波旬兄弟と蓮親子がネギまの世界へ   作:ディーン・グローリー

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遅くなって申し訳ございません。

時間に融通が利くようになったので、次回は早めに更新したいと思います。


第十七歌劇【ネギ先生誘拐作戦】

 現在、麻帆良学園の見習い先生こと坂上覇吐は非常に申し訳ない気持ちで一杯だった。

 先日は学園長からネギ・スプリングフィールドに課せられた最終課題――期末テストで2-Aの下位脱出を無事に成し遂げた。それどころか学年トップにまで成り上がり、正式にネギは先生として認められることとなった。

 新学期が始まる頃には3-Aを受け持ち、それはそれは華やかな凱旋を突き進んでいる。

 テストの後、色々と一波乱二波乱があったらしい。と言っても2-Aのクラスメイト関連で長谷川千雨から始まり双子や雪広あやか、はたまた木乃香といった様々な面子が関わっていた。

 しかしそのような些事、覇吐からしたらおままごともいいところ。傍から見たら、随分と立派な青春を送ってますなぁと、大人の対応ができるというもの。

 そしてだ。

 翌日から素敵な新学期が始まろうとする最中、事が始まろうとしていたのだ。

 

「第一回チキチキ、ネギのぼーや炙り出し作戦を決行する!」

 

 場所はエヴァンジェリン宅のログハウス。

 その一室にてホワイトボードの前に立ち、真祖吸血鬼であるエヴァンジェリン・AK・マクダウェルはそう高らかに言った。

 

「さて、というわけで足引きBBAには精一杯働いてもらう。覚悟しておけよ」

「くっ、分かってるわよ……!」

 

 そしてエヴァンジェリンは居候ことルサルカ・シュヴェーゲリンにそう言った。

 今この部屋には上記二人に覇吐、藤井蓮に絡繰茶々丸がいる。

 本当は今すぐにでも帰りたい覇吐だが、自分が原因でもあるため渋々ここにいる。

 

「それにしても、どうして真祖であられる吸血鬼様がそんな子供に執着するのよ。何か気に食わない事でもあったわけ?」

 

 ルサルカが率直な質問をする。

 それに対しエヴァンジェリンはあからさまに嫌な顔をし、

 

「おい居候BBA、余計な詮索はするな。貴様は私の言う事だけ聞いていればいい。今後一切、私に対して許可なく口を開くな」

「はいはい、そうですか」

 

 よっぽど触れられたくない事情があると推察したルサルカ。何か面白そうと思う反面、追い出されると愛しの蓮くんに会えなくなるため、悶々とした心境となる。

 

「……なぁ蓮さんよ、一体何があったんだ? 俺は詳しく知らねえんだけど、ネギ先生と何かあったのか?」

 

 覇吐が連の耳元でボソッと聞く。

 

「何だ本当に知らないのか。普通はエヴァンジェリンに違和感とか、覚えると思うんだけどな」

「違和感?」

 

 小首を傾げる覇吐。

 とりあえずエヴァンジェリンを注視してみる。

 うっすらした触りたくなるネグリジェに身を包み、嗅ぎたくなる美しい金色の髪。抱きしめたくなる小さな身体には、幼い膨らみが胸に二つ。肌は舐め回したくなるように瑞々しさがあり、顔立ちがどれだけ眺めても興奮する。

 

「たまんねえな」

 

 結果、その結論が出たのだった。

 瞬間だった。

 覇吐の頬を掠めるように、氷の杭が顔面の真横をかすめて行った。

 

「オイ貴様、今どのような眼で私を見ていた?」

 

 額に青筋をたてたエヴァンジェリンがこちらに氷の杭を放ったのだろう。殺意が半端ではない。

 

「ご、ごめんなさい……」

「ったく、こいつは。そういう意味で言ったんじゃねえよ」

 

 頭を抱える蓮。

 

「大丈夫ですか覇吐先生。少し切れてしまっています。少しお顔を。拭わせて頂きます」

 

 メイド服を着た茶々丸が懐から白いハンカチを取り出し、覇吐の頬から垂れる血をふき取る。

 

「お、おう。すまねえな」

「おい茶々丸! そんな変態にそんなことしなくてもいい!」

「申し訳ございませんマスター。ですが、覇吐先生がお怪我を負いました。それを黙って見ているだけというわけにはいきません」

 

 茶々丸の優しさに感涙する覇吐。周りがハチャメチャ連中しかいない中での、唯一の癒しの天使である。

 

「はぁ、たく。おい坂上、茶々丸を変な目で見るなよ。まぁその辺は弁えていると思うが」

 

 茶々丸は人間と何の遜色もない人型ロボットであり、エヴァンジェリンとドール契約を交わしたミニステル・マギ。流石に覇吐でもロボット女の子に手を出すとは思えないが……。

 

「舐めないでくださいよ蓮さん。流石に今のところそんな趣味はありません!」

「将来的には可能性があるのか……」

「充分にな!」

「ねぇいい加減、話を戻してくれない。で何、私はそのネギっていう子供と戦えばいいわけね」

 

 ルサルカがそう聞く。

 

「ええ、そうよ。ネギのぼーやについての情報は後で伝えるわ」

「その辺は心配いらないわよ。前に坂上覇吐から聞いたからね。ナギっていう『千の呪文の男(サウザンド・マスター)』の息子なんでしょ。その才能がしっかり遺伝していたら面白そうな相手だけど、まだ子供だからね。あまり期待しないでいるわ」

「何だ、聞いていたのか。なら話が早いな。ネギのぼーやとの戦いの場は準備してやる。だから、しっかり勝って私の元に連れてきなさい」

「はいはい、分かったわよ」

 

 溜息交じりにルサルカは了承した。

 

「あれ、じゃあ俺は何したらいいんだ?」

 

 覇吐は自分を指さして尋ねる。

 

「そうだな、お前にはネギ先生を攫ってきてもらおうか」

「おいおいそんな犯罪まがいなことをさせる気か。こう見えて一応は先生だぞ?」

「犯罪スレスレどころか、犯罪ドストレートなことをしておいて今さら何を言う」

「くそ、言い返せねえ」

 

 痛いところを突かれた。

 

「まぁそう案ずるな。お前とはバレないようにはする」

「何だ、そういう魔法でもかけてくれるのか?」

「いや、この覆面を使うとよい」

 

 と、黒いサングラスと白いマスクを渡される。

 

「……いや絶対にバレるだろ!?」

「試しにつけてみろ、意外に分からないものだぞ」

 

 そう言われ、試しにつけて鏡を見てみる覇吐。

 

「――なんかこのフルマスク、変質者っぽくない?」

「ちょうどいいじゃないか」

 

 変質者で合っているし。

 

   *

 

 そして翌日のことである。

 遂に麻帆良学園は新学期を迎えた。

 春うららな陽気に照らされ、桜が咲き誇っている。麻帆良学園に新しい風が吹き、ネギ・スプリングフィールドも正式な先生として新たな門出となっていた。

 しかし変わらない風景もあった。

 それは学園へ登校する生徒たちである。みんながみんな一斉に学園に向けて走っていく光景は、まさに麻帆良の風物詩。男子生徒も女子生徒も駆けていく中、我関せずの二人の人影があった。

 

「いやぁ相変わらずすげえな。新入生とかおっかなびっくりだろ」

 

 そういう男こと覇吐は、走っていく生徒たちの邪魔にならないよう隅の方を歩いていた。

 

「こんな変態が教える側に立っていることの方が、新入生には驚きだと思う」

 

 対して辛辣に返すのはザジ・レイニーデイ。

 

「いい加減その派手な格好は見直した方がいい」

「俺からあいでんてぃてぃを奪おうとするなよ。この格好こそ、俺にとっての勝負服なんだぜ。この服の替えはどの服にも不可能と言える。何たって俺の魂だからな!」

「ほんと頑固。少しはスーツとかまともな……いや何でもない。似合うとは思えない。その前に似合う服が思いつかない」

「酷ぇなオイ! じゃあ着てやるよ! 俺のスーツ姿がどこまで似合うのか見せつけてやるよ!」

「俺の魂とか訳の分からないこと言っておいて、直ぐ着替えようとするんだね。安い魂」

 

 ザジとのいつものやり取りをしつつ登校する。

 

「……そういえば、ネギ先生をルサルカとの戦いの場まで攫わねえといけないんだよな俺」

「今わたし、犯罪宣告した男を前にしたんだけど、この場合ってどうしたらいい?」

「誰がだ? とりあえず捕まえて警察の前に突き出せばいいんじゃねえのか?」

「分かった」

 

 瞬間、何らかの魔法の縄で覇吐が亀甲縛りにされてしまった。

 

「痛い痛い痛い! え、何で俺!? ちょっとザジちゃんやめてくれ! 俺が何かまずいこと言った!?」

「無自覚な犯罪者って訳ですか。落ちましたね覇吐先生。このまま警察署前にあなたを置いて行きます」

「聞いて! とにかくザジちゃん、俺の事情も聞いて! それを聞いてから、警察に突き出すか決めてくれ!」

「いいでしょう。取り調べをしてあげます。カツ丼はいりますか?」

「いらねえよ……」

 

 そして覇吐はもろもろの事情を包み隠さずザジに話した。

 ネギとルサルカという魔女を対決させること。エヴァンジェリンが依頼人だと言うことをだ。

 

「なるほど、私の知らないところでそのような取引が。にしても、何故にネギ先生を」

「あの吸血鬼とネギの親に何か因縁があるらしくてな。俺も聞かされてねえから、よく知らねえんだわ」

「聞かせたところで無意味だと判断したんだろうね」

「ザジよ、お前はいちいち俺の心を抉らねえと気が済まないのか? お前こそ名誉毀損とか侮辱罪とかってやつで裁かれた方がいいんじゃねえの?」

「覇吐に人権なんてないから問題ない」

「酷い発言……。とりあえず弁明したんだから解放してくれ」

「分かりました。仕方がないので許します」

 

 光の縄がほどかれた。

 

「さて早く行こう。覇吐のせいで遅刻しちゃう」

「お前は何かと俺のせいにしたがるな」

 

   *

 

 そして麻帆良学園にて。

 3-Aを受け持つこととなったネギ先生は、改めて教壇に立ちここで正式に教鞭を振るうこととなった。

 

「改めまして3年A組の担任になりましたネギ•スプリングフィールドです。これから来年の3月までの1年間よろしくお願いします」

 

 どこか垢の抜けたネギ先生が、みんなの前に立った。

 

『はーい! よろしくー♡』

 

 クラスみんながネギ先生に応える。

 それを傍で見ている覇吐は、などか羨望の眼差しで見ていた。

 

(立派になったじゃねえかネギ先生。お前はやる男だと思ってたぜ。俺も負けてらんねえな。……さて、どう誘拐したもんか)

 

 覇吐がそんなことを思考している最中、席についているエヴァンジェリンも似たようなことを頭の中で妄想していた。

 

(くくく、私の長きに渡る雪辱を晴らし、お前の血を飲める時を私は楽しみにしている。さぁ坂上覇吐、お前のその図体は飾りではないだろう。とっとと誘拐してこい)

 

 エヴァンジェリンが笑みを抑えながら、ネギの顔を凝視している。

 その視線に気付いたネギはまだまともに会話をしたことがないため、どこか狼狽えたかのように視線がおぼつかなかった。

 

(アイツ、ネギにすげぇ熱視線を送ってるな。たく、警戒でもされたらどうするつもりだ。俺の誘拐難易度を上げにきてんじゃねえよ。いやホント、どうやって攫おうかな? お菓子で釣ってみるか?)

「は、覇吐先生。あの娘がすごく見てくるんですが、何か知っていますか?」

 

 覇吐がそんな変な危惧をしていると、ネギが耳打ちしてきた。

 

「出席簿には困ったとき相談しなさいってタカミチのメモ書きがあるんですが……」

「ん、ああ……そうだな。ただのチンチクリンの留学生ってやつだ。あまり気にするな。ネギ先生は他の、もっと発育のいい生徒たちと交流を持ったほうがいいぜ」

「何を言っているんですか覇吐先生。それに彼女も僕の大切な生徒です」

「そいつはご立派なことで」

 

 こんな素晴らしい小さな先生の誘拐を考えている自分に、とても嫌気がさし始めた。

 ああ神よ、俺はどうすればいいんだと、心の中で天に問いかける。

 

「ネギ先生、今日は身体測定ですよ。3-Aのみんなもすぐ準備してください」

 

 教室の戸が開いたかと思うと、そこには源しずな先生が入ってきた。

 

「うぉおおこれはしずな先生! 本日も見目麗しいそのお姿、覇吐感激でございます!」

 

 先までの良心の呵責はどこへやら。

 覇吐はしずなを確認すると、凄まじい速さで眼前に迫った。

 

「是非とも今晩でぃなーなどご一緒にいかがでしょうか?」

「あー、覇吐先生がしずな先生にナンパしてるー!」

 

 覇吐の行動を見兼ねた生徒たちから批判殺到する。

 

「先生が生徒の前でそんなことしちゃいけないんだー!」

「いち教育者としていかがなものかと?」

「覇吐殿は節制という言葉を覚えた方がいいでござるな」

「先生として失格アル。ネギ坊主を見習うアルよ」

「いや〜春やね。アホになっとるんとちゃうか覇吐先生」

「ドン引きです覇吐先生」

 

 などと罵声を浴びせられる。

 

「うるせえ! お前らはとっととその制服を脱いで支度しやがれ!」

『キャー! 覇吐先生のセクハラー!!』

 

 そんな日常的なやり取りを傍観しているエヴァンジェリンは、どこか心配そうな表情となっている。

 

(あれ、これ大丈夫か? 頼む相手を間違えた、か……)

 

 誘拐作戦失敗を危惧した。

 

「と、とりあえず皆さん! 身体測定ですので、今すぐ脱いで準備してください!」

 

 ネギがそう言うと覇吐とは打って変わって、生徒たちが面白恥ずかしく顔を赤らめ、

 

『ネギ先生のエッチ~♡』

 

 みんなが可愛らしく叫んだ。

 

「……なんか俺と扱い全然違うよな」

 

 覇吐はそんな光景を眺めながら、心からそう呟いた。

 

 

   *

 

 そして数刻が過ぎた。

 身体測定のため覇吐とネギは廊下にいた。

 教室の中では最近の流行である吸血鬼やUMA、はたまた体型の話で盛り上がっていた。

 そんな時だった。

 亜子からまき絵が倒れているところを発見されて、保健室に運ばれたという情報を聞いたのだ。

 保健室に行くとまき絵が寝ており、どうやら桜通りで倒れているところを発見されたらしい。特に身体に異常はなく、貧血かなと推測された。

 しかしネギは瞬時に、まき絵から残滓のようにへばり付いている魔法の力を感じ取とった。

 

「覇吐先生、感じますか? どうやら魔法を使う者の仕業かもしれません」

「ん、ああ、そうだな。流石だぜネギ先生。すぐに気づくとはな」

 

 とりあえず心配で一緒についてきた明日菜たちは教室に帰しておいた。

 

「覇吐先生は何か心当たりありませんか?」

「すまねえが、全くこれっぽっちもねえな」

 

 半分くらい心当たりがあるが、ここは伏せておこう。

 覇吐はエヴァンジェリンか、もしくはルサルカかと読んでいる。だからこそ半分だが、この二人のどちらかが犯人であることは決めつけていいだろう。

 

「生徒たちが噂している桜通りに現れるっていう吸血鬼が犯人でしょうか?」

「んん! そ、そんなことねえと思うぜ……。吸血鬼なんて滅多に出てこねえ希少種だからよ。こんな辺鄙で陳腐な学園にいるとは思えねえな。いるとすりゃ、それはただの堕落しきった奴だ。間違いねえ!」

「先生の言葉とは思えませんね」

 

 ネギが呆れたように言葉を吐いた。

 

「あ、ネギ先生、覇吐先生」

 

 二人が色々憶測を立てていると、まき絵と仲の良い和泉亜子、明石裕奈、大河内アキラの三人が入ってきた。

 

「皆さん、どうしたんですか? 身体測定は終わったのですか?」

「うん、ウチらはもう終わったで」

「出席番号順だからね。私たちは直ぐに終わったよ」

「はい。だから少しだけ、まき絵の様子を見に来ました」

「そいつまぁ、随分と仲がいいことで」

 

 ここで覇吐スキャン。

 和泉亜子。ほっそりとしており、健康的な体つきをしている。将来そこそこ有望。

 明石裕奈。初めて見た頃より胸が少し大きくなっている。将来有望。

 大河内アキラ。素晴らしい。将来かなり有望。てか今でも有望。

 

「なんや、ウチ今バカにされた気するんやけど」

「私はいま胸を見られた気がする……」

「セクハラです覇吐先生。この件、学園長に報告します」

「ごめん許して! 他意はないから!」

「他意しかあらへんやろ」

 

 覇吐のいやらしい視線は、軽々と女生徒に看破されてしまうようだ。

 

「それでまき絵は?」

「心配ありませんよ。今もぐっすり眠っているだけです。放課後には目を覚ますと思いますので、安心してください」

「良かった。まき絵を見てくださりありがとう先生」

 

 アキラがネギにお礼を言う。

 覇吐との扱いの違いが如実に出ている。

 

「まぁ、まき絵のことだから大丈夫とは思うけどね。後は、覇吐先生が手を出さないか心配なだけだし」

「なに言いやがる。可愛い生徒に手を出すわけねえだろ」

 

 悪戯な笑みを浮かべた裕奈の言葉に、覇吐は平常心を以て答える。

 

「可愛い生徒をエロい目で見るけどね」

「ばッ、なに言いやがる! 俺は先生(男)としてお前ら(女生徒)の健康状態(発育状態)を常日頃から確認(監視)する義務があるんだよ」

「おかしい、言ってることに裏がありまくってる気がするわ。何ややっぱ覇吐先生は変態なんかな?」

「くッ、言っていることは正しいはずなのに変な言葉が付随しやがる!」

 

 覇吐は悔し涙を流す。

 

「そう言えばさ、ザジっちはよく覇吐先生と一緒にいるけど、確か仮親なんだよね?」

「ザジか。そうだが、急にどうした?」

「まさかだけど、ザジっちにまでそんな目を向けてないよね?」

「失礼だな。俺がそんなことするわけねえだろ」

「そうやでゆーな。流石に覇吐先生もそんなデリカシーのないことはせえへんよ」

「当たり前だ。そんな目で見たら即座に目ん玉にデコピンが飛んでくるぜ」

「やっぱザジっちは覇吐先生の扱いに一番慣れてそうだね。けど、そこだけはちゃんとしてそうだね」

「おうよ。あいつに対して俺は仮にも保護者だ。あいつを立派に育てるのが俺の生き甲斐よ」

「おー、何や覇吐先生がめっちゃ立派なこと言っとる」

(…………過去に何度かザジの入浴を覗こうとしたのは内緒っと)

 

 今回は変態的なセリフが出ずにホッとする覇吐。

 何て会話をネギが聞き、

 

(あれ、そうなんだ。もしかしてザジさんも魔法関係者なのかな?)

 

 そう思った。

 

「まき絵はまた放課後、私たちが迎えに行きます」

「そうだね。もう心配かけて、こいつめ」

 

 まき絵の頬をつんつんする裕奈。

 

「さぁ皆さん、もう教室に戻りましょう。そろそろ身体測定も終わったころですし」

 

 ネギの言葉と共に、みんなで教室に戻った。

 

   *

 

 その日の夜ーー

 覇吐は遂に作戦を決行しようとしていた。

 場所は桜通り。人の気配はなく、薄暗い並木通りになっている。

 ここで張っている理由は至ってシンプル。あの噂話の場所がここであり、ネギなら見回りも兼ねてここに来ると踏んだからである。

 そんな覇吐は近くの芝生に、その巨体を隠していた。

 

「ネギ先生になら、間違いなくここで待ち伏せるよな。悪いが、とっとと誘拐させてもらうぜ」

 

 などと、第三者が聞いたら通報待ったなしの独り言を呟く変態先生。

 まだ日が落ちて浅いが、例の噂話も相まって人通りがなく、静寂を保っている。

 そんな中、一人の女生徒がその道を歩いているのを発見した。

 

「ん……ありゃ、のどかちゃんか」

 

 一人でいる宮崎のどかを確認した。

 

「おいおい、あんな大人しい子が一人で歩いてたら狙ってくださいって言ってるようなもんだぞ」

 

 とりあえず芝生から出て、早く帰るように伝えるか、と考えていたタイミングだった。

 のどかの後ろに、もう一人の影を確認した。

 

「……誰だ、ありゃ?」

 

 目を凝らして、その人影の全体像を掴もうとする。

 しかしどうにも黒が強調されているせいか、薄暗さがそれに拍車をかけ顔など上手く見ることができない。

 

「あの吸血鬼か……。いやにしては大きいな。てことはあの女魔法使いでもねえな。誰なんだ、アイツ。マジの不審者か?」

 

 しかし、よくよく見るとシルエットは分かる。

 大男のようで、着物のような物を着ているような。それでもって下駄を履いてるようで、キセルを咥えているようにも見える。

 

「……あれ、俺じゃね?」

 

 シルエットを把握したおかげか、その黒い姿が少しずつ見えてきた。

 それはさながら黒みを帯びた坂上覇吐。某大乱闘ゲームで同じキャラを二人以上出した場合のような黒さ。

 

「何で俺がいるんだ……。それ以前に……まさか!?」

 

 そして予想通りの展開が起きた。

 その大男こと覇吐の偽物がのどかに襲いかかった。

 

「まずい! このままだと本物の犯罪者に俺がなっちまう!」

 

 あんな自分の偽物が、例え自分の姿をした偽物が女生徒を襲ったとあったら、どれだけ弁明しても信じてもらえないだろう。今までの行いを悔いる時が来るとは思わなかった。

 しかし覇吐が出ようとするより少し早くーー

 

「待てーっ! ぼ、僕の生徒に何をするんですかーっ!」

 

 ネギは魔法の呪文を唱え、

 

「ラス・テル・マ・スキル……風の精霊11人(ウンデキム・スピリトゥス・アエリアーレス) 縛鎖となりて (ウィンクルム・ファクティ) 敵を捕まえろ(イニミクム・カプテント)

魔法の射手(サギタ・マギカ)戒めの風矢(アエール・カプトゥーラエ)』!」

 

 捕縛属性を付与した11の風の矢を発射する。

 覇吐の偽物、黒覇吐と呼称する。その存在は大剣を抜き、軽々とネギの放った魔法を掻き消していく。

 その間に、驚きのあまり気絶した宮崎のどかを抱えた。

 

「あ、あなたは覇吐先生!?」

 

 全身黒色でコーティングされている黒覇吐を見て瞠目する。

 

「くくく、現れたなネギ先生。待っていたぞ」

 

 覇吐と全く同じ声音で言葉を吐く。

 自分の偽物のクオリティの高さに、芝生でおろおろする覇吐は驚いた。

 

「いい魔力だな。齢10歳のガキとは思えねえ。流石はあのクソ吸血鬼(・・・・・)が執着しているだけはあるな」

「どういうことですか覇吐先生! 説明してください!」

「そうだな、お前が大人しく俺に捕まってくれば教えなくはねえ」

「ふざけないでください! それでも魔法使いですか!」

「そうだな、大人として一つ教えてやろう。この世には、いい魔法使いと悪い魔法使いがいるんだぜ」

 

 その言葉にネギの表情が驚きと、次いで悲しみに満ちた表情となる。

 まるで今まで信じていたものに裏切られたかのような、悲哀と苦しみに満ちた顔である。

 

「そんなことありません! 世のため人のために働くのが魔法使いの仕事のはずですっ!」

「若いな」

 

 覇吐が大剣を構え、

 

「世界を知らないな。全く甘ったれた考えだ」

 

 そしてネギに向けて地面を蹴ろうとした瞬間だった。

 

「何や! どうしたん!?」

「あっネギ!!」

 

 そこに偶然通りかかった神楽坂明日奈と近衛木乃香が駆けてきていた。

 

「あ、アスナさん、このかさん!」

「ちょっとどうしたのよネギ!」

「まさかネギ君が噂の吸血鬼やったん?」

 

 気絶しているのどかを抱えているため、そう思われても仕方ない。

 

「ち、違います! あっ!」

 

 と、慌てて弁護しようとした時、黒覇吐が姿を眩まそうとした。

 それを見てネギは即座に判断する。

 

「アスナさんこのかさん! 宮崎さんを頼みます! 僕はこれから事件の犯人を追います! 心配しないで帰っていてください!」

 

 そう言うと有無を言わせず、ネギは黒覇吐を追いかける。

 

「あ、ネギ君!」

「ちょっとネギ!」

「行ってもうた……。てか今、覇吐先生おらんかった?」

「うん、私も見た。もしかして犯人って……」

 

 二人が黒覇吐を見てしまったため、そんな間違った見解を得られてしまった。

 

「……誤解を解きたいが、今はネギを追おう」

 

 芝生から隠れていた覇吐も、そこから飛び出した。

 

 

 そして、まるで誘導しているかのように逃げる黒覇吐。

 それを魔法を使い、どうにか捕まえようとするネギ。

 その後ろをバレずに追いかける本物の覇吐。

 暗くなった麻帆良学園の広大な敷地内を縦横無尽に飛び回る。

 

「くそッ! とっとと姿を現してアレが偽物なのを伝えてえよ!」

 

 涙を流しながらネギを追いかける覇吐は、若干だが病みかけていた。

 恐らく黒覇吐の正体はルサルカが作り出した影魔法の力によるもの。ここで本物が出てきて邪魔しては色々と愚痴を言われそうな気がするし、たぶん勝手にこんなことはしないだろう。つまりエヴァンジェリンも噛んでいる。

 自分の社会的地位や矜持を無視したそのやり方に怒りを覚えるものの、自身の今までの行いを鑑みたら文句を言えない。世知辛い立ち位置である。

 

「一言二言文句言っていいよな? いや文句は言わねえ。せめてこの誤解を、終わったら晴らしてくれよ」

 

 奥歯を噛みしめながら、そう切に願った。

 そして逃走劇が終わったのか、黒覇吐が建物の屋根の上に降り立った。

 

「もう追いかけっこは終わりです。どうしてこんなことをしたのか、吐いてもらいますよ覇吐先生」

「くくく、まさか俺に追いつけただけで勝ったつもりか? これだからガキんちょは困った奴だぜ」

 

 対峙する二人。

 それを離れた場所から見守る覇吐は、イライラしていた。

 

(くそ、ふざけんじゃねえ! 何がくくく、だ。俺はそんな笑い方しねえ!)

 

 怒るところそこなの?と問いたくなるが、今は事の顛末を見守る。

 

「なら、お前の特異な呪文でも唱えてみな。現実を教えてやる」

 

 大剣を構えず、それどころか背中に背負いなおして黒覇吐が言う。

 あからさまな罠。

 そう思った矢先、一つの人影が黒覇吐の眼前に現れた。

 もはや躊躇っている暇はない。

 

「二人まとめて――ラス・テル・マ・スキル……風の精霊11人(ウンデキム・スピリトゥス・アエリアーレス) 縛鎖となりて (ウィンクルム・ファクティ) 敵を捕まえろ(イニミクム・カプテント)――」

 

 そして呪文を唱え終え、いざ放とうとした瞬間だった。

 突如現れた存在が、目にも止まらない速さでネギにでこピンを喰らわされた。

 

「あたッ!」

 

 驚きのあまり魔法を放てず、のけぞってしまうネギ。

 そしてその正体を見ると驚愕した。

 

「えっあれ!? き、君はウチのクラスの……」

 

 現れた人影はネギのクラスメイトである絡繰茶々丸だったのだ。

 

「茶々丸さん! ど、どうしてここに!? え、も、もしかして覇吐先生のパー」

「いえ違いますネギ先生。早合点はよくないです」

 

 ネギが言い切る前に茶々丸が否定する。

 

(え、何で茶々丸ちゃんが!? つか否定するの早すぎじゃね! そんなにそう思われたくないの!)

 

 陰から見ている覇吐は驚きつつも、どこか残念そうにする。

 

「そうだ、茶々丸は俺のパートナー……つまり俺の“魔法使いの従者(ミニステル・マギ)”じゃない。しかしこちらは二人。魔法使いの従者(ミニステル・マギ)のいないお前は呪文の詠唱中、完全に無防備。そこを突かれては魔法も放てないだろう。つまり今の俺たちに勝ち目はない」

「申し訳ありませんネギ先生。このような卑怯な手段、使いたくはありませんでしたがマスターのご命令ですので」

 

 ペコリと謝る茶々丸。

 今のセリフを聞いて覇吐は予想通りエヴァンジェリンが暗躍していると確信を得た。

 

「け、けど僕は諦めません! 絶対にこんなこと止めてみせます! ラス・テル・マ・スキル――」

 

 どうにかして黒覇吐に喰らいつくため再び詠唱を唱えるも、

 

「捕えますネギ先生」

 

 それが終わる前に茶々丸により軽々と羽交い絞めにされてしまった。

 

「うぐぐぐぐ!」

 

 どうにか解こうとするも、膂力の差が圧倒的である。

 子供のネギに茶々丸から逃れる術などどこにもない。

 

「ど、どうして茶々丸さん……っ!?」

 

 何も答えない茶々丸。罪悪感を感じているのか、目を閉じている。

 

「くくく、何だよ余裕じゃねえか。これで終わりだぜクソ吸血鬼様。早く出てこいよ、どうせどこかで見てるんだろ」

 

 と、黒覇吐が誰かに向かって言葉を吐く。

 誰から見ても誘拐作戦は無事完遂だろう。しかし陰から見ている覇吐の溜飲が下がらない。

 自分を勝手にうまい事、こき使われて全部自分のせいになるのは納得がいかない。

 覇吐は背負っている大剣を手にかけ、

 

(……たくよ、世話が焼けるな全く!)

 

 そして遂に動いた。

 ああ、そうだ。こんなところでネギ先生がやられているのを、ただ見るだけなのは性に合わない。俺の益荒男としての矜持がそれを許さないのだ。それにネギ先生を誘拐するのは――

 

「俺の役目だろうがッ! なに勝手にやってんだよコラァッ!」

 

 凄まじい速さで動いた覇吐は、いとも容易く黒覇吐の斬程圏内に入り一気に振るう。

 

「――ッ!?」

 

 黒覇吐は間一髪でそれを躱し、一歩二歩と跳んで後退する。

 

「は、覇吐先生!」

「……覇吐先生」

「茶々丸、悪いがネギ先生を離してやってくれねえか?」

 

 大剣を黒覇吐に向けて構えつつ、茶々丸に言う。

 しかしそれより早くネギの安堵したかのような声が飛んできた。

 

「や、やっぱりあれは覇吐先生じゃなかったんですね! 良かった、本当に良かったです」

 

 涙を流しながら安心した気持ちになるネギ。

 

「おうよ。当たり前だろうが。俺は女生徒を厭らしい目で見ても、手を出すことはねえ。俺は益荒男であり、紳士だからな!」

「は、はい……そうですね」

「ちょっとやりづらいな。空気読むべきだったか」

 

 いつもならここでザジの突っ込みが入るのだが、ネギにそんな突っ込みは期待できない。

 それにそういう状況でもないだろう。

 

「……おい覇吐、なに邪魔してんだよ。ようやくネギの誘拐作戦がこれで終わるところだったのによ」

 

 黒覇吐が忌々しそうに言った。

 

「うるせぇな。言っただろうが、ネギ先生を誘拐するのは俺の役目だ!」

「え、誘拐!? 覇吐先生どういうことですか!?」

 

 ネギが覇吐のセリフに戸惑いを露にする。

 

「おっと話すと長ぇ。今はこの偽物野郎を成敗するのが先決だ」

「……全く、あのクソ吸血鬼の予想通りの展開だな」

 

 黒覇吐が心底面倒そうに言い、

 

「だからこそ対策はしてある」

「なに?」

 

 黒覇吐が言いきった瞬間だった。

 天より、一つの人影が覇吐めがけて蹴りを放ってきたのだ。

 

「ッ! 何者だテメェ!? やるなら相手――」

 

 蹴りを避けた覇吐が相手を確認すると、言葉が詰まった。

 ピエロのお面を付け正体を隠しているつもりか、しかしどっからどう見てもザジ・レイニーデイがそこにいたのだ。

 

「……なにやってるの、お前?」

「ふむ、私がそう簡単に見破られるわけがありません。こんな愚かな変態先生に」

「お面を被っただけで変装できてると思ってるお前に言われたくねえな」

「え、何のことでしょうか? 言ってることが分かりません」

 

 自分の正体を見破られたことを認めたくないのか、わざと声を変えて言い切る。

 

「は、覇吐先生! 彼女は誰ですか!? 学園の制服を着ているようですが、知り合いですか?」

 

 今なお羽交い絞めにされて身動きが取れないネギが、ピエロのお面を付けている生徒を見てそう言った。

 

「え、嘘! マジで分からないの!?」

「ふふ、当たり前」

「お前は勝ち誇ったように言ってんじゃねえよ」

 

 ピースしながら、お面の下はドヤ顔であろうザジ。どうやらネギにはバレていないようだ。不思議で仕方ない。本当に生徒のことをちゃんと見ているのだろうか疑問になる。

 

「ふむ、しっかり働いてもらうぞザジ。無事に終われば報酬の特等席のお笑いライブのチケットは約束しよう」

「え何お前。そんなもので買収されたの!?」

 

 黒覇吐の言葉に当惑する覇吐。

 

「覇吐。動けば容赦しない」

「マジかよ」

 

 今のはイエスということでいいだろう。

 緊張感の欠片もない理由に、覇吐は理解に苦しんだ。

 

「さて、そろそろ俺は魔法を解くぜ。後は好きにしろ」

 

 その瞬間、黒覇吐の姿は霧散するかのように消失した。

 それと入れ違うように――エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが姿を現した。

 

「エ、エヴァンジェリンさん! まさかあなたが黒幕なのですか!?」

「ふふ、どうだとも。ようやく作戦の第一段階が終了する」

「どういうことですか?」

 

 エヴァンジェリンはネギに歩み寄り、

 

「お前がこの学園に来ると分かった時から、少しずつだが学園の生徒たちの血を吸って力を付けていた。ひよっこな魔法使いに対抗するためのな。しかし私が力を使わずとも、ちょうどいい駒がいたので、そいつらを使いお前を確保した。これでようやく、私の呪いが解ける」

「え……呪い?」

「そうだ。この真祖にして最強の魔法使いである私を陥れた呪い……私はお前の父、つまりサウザンドマスターに敗れて以来、魔力も極限にまで封じられ、も~~15年間もあの教室で日本のノー天気な女子中学生と一緒にお勉強させられてるんだよ!」

 

 ネギの胸ぐらを掴みながら、怒りをぶつけるように言った。

 全くネギには無関係な話であり、八つ当たりもいいところだ。

 

(あー、そんな理由があったのか。てか蓮さんもこのこと知ってるんだよな……)

 

 そんなことなど露知らずの覇吐がエヴァンジェリンの真相を知った瞬間だった。

 

「そ、そんなこと、僕は知りませんよ」

「このバカげた呪いを解くには、奴の血縁たるお前の血が大量に必要なんだ。……悪いが死ぬまで吸わせてもらう……」

「うわぁ~ん誰か助けて~っ!」

 

 と、エヴァンジェリンがネギの首筋に牙を突き立てようとする。

 

「まずい! いたいけなネギ先生がいい年した年増おばあちゃんに襲われちまう!」

(アイツはいつか殺す)

 

 覇吐の言葉に殺意が沸いたエヴァンジェリンだが、今はネギの血を吸うのが優先だ。

 そして吸おうとした瞬間――

 

「コラー! この変質者どもーっ!」

「……ん?」

 

 何やら喧しい声が聞こえてきたかと思うと、

 

「ウチの居候に何すんのよーっ!」

「はぶぅぅ!」

 

 勢いよく明日奈が現れ、そのままエヴァンジェリンを蹴り飛ばした。

 同時に茶々丸もその勢いに負け、ネギを離して後退した。

 

「あ、アスナちゃん!」

「か、神楽坂明日奈!!」

 

 覇吐とエヴァンジェリンが声を上げる。

 急な登場以前にエヴァンジェリンが蹴り飛ばされたことに驚いた。

 

「あっあれ? 覇吐先生、それにアンタはクラスメイトの。何どういうことよ!?」

 

 明日奈は現場の人たちを一通り確認して、

 

「もしかしてあなた達が犯人なの! しかも二人?がかりで子供をイジメるような真似、答えによってはタダじゃおかないわよ!」

「くっ、余計な真似をしおって」

 

 頬をさすりながら涙目でエヴァンジェリンはザジを睨みつける。

 

「おい話が違うじゃないか! なぜ神楽坂明日奈から私を守らなかった!?」

「私はあくまで覇吐が現れた時のガードマン。それ以外は契約範囲外」

「くっ、融通の利かないやつめ」

 

 溜息をつきながら、諦めたかのように言う。

 

「しょうがない。そうさ、私こそが吸血鬼にして女生徒を襲っていた犯人さ!」

 

 全てを認めた。

 

「お、往生際がいいわね。てか吸血鬼って何よ? そんなのお伽噺の存在でしょ?」

「魔法を認知しているくせに、意外に思慮が狭いな。まぁいい。こうなったら正々堂々と行こうじゃないか」

 

 ビシッとネギを指さし、

 

「一週間後、お前に勝負を挑む」

 

 宣戦布告した。

 

「はあ! そんなこと聞くわけないじゃない」

「そ、そうです。生徒と戦うなんてできません」

「心配するな。相手はうちの居候がする予定だ。それに、もしお前が勝てたら、そうだな悪いことはやめてやろう。どうだ、生徒を改心させるのも先生の務めだろう?」

 

 そう言われては言い返せないネギ先生は、渋々うなずいた。

 

「ネ、ネギ、本当にいいの?」

「はい。これも立派な魔法使いになるためです」

「面白い。その時を楽しみにしている。行くぞ茶々丸」

「はい、マスター」

「あ、ちょっと!」

 

 エヴァンジェリンと茶々丸がそのまま夜の闇に消え去った。

 

「もう、いったい何なのよ」

「よぉネギ、すまなかったな。本当は最初から見ていたんだが出て行ってやれなくてよ」

 

 覇吐がネギに謝罪する。

 

「いえ、とんでもありません。覇吐先生がこんなことをするわけがないと思っていましたから」

「本当にそうか?」

 

 とりあえず許してもらえたようでホッとする覇吐。

 

「あれ、てかザジさん、だよね? お面被ってるけど」

 

 明日奈はザジの変装を簡単に看破してくれた。どこか安心する覇吐であった。

 

「見破られていたとは、驚きました。素晴らしい慧眼です」

 

 ピエロのお面を躊躇いなく取るザジ。

 

「え、ザジさんだったんですか!?」

「本当に気づいていなかったのか」

 

 正体がザジだったことに驚きを隠せないネギであった。

 

「それよりネギ。こうなりゃ俺がいくらか手ェ貸してやる。あのエヴァンジェリンが寄こしてくる魔法使いは結構強いと思う。だからこそ、早く作るんだ」

「えっと、それは……」

魔法使いの従者(ミニステル・マギ)だよ」

 

 そうして決戦の火ぶたが切って落とされたのだった。

 

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