まだ一話目なので、それほど話は進みません。
ではでは超駄文ではありますが、読みたい方はどうぞ。
大分烈戦争――魔法世界には南の古き民である「ヘラス帝国」と、北の新しき民である「メセンブリーナ連合」の二つの大国が存在した。
南の古き民であるヘラス帝国には元々住んでいた亜人種が多く、北の新しき民であるメセンブリーナ連合には旧世界――俗に言う人間世界――から移住してきた人間が多くを占めていた。
両国はうまく共存し成り立っていたが、ある秘密結社により戦を煽られ……遂に大戦争が発生した。
それが大分烈戦争。人間世界で言う世界大戦だ。
平和に暮らしていた住人は嘆き苦しみ、至る地域で恐慌状態に陥った。魔法による争いはあらゆる国、地方で火種を生み、苛烈さは日に日に悪化の一途を辿った。
しかし世の中は広い。
そんなものを一切気にせず、我を行くもの達も世には存在する。
戦争などどうでもいい、それどころか他者を嫌悪し自己愛の究極系のような者が存在した。
名は波旬。誕生時から異端児と謂われた危険極まりない存在。
異端児と言われる原因は、誕生の時から三つ目と言う異形と言うこと。更には生まれた時から産声一つ上げなかったということだ。だが三つ目と言うことなら亜人の血がどこかで混ざったということで済む上、産声の件も魔法世界では特筆して気にすることではなかった。
そう、一番の要因は別にあるのだ。
それは一つ。誕生時から徹頭徹尾自分のみを愛し、他の物は森羅万象三千大千世界全て嫌悪怨恨の対象としか見ていない。故に自己愛の究極。それが異端児と言われる要因だ。
危険と言われる要因だが、これも簡単だ。
俺は俺ゆえ唯一絶対。
まるでこの渇望が具現化したかのように、本当に己の身で全てを終焉させることのできる力を持っているのだ。
そしてそんな波旬には双子の弟がいる。
名は覇吐。外見は波旬と似ておらず普通の人間で、性格も全くの逆。特に性に関しては素晴らしいまでの変態な人間だ。
ただ似ている点はと言うと、強いという一点のみ。本当に双子かと疑いたくなるが、この強いと言う点は本物で事実兄弟喧嘩でも波旬と拮抗するほどだ。
その兄弟はメセンブリーナ連合の小さな村で生まれ、現在は独立できる立派な青年だ。
独立できる……そう、波旬は光の如く独立したのだ。普通なら生まれて直ぐ一人になるはずだったが、親がそれを許さなかった。親にも波旬を生んだ責任がある。その責任を果たすため、波旬をなるべく成長させてから独立させたのだ。だが波旬は何度も親に逆らい、村から立ち去ろうとしたが、その度に弟の覇吐と喧嘩が勃発し、最終的に波旬を村に留まらした。本来なら波旬の圧勝なのだが、何故か覇吐だけには圧されてしまう。原因は解明されていない。
だがそれも昔の話。今では一人で独立できるようになった波旬は戦争中にも関わらず、深き森を悠々と歩いていた。
「あぁああ、ようやく一人になれる」
波旬は長年夢見ていた展開が叶い、一人を謳歌できると思っていたのだが――
「……ようやく一人になれるのによォ……何で塵が俺に付いて来てんだよォォォオオオ!!」
そう、波旬の直ぐ後ろには付き人よろしく、弟の覇吐が付いて来ているのだ。
「ウゼェくれェ永い時を我慢して我慢して我慢してェエ、ようやくゴミ屑共から離れることが出来ると思ったのによォ、何でテメェだけしつこく俺に纏わり付くんだァッ!?」
振り向き様に拳を覇吐に叩き込むが、軽く躱す。もう覇吐にとって、兄の行動など手に取る様に分かるのだ。ただ今の拳の風圧により、周りにある森の木々が次々と粉砕されていく。本来なら風圧で覇吐の全身がズタズタになった上、吹き飛ばされてもおかしくないが、余裕の態度で覇吐は答える。
「そうかっかするなよ兄弟。母ちゃんが心配だってことで、俺を付けたんだ。譴責するなら俺に頼んだ母ちゃんにしやがれ」
「うるせェエ! んなもんに素直に従ってんじゃェ! だからテメェはいつまでたっても俺の成り損ないなんだよォ!」
「あ! 今の聞き捨てならねぇぞこのバカ兄貴! 何の教養も受けてねえくせによ」
「何だァ? 俺とやるってのかァ? 俺の成り損ないのくせによォ」
「上等だぁぁあああ! やってやらぁぁアアアア!!」
短気な覇吐は背負っていた大剣を抜き、己の兄に斬りかかる。躊躇いも何もない。
対する兄波旬も弟の覇吐に躊躇いなく殴りかかる。波旬の武器は己自身だ。
「このうんこ頭ぁぁぁああああ!!」
「この腐れ塵屑ゥゥゥウウウウ!!」
瞬間、一発の衝撃が発生し、その余波により地図すら変えてしまう程に大地が破壊された。
そして再び二撃目――次はお互いが全力になり、
「曙光曼荼羅ァ――八百ォォ万ゥ!」
「卍曼荼羅ァ――無量大数ゥ!」
こうして大戦以上の被害が出るであろう兄弟喧嘩が始まったのだった。
(∴)
時を同じくして連合側の本国首都に、ある二人の人物が歩みを進めていた。
一人は見た目普通の青少年であり、特に何の特徴もない人間だ。目立つ服を着ている訳でもなく、武器すら持っていない。
ただもう片方は、異風と言う異風をビュンビュン吹かせていた。
黒マントに、女のように長い髪。顔も特筆すべき点はないが、普通ではない何かがあると凡人でも分かってしまえるオーラを纏っているのだ。常に薄気味悪い笑みを絶やさず、周りの視線など意に介さずに首都の街内を進む。
青少年の方は周りの視線が鬱陶しいのか、とりあえず真っ直ぐ周りを見ないで歩む。
対する不気味な男は、まるで視認している位相が違うのか、上述通り全く気にしていない。
そんな中、周りのことなぞ気にせずに、やや後ろを歩く青少年に語りかける。
「正直、荒事は苦手だが、これも女神マルグリットの願いだ。叶えない訳にはいかないだろう。なぁ我が息子よ」
「もう何回も聞いたよ。いや、何回も聞き返そうか。どうして、そんな理由でこんなとこに来たんだよ? 流石に長い付き合いの俺も、どうかしてると思う」
黒マントの男に呆れ半分、失望半分で質疑する。
「愚問だな。女神であられるマルグリットがモニターを介して私に願望したんだ。戦争なんて早く終わってほしいとな。故、それを叶えるのは至極当然、当たり前のことだ」
「つまりこういうことか。アイドルのためなんていう理由で、この大戦争を終結させると。そいつは随分と立派なことで」
女神マルグリッドとは魔法世界一であろうアイドルだ。その美しさは例え人種違いであろうとも魅了し、老若男女問わず、絶大な人気を博している。
そして黒マントはそのマルグリッドのファンであり、彼女のグッズ類は何からナニまで全て所有している。
例えば一般販売しているグッズは店舗買収し、出演コンサートなどは全て特等席+録画。そして此処から先があり得ない領域だ。彼はマルグリッドの居た空間の時間を停止させ、その空間を切断し所有しているのだ。
文面だけでは訳が分からないだろう。簡単に言うと、マルグリッドの居た直後の残り香のある空間をいつでも体感できるようにしているということだ。勿論、それだけではない。マルグリッドの足跡からマルグリッドの触った物まで時間軸から切り離し、所有している。もう変態も逃げ出す変態である。
「さぁマルグリッドの夢を叶えるため、この下らぬ戦争に終止符を打とうではないか。マルグリッドが願うのなら、例えこの身が滅びようとも叶えてみせる自信がある」
「こいつを俺の親だと、心の底から信じたくない」
ちなみにモニターを介してと言ったが、それは黒マントに言ったのではなく、モニターの前のみんなに言ったのだ。
「さて、これから向かうは連合の本国中枢に位置する場所だよ。そこで私とお前は連合の仲間入りと言う訳だ」
「そんなうまくいくのかよ? 俺達みたいな怪しい奴をそう簡単に受け入れてくれるとは思わねえんだけど。最悪、監獄送りもあり得る」
まぁ10対0、一切合切全て黒マントが怪しいのだが。
「心配には及ばん。私の実力を見せてやれば、赤子の手を捻るより簡単だ。それに言っただろ? 女神の願いを叶えるのは私にとって名誉ある至高の職務。その為なら、どんな試練であろうとも光の速度で突貫しよう」
事実、確かに実力なら魔法世界最強だろう。
前述で述べた通り、時間軸を簡単に操れ、空間すらも好きにできる。ただ、ほとんどの術の行使が女神へのストーカーに使われているため――術の無駄使いも甚だしい――全く魔法世界に知られておらず、無名も良いところなだ。
「てか何で、連合側に付くんだ? 別に付かなくても単身でも充分だろう?」
ふと、生まれた疑問を吐く。
それに黒マントの男が適当に答えた。
「まぁ連合側に付かずとも良いのだが、マルグリッドは現在連合側に滞在し、尚且つ連合の出身だ。故、連合側に付いた方が好都合であり、マルグリッドを直接護れるチャンスがあるかもしれない」
「あー、そうかよ」
聞くまでもなかったか……と、心の中で呟く。
「あぁマルグリッド、我が女神よ。このような戯事(戦争)に心を苦しめていると思うと、私もとても苦しい。故に一刻も早くこの茶番を終わらせ、あなたの笑顔を拝まなくてはならない。それこそ私の求める渇望だ」
「うざ」
やや後ろを歩いていた少年は、ポツリと毒づき、やや後ろからかなり後ろに位置を変えた。
何故なら――
「あぁマルグリッド、あなたに恋をした。あなたに跪かせていただきたい、花よ。あなたの為なら私は手となり足となり――」
一人で、まるで祝詞のように歌いだす黒マント。こんな奴と一緒に歩きたくない。
もう変態を超えた、言葉では表現しきれない〝変〟だ。目立つどころの問題ではない。
その証拠にあら当然。連合の兵士だろうか、町民の誰かが通報しのか、取り押さえられてしまった。
少年は予想通り過ぎてやれやれと頭を抱え、兵士達に事情を長々と説明する羽目になった。前途多難だ。
だが、これが後に『
感想、ありましたらどうぞ。