記憶喪失な雪風と勇者王(改訂中) 作:蒼妃
彼是、2カ月弱ぶりの更新になってしまい、申し訳ありませんでした。
ちょっと……いや、かなり現実世界がドタバタしていたので更新する余力がなく、こんなにも間隔が開いてしまいました。
謝罪文はこれくらいにして、本編をどぞ
Another Side
――GGGベイタワー基地――
「そろそろ、例の作戦が行われている頃だな。」
大鳳が淹れたコーヒーを飲みながら、大河長官は時計を確認し、呟いた。
「おお、もうそんな時間か。」
「あんなごり押しの作戦、上手く行くのかねぇ……」
「成功する確率は極めて低いでしょう。」
現在、GGGベイタワー基地が存在する夢幻島周辺の海域は深海棲艦の出現もなく、メインオーダールームの面々は少しばかり暇を持て余していた。
そんな彼らの話題に挙がるのは、大本営が進めている大規模な反攻作戦のことだ。
今頃、日本国の防衛を担っている鎮守府の戦力のほとんどは深海棲艦と熾烈な戦闘を繰り広げていることだろう。
「作戦の行方も気になるが……」
「イムヤの占いのことか ? 」
火麻の言葉に大河長官は頷く。
「かつての大規模襲撃の時、我々は辛うじて深海棲艦を退けることができた。
もし、あの占いが実現した場合、島を守り抜くことはできるのだろうか……」
「大丈夫ですよ、長官 !! あの子たちは、あの時よりも強くなってますから !! 」
「ふっ……そうだな。」
命の前向きな言葉に長官を受け、それ以上考えるのを止めた。
「猿頭寺くん、陽炎くんと通信を繋いでくれ。」
「はい。」
手元のコンピューターを操作し、秘密裏に作戦に同行している陽炎と通信を繋げる。
しかし、メインモニターにはノイズが生じているだけで陽炎の姿が映らない。
それだけではなく、陽炎からの音声もない。
「機材トラブルか ? 」
「いえ、これは……通信が妨害されています !! 」
「向こうで何かあったのか……ボルフォッグもついてるし、大丈夫だとは思うが」
「念のためだ。救援の準備を……」
そう指示を出そうとした刹那、メインオーダールームにアラートが鳴り響いた。
同時にメインスクリーンに艤装を纏った大鳳の姿が映し出される。
「大鳳くん、何かあったのか ? 」
『これを見てください !! 』
画面が切り替わり、スクリーンに大海原の様子が映し出される。
しかし、その海に存在しているモノを確認した瞬間、全員が絶句した。
海上に居たのは、深海棲艦の大軍。それも
「Oh, NO !! 少なくとも100体は居マース !! 」
「な、なんという数だ !! あの時よりも遥かに多いぞ !! 」
「くっ、占いが当たってしまったか……。
機動部隊全員に伝令 !! 出撃準備が出来次第、随時出撃せよ !! 」
「了解 !! 」
穏やかなムードは一変し、メインオーダールームに緊迫した空気に支配されるのだった。
■ ■ ■ ■ ■ ■
「あらあら、お客さんが一杯ねぇ。」
「荒潮、暢気なことを言ってる場合じゃないわ。」
真っ先に出撃したのは満潮率いる第1艦隊の面々だった。
艦隊内演習を行う直前だったので、弾薬を演習用から実戦用に変更して、すぐに出撃したのだ。
「満潮、どうするの ? 」
「殲滅するに決まってるじゃない。荒潮と大潮は敵の艦載機を。」
「わかったわ~。」「頑張るよー !! 」
「他の奴は私と一緒に敵陣に突っ込むわよ。」
そう言って、満潮は最大戦速で敵に向かっていく。
その後を追って、僚艦の朝潮を含めた3名が敵に向かっていく。
「蹴散らしなさい、ケラウノス !! 」
試製第3世代Gウェポン、ケラウノスから電撃が放たれる。
それを皮切りに深海棲艦の大軍とGGGの生き残りを掛けた海戦が勃発した。
砲弾が、艦載機が飛び交い、海面は爆発の衝撃によって絶えず揺れる。
「敵が……多すぎるっ !! 」
圧倒的に不利なのは、艦娘の方だった。
敵は最前線に駆逐艦、軽巡を配備して、その後ろに戦艦や空母を配備しているので、主力まで攻撃を届かせるのが非常に難しいのだ。
確かにGGGの艦娘は一騎当千の力を持っているが、防御力に関しては駆逐艦と変わらない。
つまり、戦艦や艦載機からの攻撃を受ければ、至近弾でも大破に陥る可能性がある。
そんな砲弾を全て避けつつ、敵の防御陣を破って主力にたどり着くのは、至難の業だ。
「ああっ !! 」
「朝潮 !? 」
「だ、大丈夫……主砲がやられただけよ。」
敵の砲弾を主砲で防御したのか、朝潮の主砲は使い物にならなくなってしまった。
それだけではなく、主砲を装備していた右腕は酷い火傷を負ってしまっている。
『満潮姉~ちょっとまずいことになったわ~』
「こんな時に何 !? 」
『ジェネシックボルトがなくなっちゃった~』
「だったら、さっさと補充してきなさい !! 大潮、ちょっと負担が増えるわ !! 」
『お任せあれ !! ――――って、言いたい所だけど、ちょっとキツイかも』
荒潮の持つボルティングドライバーはアタッチメントを装着して真価を発揮する。
しかも、そのアタッチメントは使い捨てなので、手持ちの分を使いきると一度基地まで戻らないといけないのだ。
『こちら、第2戦隊旗艦阿武隈。これより援護に入ります !! 』
荒潮と入れ替わるように準備を終えた艦娘たちが戦場に集結する。
到着した増援はすぐに戦闘に突入し、深海棲艦を次々と沈めて行く。
艦娘の快進撃が続くかと思いきや、それは一発の砲弾によって終わりを迎えた。
―――ドォォォォンッ!!!!!!――――
爆音と共に立ち上がる水柱がその砲弾の威力を物語っていた。
戦艦ル級や戦艦タ級の主砲とは比べ物にならない威力にその場に居た全員が目を見開く。
そして、その射線上に居たのは……巨獣のような艤装を従えた深海棲艦。
「ナンドデモ……シズメテ……アゲル……」
「戦艦、棲姫……!!」
満潮はその名を呟いた。
その刹那、巨大な艤装から伸びる砲塔が火を噴き、戦艦棲姫も砲撃戦に参加する。
敵が1体増えただけなのに砲撃戦はより苛烈になり、水柱が絶えない。
『うぅ……やられた、ぴょん』
『いたた、睦月もやられたのね』
「大破した奴はすぐに下がりなさい !! 沈むのは許さないわよ !! 」
敵の砲撃を避けたり、時にはケラウノスで迎撃する満潮。
その視線は敵だけではなく、味方の方にも向けられていた。
(祭の後でほとんどの艦娘が揃ってたのが幸いしたわね。少し戦力が減っても防衛戦の維持できる。)
祭の後片付けのため、普段は基地に居ない艦娘も今日は集結していた。
それもあって、多少被害を被っても防衛戦を維持することは可能だ。しかし、このまま被害が増え続ければ、防衛戦は維持できなくなるだろう。
「仕掛けるなら、今っ !! 」
満潮は海面を蹴り、単身敵陣の奥へと突撃する。
敵駆逐艦を踏みつけて、強引に敵の防壁を飛び越えて、ケラウノスを振りあげる。
(狙うのは、戦艦棲姫っ !! )
「クチクカンゴトキガ……ナマイキナ」
「そう余裕をかましてられるのも今のうちよ !! 」
満潮は自信満々にケラウノスを振り下ろす。
今まで数多の深海棲艦を切り裂いて来た戦斧は戦艦棲姫の身体を切り裂く―――かと思いきや、その強固な装甲によって戦斧の刃は止められていた。
「なっ !? 」
「ソンナオモチャデ、ドウニカデキルト ? カタハライタイタイ !! 」
(やばっ)
回避行動に移る暇もなく、艤装から生える巨腕がその華奢な身体に叩きこまれる。
「がはっ」
満潮の身体はまるでボールのように2,3回バウンドしてようやく停止する。
「ソロソロ、シズメルカ。」
戦艦棲姫がそう呟くと、海面が揺れて増援が現れる。
空母ヲ級が5体。拮抗している制空権争いを崩すには十分すぎる戦力だった。
「ヤレ」
戦艦棲姫の号令と同時に空母ヲ級は艦載機を放つ。
大鳳、龍鳳、大潮が奮闘するが、すべての艦載機を撃墜することはできず、十数機の艦載機が防衛戦を越えて、夢幻島へ向かっていくのだった。
■ ■ ■ ■ ■
雪風Side
「そんな……満潮さんが」
満潮さんがやられる瞬間は、比較的後方に居る私たちにも見えました。
GGG最強を称される満潮さんがやられる姿は、私たちの士気に影響を与えるには十分すぎる衝撃でした。
「雪風 !! 呆けている場合じゃない !! 」
「はっ !! 」
そうでした。この防衛戦を突破されたら、あの島は……
「そんなっ !! 」
気を引き締め直した瞬間、龍鳳さんが声をもらしました。
敵味方の艦載機が飛び交う空を見上げると、十数機の敵艦載機が防衛戦を突破しました。
しかも、お腹の下には爆弾を抱えています。
「弾種選択、三式弾 !! 」
「初霜 !! すぐに島の防衛に !! 」
「はい !! 」
重砲形態のG-サイズから放たれる戦艦用の三式弾。
駆逐艦用の三式弾よりも広域の艦載機を撃墜できる代物ですが、それを使っても防衛戦を突破した艦載機をすべて撃墜することはできませんでした。
「間に合わない…… !! 」
「誰か……誰か居ないのか !? 」
この付近にはGGGの全戦力が揃っています。
つまり、現状に対処できるのは補給に戻った荒潮さんか、大破中破して帰投中の味方だけ。
あれだけの艦載機が居れば、あの綺麗な町を火の海にするには十分でしょう。
「お願いします、誰か……雪風たちに力を貸してください」
島の人たちが悲しむ姿を、雪風は見たくありません。
あの人たちにはずっと笑顔で居て欲しいから、それが雪風の力になるから
だから……だからっ !!
誰か、島の人たちを守ってください……!!
―――シェニブールの雨 !! ―――
―――プライムローズの月 !! ―――
―――ティガオ4 !! ―――
―――ティガオ4、ヴァン・レイ !! ―――
―――チェストスリラー !! ―――
―――チェストウォーマー !! ―――
その光景を誰が予想できたでしょうか。
島のすぐ近くから放たれた幾条の光は、艦載機を撃ち落としてみせました。
そして、島の危機を救ってくれたのは6体のロボットでした。
「「「「「「最強勇者ロボ軍団、ここに復活 !! 」」」」」」