本当に遅くなってしまって申し訳ございませんでした!
理由は、とりあえず書きません。正直、八命陣の続編である万仙陣を発売当日にプレイして、全クリをするくらい時間に余裕はありましたが、色んなゲームに嵌って書けませんでした。
「あ……ヤベ」
保健体育の補佐である坂上覇吐はゾッとした。
本日より麻帆良学園女子中等部2-Aを担当することとなったネギ・スプリングフィールドは、最大のミスを犯そうとしていたからだ。
ミス、と言うのは簡単に言うと一般人の前での魔法の行使。
一体どんな魔法を? なぜ使ったのか?
その理由は、日本学園ではよくある歓迎もしくはイジメor面白などで使われる戦略的罠――黒板消し落としである。
方法はとてもシンプルで、教室の引き戸の上に黒板消しを挟んでおくだけ。そうすることにより、引き戸を開けた瞬間、黒板消しがちょうど頭の上に落ちてくるのだ。
そんな罠を2-Aの個性豊かな生徒たちは仕掛けていた。
「――――」
ネギはそんな罠を仕掛けられているとは知らず、普通に引き戸を開けた。
しかしここで覇吐が驚いたのは、ネギは頭の上に落下してくる黒板消しを何と魔法を行使して、すんでのところで停止させたのだ。それはさながら、黒板消しの時間を止めたが如く。
「うぉぉおおおお足が滑ったーー!!」
そして状況説明をするより、覇吐がわざとらしい台詞を吐き、そのまま目の前でバカをしているネギを蹴り飛ばした。
「うあぁぁあああああ!!!」
ドゴォンと言う効果音付きで、教卓まで蹴り飛ばされたネギは打撃を受けた尻を摩りながら涙目になる。
覇吐の履いているのが下駄と言うこともあり、かなりのダメージだ。
「「「…………」」」
そんな光景を呆然としながら見ていた2-Aの一同は、ネギの姿を確認すると焦りの色を見せながら近寄る。
「きみ大丈夫?」
「痛かったね。よしよし」
「ごめんね、担任の先生だと思って」
と、生徒たち一同がネギに安否を心配しつつ、
「ちょっと覇吐先生、こんな小さい子を蹴ったでしょ!?」
「え、ホンマに?」
「うあ、先生最低ー」
「先生、それは流石に酷いかも」
「ドン引きです覇吐先生」←ザジ
罵倒を受ける覇吐。
正直なところ、覇吐は間違ったことはしていないのだが、第三者視点から見れば大男が子供を蹴ったシーンにしか映らない悲しさ。
(クッ、これが益荒男の定めか!?)
と、心の中で血涙を流しながらバッシングを受け止めるのであった。
(……しょーもない)←エヴァ
(∴)
「え~、今日からこの学校で英語を教えることになりましたネギ・スプリングフィールドです! 三学期の間ですが、よろしくお願いします!」
一旦仕切りなおし、生徒たちを席に付かせると、ネギはみんなに自己紹介をした。
それに対し、生徒の皆様はキョトンとする。
「え、えっと覇吐先生、どういうことですか?」
そんな中、生徒全員の心を代表するように出席番号3番――朝倉和美が覇吐に問いかける。
「ああ。これから2-Aを担任するネギ先生だ。みんな仲良く――どわぁ!」
「「「きゃあーーー!! かわいい~!!」」」
覇吐の言葉を聞くや否や、生徒たちがネギに詰め寄る。その際、横に立っていた覇吐は突き飛ばされた。
「何歳なの~!?」
「えうっ! その10歳です!」
「覇吐先生と同じ髪の色だけど、まさか兄弟なの!?」
「いえ、それはないです」
「どっから来たの!? 何人!?」
「ウェールズの山奥の」
「覇吐先生に変なことされなかった~!?」
「いえ、何もされてないです」
「今どこに住んでるの!?」
「いや、まだどこにも」
「覇吐先生って変人だよね~」
「え、そ、そんなことは」
「お前ら、間間に俺を貶めるような質問してるなよ」
一斉にネギに質問の集中砲火を浴びせる。
そのついでと言わんばかりに覇吐はディスられる。溜まったものでない。
「やってらんねぇぜ、たくよ」
*
(そしてその後、雪広あやかや神楽坂明日菜と一悶着が有り、授業も色々とトラブルがあった為、ほぼ出来なかったと)
ネギの授業が終わり、覇吐は一人学園内の廊下を歩く。
あの後の授業の光景や、やり取りを見ていたが、ほぼ委員長と明日菜の2-A伝統の珍闘を繰り広げたのみ。
「まぁ予想はしてたけどな。つうか、それよりも――」
(ネギ先生の歓迎会をするにしても、特に案もねえしな。あれ、そういやアイツも案を考えてくれるって約束したっけ?)
ネギ先生の歓迎会について、一緒に考えてくれると約束してくれた……藤井蓮。
しかし今にして思えば、藤井蓮はあまり騒がしいことが好きそうじゃないし、こういうことは苦手そうに見える。
故に――
「駄目そうだな。あいつの案は聞くだけ無駄なように思えてきたぜ。もし考えていたとしても、つまんねぇ案しか出てこなさそうだしな」
何て悪態をつく。
本人に訊かれたらボコボコにされても仕方ない風評被害だ。
「けど、もしかしたら、すっげぇもしかしたらだけど、何かとんでもねぇ案を考えてそうだな」
廊下を歩きながら、独りごちる。
「覇吐先生、廊下で歩きながらブツブツ呟いていると気持ち悪いから止めてください」
と、そこに覇吐の相方であるザジが現れた。
途端に悪態を突かれた。
心が痛いが事実だ。
「お前は少しくらい俺に対して何か褒めのセリフとか、良いこと言えねえのか?」
「え、いいとこですか? いつも女性のお尻ばかり追いかけて、鼻の下を伸ばして、学園なのに派手な着物とゲタを履いたブツブツ何かを言ってる変態先生のいいところをですか?」
「グッ、的確に突いてきやがるじゃねぇか」
「その上、女子更衣室まで覗いたり、シャワー室を覗いたり。止めに女の子の歯ブラシを舐め回したり(チュパ音あり)、寝巻きをクンカクンカしたりと。思い返せば本当に最低ですね。どこぞのストーカー野郎を超えてますよね」
「グッハ! やるじゃねぇか。俺の心にこんなにダメージを与えるなんてよ」
精神的なダメージを喰らった覇吐は煙管(タバコ)を取り出して吸おうとする。
「学園内でタバコを吸うな馬鹿先生」
次いで、煙管を咥えたところに凄まじいアッパーを受けた。
お陰で歯槽に多大なダメージを負う。少し血が出た。
「イテェ、精神的にも肉体的にも痛手を受けちまった」
口を押さえながら涙目になる。
「そんな訳で覇吐先生のいいところが思いつきません」
「…………何か辛い」
そして二人で廊下を歩いていると――
「お、蓮さんじゃないっすか」
「坂上か」
藤井蓮とエンカウントしてしまった。
傍に吸血鬼のエヴァジェリンがいないところを見るに、恐らくこれから夜の警備に関することでも何か決めに行くのだろう。
まぁ興味ないが。
「お、そうだ」
ここで、先のことを思い出した。
「なぁ蓮さん。先の約束だけどよ、ネギ先生の歓迎会。何か良い案とか出たか?」
「ん、ああ、そうだな。まぁ、少しくらいは」
「お、マジで。どんな案っすか?」
期待はしていないが、ここは聞いてみるのが筋。つうか、自分で約束しといて聞かないのは失礼に値する。
それに、藤井蓮みたいな人間に限って、とんでもない案を秘めているのかもしれないと……覇吐は考えを改めていた。
そして蓮は、重苦しそうに口を開く。
「……ロリータファッション歓迎会とか」
「は?」
藤井蓮のセリフに覇吐は何かを聞き違いたかのように、呆然となる。
同じくザジも予想外の案に、少し引いた。
「いや、ほら2-Aの女の子たち全員にロリータ服を着ての歓迎会とか。結構、思い出に残るんじゃないか?」
「は、はぁ……」
予想の斜め上というか、下というか。
ああ確かに、とんでもない案を秘めていたよと考えが確かになった覇吐。
「と、とりあえず俺の出せる案はこの程度しかない。まぁ最初は、確か魔法関係を気にせずに話せる面子ってことだったけど、流石に何も思いつかなかったんだよ」
「……い、いや助かるっすよ。その案……使えたら使います」
最後は聞こえないように小声で言う。
「まぁネギ先生の歓迎会は、2-Aのメンバーも参加させたほうがいいんじゃないか。影でコソコソ歓迎会をしたってバレたら、後々うるさいと思うぞ」
「そうっすね。やっぱそっちの方が――」
その瞬間だった。
「聞いちゃったよ覇吐先生ー!」
「ネギ先生の歓迎会とは、聞き捨てならないにゃ~!」
「はい、とても素晴らしいお考えだと思います」
「ウチらもよければお手伝いしますよ」
……そこに2-Aの佐々木まき絵、明石裕奈、大河内アキラ、和泉亜子が蓮との会話を偶然聞いてしまったのか、アタックを掛けてきた。
「お、お前ら。何でここに!?」
「いや~、部活に行く途中だったんだけど、そんな話を聞いちゃ素通りするわけにはいかないよ」
まき絵が答える。
そう、彼女ら四人は運動部系の部活に所属しているのだ。故に仲が良いのは必然で、途中までの道のりが一緒だったのだろう。
「で、どんな歓迎会にするの?」
「そうだな、まだあんま決まってねぇんだけど」
裕奈の質問に、覇吐は答える。
「とりあえず2-Aみんなでしようかなと思ってんだよな。場所はそうだな、教室でどうだ?」
「お、いいですね! じゃあ早速――」
パチパチと、手馴れた感じでまき絵が携帯を弄っている。
そして――
「はい、今2-Aみんなにメール送ったから。これで大丈夫ですよ覇吐先生」
「行動早いな。つか、まだ全然何も決めてないぞ」
「大丈夫。何たってうちのクラスには――」
「なんですってぇぇぇええええええええ!!」
ドドドドドドと、凄まじい足音を轟かせ、ご近所迷惑な声を上げながらこちらに近づいてくる。
その正体は……
「覇吐先生本当なんですか!? ネギ先生の歓迎会をすると言うのは!?」
とんでもない形相で、なぜ自分の居場所が分かったのかを尋ねたいが、そこに雪広あやかがやって来た。
「お、おう。その予定では、ある」
あやかの半端ない圧迫感に蹴落とされる覇吐。
「ではこの私、○○(とんでもない金額)までなら予算を投入しますわ! だから、ぜひ私にネギ先生との特別サプライズを!」
「いいんちょー、何一人で盛り上がってるのよ。ネギ先生は、みんなの先生だよ」
「それに、予算凄いし。どんだけ派手にするつもりよ」
「ウチ的には、もっとほのぼのとした歓迎会の方がええな」
「何でしょう。このままですと、財力に物を言わしたストーカーになりそうですね」
アキラが真髄を突いた発言をした。
いや、本当単純に怖い。
「お、なになに」
メールの返信がいくつか来たのか、まき絵が携帯を開く。
「あ~、何かみんな盛り上がってるみたいで、もう教室の飾りつけとか、お菓子やドリンク買い集めてるみたい」
「さすが、こういうイベントは本当にみんな行動早いね」
「まさかもうそこまで進んでいるとは。こうなれば私、残り僅かな時間で製作途中だったネギ先生の銅像を急ぐよう業者に言ってきますわ!」
そんな訳で、苦悩して考えていた歓迎会の案は意味をなくした。
「けど覇吐先生。何か歓迎会の内容考えてた感じやったけど、いいんですか?」
亜子が尋ねてきた。
まぁ正直、何も思いついていなかったから、特に問題はないが。
「ああ、構わねえよ。だけど、蓮さんの考えてくれたゴスロリファッ――」
「何か言ったか坂上。ん?」
殺気を込めた微笑みを見せる蓮。
やはり他の人に聞かれるのは嫌だったのだろう。
覇吐は冷や汗をかきながら、途中で言葉を止めた。
「え、ゴスロリ?」
「いや、何でもねえ!? マジで」
「そうです。覇吐先生の考えてた案が、2-Aのみんなにゴスロリファッションを着せて行う、最低な企画だっただけです」
横から、ザジがとんでもないことを吐いた。
勘違い100%な台詞を。
「え、あ、そ、そうなんや」
明らかドン引いた亜子に、覇吐はなぜか心を痛めた。
「これで藤井さんの矜持が守られましたね」
「代わりに俺の矜持がズタズタだけどな」
そんな訳で、今日も覇吐先生は平常運転だったのだった。
(∴)
そして数時間後――
『ようこそ♡ ネギ先生ーッ』
ネギ先生の歓迎会が教室で開催された。
みんな飲んで食ってのバカ騒ぎ。
そんな中、図書委員こと宮崎のどかが何やらプレゼントを渡していた。何かあったのだろうか?
そして本当に、あの短時間であやかはネギ先生に銅像をプレゼントしていた。これが財力に物を言わせた力なのだろう。
「で、何で俺まで付き合わされているんだ」
と、蓮はドリンクを飲みながら居心地悪そうに言う。
「いやいや、やっぱ一緒に企画を考えてくれたんすから、ここはパーっとやってくださいよ」
「ネギ先生の歓迎会だろ。俺の歓迎会じゃないだろうが」
空になった蓮のコップを見るや否や。覇吐は透かさずジュースを注ぐ。この辺は素晴らしい社交性である。
「あはは、まぁまぁ蓮さん。ここは一緒に歓迎してあげようじゃないですか」
「ええ、その方がよろしいと思いますわね」
蓮の隣に座る高畑先生としずな先生が言った。
「はぁ、俺はこのあと、警備の仕事なんですけどね。あまり騒がしいところで、体力を使いたくないんですよ」
「心配はいりませんよ。今日はなんたって、最強の用務員である大獄さんも担当ですからね。例え何があっても一撃必殺ですよ」
「そ、そうか」
とりあえず、頷いておく。
そこに――
「あ、これは幻のイケメン青年である藤井蓮さんじゃないですか!?」
朝倉和美が蓮を発見し、声を上げる。
「うあ、本当だ! 久しぶりに見た!」
「え、私はよく校内で見かけるよ」
「私は数ヶ月ぶりに見たよ」
「僕は生で会うのは初めて」
「……人を珍しい生き物みたいに言うな。失礼って言葉を知らないのか?」
蓮はため息をつき、視線を掻い潜るように移動する。
そして、そのまま退室しようとしたが、
「何だ藤井さん。せっかくの催しなんだから、ゆっくりしたら良いではないか」
同じ警備の仕事に携わっている、龍宮真名に止められた。
「お前な。俺はこう言う賑わった場所が、あまり得意じゃないんだよ」
「それは私も同じです。しかし私も耐えているんですから、一緒に頑張りましょう」
「刹那……お前まで」
更に同業者である、桜咲刹那にまで止められた。
「てか、お前の場合、どこぞのお嬢様から目が離せないからだろ。俺まで道連れにするな」
「なッ! ふ、藤井さん! 何をいきなり……」
「たく、いい加減正直になったらどうだ? 近衛木乃香に向けて」
「や、止めてください! そ、そんな簡単にはいかないんです……!」
「そうか? 簡単だと思うけどな」
そんな、ほのぼのなトークをする二人。
それを遠目で見ていたエヴァが、嫉妬の念を募らせていた。
(くっ、お兄ちゃんめ。他の女にちやほやして! 刹那め……覚えておけよ)
何故か復讐を誓うエヴァ。
ちなみに遠くない未来、とある祭りで復讐劇が起こるのは、察しがつくだろう。
「へぇ、二人とは仲がいいんですね、藤井さんって」
「いいな~、私も紹介してほしいな~」
2-Aは藤井蓮とネギの人気が高い。
「……どうして、俺の人気は出ないんだ?」
それを悟った覇吐は首を傾げる。
「え、だって覇吐先生は下心丸出しだし」
「ルックスが古風すぎてついて行けないし」
「へ、変な考え持ってるし。流石にロリータファッションは、どうかと……」
「いや、それ! 俺の考えたものじゃないし!」
覇吐が訂正しようにも、日頃の行いから信じてもらえない。
「え、なに亜子。その話、詳しく聞かせて~」
「やめろー! これ以上、俺の名を穢すなー!」
「大丈夫、これ以上は穢れないから。もうみんな、理解してるから」
最後に言ったザジのセリフに、覇吐はシュンとした。
救いがない。これはこれで悲しい結末である。
「……ネギ先生。実はね、この歓迎会の企画者は覇吐先生なんだ。だから一言、お礼を言ったらどうだい?」
そんな光景を遠目で見ていた高畑は、ネギに声をかけた。
「え、そうなんですか。だったら早くお礼を言ったほうがいいですね」
ネギは覇吐のもとまでいき、暗くなっている覇吐に声をかけた。
「覇吐先生。今日はこんなパーティーを開いて頂きありがとうございます。今日は色々あった一日でしたが、覇吐先生がいたからこそ乗り切れたと思います。これからも、いっぱいご迷惑をかけると思いますが、よろしくお願いします」
「うっ、そ、そうか」
今日は、自分の好感度を下げてばかりの一日だったが、まるで天使のようなネギの笑顔に、一気に曇が晴れたような気がした。
「俺も、ダメなところが多いからよ。まぁ先生としては先輩だし、こういうことは不安にさせるから言いたくはねぇんだけど。俺もお前に負けないくらい迷惑をかける。だから、その時は出来る範囲でいいからサポートしてくれよ」
「はい。ではお互い、切磋琢磨しましょう。そして助け合いましょう。僕もその方がいいですし」
「ああ。これからも、よろしくなネギ先生」
手を差し出す。
「はい。よろしくお願いします覇吐先生」
そして同じく手を差し出し――握手を交わす。
これぞ絆を紡いでいく始まりの話。
繋いだ手を離さないように、これから二人は頑張っていく。苦難を乗り越えていくのだ。
「あ……」
「こ、これは……」
2-A一同が二人に視線が集中し――覇吐は歓声が上がると思ったが、予想を最悪な方に反した声が上がった。
「覇吐先生×ネギ先生の完成だー!」
何て声を真っ先に上げたのは早乙女ハルナだった。
それに呼応するように、他の一同からも、そんな腐った声が上がる。
「――いや何でそうなるんだよぉぉおおお!!」
そして覇吐の絶叫が学園中に響き渡ったのだった。