記憶喪失な雪風と勇者王(改訂中)   作:蒼妃

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最新作のスパロボにガオガイガーが登場すると聞いて書き上げました。


第1章 夢幻島のGGG
序章 第1話


 

 

青い空に、白い雲。そして、何処までも続く青い大海原。

気が付くと、私はそんな光景を眺めながら海の上を漂っていました。

見渡す限り周りに島はなく、どこまでも広大な青い海が広がっています。

 

 

「……どこでしょう、ここは?」

 

 

どうして、こんな場所に居るのか、まったく分かりません。

どこから来て、何のためにここまで来たのか……私には、わかりません。

 

 

「それよりも……私は誰でしょうか?」

 

 

海面に映るのは、あどけない顔立ち。

その顔が私の顔だと言うのは、分かります。名前もちゃんと覚えています。

でも……わたしが――雪風が、どういう性格だったのか、どういう人生を歩んできたのか。それがまったく思い出せません。

 

 

「はて? そういえば、どうして海の上に立てるのでしょう?」

 

 

道具を使わずに海の上に立てないのは、常識です。

ですが、わたしには、船の舵のようなパーツが付いたブーツだけ。

とても海に浮かぶような装備じゃありません。

 

 

「むむむ……謎が増えました。」

 

 

背中に背負っているモノと言い、首からぶら下げてるモノと言い、分からないことが多いです。一体、記憶を失う前のわたしは、何をしていたのでしょう?

 

 

「う~それにしても、お腹が空きました……」

 

 

それはそうと、さっきからお腹の虫がグーグーと鳴いています。

でも、手元に食べ物はありません。あるのは、武装一式とボロボロになった地図だけ。

しかも、地図は長い間水に浸かっていたせいか、文字がにじんで読めません。

 

 

「ううっ、どうしましょう……」

 

 

―――ちょん、ちょん―――

 

 

「んっ ? 」

 

 

どうしようか悩んでいると、頬を誰かに突かれました。

顔だけを向けると、わたしの肩に小人さんが立っていました。

 

 

「えっと……どなたですか ? 」

 

 

小人さんに聞いても、小人さんは何も喋りません。

でも、言いたいことは何となく伝わってきました。

 

この小人さんは、艤装妖精と呼ばれる妖精でわたしが背負ってるモノ――艤装って言うらしいです。――に宿っているそうです。その役目はわたしの補助だそうです。

 

 

「妖精さん。海を滑る方法、教えてくれませんか ? ――― ふむふむ、やってみます。」

 

少し不安ですが、ここは進むしかありません。

教えてもらった通りに頭の中でゆっくりと海面を滑るわたしをイメージしながら、重心を少し前にして……。

 

 

「おっ? おお~良い感じです!!」

 

 

海面を滑るように前進するわたしの身体。

頭では覚えてなくても、身体の方はきちんと覚えているみたいです。

これなら、もう少しスピードを出しても大丈夫かもしれません。

 

 

「よし。全速前進です!!」

 

 

飢え死にする前に、食糧見つけますよ~!!

 

 

■    ■    ■    ■    ■

 

 

「う~ん……島は増えてきましたが、どれも小島ばかりですね。」

 

 

かれこれ、数時間は航行していますが、見えるのは小島ばかりです。

できれば、人が住んでいそうな島が望ましいのですが……サバイバルの経験なんてありませんし。でも、高望みし過ぎですかね?

 

 

「ん?」

 

 

人が住んでいそうな島を探していると、海上を動く物体が目に入りました。

一瞬、クジラかと思いましたが、目を凝らすと、全然違うことがわかりました。

 

緑色に光る眼、不揃いで大きな歯、太陽光を反射して黒光りする身体。

そして、わたしの本能が言っています。あれは倒すべき敵だ、と。

そんな悠長なことをしていると、クジラのような敵に見つかりました。

 

 

「オオオオオッ――――!!」

 

 

「見つかってしまいました!!」

 

 

あたしを見つけた敵は、一直線に向かってきます。

道中で妖精さんに身に付けた武装の使い方を教えてもらったので、問題なく扱えます。

弾薬節約のため、実際に撃ってはいませんが……

 

 

「……追ってこられるのも面倒ですし、ここで倒しましょう!!」

 

 

首から掛けてある武器――12.7cm連装砲を掴み、その照準を敵に向けます。

後は、トリガーを引けば、弾が発射されるんですが、どれくらいの弾が残っているのか、わたしには分かりません。つまり、あまり無駄撃ちはできません。

確実に当てられる、回避が落ち着かない距離まで引き付けて……

 

 

「撃ちます!!」

 

 

突進してくる敵に向かって、トリガーを引きます。

砲口から飛び出た砲弾は、無事にヒットすると同時に爆発を引き起こします。

念を入れて、砲弾を4発連続で叩きこみますが、黒い煙に敵の姿が隠れてしまいました。でも、さすがにこれだけ叩きこめば、敵も……

 

 

「オオオオオッ――――!!」

 

 

「ふえっ?」

 

 

黒い煙から出てきたのは、倒したと高を括っていた敵。顔の部分に凹みが出来てるから、まったく効かなかった訳じゃないけど、効果が薄かったみたいですね。

そして、明らかに怒ってます。

 

 

「ギギ、ギギギ……」

 

 

「?」

 

 

何やら奇妙な音を鳴らす敵。様子を窺ってると、口の中から出てきたのは……一本の砲塔。その照準は、当然ながらわたしに向けられています。

それに気付いたわたしは、すぐに射線上から離れます。

 

砲弾が発射される音が聞こえたのは、その直後でした。

もう少し回避行動が遅れていたら、あの砲弾が直撃していたかもしれません。

 

 

「ギ、ギギ……」

 

 

敵が再びわたしに照準を向けます。ですが、それを逆手に取ります。

トリガーを引き、再び放たれる砲弾。今回の目標は、敵の身体……ではなく、わたしに向けられる砲塔の口。

撃った砲弾は砲塔の内部に入って、その奥で大爆発を起こします。

多分、砲塔の奥にある弾薬庫に引火したのでしょう。

 

 

「グオ、オオオオ……」

 

 

「やりました、か……?」

 

 

流石に、外皮が頑丈でも内部からなら、と思っての行動ですが、効果抜群のようですね。外したら、わたしの方が大けがしてたかもしれませんが、上手く行って良かったです。

 

 

「ふ~……無事に終わって良かったです。」

 

 

 

―――ぐ~―――

 

 

 

ああ、安心したら空腹感がまた……そういえば、食べ物を探してる途中でした。

動いたせいか、さっきよりも空腹感が増しているような気がします。

これは本気で探さないと、飢え死にすることになりそうです。

 

 

「それにしても、何なんでしょうか? この生き物は」

 

 

口から砲塔を生やしたり、鋼鉄の外皮を持ってたり、普通の生き物でないのは分かります。ついでに、食べるのには向いていない、っていうことも……。

う~ん……生物的な部分もありますから、生物兵器と言ったところでしょうか?

取り合えず、敵というのは分かりますが。

 

 

「妖精さんは何か知っていますか ? 」

 

 

わたしの質問に妖精さんはコクンと頷きました。

ふむふむ……あの生き物は“深海棲艦”という生き物で、今は海の大部分を支配していると。つまり、さっき倒したのと同じような奴が一杯居る訳ですか……。

 

 

 

 

―――ぐ~―――

 

 

 

 

「それよりも、一刻も早く食糧を見つけないと……できれば、出くわしたくないですね。」

 

 

今回の場合は1体だけでしたが、複数で襲われると危険ですからね。

一刻も早く、食べ物と安全な休憩場所を見つけないと……。

 

 

「うーん……一先ずあの島で休みましょうか。」

 

 

さすがに海の上をずっと進んでいるのは疲れました。

島で休んで、食べ物も確保しましょう。何か果物ぐらいは実ってる筈です。

できれば、弾の補充もしたいですが……。

 

 

「さすがに無理ですよね~」

 

 

でも、取り合えずの目標は空腹を何とかすることです!!

その後のことは、それから考えましょう。

 

 

「そこの駆逐艦、止まりなさい。」

 

 

「ふえ?」

 

 

出発しようとしたら、呼び止められてしまいました。

でも、周囲に私以外の人影はなかった筈なのですが……

 

 

「貴女、どこの所属の艦娘?」

 

 

「え、えっと……?」

 

 

私に声を掛けて来たのは、少し年上ぐらいの女の子でした。

少し茶色みが掛った黒髪に茶色の瞳。身長は私よりも少し高いです。

 

 

「此処は鎮守府も基地も何もない海域よ。艦隊から逸れたの ? 」

 

 

「えっと、その……雪風にも分からないです。気が付いたら、海の上に居ましたから」

 

 

「じゃあ、所属の鎮守府は ? 」

 

 

「すみません、それも分からないです。」

 

 

「……なるほど、記憶喪失の艦娘って訳ね。

 

 

「あの、艦娘って、何ですか?」

 

 

「……えっ?」

 

 

私の一言で、この場の空気が凍りつきました。

そして、そんな「何で知らないの?」みたいな視線を向けないでください。本当に分からないんです。いや、覚えてないっていう方が正しいのかもしれませんが。

 

 

「えっと……本当に分からないの?」

 

 

「はい。というより、雪風は自分の名前以外何も覚えていないんです。」

 

 

「それは……重症ね。」

 

 

そう言って、黒髪の女の子は何やら考え込んでしまいました。

やがて、インカムで何処かに連絡を取り始めましたが、生憎と話の内容を聞き取ることはできません。

 

 

「はい、了解しました。火麻参謀、回収お願いします。」

 

 

「あの……どうかしましたか?」

 

 

「貴女のことを私の基地に伝えただけですよ。すぐに迎えが来ますから」

 

 

「そうですか。それよりも、何か食べ物持ってませんか? 雪風、お腹が減って死にそうです……」

 

 

初対面の人にこんなお願いをするのは恥ずかしいですが、この際仕方がないです。

記憶が元に戻らないまま死ぬのは真っ平ごめんです。それも死因が空腹だなんて……

 

 

「ええ、良いわよ。―――っと、来たわよ。」

 

 

空を見上げると、白い雲を突き抜けて巨大な飛行船な降りてきました。

灰色の船体には緑色の紋章があしらわれていて、その全長はとんでもなく長いです。

迎えにこんな巨大なモノを使うなんて、どれくらい大きな組織なんでしょうか。

 

 

「高速射出甲板母艦、タケミカズチ。私が所属する基地が保有する飛行母艦です。

 そして、私はGGG長官秘書兼海上機動部隊特別隊員、大鳳よ。」

 

 

 

 

 

 

 




2016.3.27 改訂。
      三段飛行甲板空母からオリジナルのディビジョン艦に。
     

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