波旬兄弟と蓮親子がネギまの世界へ   作:ディーン・グローリー

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初の三作同時投稿!
更新遅いくせに、なぜか禁書×正田作品とかの新作を書き始めたバカです(´・ω・`)

今回は100%変なノリで書いてしまったので、あれ、こんな作品だったっけ? てなるやもです。ですので、暖かい目で見てください。

にしても、最近地震が多くて怖い関東地区(´・_・`) でかいのきたら最悪……


第十五歌劇【喫茶店で触手】

《1》

 

「へぇー、また明日菜ちゃんに怒られたのか? 確かに授業の間、何かすげぇイライラしてたからな」

「はい。けど、根はとても良い人だし、今日のことは全部ぼくが悪いんです。朝起きたらアスナさんのベッドに転がり込んでいた上、アルバイトまで遅刻しちゃって、授業では恥ずかしい思いを――」

「お、おう。もうそれ以上言わなくていいぞ」

 

 本日の授業を終えたネギと覇吐は、学園内を歩いていた。

 

「それに、あの後の授業はずっと睨まれっぱなしだったし」

「だからもういいってよ」

 

 鬱真っ盛りの五月でもないのに五月病になってしまったネギを、覇吐はどうにか励まそうと頑張る。

 事の経緯はネギの重い口から出た通り、神楽坂明日菜との人間関係だ。

 昨日、ネギがこちらに就任兼、衣食住を行うのに対し、寝泊りする部屋を学園長の権限で明日菜と木乃香の部屋に指名された。そして勿論のこと子供嫌いの明日菜はネギを嫌悪していたが、色々なやり取りがあり明日菜との関係も良好となったのだ。

 しかしどうしてか、本日もトラブル続きで、再度関係が険悪ムードを漂わせてきている。

 

「それに、俺なんていつも相方に物理精神共に苦痛を与えられてるぜ。その程度でへこたれてちゃ、これからやっていけねぇぞ」

「覇吐先生の相方? それって誰ですか?」

「あ~、そういや言ってなかったな。お前のクラスに影と幸の薄そうなザジ・レイニーデイっていう、ヘンテコな女がいるだろ。一応俺、あいつの保護者ってことになってんだ」

「そうだったんですか。でも保護者って言っても親子ではないですよね? 外見も性格も似てませんし、覇吐先生は何か独身っぽいですし」

「お前今、サラッと酷ェこと言ったな」

 

 恐らく素で、何の悪気も無しに言ったのだろうが、これは無意識に人を傷つけるタイプかもしれないと、覇吐は内心思った。

 

(そういや、まだネギには俺が魔法世界出身だって伝えてねぇな。まぁいいか)

 

 本当は最初のうちに魔法関係のことを話そうとは思ったが、何だかんだで忘れてしまっていた。

 それだったら思い出した今、話せば良いのではと思うだろうがネギには目の前の問題解決を優先したほうが良さそうだと覇吐は先輩らしく考える。

 

「まぁ一つ言えるのは明日菜ちゃんの問題もそうだけど、しっかり他の生徒にも目を向けた方がいいってことだ。明日菜ちゃんのことばかり考えてっと、不平等に感じる生徒もいるからな」

「はい、そうですね」

 

 何て会話をしながら、二人の先生は学園内を歩む。

 ちなみに覇吐はここで初めて、ああ俺って先輩なんだなって実感が沸いていた。

 

「だから、他の生徒たちにも積極的に……おっ、ちょうどいいところにいるじゃねぇか」

 

 遠目に、三人の女生徒の姿を覇吐の鋭い眼光は捉えた。

 そこには2-Aの宮崎のどか、早乙女ハルナ、綾瀬夕映の仲良し三人組が文字通り姦しい状態で歩いている。

 

「よっしゃ、じゃあこっちから声かけてみろよネギ。知ってると思うが、生徒とのコミュニケーションは何よりも大事なんだぜ。こいつはナンパと同じだ。自分から行動を起こさねぇと、何も進展しねぇからな」

「は、はぁ、分かりました。確かに、他の生徒にも積極的に話しかけるべきですよね」

 

 ちなみに覇吐はナンパしまくってはいるが、進展はゼロである。

 

「あ、こんにちわ。綾瀬さん、早乙女さん、宮崎さん」

 

 駆動するのが早いネギは、三人の生徒に近づき挨拶をした。

 

「お、ネギ先生。こんにちわ!」

「こんにちわです」

「ど、どうも」

 

 しっかりと挨拶を返してくれる生徒たち。

 

「いや~、ネギ先生がうちの学園に来て、話題の的ですよ。小さな可愛い先生がやって来たってことで。しかも覇吐先生と××要素まであるし。いや~、薄い本が厚くなりますね」

「え、薄い本? 何ですかそれ?」

「知りたいですか? いいですよネギ先生。では、この私が隅から全部――」

「こらこらハルナ。変なこと言わないです」

「変なこと? ああ、そうだよね。やっぱり噂の青年――藤井蓮×ネギ先生だよね。覇吐先生とじゃ、やっぱり変よね。何ていうか、合わないみたいな?」

「違うのです。変なことを教えるなっていうことです」

「えー、この大日本帝国にいるなら、当然知っておかないといけないことじゃない」

「日本はまだそこまで腐っていないのです」

「???」

 

 途中から理解できないトークを繰り広げるハルナと夕映。

 ネギはとりあえず、この国にはまだまだ未知の文化があるのだなと思った。

 

「そうだ、ネギ先生。それよりさ、見て見て」

 

 そして二人の背中に隠れるようにしていた宮崎のどかを、ハルナが引っ張り出し。

 

「え、あ、ハルナ……」

「隠れてたら見えないよ」

「そうです、のどかはハルナと違って可愛いのですから。自信を持つのです」

「今けっっこう、ひどいこと言ったねゆえ吉君」

 

 ネギの前に出てきた宮崎のどかは、髪を切ったのか少し目を出している。

 

「どうどう、可愛いでしょ? 私の自慢の彼女は」

「はい。髪型変えたんですね。とても似合ってますよ」

 

 瞬間、ブワッとのどかの顔が爆発したかのように赤くなり、恥ずかしさのあまり逃げるように走り出そうとするも……

 

「待てよのどかちゃん」

「キャゥ!」

 

 走り出した、のどかの頭を鷲掴みにする覇吐。本当に容赦がない。

 

「ここで、逃げたらもったいねぇじゃねぇか。見てたら分かるぜ。つうかバレバレ。のどかちゃん、お前さん、ネギ先生のこと――」

「キャアアアーーーー!!」

 

 それ以上言われたら、もう二度とネギ先生の前に立てない。

 そんな思いを内包した、のどかが少し暴れたら偶然にも足が覇吐の摩羅にクリティカルヒットした。

 

「うぉおお、マジキタ……」

 

 その隙に、のどかは逃げてしまった。

 

「いやー、今のは覇吐先生が悪いよ。もし、私がのどかの立場だったら同じことしてるもん」

「デリカシーの問題ですね」

「ご、ごめん……」

 

 素で謝った覇吐であった。

 

   *

 

「ふ、ふふふ、これは使えるわね」

 

 そんな光景を森の影から見ていた一つの影。

 

「彼を追って幾星霜……これは絶好のチャンスね。にしても、本当にあれが魔法使いなのかしら? 隙だらけだし、股間蹴られただけで悶絶とか、まぁそれは仕方ないか」

 

 そして見張り、動く。

 まるで自分が、物語の黒幕にでもなったような気分になった。

 

「あはは、これは一歩前進の予感。彼が好きだから、彼が振り向いてくれるなら手段は選ばない。例え、どんな汚い手段を使ってでも。くくく、あはは、ははははは」

 

 声を抑えながらも、天に向かって雄叫びにも似た声を上げた。

 ああ、麗しい。これが恋焦がれたものの物語――恋する少女の気持ちなのね、と思う。

 

「さぁ、始めるわよ。そして逃がさない。私の愛しい愛しい少女物語。甘いあま~い愛の――ってあれ、いない!」

 

 一人、酔い浸かっていた影は、既に標的の姿を逃がしてしまっていた。

 

   (∴)

 

「つか、追いかけなくて大丈夫だったのか?」

「うん。メールしといたから。返信もあったし」

 

 あれから数分後、覇吐とネギ、そして何故かハルナと夕映は学園都市にある喫茶店にいた。

 理由は単純に流れで。

 ハルナが現在書いている漫画(同人誌)に関して、覇吐に色々昔から聞きたかったらしい。そして、のどかはあの後は特に問題もなく図書室にいるらしい。頭を冷やしたいそうだ。

 てな訳で、今は四人で喫茶店にいる。

 ちなみにネギは給水器に全員分の水を確保に行っていた。

 

「後でちゃんと、のどかちゃんには謝っとくか。デリカシーってやつ?」

「自分でデリカシーっていう人、なかなかいないよ。それより覇吐先生、私漫画を描いてるのは知ってるよね。そこで次の同人誌の案なんだけど、何かいいのない? 覇吐先生なら何か凄いアイデアもってそうなんだよね」

「そんなことかよ。まぁ、一緒に考えなくもないが――」

「皆さん、これすごいですね!」

 

 ネギの何か期待に満ちたような声が聞こえたので、全員がそちらを向くと、

 

「この装置、ボタンを押しただけで水がいっぱい出るんですね」

 

 給水器の周りに、たくさんの水の入った紙コップがあった。

 

「それ給水器って言ってな。つかおい、出しすぎ。どんだけ飲むつもりだよ! 水でお腹いっぱいになるわ」

 

 とりあえず、入れた分は責任を持って飲むのがマナー。故に、結構な量の紙コップがテーブルの上を支配した。

 

「ごめんなさい……珍しかったので、ついやってしまいました」

「まぁ、仕方ないよネギ先生。夕映がしっかり飲んでくれるから」

「何を言っているです。ちゃんと教えなかった覇吐先生のせいです」

「そこで俺に予想外の責任転嫁!」

 

 四人席に着くと、とりあえず紙コップの水を飲む。

 

「でもこれがいわゆる、クールジャパンなんですね。いや~、凄いです」

「間違った日本を覚えた外国人だぜネギ先生」

「え、そうなんですか。けど日本にはサムライ、ニンジャ、スモウ、スシ……そして今尚セップクがあると聞いてます」

「誰だ、こんな間違った日本を教えた奴は!?」

「けど、これはこれでいいかも。天然少年先生。色々と受けるかも」

 

 ハルナが何やらメモっていた。

 

「と、そうだった。で、覇吐先生。次の作品は少年教師と、ゴツイ変態教師ものにしようと思うんだけど、どうかな?」

「何かさっきも似たようなことを聞いたような気がするんだが」

「もっと具体的に言うと同じ赤毛……あれ、これって兄弟設定もいけたりできる!」

「それは絶対にやめろ」

 

 ……何の会話をしているのだろうと思うネギ。

 

「普通に純愛系とか描かないのか?」

「う~ん、それも描くんだけど。流石にそろそろ飽きてきたし。それにそっち系は触手モノとかのファン層も多いからね。なかなか純愛系って描けないのよ」

「じゃあいっそ、主人公が少女で触手が幼馴染の物語とかどうだ? まぁ流石にねぇか」

 

 覇吐が不意に思いついた案を言ってみたが、想像して笑えてきたので最後に否定してみたが……

 

「その案、貰った!」

 

 ハルナが目を輝かせて言った。

 いや、マジで、結構ありえないよ。

 

「いや~、流石は覇吐先生。そんな斬新なアイデアが出てくるとは流石。変態師匠と呼ばせて頂きます」

「それは止めて。せめて紳士に改変してくれ」

「変態は否定しないのですね」

 

 とりあえず夕映はネギに変な知識を植え付かせないため、別の会話を試みる。

 

「そういえば、ネギ先生は給水器をご存知なかったそうですけど、田舎から来た感じなのですか?」

「はい。都会とは全く縁もないところから来たもので。まだまだ知識不足なんです」

「そうなのですか。でも外国から一人でここまで来るなんて凄いのです。私なら確実に迷子必須なのです」

「いえいえ、そんなことないですよ。僕も一人の力では無理でしたよ。日本の皆さんが優しく、場所とかを教えてくれたお陰ですから」

「けど、凄いのです。尊敬できるのです」

「あはは、そんな。けど、僕もまだまだ勉強以外のことは知らないことが多いですので、よろしければ色々教えてください夕映さん」

 

 瞬間、夕映は一瞬だがドキンとした。

 それが母性本能を擽られたのかどうかは定かでないが、少し面映くなった。

 だが、ネギは知らない。夕映がクラスでも相当なバカの部類――バカ五人衆と呼ばれていることなどは。

 ちなみに隣では、触手がパンを咥えながらとか、転校生だとか、触手と相合傘だとか、なかなか気持ちの悪い会話が繰り広げられている。

 

「でもまぁ、実際に触手を見ないとな~って、最近思うんですよ。こうウネウネした、タコとかウナギとかと違った……」

「そうだな。お、ちょうどこんな感じか」

 

 と、覇吐は自分を巻いているスライムのような触手を見た。

 …………え?

 

「な、なんだこりゃ!?」

(これは、魔法!?)

 

 ネギはそれを見た瞬間、それが魔力による力のものだと理解した。

 しかし、下手に動けない。ここで何か打てば、周りにも被害が出るし、魔法の存在がバレてしまう恐れがあるのだ。

 

「す……!」

 

 ガタンと、ハルナが立ち上がる。

 ネギと、そして覇吐は危険を察知した。急な動きは敵を刺激してしまうため、ハルナが襲われてしまうと思ったのだが……

 

「すごい、こんなところで実写触手が見れるなんて!」

 

 間違った方向に感動を示していたのだった。

 少しは自分の心配をして欲しいと思う覇吐。

 

「ぱあ」

 

 瞬間、四人のテーブルの前に、一人の少女が現れた。

 見た目は10代の可愛らしい少女だが、見る人が見れば何百と言っている齢の少女だと気づくだろう。内包されている魔力も凄まじく、今のネギでは足元にも及ばないレベル。

 長い緋色の髪を揺らし、格好はまるでコスプレのような昔のナチスドイツの軍服で身を包んでいる。

 

「あはは、ビックリした? 楽しそうだったから、ついチョッカイかけちゃった。ねぇ、わたしも混ぜてよ」

 

 妖艶な態度を見せながら、凄まじい圧迫感を宿している。

 ネギはその魔力に押しやられ、冷や汗をかきながら足はガタガタ震え、夕映に至っては今にも倒れてしまいそうだ。

 それだけの殺人的なプレッシャーが、こんな少女に宿っているのだ。

 しかし、とある二人は……

 

「おい、コスプレ少女に逆ナンされちまったぜ」

「すごい精細に編みこまれた軍服! これは凄いわ!」

 

 覇吐は感じ取った魔力を意にも介さず、ハルナは少女のプレッシャーなどシカトして軍服に目がいっていた。

 

(とりあえず、ここは不味いよな)

 

 覇吐はここが喫茶店なのを思い出し、魔法界で頑張って覚えた念話を少女に送る。もう、この少女が魔法使いなのは疑いようもない。

 

『おいおい嬢ちゃんよ。流石にこんなところでの魔法の行使はおイタが過ぎるぜ』

『あ~ら、そんな心配。少しは自分の心配したら? けど大丈夫よ。この場所は端の席だし、障害物の陰になっていて、案外見えない位置だから』

『痴漢の常套手段!?』

 

 念話は終了。

 とりあえず、一般人に見られずに済みそうだ。

 

「ねぇねぇ、これって何で出来ているの? 何かプヨプヨするけど、もしかして凄い素材使ってるの?」

 

 興奮気味のハルナ。この一般人は色々と大丈夫そうだ。

 

「覇吐先生、感触とか締め付け具合はどうですか!? 気持ちいいですか!?」

「いや、普通に気持ち悪い」

 

 例えるならミミズが這いつくばっている感覚だ。

 

「でも惜しい! これがネギ先生なら絵になったのに、覇吐先生だと悍ましいだけだ!」

「ご尤も!」

(何なの、この二人の余裕?)

 

 少女は首をかしげる。

 

「けど、魔法使いがそちらには二人もいるのに、指一本出せないなんてね」

「え……?」

 

 少女の発言にネギは、唖然とした。

 ――二人とは、それは自分と……一体?

 

「おい、嬢ちゃん。それはまだ内緒の方向なのに、なに先走ってるんだよ」

 

 ゾゾゾと、覇吐は人間が変わったかのように凄まじい瞳で、少女を見る。

 瞬間、その圧迫感に蹴落とされてしまいそうになった。

 ……いや、そもそもだが、覇吐は自分で答えを言ってしまったようなものになってしまったのだ。

 

(――え、覇吐先生が魔法使い? そんな、まさか!?)

「え、魔法使いって、それって童貞ってこと? まぁネギ先生は仕方ないとして、まさか覇吐先生まで」

「いや、違うから! そういう意味じゃないから!?」

 

 なんてハルナは吐き違える。

 

「つか、どっかで見たことあると思ったら……お前、確かルサルカ・シュヴェーゲリンだな」

「へぇ、よく知ってるわね。わたしの名前。まぁあっちの世界では有名だもんね」

 

 そう、彼女の名前はルサルカ・シュヴェーゲリン。

 エヴァと双方を成すほどの悪名高い魔法使いだ。賞金首にもなっており、金額は日本通貨で戦車が買えるレベルだとか。

 

「そんな有名人が何の用だよ? まさか、俺たちのような人間を襲って楽しんでるのか? 拷問とかでも有名だったっけ?」

「残念ながら、今日は違う用事。そうね、一言で言うなら……今わたし、恋の最盛期なの」

「……は?」

 

 悪名高い魔法使いとは思えない単語に、覇吐は拍子抜けした。

 そして考える。

 この場に男は二人。つまり自分たちに襲いかかってきたのは、自分かネギ先生に好意を向けているということか?

 流石に外見は可愛らしいものの、来歴はとんでもない魔法使いだ。

 しかし可愛い。まだ成長しきっていない胸。滑らかな髪にクリッとした瞳。少し力を入れたら折れてしまいそうな華奢な肢体。そそるものを感じる。

 いや、決して覇吐はロリコンではない。強いて言うならオールラウンダーだ。

 

「俺なら、もっと熱い告白が良かったぜ」

「は? なに言ってるの。あなたな訳ないでしょ」

 

 どうやら違ったらしい。何か恥ずかしい。

 では、もしかしてネギ先生か。

 

「おいおい、齢百以上のBBAがショタは止めたほうがいいぜ。流石の俺でも引くわ」

「だから、なに勝手に変な考え膨らましてんのよ」

 

 ルサルカは少しイラっとしたらしく、覇吐を巻いている触手を動かす。

 

「くっ、なにしやがる……おぃ、着物の中は、ダメ……」

 

 なぜ触手が勝手に動いているのかは一度頭の外に置いて、ハルナは少し考えていた覇吐×触手はやっぱり絵面的にアウトだなと一つ学んだ。

 

「わたしが恋焦がれているのは、蓮君よ。知っているでしょ、あなた達なら」

「蓮って、藤井蓮のことか? お前、アイツに恋してんのかよ」

「ええ、そうよ。何か近くに邪魔な吸血鬼がいるけど、あんなやつ軽く捻って、わたしのものにしちゃうんだから」

「……いや、止めておいたほうがいいぜ」

「どうして?」

「藤井蓮と吸血鬼の少女はラブラブだからな。下手に水差すと、なにされるか分からねぇぜ」

「ふん、だからこその、あなた達なのよ」

 

 そこでルサルカはここに来た目的を話した。

 

「あなた達なら、あの吸血鬼の弱点とか知ってるんでしょ? 包み隠さず教えなさい。あの吸血鬼を亡きものにして、悲しみに満ちた蓮君をわたしが優しく包むの。そうすれば蓮君もイチコロよ」

「そんな上手くいくとは思えねぇな。世の中、そんな甘く出来ていないぜ」

 

 ナンパ失敗率100%の男が言った。

 

「まぁ、上手くいかなくても、あの邪魔な吸血鬼さえ排除できればいいわ。ほら、早く教えなさい。さもないと――」

 

 スっと、覇吐にだけ見える位置に、何やら携帯を持ってくる。

 

「――――!」

 

 そこには、予想外のものが写っていた。

 それは図書室にいるであろう宮崎のどか……と触手。

 その触手がのどかに巻き付かれており、宙に浮いている。周りに生徒が写っていないのは、人払いかなにかしているのだろう。

 

「この大切な少女が、あられもない姿になっちゃうわよ」

「テメェ……流石にそれはやりすぎだぜ」

「下手に動かないでね。動けば、この少女が苦しむ、いえ、快楽に溺れることになるわよ」

 

 携帯を閉じて、ルサルカは不敵に笑う。

 今すぐこの触手を引きちぎってやりたいが、動けば色々と終わりだ。

 何やら隣ではハルナがメモ用紙と向き合いっぱなしだし、夕映はどこかで緊張の糸が切れてしまったのかテーブルに突っ伏して気絶している。ネギはネギで、いつでも魔法を行使できるように、懐に手を伸ばしてステッキを握っている。

 しかし、これは完全に八方塞がりだ。打つ手がない。

 

「ほぉら、早く教えなさい。そうすれば、この触手で気持ちいいことしてあげるわよ。本来は趣味じゃないんだけど、今日は特別。触手で気持ちよくなるのって、堪らないわよ」

「はっ、そんな簡単に言うとでも……」

 

 ルサルカは触手を更に動かす。

 

「あっ、あっ……ら、らめぇ」

 

 何て声を出す覇吐。

 ネギですら、目の前の少女より悪寒を感じた。

 

「ね、教えてくれたら、もっと気持ちよく――」

 

 ルサルカがそう言った刹那だった。

 

「なに負かされてんだよ、坂上覇吐」

 

 そこに都合よく、藤井蓮とエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが現れた。

 

「うわ、流石にキモイな。その姿は」

 

 エヴァが触手に包まった覇吐を見て言った。

 

「とりあえず写真に抑えてザジにでも送っておくか。アイツへの貸し作りも悪くない」

 

 パシャパシャと、携帯で今の覇吐を撮る。随分とまぁハイテクだ。

 

「いや、マジ止めて! アイツにこれ以上、弱点作りたくねぇ!」

 

 悲鳴を上げる覇吐。

 しかし吸血鬼は容赦なかった。

 

「レン君……」

 

 ポツリと、ルサルカが藤井蓮を見て呟く。まるで何十年ぶりに会えた愛しい彼氏と再会したかのような表情で。

 

「会いたかったよーレン君! わたしを抱きしめてー!」

「まさかここまでストーキングしてくるなんてな。その執念には天晴れだよ」

 

 抱きついてきたルサルカの頭頂部に軽く拳骨をかます。

 随分と痛かったのか、悶絶するルサルカ。

 

「あと、この学園の生徒に手を出すな。あとあと面倒だからな。とりあえず図書室の宮崎のどかは助けておいた。あんな魔力ビンビンな触手、気づかれないとでも思ったか?」

「くっ、流石はわたしのレン君。わたしに気づかれないように触手を消すなんてね」

「いや、お前のものじゃねぇよ」

「そうじゃ。お兄ちゃんは私のものじゃ」

「一応、お前のものでもねぇよ」

 

 エヴァが対抗するように言った。

 

「ちっ、忌々しい吸血鬼め。今すぐ、わたしがあの世に……」

「なるほど、それが目的か」

 

 ガシリと、蓮はルサルカの顔面を容赦なく鷲掴みにした。さながらアイアンクローだ。

 

「悪いが、俺の大事なものに手を出されるのは許されない性分なんでな。ここで、今すぐにでも捕まえて、魔法界の牢獄に強制送還させてやる」

「そ、そんな~。わたしは単にレン君が好きなだけなのに。たったそれだけなに、何でいっつも、わたしはこんな幸薄い展開になるのよ~」

 

 嘘泣きかマジ泣きか分からない勢いになる。

 流石にそんなことをされれば、周りの一般人に注目されてしまう上、自分が泣かせたみたいになるので蓮はどうしたものかと思案する。

 そこでエヴァが「ふむ」と言い、

 

「お兄ちゃんを好きになる気持ちは大いに分かる。そこは共感しよう。お兄ちゃんのような素晴らしい男は、古今東西いないからな」

 

 まるで自慢するように言い放つ。

 

「それに嫉妬した貴様は、私を殺してお兄ちゃんと引っ付こうとした。確かに、私が逆の立場だったら、貴様のような真似をするかもしれん。故に愚策愚行とは言うまい」

 

 そこでエヴァが優しい笑みを浮かべ、

 

「だからチャンスをやろう」

 

 ルサルカの肩に手を置く。

 そして言い放った。

 

「私の家で下僕として従え。それが唯一の救いだ」

「え……?」

 

 天使のような微笑みから発せられたとは思えないほど、残酷なことを言った。

 流石の蓮も耳を疑った。いや、もしかしたらこれが本性なのだろうと、悟った。

 

「さぁ、お兄ちゃん。彼女を連れて行こう。みっちり教育せねばならんからな」

 

 承諾もなにも、ルサルカの意見も聞かずにズルズルと連れて行かれた。

 そして三人は、呆気にとられるくらい、スムーズな流れで退店していった。

 

「えっと、とりあえず、この触手ほどいてくれない」

 

 そんな覇吐の虚しいセリフだけが、空間に木霊したのだった。

 

   (∴)

 

 あの後、夕映は保健室に連れて行かれ、ハルナはそれに付き添った。ハルナ曰く貧血かな? とのこと。実際は違うが。同じく、のどかも保健室に連れて行かれていた。

 そして、もう夜も近くなり人通りもなくなってきた道を、覇吐とネギが歩く。

 沈黙、何て会話すれば良いのか分からない。

 だって、ルサルカのせいで、別に隠していたわけではないが自分が魔法使いだということがバレたから。

 何て切り出せばいいのか、覇吐が考えていると……

 

「あの、覇吐先生って魔法使いなんですか?」

 

 ネギから口を開いた。

 それに一瞬、ビクンとする覇吐。

 しかし冷静に返す。

 

「ああ、隠してて悪いな。どう言い出せばいいか分からなくてよ」

「いえ、いいんです。僕もそんなものですから。そこで一つ、質問なんですけど、知っていたらでいいので、教えてくれませんか?」

「あ、まぁ、答えれる範囲ならな」

「はい……覇吐先生は」

 

 そして、言った。

 

「僕の父さんの行方を、ご存知ですか?」

 

 今まで、誰もつつかなかったことを、ネギは質問した。

 

 ここから――物語は歯車は回り始めるのだった。

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