波旬兄弟と蓮親子がネギまの世界へ   作:ディーン・グローリー

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軍勢様、AST様、ブラッディ様、感想ありがとうございますm(_ _)m

今回は結構無理矢理感があります。
とりあえず早く書かないとと思い書きました。まぁ戦いも終わりは随分と静かと言うか、呆気ないということですね。

それに早く日常パートをゆっくりと書きたいですし(;´Д`)
まぁ最後だけ衝撃の展開にはなりましたが。


第四歌劇【任務終了】

《1》

 暗黒の宇宙と共に消え散った波旬。

 暗黒宇宙とは不変の銀河を意味し、それが非物質だろうがなんだろうが、全ての存在を永遠の宇宙に封印する奥義の中の奥義であり、禁忌の中の禁忌でもある封印魔法。

 そんな魔法を放ったにも関わらず、全く緊張が解けない。解けないのだ。

 理由は簡単だ。何故なら――術をかけた本人であるゼクトが、恐怖の色に染め上げられていたからだ。

 本人なら分かる。結界の様子が、封印の様子が。

 そう、分かるからこそゼクトだけが慄いているのだ。それはまるで殺したはずの人間に、殺されかけているような……そんな感覚だろうか。いや、否だろう。それを水準にしてしまったら、その何十倍と言った方が正しくなる。

 本当の恐怖。自分の何十年かけたであろう本気が、力作が、全て指一本ほどの軽さで否定されるような、圧倒的な力。

 ――こいつに挑んでは駄目だった!

 ゼクトがそう思った矢先――。

 

 ピキッと、ガラスが割れるような音が、静寂な空間に響き渡った。

 

 瞬間、波旬の居た空間から波旬が硝子の破片をブチ破るかのように現れた。

 表現としては一番わかりやすいだろう。端的に言うと封印と結界、更には付加させていた魔法全てが波旬に通じず、そのまま破られてしまったのだ。

 驚くべきか、恐怖すべきか、唖然とするべきかどうか、一切何もわからなかった。

 そんな中で、波旬が呆れるが如く突破を切る。

 

「時の不変? 不壊封鎖の結界? 概念削除? なんだそれは? なぜそんなに小賢しい」

 

 波旬はまるで全魔法使いの誇りや努力を穢すように言葉を紡ぐ。

 

「弱いからだろ。弱いから、そんな小難しい魔法を使わなければ、何もできない。あぁぁああ、小さい小さい。見えないぞ、踏みつぶそうか?」

 

 波旬の咒がこの世の総てを蹂躙する。その一言一言が他者全てを滅するかのように人々が、大地が、天が、空間が、時間が、生きとし生ける全てのものに終焉を与えようとしている。

 

「俺の天狗道は俺のみで完成する。すなわち、簡単だろう。おまえたちの入り込む隙間なぞ何処にもない」

 

 故、滅尽滅相。

 自分以外のものは消えてくれ。簡単だ。何も難しいことは言っていないだろ?

 波旬の理想郷はそこにあるのだ。

 

「まずいの。あれに対抗する手段が無くなってもうた」

 

 ゼクトが諦めるに近い発言をする。

 傷一つ、汚れ一つ、あの波旬に付けていない。

 まさに絶望。

 これほど絶望という言葉が似合う場面なぞ存在しないだろう。否、他の事象で絶望という単語を使うのなら、現状、絶望と言う単語を軽く凌駕している。

 そんな状況で、ナギは、

 

「諦めるかよ。最後まで、自分と仲間達を信じて、戦うぜ」

 

 最初は引くこと前提で話を進めようと思っていた。だが、もう看過できない。あれを生かしておけば、仲間が、世界がが危ない。

 ここで、例え最悪の結末になっても、悪あがきをしてでも喰い止めねばならない。

 

「よく言った……と、言いたいところじゃが、さてどうしたものか」

 

 ゼクトは先の魔術で、ほとんどの魔力を使い切った。

 それにナギも、アルもラカンも同じだ。総攻撃(詠春除く)の際に魔力の限界値を超えている。もう、何もできない絶体絶命のピンチに等しい。

 

「増援に期待……したくねえが、するしかねぇか」

 

 苦いものを噛み締めるように、ナギは呟く。

 例えどれだけの増援がきたところで、勝てるかどうかも分からないが。

 

「さぁ終わりにしようか」

 

 呪言のように呟く波旬。

 塵掃除に手間取るだけ無駄だ。直ぐに終わらせよう。茶番は終わりだ。

 

「ッ!!」

 

 ナギ達が終わりかと思ったその瞬間――

 

 

「Sic itur ad astra

 Sequere naturam」

 

 

 まるで恒星が爆発したかのような明光と共に、轟々と燃え盛る無数の流星が波旬へと降り注いだ。

 落下していく隕石が、波旬ごと貫き、星に多大なダメージを与えながら、大海原の青い海を蒸発させていく。地盤を貫き、一発一発が底の見えない地獄の穴を作り上げていく上、海水の猛烈な水蒸気が爆風で吹っ飛んでいっている。

 その上、近くに佇立しているナギ達への被害を最小限にまで抑えていた。これはまるで神が成せる所業の如くだ。

 

「な――ッ! 何だぁ!?」

 

 ラカンが吹き飛ばされてもおかしくない爆風に耐えながら大声を上げる。

 絶体絶命……そんな中、運良く隕石が波旬に落下したのだろうか?

 いや有り得ない。そんなもの宝くじ一等を連続で何百回、ロイヤルストレートフラッシュを百回連続で引き当てるに等しい運気だ。

 なら一体――

 

「遅れて済まない……とは言うまい。私はイレギュラーだ。そのような言葉、適切ではないだろう。いや、考え方を変えれば一番正しいのかもしれないな」

 

 諧謔を弄するのが好きそうな口調で、まるで耳元で言われているかのような感じで、誰かの声が聞こえた。

 ナギ達は異常な魔力を感じる方を向く。声がどこから聞こえるのかは分からないが、魔力なら一箇所に感じる。それ故、そこに何かいるのだ。

 

「やぁ諸君。――今宵の恐怖劇(グランギニョル)を始めようではないか」

 

   (∴)

 

「……詰まらんな。この国は」

 

 メセンブリーナ連合本国首都の昼の街を犯罪者であるエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが、靴音を上げながら堂々と歩んでいた。

 平和ボケ……していると言うのだろうか。戦争中だが、そんな雰囲気をエヴァンジェリンの眼には映っている。

 そんな時、エヴァンジェリンは一つのモニターに目をやった。

 街の大型建造物に大きく魔法製のモニターが展開されているのだ。

 モニターには女性の司会者がぺちゃくちゃと戦争の状況を適当に語っており、その隣には渋いおじさんが無表情で座している。見た目通り、恐らく気難しい性格だろう。

 

「現在、壮絶な戦火が至る地域で上げられており――」

 

 嘘か本当かも分からない、疑惑に満ちた口調だと、なんとなくエヴァンジェリンは思う。

 戦争中の公共的な情報は、自軍を優位な旗色に見せる生き物特性の嘘が存在する。それは住民感情を安心させるためだろう。だがそんな嘘も恐慌に陥らさせないための、宥恕になってしまう。

 下らない――と、エヴァンジェリンは一蹴する。

 正直、こんな戦争に興味はないし、どちらが勝とうが知ったことではないのが、エヴァンジェリンの心情だ。

 

「こちらが今入りました新しい映像です」

 

 連合側の魔法使いが、敵国の軍勢に凄まじい威力の魔法を放った映像だった。

 

「激烈な威力ですね。ゲストのマッキーさん、今の映像を見まして、どういう感想を抱きましたか?」

「すごく……一撃必殺です」

 

 ……と、その瞬間、臨時ニュースよろしく、モニターの画面が急遽入れ替わった。

 その映像は、上空から俯瞰的に映されているのか、まず海が見える。そして凄まじい水煙がある一点を全て覆っていて見えない。

 

「…………」

 

 釘付け、とまでは言わないが感興をそそったのか、何となくモニターを眺める。

 レポーターが何やら言っていたが、映像が始まって直ぐ何かの異変なのか、映像が途切れた。

 

「何だ……?」

 

 周囲の者共同様、多少訝しむが正直どうでも良いので、エヴァンジェリンはモニターから目を離し、歩みを進める。

 後少し、映像が流れていれば、自分の怨敵であるメルクリウスが画面に映ったのだが、運良くか運悪くか、そういう展開にはならなかった。

 そして犯罪者が街の無辜の者共に、自然に溶け込む。

 それは不自然でなく必然かのように思えてくる。平和ボケと思ったのは、あながち間違いではないのかもしれない。

 

「……さて、明日は楽しめるかな」

 

 何て独り言を呟き、エヴァンジェリンは消えた。

 

 

《2》

 ナギ達のピンチを救ったのは、黒マントの男だった。

 影が薄くも濃くも見える、判然としない男――メルクリウス。その傍らには、面倒くさい状況に巻き込まれた被害者のような感覚で佇む藤井蓮の姿もあった。

 そう、二人の救援によりナギ達は九死に一生を得たのだ。

 

「あ、あんたらは?」

 

 ナギは吃驚の表情で、二人に声を掛ける。

 あんな大魔法、見るのも初めてだが、それ以上に驚くはその男の異常性だ。

 金髪の男を目の前にして、全く心が揺らいでいない。それどころか、こんな男がまだこの世界にいたのかと言う驚き。

 相手の敵もそうだが、嫌でも世界が広いと思わせる瞬間だった。上には上がいる。中々、真に迫った言葉だ。

 

「今日本日から、連合側に付くことになった者だよ。まぁ自己紹介は後にしようではないか。そんな悠長な戯事をしている場合ではなさそうだ」

 

 メルクリウスは波旬に目をやる。

 

「……うざい、うざいぞ。何だ、何でこんなに群がる」

 

 あれほどの攻撃を受けて、波旬単体には傷一つ付いていなかった。

 怪物化物悪魔神様死神反則怪異……何て言葉では片付けられないモノ。世界の言語では表現しきれない何か。

 

「俺は一人になりたいって言ってんだろうが。言葉が通じんのか滓共」

 

 頭痛にも似た苦悩に波旬は怒りを爆発しかける。

 

「加減をしたとはいえ、無傷か。これはこれは、中々愉快なニンゲンと言ったところか」

 

 波旬を前に、メルクリウスは余裕の態度で対峙する。

 相手の力量は測り終えているのか、次は周りの人間達を観察する。

 

「あれと戦うのは、些か歌劇として面白味に欠ける。故、ここは脇役に任せるのが適任だろう」

 

 まるで自分が脚本家のように、戦いという歌劇をわざとらしく他の者に演じさせようとしている。

 そして目に映ったのは、波旬の弟――覇吐だった。

 今は詠春と絶賛気絶中だが、攻略法としては一番のキーアイテムだろうと、メルクリウスは思う。

 故にすることは決まっている。

 

「我が息子よ、あの赤毛の青年を叩き起こしてはくれないか?」

 

 と、傍らに立つ自分の息子――藤井蓮に指示する。

 

「いや、そんなこと自分ですれば良いだろ」

「私がそのような、痴呆な真似事を行えば私のファンが悲しむ」

「……お前にファンなんかいねえよ」

 

 恐らく世界中の誰一人も。つかマルグリッド以外眼中にないだろう……とは突っ込まない。

 蓮は溜息をつきながらも、横たわっている赤毛を叩き起こしに行く。

 その間に――

 

「滅尽滅相ォォーー」

 

 波旬が動いた。

 視界に収まっている塵屑を、滓も残さずばら撒こう。

 右腕を軽く振るう。それだけで半壊した島が、文字通り消し飛んでしまった。

 圧――魔法でも気でも、特殊な異能でもない。ただの力。それのみで島を粉々に打ち砕き、神の天罰のような一撃を発した。

 

「チィッ!」

 

 ナギ達はその風圧から何とか、空中回避を行う。

 もし対物・魔法障壁(アンチ・マテリアル・シールド)と咄嗟の防護魔法を展開していなければ、体中の内蔵器官細胞が全てズタズタにされた上、消滅していたであろう。

 

「詠春!」

 

 気絶中の詠春が頭から消えていたせいで、護りに行けなかった。

 ナギは詠春を探すため、周囲を見渡し、

 

「こいつ、あんたの仲間か? だったら受け取ってくれ」

 

 メルクリウスと共に現れた少年が、詠春と赤毛の男を担いでいた。詠春一人ならまだしも、自分よりも明らか大きい覇吐まで担いでいるのだから驚きだ。だがここは魔法世界。特に驚きはしない。

 蓮はナギに向けて、まるで転がってきたボールを投げ渡す気軽さで詠春を投げる。

 

「うおっと!」

 

 まさか投げられるとは思わず、ナギは驚きながらも詠春を両腕でキャッチする。詠春に意識があれば涙目確実だろう。扱いが酷い。

 

「さて、次はこいつか」

 

 蓮は空いた片手で覇吐の頭を叩くが、一向に起きない。もう二、三発叩くが、それでも起きない。

 ――死んでるのか?

 

「どうしたのかね、我が息子よ」

 

 蓮の様子を見兼ねたメルクリウスが語りかける。

 適当に蓮が説明し、瞬時にメルクリウスが結論を出す。

 

「なら致し方ない。少々、荒事にはなるが、奔流に身を任すも一興だろう」

 

 物語構成に必要な起承転結。

 中でも承転は、流れと山場を司る最も重大な点だ。そこを何の練りもせず、なすがまま進ませるのは正直嫌いなメルクリウス。

 だがまぁ、現状そうせずにはいられないだろう。

 

「この男を起こしている間に、どうにかしてあの男を止めてみせよ」

 

 メルクリウスがナギに、ラカンに、ゼクトに、アルに言う。

 

「仕方ないの。残り少ない魔力じゃが、悪あがきには丁度良いわ」

 

 ゼクトがそれに真っ先に答えた。

 事実、メルクリウスの案は範疇の外だったが、確かにあの赤毛の青年はあの金髪の男と拮抗する状態にあった。故、あの赤毛ならあいつを止めることができる。

 と、メルクリウスに促される形で悟った。

 

「お師匠……よっしゃ、なら俺も行くぜ!」

 

 ナギが再び気合を入れると同時に、担いでいた詠春を落としてしまった。

 

「あ……詠春ー!」

 

 ナギは慌てて海に落ちそうな詠春を拾いに行こうとするが――

 

「駄目ですよナギ。親愛なる仲間を海に落とすなんて」

 

 何らかの魔法なのか、落下していた詠春が重力の法則に囚われず、ふわふわと気絶しながら浮いている。

 それを行ったのはアルだ。いやホント、詠春の扱いが酷い。

 

「詠春の心配なら大丈夫ですよ。こうやって浮かしておきますから、全力で最後の力を振り上げましょう」

 

 蝋燭の火は消える間際に、一番の光を見せる。

 今がその時なのだ。

 

「よおし、どこの誰かは知らねえが、テメエの策に賭けるぜ」

 

 ラカンは手に一際大きな大型の剣が握られている。

 攻略法がわかれば、少しは気持ちが楽になる。気を抜くのとは違い、戦を有利な心理状態で挑めるのだ。

 

「再戦の号砲だ、クソ野郎!」

 

 ラカンは凄まじい魔力を一本の剣に注ぎ込み、自分の十倍以上の大きさに変形させる。

 

「必殺――『斬艦剣』!」

 

 巨大な剣と化した武器が、勢いよく波旬へと振り下ろされる。

 

「何だ? 目障りだぞ、消えてな――」

「テメエが消えな! このナルシスト!」

 

 波旬が圧をぶつけようとした刹那、ナギが波旬の四方に雷の槍を展開させていた。

 一発一発が要塞破壊級。故、これが正真正銘、最後のナギの魔法だ。

 

「『雷星の槍(トニアステリアス・エン・ランケス)』!」

 

 星を貫く死槍が、波旬の動きを一瞬だけ止める。その一瞬で、波旬の身体を四方から穿った。

 その刹那には、ラカンによる斬艦剣が波旬を暗い海に沈める。

 だが、これで波旬を倒せていないことなぞ百も承知。

 その為、攻撃を止めることは許されない。

 

「重力魔法は、中々連続での使用は疲れますね」

 

 重力の星が海に星跡を付けていく。

 膨大な魔力が、破壊の演奏を奏でていく。

 その音色を聞いているメルクリウスは、

 

「いやはや、中々良いものだ。美しい……とは言わぬが、賞賛すべき歌劇だ。たまには付け焼刃も悪くないな」

 

 それはまるで脚本めいた物言い。

 三流役者だが、これは磨けば中々面白いかもしれんと、メルクリウスは内心思う。いずれは一流を顕現させるやもしれんとな。

 

「――――」

 

 ゼクトが凄まじい速度で、何かの詠唱を唱える。

 人間では聞き取れないほどの周波数を帯びた声音。静謐感すら感じるであろう、それから放たれるゼクトの最後の攻撃魔法――

 

「『天災の福音(アドウェルス・エーワンゴスペル)』!」

 

 瞬間、魔力からあらゆる天災が発生した。竜巻、地震、津波、台風、雷、吹雪、砂嵐などの概念が一つの塊を形成し、人類を救済する福音が塊から轟く。

 それは救済なのかも疑わしいが、確かに自然は救われるかもしれない。人間は究極を付ければ謂わば星の敵。それを救うと言う考察により完成された魔法なのかもしれない。

 その一撃――ゼクトは波旬の存在感を感知し、そこに放った。単純な威力なら被害がかなり広がるが、あれは拡散させずに威力を一箇所に絞った魔法。故、単体でなら壊せないものなぞ存在しない。

 ――一閃の光と同時に、鼓膜を破壊しかねない爆発音が轟いた。

 それは今までの轟音以上……凄まじいものだった。

 それが故だろう――ついに覇吐が目を覚ました。

 

「……んあ、ここは何処だ?」

「ようやく目を覚ましたか。ほら、降りろよ」

 

 目を覚ました直後、蓮は覇吐を下ろす。

 寝ボケていても、ここが空中ということは理解できていたのか、空中浮遊を簡単に行っていた。

 

「おお、すまねえな……で、あんた誰だ? つか、何だこの状況?」

 

 さっきまであったはずの島が消えており、何やら知らない人まで増えている。

 そして、記憶を失う前のことをゆっくり思い出し――

 

「やべぇ思い出しちまった!」

 

 思い出したくなかったような感じで言った。

 

「そうだそうだ、確かあのバカ兄貴、国に喧嘩吹っ掛けようとしてやがったんだった!」

 

 頭を抱えながら言う。

 

「なぁ兄ちゃん! この辺にガングロのうんこ頭みたいなの見てねえか!? とりあえず自分しか愛せない変態なんだけどよ!」

 

 覇吐は蓮の両肩を掴み、強く問いかける。

 

「いてぇよ、まず手を離せよゴリラ」

 

 蓮は覇吐の手をどけ、質問に答える。

 

「お前の兄なのかどうかは知らないが、多分あの海の底だ」

「海の底?」

「……あぁ、面倒だな」

 

 とりあえず蓮は適当に事情を説明する。

 すると覇吐は、

 

「分かった。さんきゅう、とりあえず皆は早く此処から去ってくれねえかな」

 

 何て言った。

 

「うちのバカ兄貴は一度暴れると抑制が効かねえんだ。他者を嫌うからな。だから、あいつから離れてくれれば即解決なんだよ」

 

 まぁ理には適っているだろう。

 波旬の視界から消えれば、一時は解決する。

 そこにメルクリウスは、いきなり割って入った。

 

「なら、そのお言葉に甘受するとしよう。今の彼らでは死にに行くものだからね」

 

 ここでナギ達が死ねば、連合側に付くことができなくなるかもしれない。その計算を入れた上で、メルクリウスはそれに承知した。

 

「ああ、悪かったな。後は任せてくれ。なるべく暴走させないようにするからよ」

 

 今のナギ達では反論できない。しかも詠春は今の轟音でも寝ている。眠りは深いタイプなのかもしれない。

 

 そんなこんなで、この任務の幕は下ろされた。とても静かに、静寂に。今までの戦いが嘘かのように、呆気なく終わったのだった。

 だがまだ、起承転結の結が付いていない……後日談と言う感じで語ろう。

 

 

 カール・クラフト=メルクリウス及び藤井蓮は無事、メセンブリーナ連合に付くことに成功した。

 そしてこれからの任務、ナギ達と一緒に繰り出すことにもなったのだ。

 めでたしめでたし……とはこのことだ。

 だがメルクリウスはそうはいかなかった。

 本国首都に戻ってきた際、こんな新聞を手にしたのだ。

『歌手や女優として絶大な人気を誇るアイドル――マルグリット・ブルイユとカリスマ系として頂点に君臨する俳優――ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ。まさかの熱々カップルか!? 共演映画であるDies irae~Also sprach Zarathustra~がきっかけの可能性大!?』と言う記事。その証拠としてマリィ(愛称)とハイドリヒが一緒に歩いている写真が一面を飾っている。

 それを見たメルクリウスは、

 

「こんな展開は断じて認めん!」

 

 と言い、ラインハルト暗殺作戦を目論んだのだった。

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