動型ラボ『吾輩は猫である』の中、束は親指の爪を咬み、不快感を露わにしながら目の前のモニターを見つめていた。そこには、自らのISを展開し、一夏を手玉に取って戦う切嗣の姿が写っている。

 

「もういっその事、コイツのコアを暴走させ、事故に見せかけて殺しちゃおっかな ♪流石は天才科学者束さん、冴えてるな ♪♪」

 

「……マスター。彼を殺すのは、まだ時期尚早では無いでしょうか?」

 

「……くーちゃん。でも、これ以上『あのコア』をこんなヤツに好き勝手されるのは、束さん我慢ならないんだよねぇ……そうだ!!」

 

良いことを思いついたとばかりに、束が手を叩く。一方、それを見たクロエに悪寒が走る。

 

「ごめんね、くーちゃん。ちょっとそこまで、コイツを拉致しに行って来てくれない?」

 

「……マスター。私が見たところ、彼はまだ何かを隠しているように思います。敵の実力を知らぬまま、闇雲に突撃させるのは愚かかと」

 

クロエの私見を受け、暫く黙り込む束……がしかし、その目には底知れない何かを孕んでいた。

 

「……大丈夫だよ。今までアイツの映像データを基に、スペックの測定とかしてきたけど、あれじゃせいぜい第2.5世代が良い所。私がクロエちゃんに渡したIS『黒鍵』との間にはどう足掻いても埋められない性能差があるし、戦闘能力でも、アイツがくーちゃんに勝てる要素はない」

 

束がそう言うのには、れっきとした根拠がある。彼女ーーークロエはドイツで密かに行われていた最強兵士育成計画の唯一の成功例であり、かつ『オーディンの目』の移植成功により更に身体能力を強化することに成功したのである。故に束がそう言うのも無理はない。クロエは、暫く考えた後に首を縦に振った。

 

「ありがとねくーちゃん!それでこそ、私の助手!!」

 

調子良く彼女を煽てる束に、内心呆れながらもクロエはIS学園に入り込む為の計画を練り始める。

 

 

学園祭が終了したあと、十蔵に呼び出された楯無は用務員室の前に来ていた。

 

「失礼します」

 

「鍵は空いていますよ」

 

中から答えを聞き、楯無は用務員室の中に足を踏み入れる。部屋の中はきちんと整理されており、床にもゴミひとつ落ちていない。

 

「わざわざお呼び出てしてすみませんね」

 

「いえいえ。他ならぬ轡木さんから来て欲しいと言われれば、すぐにでも駆けつけますよ。ところで、例の物ですが……」

 

「ここに」

 

楯無の言葉に、十蔵は頷くとそばに置いてあった少し大きめのクーラーボックスを机の上に置く。そしてボックスの蓋を開けると、その中には氷に包まれたオータムの右手が入っていた。それをしばらく見つめていた楯無であったが、ふと何かを思いついたようで、十蔵に交渉し始めた。

 

「これを私の方で預からせていただいてもよろしいですか?」

 

「何故です?」

 

「私が更識楯無だから……では駄目ですか」

 

一瞬、二人の間に沈黙が入る。がしかし、最初に沈黙を破ったのは十蔵であった。心なしか硬い表情をする楯無に十蔵は苦笑いを浮かべながら返事をする。

 

「……なるほど。蛇の道は蛇という訳ですね」

 

「ありがとうございます、轡木さん」

 

楯無は、十蔵からボックスを受け取り自分のそばに置く。それを確認した一段落着いたとばかりに、笑みを浮かべる。

 

「さて、堅苦しい話もここまでにしてそろそろお茶にしませんか?」

 

「……そうですね、頂きます」

 

いつもなら二つ返事で承諾するはずが、若干渋った事に疑問を覚えた十蔵は楯無に問いかけてみることにした。

 

「ひょっとして、体調が優れないのですか?」

 

「いえ━━━少しお茶に関して色々あったものですから……気になさらないでください」

 

「そうですか……もし、体調が優れないのでしたらあまりご無理はなされませんように」

 

「ありがとうございます」

 

楯無はいつも通りの微笑を浮かべながら返事をする。そんな彼女にはぐらかされる形となった十蔵はそれ以上の追求を諦めることにした。

 

 

学園祭が終わり、片付けをしている切嗣とラウラのもとへラウラから話を聞いたセシリアとシャルロットが駆け寄って来た。

 

「━━━それで、切嗣さんは大丈夫でしたの?」

 

「あぁ。私が責任をもって休み時間中切嗣の側に付き添っていたから心配ないぞ!」

 

「それはよかった━━━なんて言うと思ったかいラウラ?なんで君は切嗣がそんな状況になっていたのに、それを僕たちに報告しなかったの?確かに見つけた者勝ちとは言ったけど、それとこれとは話は別でしょ?」

 

シャルロットの鋭い指摘にラウラは思わず黙り込んでしまう。そんなラウラの事を不憫に思ったのか、切嗣が二人の間に割って入る。

 

「まあ待つんだ、シャルロット。ラウラが来てくれたおかげで一夏が暴走せずに済んだし僕も無事に済んだ。だから、あまりラウラの事を責めないであげてくれ」

 

「切嗣がそう言うなら……でも、これだけは覚えておいてね切嗣。君が思っている以上に、僕たちは君の事を大切に思っているんだ。だから心配をかけるのはこれっきりにして」

 

「……善処する」

 

シャルロットは切嗣の手を両手で包みながら心配そうな表情で切嗣を見つめる。そんなシャルロットの視線に気まずいものを感じたようで、切嗣は視線を逸らしながら返事をする。

 

「あのね切嗣、君ってやつはほんとにもう……いいこと思いついた。明日は確か学園祭の次の日だから学校は休みだよね?ちょういい機会だし、二人で遊びに行こうよ!━━━もちろんこの前のこともあるし、断らないよね?」

 

「うっ……」

 

シャルロットの隙のない攻勢に終始押される切嗣。がしかし、それを見逃すほど残り二人のセンサーは鈍ってはいない。

 

「切嗣さんは今日の疲れが溜まっていらっしゃるでしょうから、まだ今度にして差し上げませんか?……もちろん私が起こしに行かせて頂きますけど」

 

「いやいや、セシリアもシャルロットも今日の学園祭で疲れただろう?ここは私が━━━━」

 

「何言ってるんだよ、ラウラ。君こそ大変だったでしょ?ここは僕に任せて━━━」

 

「いや、ここは私が━━━」

 

(これはまずいことになったな……)

 

切嗣は3人が争っている隙にその場から背を向けて立ち去ろうとしたが、直後に凄まじい力で肩を掴まれる。切嗣が恐る恐る振り返るとそこには━━━

 

「どこへ行かれるおつもりですの?」

 

「僕たちから逃げようなんて……」

 

「これは“教育”が必要だな……」

 

光の消えた目で切嗣を見つめる3人の修羅の姿があった。

 

 

翌朝、切嗣は凄まじい寝苦しさに目が覚めた。

 

「うぅ……今何時だろう?」

 

時計を見ると時刻はまだ朝の6時半。休日の起床時間にしては異様に早い時間帯。どうやら原因は切嗣の周辺から発せられる暑苦しさにあるようだ。

 

「それにしても……なんでこんなに暑苦しいんだ?」

 

切嗣は左右に目を向ける。右隣にセシリア。胸元のはだけた水色のパジャマから露出している肌が何とも言えない色気を醸し出している。左隣にシャルロット。オレンジ色のパジャマ姿で切嗣の腕に胸を押し付けるようにしてくっついていた。そして、不自然に膨れ上がった布団の中。ラウラが一糸纏わぬ姿で切嗣の上に覆いかぶさっていた。

 

「目の錯覚に違いない」

 

切嗣は目の前の事態を錯覚と結論づける。そして、いつも通りに体を起こそうとしたところで、自分の周りから聞こえる規則正しい寝息に一気に現実に押し戻された。

 

「なんでさ……」

 

どうしようもないシチュエーションの前に、切嗣の呟いた言葉は誰の耳にも届くことはなかった。

 

 

「なんで皆さん、切嗣さんの部屋に集合していますの!?大体、ここは個室のはずですわよ!?」

 

「これはおかしなことを言うな、セシリア。切嗣の部屋の鍵が空いているのなら、見回りのために中に入るのは当たり前の行動だろうに」

 

「いやその理屈はおかしいと思う……昨日最初に切嗣と約束したのは僕なんだからさ」

 

起きて早々、セシリア達は切嗣をめぐって喧嘩を始めた。その様子を傍で見ていた切嗣はため息をつきながら天井を見つめる。どうやら、彼の平穏が訪れるのはまだ遠いらしい……。

 

 

「実は、相談があるんですが……」

 

「どうしたの?私でよければ話くらいは聞くよ?」

 

いつもの楯無との訓練。その休憩時間に一夏は楯無に相談を持ちかけた。

 

「俺は衛宮と何が違うんですかね?」

 

「色々あると思うけど、特に戦闘経験かな?詳しくは知らないけど、彼は学園に来る以前にどこかで傭兵か何かをした経験があるみたいだし……下手したら戦闘に関しては私よりも経験があるんじゃないかしら」

 

「いやいやいや、それは流石に言い過ぎじゃないですか?」

 

「ま、真相は彼以外誰にもわからないんだけど━━━」

 

おどけた顔をしながら、彼女は一旦言葉を切る。

 

「でも、少なくともISの知識に関しての勉強は相当やりこんでたみたいだよ?」

 

「と言うと?」

 

「これは衛宮くんのルームメイトだった本音ちゃんから聞いた話なんだけど、彼、毎晩寝る間も惜しんでIS関連の参考書を読みふけっていたらしいのよ」

 

「…………」

 

そこで、一夏は切嗣が一時期目の下が真っ黒になっていたことを思い出す。一夏自身、当時はそこまで切嗣の事を気にかけていなかった。がしかし、臨海学校直前に切嗣が体調を崩して入院した事を考慮すれば合点がいくのだ。

 

「それと、君は衛宮くんについて少し誤解してるところがあるね」

 

「誤解……ですか」

 

楯無が何を言っているのか分からずに、怪訝な顔をする一夏。

 

「ほら、夏休みの件だよ。あそこで衛宮くんがとった対応を貴方は許す事が出来ない……違う?」

 

「それは……」

 

違う、と言う事は出来ない一夏。事実そこで起こった出来事は、彼が切嗣との交流を断つ大きな原因となっているのだから。

 

「ISの強さを表す言葉として、『ISは一機で一つの都市を壊滅させることが出来る』と言う言葉があるよね?そして私たちはそれを賢く使うためにここでISに関する事を学んでいる。私は衛宮くんが取った行動も君の考え方もどちらかが正しいなんて決めることは出来ない、と思うの。ここで君に質問するね。一夏くんのクラスメイト10人がいて、そのうち4人が感染症に掛かったとするわ。その子達を救う方法はあるにはあるけど、助かる可能性はかなり低く失敗すれば残りの6人も死んでしまう。一方で4人を犠牲にすれば確実に6人は助かる。さて、君ならどうする?」

 

「…………」

 

いつもと変わらない微笑を浮かべた楯無からの予想外の質問に一夏は黙り込んでしまう。楯無は考え込む一夏の様子をしばらく眺めていたが、答えが出てきそうにないため、再び一夏に話しかける。

 

「はい、タイムアップ。こんな意地悪な質問をしちゃってごめんね。けど、これで君と衛宮くんの違いがはっきりしたでしょ?彼なら今の質問に対し4人を切り捨てる方法を取る、と答えたはず。現に夏休みにもそうした訳だし」

 

「……そうですね」

 

「君が彼にどういう感情を抱いているのか、私は詳しく知らない。けど、“正義”は一つだけじゃない。『正義の反対は悪』なんてそんな簡単には片付けられないの。正義の反対にあるのもまた別の正義。だから、私は彼だけを正しいなんて言うつもりはないけど、君が大局的に物事を見ることが出来る“目”を養ってくれる事を願ってる」

 

「……しばらく考える時間をください」

 

そう言い残し、一夏はアリーナを後にした。

 

 

9月27日。その日は一夏の誕生日であった。そして、ちょうどその日は学校が休みであり、親友である五反田弾の家で箒と鈴を招いて誕生日会が行われていた。

 

「「一夏!誕生日おめでとう!!」」

 

「ありがとう、みんな!俺のためにこんな誕生日会を開いてくれて。ほんとに感謝してるよ」

 

「何水臭いこと言ってんだ、一夏。ダチの誕生日をみんなで祝うのは当たり前のことだろ?うちの妹なんてお前の誕生日だからって普段しないのに、メイクなん━━━いてっ!何すんだよ蘭!」

 

最後まで言い終わる前に、弾の頭に鈍い衝撃が走る。もちろん、誰の仕業かは言うまでもない。

 

「バカお兄は黙ってて!!━━━すみません、一夏さん。見苦しいところを見せてしまいました」

 

「一夏が来ただけでこの変わりよう……ったく、自分の妹ながら恐し「何か言った?」━━━別に何も」

 

妹である蘭からの威嚇に弾は黙り込んでしまう。そして、唯一の障害である兄を封じた彼女は一気に攻勢を仕掛ける。

 

「そう言えば一夏さん!私も来年には、IS学園の生徒になれるかもしれません!」

 

「それは本当か!?」

 

「そうなんですよ!この前の適性検査でISの適性Aが出たんです!なので、後は来年の試験に合格出来れば━━━」

 

そこで蘭は言葉を切って、コップにジュースを注ごうとしたが肝心の中身がなくなってしまっていた。

 

「あれ?ジュースがもう無くなっちゃった……」

 

「俺が買ってくるよ」

 

「いえいえ、うちのバカお兄に買わせに行かせますんで一夏さんはゆっくりしてて下さい」

 

「お前なぁ……」

 

すかさず兄である弾に買いに行かせようとする蘭。しかし、一夏もゲストとして招いてもらっている身とはいえ、あまり負担を増やさせる訳には行かない。

 

「大丈夫だって。そこの自販機までだし、すぐ戻ってくるから」

 

「え、ちょ━━━」

 

「私も━━━」

 

蘭や箒の返事を聞かずに一夏は弾の家を後にする。目指すは歩いて3分のところにある自販機。駆け足で来た事もあり目的の自販機には1分以内についた。そして自販機でジュースを買い、弾の家に戻ろうとしたところで

 

「織斑一夏だな?」

 

「!?」

 

待ち伏せていたMと遭遇することになる。




もし、オータムと一夏の戦いを士郎or切嗣が見ていたら━━━

士郎(クラスメイトの一夏が危機に陥っている……助けなきゃ!!)

切嗣「(第四世代の操縦者が!)」)

おそらく思考回路はこうなるかと……

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