今回は予想以上に話が進みました。あと一話で学園篇に入れるくらい。
タグにないPARADISE LOSTのネタを使ったけど、神様シリーズだから良いかな? ドラマcdネタも入ってます。
あと、本編で誤解されそうなので言います。
自分はホラー映画が大好きです。スーパーナチャラルとか死霊館シリーズとか。
《1》
「死ねェェェェエエエエエエ! メルクリウスゥゥウウウウ!!」
「随分と元気な女子だ。しかしそのような抱擁、私は受け付けんよ」
「抱擁? ほざくなよクソ魔法使いがッ! これをどうみたら抱擁に見えると言うんだ!」
「ハハハハハ、そのような稚拙に等しい突進、それ以外に何がある」
「クソ、この人を……否、吸血鬼を小馬鹿にした声調に台詞、忘れたくても忘れることなぞ無理だな! だが貴様を殺せば、過去を一つ清算できるのもまた一つ。故とっとと死に晒せ!」
「吸血鬼と言う者は、皆総じて私を嫌うようだ。昔遊んでやったどこぞの中尉も、私を酷く憎んでいた」
「ウガァァアアアアアア」
……いきなりで申し訳ない事この上ないが、現在ある二人が大喧嘩(?)をしている。
ある二人と言いつつ、一人は既に名前を出してしまっているし、もう一人の方も吸血鬼と言うヒントを与えられている。
しかも一人は相手をかなり恨んでおり、もう一人はそれ相手に遊んでいる。
ここまでヒントがあれば、もう誰だか分かるだろう。
そう……吸血鬼と言っているのが、真祖の吸血鬼であり大犯罪者――エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
そして吸血鬼に殺されそうになっているのが――カール・クラフト=メルクリウス。
現在、エヴァンジェリンが本気でメルクリウスを殺そうとしているのだが、メルクリウスは不敵にも似た笑みを浮かべながら、全ての攻撃を軽く躱している。こんなこと、普通の魔法使いなら瞬殺KOだが、生憎とメルクリウスは普通ではない。
故、当たらない。
もはや戯れ合いのようにも映ってしまうかもしれない。
そんな有り得ない光景がエヴァンジェリンの友達であり、メルクリウスの息子でもある――藤井蓮の目に映っている。
藤井蓮は頭を抱えながら溜め息混じりに呟く。
「何で、こうなったんだ……?」
(∴)
メルクリウスとエヴァンジェリンが対峙する前――
蓮はいつも通り別荘で日常と言うなの日常を過ごしていた。
日常……そう日常なので、特に描写すべき点が一切無いわけだが、メルクリウスと対峙するちょっと前の日常を軽く振り返っておく。
「ふむ、最近面白い映画が無いな」
ソファにゴロ寝をしながら映画鑑賞中のエヴァンジェリン。
吸血鬼どころか、もはや少女とも思えなくなった。この姿はアレだ……弛んだ主婦だ。
現在見ている映画は、戦争前に公開されたDies irae -Also sprach Zarathustra-だ。
評価はいまいちの作品。無駄に公開前の予告ムービーに力を入れ過ぎ、一部からは詐欺と言われた。作品としては脚本家を複数使って作られたとしか思えない、一貫性のない作品になってしまったらしい。しかも伏線を残したまま終了した為、叩かれてもいる。
しかし出演者は豪華だったため、次作完結作を製作中とか何とか。
「このDies iraeと言う映画、悪くはないのだが、何故に大隊長戦をあれ程萎えるオチを付けたんだ。キャラ崩壊も良いとこじゃ」
「…………」
キャラが未だに定まっていないお前がそれを言うかと、蓮は心の中で密かに思う。
時々ババァ口調になるエヴァンジェリンでした。
「この赤騎士が倒された時のぎぃいいああああああああああああああああああ!は黒歴史だな」
見終わったのか、テレビを消し感想を述べると立ち上がった。
「よし、少し外に出ようか。ビデオショップに行き、映画のビデオでも借りようではないか」
「ああ分かったよエヴァ」
大犯罪者であり、真祖の吸血鬼様であられる方の発言とは思えないが、もう突っ込むまい。
ちなみに藤井蓮はエヴァンジェリンのことをエヴァと言うことにした。
端的に名前が長いから。
思えば久しぶりに外に出る。
正直に言えば、エヴァンジェリンと模擬戦をしてから一度も別荘から出ていない。故に、何ヶ月も別荘に滞在していたことになる。
見方を変えればニートと同義だ。
――そんな訳で、外であるメセンブリーナ連合の小国へとやって来た。謂わば地方都市。
本国の首都ほどの賑わいはないが、充分だろう。
しかし戦争中にも関わらず、こうして平和ということは被害などあまり受けていないからだ。
「無辜の民とは言え、戦争中だぞ。少しは警戒意識を持ったらどうだと私は常々思う」
確かにその通りだ。
いくらこのような地方都市めいた場所で、尚且つ狙われないからといって、ここまで平和状態で良いのだろうか。
「人は日常の円環を自然と守ってるんだよ。だから、こうして戦争から目を逸らして生活してるんだろ」
「お兄ちゃんらしい台詞だな。日常を愛し、非日常を嫌う……他人から詰まらない人間と言われたことは何回ある?」
「言われたこと前提かよ」
「まさか言われたことが無いと言うのか。あっ、そっか、お兄ちゃんはそう言ってくれる友達がいなかったな」
「お前は人の心を抉るのが好きなのか?」
「好きか嫌いかで問われれば、好きと言わざるを得んな」
「そうか、多分お前は友達が減るタイプだから気をつけろ」
もはや自虐に等しい言葉を言い合っているようにも見える。
「案ずるなよ。私の友達は、お兄ちゃんだけだ」
「…………」
急に、ちょっと嬉しいことを言うから困る。
「ほう、照れてるのか?」
「照れてねえよ」
「ハハーン、お兄ちゃんは本物のツンデレと見たぞ」
ツンデレと言う単語を使うとは、随分と現代の俗語が浸透した吸血鬼だ。
書物に登場する吸血鬼は狡猾であり、カリスマ性が溢れていたりするが、目の前の吸血鬼はどうにもそれに当てはまらない。
ギャグ漫画なんかに出てくるダメな吸血鬼が適切だろう。
初めて会った時の面影が一切ない。
「ふむ、その解釈で行くと、お兄ちゃんは嬉しくて仕方ないのだな。可愛いやつめ」
「ああもう好きに解釈しろ」
何て、ショップに行くまでにバカな会話が繰り広げられていたのだった。
――ビデオショップにて。
元来魔法世界風に言い換えると正式名称は違うが、ここはビデオショップorビデオと代弁している。
店内の広さはまぁまぁ。広いとも狭いでもない中途半端な広さ。
しかし店内にはギッシリと棚に様々なビデオがジャンル別に並べられている。在庫には問題ないようだ。
エヴァンジェリンは既に見たい作品を決めていたのか、直ぐに自分の見たいジャンルのコーナーに行きビデオを手に取り見る。することが速い。
「私が見たDies iraeの前作であるPARADISE LOSTを見たいのだがな……」
何やら天使の羽が生えた金髪の女の子がプリントされているビデオケースを見ている。
どうやらDies iraeの前作であるようだ。
「何だよ。見たいんなら借りたら良いだろ」
「いやしかし、どうも私は不快で仕方ない」
「は?」
「ふむ、この作品に登場するサタナイルとアストの関係が私とお兄ちゃんにそっくりで仕方ない」
「…………」
そも藤井蓮はDies iraeどころか、それの前作PARADISE LOSTすら見たことは当然、情報すらほとんど知らないのでどう口出しして良いのか分からない。
噂ではサタナイル役の人と脚本家である堕天奈落氏二人でストーリーを完成させた裏話もあるのは豆知識。
「まぁ見なかったら見なかったで後悔しそうだから、これを借りるとしよう」
「それが無難だろうな」
「……お兄ちゃんは何も借りないのか?」
「まぁ特に見たいもんとか無いからな。映画とか、そもそもテレビじたい見ないし」
「なら私のオススメを見てみると良い。うむ、それが適任じゃな。この私の映画通を舐めるなよ。A級映画からC級まで網羅してるわ」
この吸血鬼は暇があれば映画を見ているらしい。
「ただしホラーは見んな。何せ安っぽい物が多いからの」
同時に今、ホラー映画ファンを一気に敵に回した。
そもそも自分が吸血鬼と言うホラー物だし、見ないのが普通かと蓮は思う。
リアルホラーは言うことが違う。
「私のオススメはな……」
この後、映画通の独特のお勧めものを役一時間に渡って聞かされた。
「さて帰るか」
とエヴァンジェリンが言った頃には両手で借りたビデオの袋を持たなきゃいけない状況となっていた。
「お前、何本借りたんだ?」
「15程度だ。多くも少なくもない量だな」
世間では多いです。
15本も映画見たら大体、30時間から40時間くらいか。まぁ別荘で見たら時間の概念が変わるから時間的には心配ないか。
「SF、アクション、コメディ、恋愛、ミステリーあらゆるものを借りたぞ」
ホラー除いて。
「しかしふむふむ、龍水店長(仮)おすすめ今年大注目の映画『夜行が観光するイルミナティ』が気になるの」
「どんな映画だよ。明らか駄作臭がするぞ」
「言っただろ。私は例えC級映画すら愛する寛容の持ち主だと」
自分の好きなことだけは寛大な対処をするようだ。
「それに自慢じゃないが、世間でクソ漫画やクソゲームと言われている物も愛している」
本当に自慢じゃない。
知らなかっただけで、精神的には見た目と比例するかもしれない。
そんな少女と言う概念が当てはまるエヴァンジェリンが、メルクリウスを酷く憎んでいるとは思えない。
もし吸血鬼なんかにされていなかったら、平和に楽しく生涯を過ごせたかもしれない。それをブチ壊したのが自分の父親。
複雑な立ち位置だ。
――蓮とエヴァンジェリンは別荘に帰ると、何やらメイド達が騒いでいた。
慌ただしく、騒然と。
蓮とエヴァンジェリンは首を傾げ、建物内に入る。
メイド達が必死に止めようとしたが、エヴァンジェリンの一言で全員静まった。故、カリスマ性があるにはあるし、威圧感もある。どうやら場によって吸血鬼魂が復活するようだ。
そして二人はその災禍の中心へと行くと……
「随分と待たせるな、我が息子」
そこにはメルクリウスが佇んでいたのだった。
《2》
――と、回想終了。
そして諸々(この諸々が大切なのだが)あって冒頭の展開になったのだ。
「遂に、遂に見つけたぞメルクリウス。貴様は殺す。生きて帰れると思うなよ」
隠蔽に内包されていたエヴァンジェリンの魔力が、別荘中に流出していく。
爛れた魔力は殺意に満ちており、その圧迫感で常人なら失神してしまいかねないほどだ。
しかしメルクリウスは、
「吸血鬼は二言目には殺すか……一貫して面白味がないな。故に言おう、詰まらんと」
平然と、まるで目の前の相手はただの戯言を言う少女かのように。
「それに私は我が息子を迎えに来たまでだ。お前に用はない」
「お兄ちゃんが貴様の息子だと。成程、現実逃避はせん。貴様とお兄ちゃんは似ているからな。しかし、私とお兄ちゃんには絆と言う物が深く刻まれておる。だから、そんなこと心底どうでも良い」
「成程成程。憐憫な感情だ。我が息子とそのような関係とは。私とは趣向が違うようだ」
まるで憐れむかのように、藤井蓮を見て言う。
その間にエヴァンジェリンは、
「だからとっとと死ねメルクリウス! 貴様の存在は魔法世界の、いやこの宇宙の汚物だ!」
水銀の蛇を引き裂こうと、鉄より固く、刀より鋭利な殺意の爪が電光石火の如く踊り狂う。
既に速さは音速の壁を通り越している。
しかしメルクリウスにとって速さの概念など一切意味を持たない。
故に――
「戯れに付き合っている暇はないのだよ。お前が誰だかは知らんが、私は我が息子を連合の主国へと連れて行かねばならない。ああ案ずるなよ、我が息子なら好きな時に好きなだけ貸してやる」
「自分の息子を物扱いか? 私も悪の魔法使いと自負していたが、貴様はそれの次元を軽く超えて、醜悪な糞の領域だな。ああもうあれだ、貴様を殺す理由がまた一つ増えたぞ」
やはりと言うか、メルクリウスはエヴァンジェリンのことを一切覚えていなかった。
しかしそれに対しては殆ど怒らず、自分の友達を穢されたことに対して静謐なる赫怒を内に留めた。
それはエヴァンジェリンにとって自分の過去の悲劇より、藤井蓮と言うたった一人の友達を大切に思ったが故の事だ。
「我が友を愚弄した罪は、万死に値する!」
手に握るは氷の宇宙。
そこから発せられるは――術式兵装『氷の女王』。
「さぁ永遠の眠りから貴様に死をくれてやる!」
膨大な氷の世界が、水銀という名の汚物を浄化せんと喰らいつく。
それを歯芽にもかけず、水銀の蛇は自分の息子に言葉を放つ。
「ああ面倒だ口で説明しよう。連れて行かなくとも、お前が明日自らの足で行けば良いだけの話だからな」
飛来する闇の氷。
当たれば永劫凍結は免れないが、そんなことはどうでも良いように告げる。
「明日……紅き翼は戦争終結へと最後の戦場へ出るとのことだ。しかと伝えたぞ」
そう言うと、メルクリウスはまるで空間に溶け込むように姿を消した。
それに対しエヴァンジェリンは一瞬茫然自失となるが、直ぐ様気を取り直し蓮へと駆け寄る。
「チッ、メルクリウスの奴逃げおったは。ふんっ、私を恐れて逃げたのだな、随分と腑抜けのようだ」
自分がメルクリウスのことを隠していたのを咎めるのでもなく、そう言う。
蓮はそれに対し、罪悪感をお覚え、
「わ、悪いエヴァ。俺は……」
謝ろうとした瞬間――
「謝罪は聞かんぞ。私とそこらの女子を一緒にするでない。たかがその程度のこと。私は別に怒ったりもせんし嫌ったりもせん」
エヴァンジェリンは淡々と、自然に口から出る言葉で紡いでいく。
「人は不味いことを隠したりもする。それは仕方のないこと。後はそれを聞いて受け入れるかどうかだ。それで受け入れなかったらその程度。しかしな……」
最後に、エヴァンジェリンはまるで本当の友情を此処に誕生させるかのように言った。
「私とお兄ちゃんの絆は、その程度では揺るがぬ。それが私がお兄ちゃんに対する友情の証というやつだ」
蓮はそれを聞き、少し……否、かなり嬉しくなり、エヴァを改めて大切な友達だということを認識したのだった。
(∴)
(よっしゃおらあああぁぁァァッーーーー!)
湯船覗き見大成功と同時に歓喜の内心夕日に向かって大叫び。
こんな中高生がしそうなことをするのは他でもない――坂上覇吐。
性欲界紳士道の益荒男である。つまり変態野郎。
覇吐は瞳には現在、湯気により淫靡な形で見えるザジ姉妹の入浴姿。
バレたら即死刑だが、益荒男(変態)はそんなミスを犯さない。否、現状それ以上のことすら考えている。それは――
覇吐妄想世界へ
ザジ妹「な、私達が入浴中だと言うのに正々堂々入ってくるとは、流石は益荒男」
ザジ姉「思った以上に勇敢、少しは見直したポヨ」
覇吐「ハッ、俺にとってお前達は可愛い子猫ちゃんと同じだ。例えお前達がどれだけ猛々しい虎を飼っていたとしても、俺は全てを受け入れる寛大な心の持ち主だぜ」
ザジ妹「私達を子猫と表現するか、随分と可愛らしく見てくれているのね」
ザジ姉「でも、私達はそんなに可愛くないポヨ。だって――」
覇吐「おっと、それ以上は無しだぜ。言っただろ、俺から見ればお前達は可愛らしいただの子猫ちゃんだと。故にまずは愛でよう。そして、俺が総てを綺麗に浄化してやるよ」
ザジ妹・姉「は、覇吐さん」
覇吐「おっと、迂闊に触れちゃいけねえや。俺に近づきすぎると火傷するぜ、子猫ちゃん方」
ザジ妹「本当……こんなに熱い」
覇吐「だろう? あんたらがそうさせてるんだぜ。全く、罪な子猫ちゃんたち……だが、その目が俺を――惑わせる」
ザジ姉「だ、ダメポヨ。私達はそんな……」
覇吐「怖いんなら、目を閉じてな。見てるのは、あのお月さんだけさ」
ザジ妹・姉「覇吐……」
覇吐「ザジ……」
ザジ妹「私達を……」
ザジ姉「抱いて……」
ザジ妹・姉「覇吐の熱さを感じたい」
妄想終了――
(最高。最高。超最高! 一点の曇りなし欠点なしじゃねえか!)
欠点だらけの暗雲と気づかない覇吐。
(名付けてお風呂でばったりヌキヌキポン大作戦っ!)
ヌキヌキポンと言う単語は覇吐が生み出した変態用語。
意味は……ご想像にお任せします。
覇吐は脱衣所に突入(侵入)し、衣服を脱ぎ捨て下半身にタオルを巻く。この間、わずか十秒。
「行ってまいります、お母さんっ」
故郷のお袋に、覇吐の名前はこれから覇吐・レイニーデイになることを誓いつつ……いや、この場合はザジが坂上の家紋の下継ぐのか、そんな細かいことはどうでも良い。
許せおっかさん。俺は嫁を二人貰う罪な男になるかもしれんと、謝罪を入れつつ――いざ尋常に、お風呂の中へと逢瀬仕るため、引き戸に手をかける。
「尋常に……」
勝負の時――
力一杯、引き戸を開け放ち、桃源郷の中へと入る。
そこには……
湯煙の先に、白い肌、かきあげた髪に美しいうなじを持つ、
「何だテメェ」
良い男に出会った。
「なんてこったい」
この展開、予想できたやつ何人居る?
(∴)
「ふざけんな俺の夢を返せよぉ! 気合入れてシミュレーションを何回も考えて挑んだ計画だったんだぞ!」
あれから覇吐は急いで元の場に帰り、ウェスペルタティアの少女に半泣き状態で猛抗議を繰り広げた。
入浴上の出入り口にはある仕掛けが施されていたらしく、無断で入ろうとすればランダムで何処かの男湯に送られる仕組みになっていた。魔法万々歳である。
「貴様の変態行動は看過できんからな。何だ不満か? 次は王室にでも送りつけてやろうか? そうすれば即座に拘束されるぞ。一生、女体が見れんと知れ」
少女は脅しながら、とんでもないことを言った。
一生女体が見れない=無間地獄に等しい覇吐であった。
「して、ザジ姉妹が来る前に話しておこうか。覇吐よ、貴様の兄である波旬についてじゃが……アレは一体なんじゃ?」
「何だって言われてもな。ヒキニートな兄としか言えねえよ」
これが覇吐視点から見た波旬。
しかし……
「いや、あれはそんな巫山戯たものではない。歴代の全魔法使いでも、あれだけ異例で異質なもの、悪いが私でも見るのは初めてじゃ」
「そうか? 俺にはただのうんこ頭のガングロ野郎としか思えねえよ。ちょっと力の使い方がおかしいけどな」
「そのちょっとで、下手をすればこの魔法世界……否、この宇宙すら破壊しかねんのだぞ」
「おいちょっと待て。それは言い過ぎだろ。確かにあいつの力はヤベェよ。けど俺は兄貴と五角くらいは戦えてるつもりだぜ。そう考えると、俺にもそれくらいの力はあって当然だろ。だけど俺にそんな力は勿論皆無だ」
「成程、貴様も少し異質のようだ。過去に前例がないだけに、氷解はできんな」
覇吐はどうも釈然とせず、何をそんなに焦っているんだと疑問が浮上する。
そんな中、少女が結論づけるように言った。
「この先、貴様の兄は全世界のものを敵に回すぞ」
と告げた。
(∴)
あれから藤井蓮はメルクリウスに言われた任務の件で外の世界へとやって来た。
話を聞くに『完全なる世界』が総てを暗躍しているらしく、もはや魔法世界すら支配していると言っても過言ではないらしい。
そして事の経緯――アリカ姫、執政官、ガトウなどなど――を聞き、これから何をするかも聞いた。
まずガトウとラカン、ネギが執政官のことをマクギル元老院議員に執政官のことを告げた瞬間、ナギが何かに気づきマクギル元老院議員の頭を魔法で燃やす。
瞬間、それはマクギルではなく『完全なる世界』の者だと判明。
しかし不運にもマクギルの声音を使い、紅き翼が反逆者と連合側に伝わる。
故に、ああ分かるだろう。
味方だった連合側を追われ、紅き翼は首都を離れた。その時、メルクリウスは内心涙目である。
罠にはめられ連合からも帝国からも追われる身となった紅き翼は、古代遺跡が立ち並ぶ『夜の迷宮』へアリカ姫の救出へと向かう。
と同時に一緒に監禁されていた連合側の第三皇女も救出。
アリカ姫に総ての経緯を伝え、連合にも帝国にも自分の国であるオスティアにも味方がいないことを言う。
それを聞いてアリカ姫は冷静にこう言い返す。
「主と、主の紅き翼は無敵なのじゃろ?」
ここでナギはアリカ姫の盾となり剣となる。
そして世界を救うことを約束する。
さぁここから反撃が開始だ。
だが生憎と誰が敵で誰が味方なのかも分からない。
故、その辺の判別は頭脳労働班に任せた。幸いなことに姫様達のおかげで仲間も徐々に増えた。
肉体労働班は敵と分かった組織を一気にブッ倒す。
だが倒した敵は『完全なる世界』でも雑魚の中の雑魚。本当の敵は、紅き翼を貶めた男だ。
そいつを探す過程で敵を薙ぎ倒していき……遂に敵地の本拠を見つけた。ちなみにその過程はラカン曰く映画なら三部作、単行本なら14巻分並の死闘だったらしい。
そして敵の本拠地だが、そこは世界最古の都、王都オスティアの空中王宮最奥部――『墓守の宮殿』。
――ここで遂に、ラストバトルが始まる。