一応、後3話までに、麻帆良学園篇に移行する予定です。
そして、この小説を書いているとき、ネギま25巻231時間目のアルの黒スーツ姿が、どこぞの血を武器に使うチートキャラそっくり。
真祖の吸血鬼であるエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは、魔法界でも上位に君臨する強者。
魔力は勿論のこと、一番注目すべき点は身体力にある。
並みの魔法使いならエヴァンジェリンが魔法を使うまでもなく瞬殺可能。更にそれから魔力を行使すると反則レベルの力を有する。
明確な弱点は勿論ない。いや、確認されていないのだ。
そして更に言うには負け無し。
今まで数多の人間や魔法使いに死と隣り合わせの殺し合いを続けてきたが、一度も負けていない上、かすり傷すら負った試しが無いのだ。
吸血鬼成り立ての頃はまだまだ身体の扱い方など分からず、死にかけたことがあったが、戦闘の仕方を覚えてからは無双に等しい。
故、ちょっとした攻撃が普通の魔法使いからしたら死に値するほどの力を持っているのだ。
そんな
(∴)
別荘の浜辺――海水浴をするならこれほど打って付けの場は滅多にないだろう。
だがこの場で行われるは戰。
海水浴なんて遊びではない。戦いという干戈を交えるのだ。
向かい合う藤井蓮とエヴァンジェリン。友と友。ツァラトゥストラと真祖の吸血鬼。永遠の刹那と闇の福音。
並みの者なら干渉することすら許されない戦い。
それが化物を超越した者。一つの戦争レベルの戦いなのだ。
「ふむ、では始めようか」
何やら動きやすそうな、黒い露出度の高い際どいドレスを身に纏っている。
とても戦いをする前の者の衣装とは思えない。
だが蓮も蓮で、普通の私服。同じくとても戦い前の衣装とは思えない。
「いつでも、好きにしろ」
「そうか、なら」
先手はエヴァンジェリン。まるで距離を縮めたかのように、一瞬で蓮の背後を取っていた。
そして放たれるは岩をも軽く打ち砕く、閃光のような蹴り。
常人ならこの一撃で終了だろう。しかし藤井蓮は常人ではない。何たってメルクリウスの息子であり、紅き翼の一人でもあるのだから。
「ッ!」
蓮は空間をも引き裂きかねない蹴りを、身を翻して躱す。
「流石だな。だが、まだまだ続くぞ」
躱されることを既に予測していた。故に、継続的に続く攻撃は万事に等しい。
電光石火の如く放たれる吸血鬼の攻撃。目視不可の雷撃のような速さで繰り出される、一発一発が必殺になる連撃を、藤井蓮は全て紙一重で避けきる。
「ほう、やるな。流石は楽しませてくれる」
エヴァンジェリンは賞賛の声を上げる。
吸血鬼の力を自在に操れるようになってから、無双ゲームのように敵を薙ぎ倒してきた。だからこそ、戦いに飽いていた。弱い敵を蹂躙するだけのゲームなぞ、何が面白い。
故に、だからこそエヴァンジェリンは人生に飽きかけていた。だが、世界は広いと今ここで実感したのだ。
蓮は、藤井蓮は強い。自分と互角か、それ以上に。
「だから、掛かってこい! お兄ちゃんの力を見せてくれ!」
エヴァンジェリンは攻撃を制止し、旋転しながら後退する。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック――
始動キーを解除し魔力回路を開くと同時に、唱えるは魔法の呪文。
放たれるは敵を討つ魔法。
「『
鋭い氷の矢が、藤井蓮に殺到する。
数にして17。魔法学校でも習うような攻撃魔法だが、エヴァンジェリンほどの魔法使いが使えば相手を殺めることも可能だ。
「生憎、俺はそう言った魔法が苦手な質なんだよ」
藤井蓮は基本、魔法を使わない。
それが故、対魔法の力も勿論心得ている。
「血 血 血 血が欲しい ギロチンに注ごう 飲み物を ギロチンの渇きを癒すため」
唱えるは自分の力を活動させる祝詞。
「欲しいのは 血 血 血」
膨れ上がる殺意の魔力が、横溢した分だけ何かを放出せんとしている。
「『マルグリット・ボワ・ジュスティス』!」
それは不可視の切断現象を発生させ、飛来する氷の矢を纏めて一刀両断する。
切ると言う概念に特出した力。これは魔法とは一味違う攻撃であり、故に魔法障壁などの展開系防御魔法などは意味を持たない。
それを本能的に理解したエヴァンジェリンは、
「成程、初見の頃から感じていたが、お兄ちゃんは普通の魔法使いとは何段も違うようだ」
笑みを零しながら、ようやく全力で戦える相手を見つけたと言う鋭い目つきへと変わる。
自分と戦える相手なんて、もうこの世界には十人といないと思っていた。しかし、こうも簡単に自分と拮抗できる相手と、友と出会えたのだ。
ようやく、生きている実感が湧いた。
「お兄ちゃんの力を分析したいのもあるけど……今、この一瞬を楽しみたい。だから、最後まで付き合ってくれよ、お兄ちゃん!」
奮起する。興奮する。
これこそ戦いの醍醐味。天井知らずに上がるエヴァンジェリンの魔力。
「行くぞお兄ちゃん! 今、私の全てを曝け出してやる!」
膨張しきった魔力がエヴァンジェリンから顕現する。
「
エヴァンジェリンの周囲で渦巻く暗黒の激流。
そこから放たれるは、
「『闇の吹雪×16《ニウィス・テンペスタース・オブスクランス・セーデキム》』!」
奔流する闇の吹雪。
手加減無用の攻撃。否、藤井蓮を前に手加減をすれば一瞬で負けてしまうだろう。
故に常時本気、死ぬ気で戦ってこそ、楽しめる相手だと判断した末の決断だ。
「チッ、規模がでけぇ!」
藤井蓮は疾風のように駆ける。
闇の吹雪が浜辺を抉り、破壊のみを実行していく。
「甘いぞ――お兄ちゃん!」
だがその魔法はあくまで布石を投じた程度。
狙いは蓮が避けた後の一瞬の隙――
「――ッ」
投擲される鋭い爪。
猛獣のようになったエヴァンジェリンの刃のような爪が、藤井蓮へ襲いかかる。だが、それを蓮は右腕で何とかガードする。
しかし吸血鬼の膂力は藤井蓮を超えるため、防御が貫かれ吹き飛ばされた。
「ガッ」
藤井蓮は海の方まで軽く吹き飛んだが、直ぐ様態勢を立て直し……海の上に立つ。
「まだまだ行くぞ!」
海の方面へと吹き飛ばされた藤井蓮へと飛行し、そのまま攻撃に入る。
「
エヴァンジェリンの手に氷が張られる。
「『
世界が凍る。
藤井蓮の目の前の空間が平等に全て凍てついていく。
「速いっての」
藤井蓮は不可視の切断現象を発生させる。
まるで颶風の刃、鎌鼬の勢いで放たれる切断は物質ならあらゆる物を例外なく切る。
故に目の間に迫って来ていた氷の世界は必然的に、切断させる。
「さぁ見せてくれ、お兄ちゃんの力を。まだ何かを隠しているのだろう!」
三次元空間の大気が氷点下にまで下がっていく。
藤井蓮の力を見たい……その欲望がエヴァンジェリンを動かす。欲望が怒涛の嵐を生み出し、休むことのない攻撃の嵐を作り出すのだ。
「『
「しま――ッ!」
氷の惑星がエヴァンジェリンの掌の上に創り出され、それを蓮の背後から放つ。
蓮はこおる大地に意識がいっていたため、それに反応することができなかった。故に巨大な氷塊は藤井蓮に吸い込まれるようにして墜落する。
「クッ!」
かなり強引に身体を捻り、真横に跳ぶ。だが完全に避けきることは出来ずに、肩が脱臼したかのような痛みに襲われる。
「まだ本気を出してはくれんか。なら――これでどうだ」
瞬間、横に跳んだ蓮の足元に魔法陣が現れた。
「これは……ッ?」
パキパキと、蓮の手が凍っていく。それが徐々に全身を蝕んでいくところを見るに、最終的に全身が氷漬けになるのだろう。
「『凍てつく氷棺(ゲリドゥス・カプルス)』。さぁ、速くしないと、私の圧勝で終わるぞお兄ちゃん」
「……面倒な友達を持ったな俺も」
一瞬にして下半身が凍りながらも、蓮は冷静に笑みすら零しながら、自分に宿る力を顕現させる。
――そうか、ならもはや迷いはない。お前に俺の力を見せてやる。
「形成――
そうして右腕にギロチンが落下した。
黒色の異形と化し、肘あたりから鎌のような形の黒刃が伸びる。
これはギロチン。処刑道具であり、人を殺すためだけに存在する力。それ以外に使い道はなく、故に殺す面に異常なまでに特筆している。
そう、例え相手が不老不死だろうとそれは変わらない。
首を刎ねられれば神だろうが殺せる異常な力。
それがメルクリウスにより与えられた力であり、この世に生を授かると同時に一心同体として産まれた畸形の力でもある。
「…………」
エヴァンジェリンは驚愕のあまり、瞠目のあまり絶句する。
内に渦巻く殺意の奔流、未知に満ちた嵌入しない魔力。
解らないが故に面白い。解らないが故に楽しめる。解らないが故に本気を出せる。
なら――
エヴァンジェリンも真剣の本気を使う。
「
エヴァンジェリンの掌の上で渦巻く、膨大な魔力。
まるで氷の宇宙が掌の上で収まっているような感覚すら覚える。その密度、一度放てば半永久的な凍結は免れないだろう。
エヴァンジェリンはその力を――
「
握りつぶした。否、取り込んだのだ。
これがエヴァンジェリンの真骨頂。
闇の魔法に部類される、危険極まりない魔法だ。
「
纏うは氷。
今エヴァンジェリンンは氷の化身と成り、同時に総合的力も急増した。
これでお互い本気と言って良いだろう。
「それが、エヴァンジェリンの本気か」
「然り。私が何百年と生きる中で、まだ数度しか行使していない稀覯な魔法だ」
「そいつはまた、レアな物を俺は見てるってわけだ」
「まぁな。どうだ、凄いだろ?」
「少しは驚いた」
「少しじゃ済まないぞ。見せてやる――私の本気を!」
激突する。
今、最強と最強が本気の戦いを繰り広げる。
(∴)
あれから数刻、ナギとラカン、アル、詠春はガトウに連れられ本国首都にやって来た。
そこで待っていたのはウェスペルタティア王国の王女――アリカ・アナルキア・エンテオフュシア。
アリカ姫――ウェスペルタティア王国の王女。帝国と連合、二つの巨大勢力に挟まれ翻弄され続けた。そして彼女は自ら調停役となり戦争の終結を願ったが、それは叶わなかった。故に、ナギ達に助けを求めてやって来たのだ。
戦争の集結が叶わなっかた訳……それは『完全なる世界』の仕業。
そこでいよいよ『完全なる世界』を捨て置くわけにはいかず、独自にナギ達は内偵を開始することにした。
しかしラカンやナギは密偵に向いていないため除外。メルクリウスは連絡がいかないため除外。
それから数日の時が流れ――この時、藤井蓮は別荘――ガトウが遂に『完全なる世界』の尻尾を掴んだ。
そいつは執政官――メガロメセンブリアのナンバー2までが『完全なる世界』の手先へと化している。そしてその情報を掴んだ瞬間に――街を連れ回されていたナギと、連れ回していたアリカが襲撃された。
しかしながらナギは紅き翼の実質リーダーと言っても過言ではない人物であり、アリカ姫は頭の回る姫様だ。故、二人が手を組み襲撃してきた敵の下部組織を壊滅させた。
そして遂に重要な証拠を入手し帰ってくる。詠春には酷く怒られたが。
後にアリカ姫は帝国側の第三皇女しに単独で向かう。
最後に――そのことをガトウはマクギル元老院議員に伝えた。
この後、大仕事が紅き翼に待っていると知らずに。
《2》
「ザジ・レイニーデイとザジ・レイニーデイで双子の姉妹か……て、分かりづらいわ!」
静謐な空間に――坂上覇吐の大声が木霊する。
現在、ウェスペルタティアの者と言った少女に連れられ何やら隠し場所めいた広い空間にいる。
少女が言うには、世界最古の都である王都オスティア空中王宮最奥部――『墓守り人の宮殿』ってとこらしい。そこがどれだけ凄く、ヤバい場所なのかは覇吐は知らない。
そしてその覇吐の前には二人の、褐色の少女がいる。
瓜二つの外見であり、同姓同名。口癖がポヨと付く方が姉という事は分かったが、それを除いてしまえば見分けが全くつかなくなる。
「…………」
――胸も、腰のくびれも、身長も全部同じだな。双子か……何かそそるな。今宵の夕飯は姉妹丼かな?
「気持ち悪いことを考えてるなポヨ」
「え、いやいや考えてないぞ。双子だから、何かそそるなとか、挟まれてみたいなとか思っちゃいねぇぞ」
「図星どころか、全てを曝け出しちゃってるよ」
「あ、いけね。ギリギリセーフ」
「セーフじゃないだろ」
――まぁあれだ。ポヨでこれからは見分けを付けよう。
「自己紹介はもう良いか? そろそろ本題に入りたいのじゃが。時間は惜しいのでな」
少女が話に割って入る。
フードを取った少女の顔立ちは、どこかフィリウス・ゼクトを連想させる。まるでゼクトが長髪になったかのような面持ちだ。
「ああ、良いぜ。俺もそろそろ聞きたいとこだったしな」
「ふむ、まずは……そうだな」
沢山話す事柄があるのか、何から話すか悩む少女。
そして、悩んだ末、予想の斜め上をいった。
「お前の兄――波旬と言うものについて語り聞こう」
(∴)
「――と言う訳で、藤井君を探してきてほしい」
ペラペラ述べた後……青山詠春は、メルクリウスにそう言った。
一通り、今までの惨事を述べ、これから元老議員の元に行くのだが、同じメンバーの消息を確認しておきたいのだ。
メルクリウスは多少悩んだ後、
「承知しよう」
とだけ言い、メルクリウスは藤井蓮を探しに行った。
詠春は踵を返し、
「……つかめん男だな。まるで霧か何かに話しかけているような、滑稽な姿を想像してしまう」
何て思った。
しかし、この命が後々、藤井蓮を修羅場へと変える。
(∴)
時系列的に、エヴァンジェリンVS藤井蓮が終結した別荘。外の世界ではナギとアリカ姫が襲撃された辺り。
破壊された建物は魔法により直ぐに修復され、現在は晩飯の時間。
二人は無傷の状態で、食事をしている。
「お兄ちゃんはあれだな。優しすぎるな」
「は? 何の話だ?」
「とぼけるか。模擬戦の中、お兄ちゃんは私に危害が及ばぬよう、配慮しながら戦っていただろ?」
「誤謬に等しい間違いだな。吸血鬼相手にそんな配慮できる訳がないだろ」
吸血鬼相手に手を抜くに等しい戦いぶりを出来るなんて、かなりの実力者でない限り不可能だ。
しかし――
「しかしだ。事実、お兄ちゃんは私に傷一つ付けていないぞ。あの激戦の中、私と拮抗した戦いの中で、その行為は神業と同等の所業だ」
「買い被りすぎだ。俺はそこまで強くないし、相手を配慮するほど器用でもない」
「そうか、私の目にはそうは映らなかったが」
エヴァンジェリンは脇に置いていた、グラスに入った赤ワインを飲みながら、
(それに、お兄ちゃんめ、まだ私に何か力を隠していたっぽいしな)
なんて考察をした。
(∴)
時系列的にメルクリウスが詠春から藤井蓮を探し出す任を請け負った時、
彼は既に藤井蓮の居場所を把握していた。
だが特に手を出す必要はなかったため、詮索も何もしなかった。故に、藤井蓮の居場所は知っているが、そこに自分を憎む相手がいるとは知らない。
しかし今回は正式に頼まれたため、仕方なしに藤井蓮のもとへ行くこととなった。
「成程、我が息子は随分と面白い場所にいるようだ」
こうして、近々メルクリウスとエヴァンジェリンが対峙することは言うまでもなかった。