今回は、伸太郎と凛香中心の話です。
最近出番のなかった殺せんせーも少しでてます。
ではではどうぞー
追記
8/24
誤字脱字訂正しました。
すみません。
・・・ー
これは、とある少年のお話。
あるところに、頭の良い赤ん坊が産まれた。
両親は赤ん坊に期待し、赤ん坊もそれに応えるように、どんどん賢くなっていった。
赤ん坊は少年になり、1人アメリカで訓練を受けるようになる。
賢い少年は、いつからか皆の『期待』を背負うようになった。
そんなある日、少年は初めて人を殺した。
恐怖で追い詰められたちっぽけな少年は、引き金を引いた。
返り血で体を赤く染めた少年は、その小さな背中には大きすぎる『罪』を背負う事になる。
必死に心を殺し続ける毎日を送っていた孤独な暗殺者は、1人の少女に出会う。
『赤』が似合うその少女は、冷え切った心を、癒してくれた。
少女だけが、少年の『
だがその少女は、死んでしまった。
少年が殺してしまったのだ。
そして少年は壊れてしまった。
だから少年は、『自分』を殺した。
・・・もう傷つかなくていいように。
・・・『罪』の意識に押しつぶされないように。
少年は・・・『もう1人の自分』を作った。
そして今日もーーは笑う。
『人殺し』という快楽にのめり込みながら。
・・・それでも少年は、『自分』に抗い続けた。
否定も、肯定も、納得も、理解も、信用さえもできない。
そんな『もう1人の自分』に。
ー・・・
***
放課後。
旧校舎裏で、対峙する2つの影があった。
片方は、黒髪の少年・・・如月伸太郎。
もう片方は、ウェーブがかったセミロングの髪を下で二つに結んだ少女、速水凛香だった。
普段感情を表情に出さない彼女だが、今は悔しさに顔を歪め伸太郎を見据えている。
そんな彼女に対し、伸太郎は退屈そうに見返していた。
「で、話って?」
本当につまらなそうに問う伸太郎。
カルマとの件もあって、幾分か和らいだところもあるが、それでもクラスメイトとの壁が消えたわけでもなかった。
正確には、壁を作ってるのは伸太郎の方で、E組の生徒は伸太郎との距離を縮めようとしている。
毎日の挨拶はもちろん、中休みは誰かが絶対話しかけて、昼休みはご飯を一緒に食べようとしたり、放課後も一緒に帰ったり。
そんな皆の努力を、速水は知っていた。
だからこそ、聞きたいことがあった。
・・・伝えたい事があった。
「ねえ、如月はなんでE組に来たの?」
「別に理由なんてないけど」
「・・・だったらなんで、A組に行かなかったの?」
伸太郎の頭脳なら、余裕でA組にいけただろう。
「生憎、学園長の教育方針に共感できなくてな。それに、どうせ不登校でE組行きになるなら、どっちだって変わんねーだろ」
「その前提がまずおかしいって言ってるの。・・・大体、学校に通う気がないなら、ここに来る理由もないじゃない」
そこまで言われて、伸太郎は少し黙った。
そして諦めたように息を吐く。
「・・・例えばさ。自分独りでは抱えきれない『罪』があったとする。その時お前ならどうする?誰かに頼って一緒に背負ってもらうか?それとも、そのまま独りで抱え込んで自滅するか?」
「・・・たぶん、私なら後者でしょうね。・・・人を頼るなんてこと、私にはできない」
伸太郎の問いに、少し間をおいてから、彼女は答えた。
ほんとに正直に、強がりも理想も希望論も捨てて、本当に正直に。
真っ正面から、彼女は伸太郎の問いに答えた。
きっとそうすることが、本当の彼の心と向き合える一番の方法だと思っているから。
そんな彼女に対し、伸太郎は続ける。
「でも、それでも、捨てきれないものがあったとしたら?背負い込む勇気がなかったとしたら?」
「・・・それは・・」
速水はここで言葉に詰まった。
伸太郎の瞳が、悲しそうに揺れていたのだ。
伸太郎の瞳が、赤く灯り始める。
そう、出会ったときと同じ、鮮やかな『紅色』。
その『紅色』は、絶望的な悲しみに彩られていた。。
「どちらも救いにはならない。ならどうすればいいか・・・」
目の前の彼は本当に伸太郎なのか、疑いたくなるくらいに、違った。
だがその疑いは、皮肉にも当たっていた。
・・・かつて少年は、壊れた心を補うために、もう一つの人格を作った。
《それ》は、どこまでも強く、どこまでも残酷で、どこまでも非情な、『もう1人の少年』。
どこまでも弱く、どこまでも優しくて、どこまでも親切な、壊れてしまった『本当の少年』が、その『罪』の大きさから逃げ出したためにできたモノ。
・・・独りの少年が、最後に縋った
「押しつけたんだよ、全部。もう傷つかなくていいように。そんな『自分』を作って、それに全部押し付けた」
目の前の彼は歪な笑みを浮かべる。
「俺は・・『本当の自分』を殺したんだ」
『罪』に押しつぶされ、人を殺すことが出来なくなった暗殺者。
だが彼には、守るものがあった。
・・・どうしても、守らなければならない人がいる。
そんな不殺の暗殺者が選んだのは、自分をとことん追い詰めるものだった。
ーそれでも構わなかった。
大事な人を今度こそ守り抜くために、彼は《その道》を選んだのだ。
一見して速水の問いに答えていないように思える伸太郎の言葉だったが、速水はなんとなくわかった。
彼の言いたいことが。
彼の・・・本心が。
ほんの少しだけ、見えた気がした。
そして彼女は言う。
それらをすべて踏まえた上で、言葉を紡いだ。
「・・・あんたの過去に何があったのかとか、このクラスに来た理由とか、教えてくれなくたって構わない。無理につきあおうとしなくてもいい。・・・でも、皆はあんたと仲良くなりたいって思ってることだけ、信じてくれない?」
「・・・俺は、部外者だ」
「そんな訳ない。暗殺に参加しようがしまいが、あんたはE組の生徒でしょ?」
「・・・」
「だから少しでも良い。皆の気持ちをわかってあげて」
「・・・」
「話はこれだけ。ごめん、引き止めて」
速水はそう言うと、伸太郎に背を向け去って行った。
***
「・・・いつまで見てんだアンタ」
速水が去ってしばらくして、伸太郎は物陰に隠れていた超生物にそう言った。
「にゅやっ!?気づいていたのですか!?」
「いやバレバレだから」
どうやら本気で隠れていたつもりらしい。
それにはさすがの伸太郎も、苦笑せざる負えなかった。
そんな伸太郎に、殺せんせーは少し真面目な顔で、言った。
「如月君。君が私を殺すために送られて来た暗殺者であることは、烏間先生から聞いています」
「なんだ。そーゆうの筒抜けなのな」
「その上で私は聞いてるのです。『暗殺に参加する気はないのか』と」
殺せんせーの聞いている意味は、伸太郎も分かっていた。
要するにそれは、
「・・・俺は参加しねーよ。参加するってことは、俺の暗殺にあいつらを巻き込んでしまうってことなんだから」
もうこれ以上話す気はないと言うように、伸太郎は背を向け歩き出す。
そんな伸太郎に、超生物はこんな言葉をかけた。
「・・・独りでは何もできませんよ、如月君」
なぜかその言葉は、伸太郎の胸に、深く突き刺さった。
-to be continued-
最後まで読んでくださりありがとうございました!
伸太郎の思いの鱗片が、少しだけ明らかになる今回の回。
いかがでしたでしょうか?
感想をくださるとすごい嬉しいです。
ではまた、次回の話で。
ありがとうございました!