記憶喪失な雪風と勇者王(改訂中)   作:蒼妃

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連投だよ~


第6話

戦艦棲姫が正規空母を召喚した直後。

その光景は、メインオーダールームでも確認することができた。

 

 

「いかん !! いくらの3人でも、あれだけの数は対処できん !! 」

 

 

「くっ……荒潮くんの補給はまだか !! 」

 

 

「少なくとも10分は掛かります !! 」

 

 

命の報告に長官は唇を噛む。

荒潮が使うボルティングドライバーのアタッチメントは、生成に時間が掛かる。

本家のジェネシックボルトなら瞬時に作り出すことができるのだが、サイズが合わないため、Gウェポン版には使えない。

 

 

「くそっ !! 」

 

 

「待て、凱 !! 何をするつもりだ !? 」

 

 

「ジェネシックで出る !! 」

 

 

「無茶を言うな !! ガジェットガオーの動力源であるGストーンは今はないんだぞ !? 」

 

 

「くっ !! 」

 

 

凱は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、足を止めた。

“ジェネシック”というのは、GGGの切り札であり、かつて1つの星を救った伝説を持つ。

しかし、それの動力源である特殊なGストーンは大潮のガジェットフェザーに使用しているため、GGGはその切り札を使うことができない。

 

 

「我々に止める手立てはないのか……」

 

 

その時、メインオーダールームに緊急事態を報せるアラームが鳴り響く。

 

 

「どうした !? 」

 

 

「ひ、非常用のミラーカタパルトが勝手に動いています !! 」

 

  

「何だと !? 」

 

 

アラームの原因は、GGGベイタワー基地に増設されたミラーカタパルトが勝手に発進シークエンスに入っていることだった。

そのミラーカタパルトは、敵が基地のすぐ近くまで迫ってきた場合を想定して、迅速に対処できるように設けられた物である。機能は、三段飛行甲板空母に搭載されている物と大差なく、違いと言えば垂直発射式になっていることぐらいだ。

 

 

『こちら、ソール。メインオーダールーム、聞こえる ? 』

 

 

「どうしたんだ、ソールくん。こちらは少々立て込んでいるんだ」

 

 

『知ってる。だから、事後承諾になるけど、とびっきりの援軍を出したの』

 

 

そう言いながら、ソールは微笑んだ。

 

 

「援軍 ? 」

 

 

『まあ、見てもらった方が早いわ。』

 

 

すると、メインスクリーンが切り替わり、ミラーカタパルトの射出口が映し出される。

そして、映し出された光景にメインオーダールームは驚きと喜びに包まれた。

 

 

「戻ってきたか、勇者たちよ !! 」

 

 

 

 

ミラーカタパルトの射出口付近には、合計で6体のロボットが集結していた。

そして、その周辺には撃ち落とした艦載機の残骸が散乱している。

 

 

 

「へへ、間一髪だったぜ。」

 

 

「ぼさっとするな、炎竜。戦闘はまだ終わっていないぞ。」

 

 

GGG最古参になる勇者ロボット。その名は、氷竜と炎竜。

 

 

「ちっせぇ敵だな。オービットベースに侵入してきた原種を思い出すぜ。」

 

 

「敵の実力は未知数だ。気を抜くなよ、雷龍。」

 

 

氷竜、炎竜の2体をモデルにした兄弟機。その名は、風龍と雷龍。

 

 

「この位置からだとあの子たちも巻き込んじゃうかな ? 」

 

 

「そうね。島の防衛に専念するべきだわ。」

 

 

女性をモデルに製作された勇者ロボット。その名は、光竜と闇竜。

 

 

「マイクも居るもんネー!!」

 

 

今度は海中からアメリカンカラーのロボットが現れる。

 

 

『よし、マイク !! 久々にご機嫌のサウンドを聞かしておくれ !! 』

 

 

「オッケーだもんね !! システム・チェンジ !! 」

 

 

円盤型の飛行ユニット―バリバリーンから分離した丸っこいボディが変形し、青と赤を基調にした人型のロボットへ変わり、高らかに名乗る。

 

 

「マイクサウンダース13世 !! 」

 

 

人型ロボットへと変形したマイクは表裏反転したバリバリーンに着地。

そして、そのボディに秘められた力の一端を解放する。

 

 

「カモン、ロックンロール !! ディスクP、セットオン !! ギラギラーンVV !! 」

 

 

バリバリーンから射出されたディスクを胸部の機構に装填し、ギター型の武装を召喚。

ボディに備え付けられたスピーカーとギター型の武装―ギラギラーンVVから軽快なミュージックが発せられる。

 

 

________________________________________

 

 

マイクから発せられるミュージックは夢幻島周辺の戦闘海域全域に届いていた。

戦場に響き渡る軽快なミュージックに敵味方共に動きを止め、砲弾の雨が一時的に止んだ。

 

 

「何でしょう、この音は ? 」

 

 

「なんだか……身体中から力が湧いてきます !! 」

 

 

いち早く影響を受けたのはサウンドの発信源の近くに居た雪風と初霜の二人だった。

戦闘で疲労が蓄積しているにも関わらず、力が湧き上がり、疲労を打ち消す。

 

 

「これは……霊水晶(セフィラ)が活性化してる ? 」

 

 

『察しが良いのう、響。あのロボット、マイクサウンダース13世から放たれるサウンドは君たちの霊水晶(セフィラ)を活性化させる働きがあるんじゃよ。』

 

 

マイクサウンダース13世から発せられるディスクPのサウンドウェーブ。

その正体はGストーン(正確にはGストーンを用いたエネルギー機関)の働きを活性化させるエネルギーウェーブである。その効果は、霊子力発生機関である霊水晶(セフィラ)にも及び、その働きを活性化させるのだ。

 

 

「なるほど……なら、あのロボットたちは味方だと考えていいのかな ? 」

 

 

『説明が遅れてすまないね。あのロボットたちは正真正銘、GGGの味方だ。

 島の防衛は彼らに任せて、君たちは深海棲艦の対処に専念して欲しい。』

 

 

「了解した。これから第7戦隊も前に出るよ。

 雪風、潮、初霜は私と一緒に前線へ。龍鳳は大鳳さんと合流して」

 

 

「「「「了解 !! 」」」」

 

 

雪風はG-サイズを大鎌形態へ変形させ、響たちと共に前線へ突入する。

 

 

「切り裂け !! 」

 

 

「当たって !! 」

 

 

鋭い大鎌が一振りで敵駆逐艦を大破に追い込み、初霜の砲撃が轟沈させる。

ディスクPから放たれるミュージックは戦場の艦娘に活力を与え、艦娘側の方が徐々に優勢になっていく。

 

 

「みんな、雷撃戦を仕掛けるよ。」

 

 

「「「了解 !! 」」」

 

 

駆逐艦の数が少なくなると、響は1つの指令を出す。

4人が一列に並び、魚雷発射管を敵艦隊へ向ける。

 

 

「統制雷撃、開始。」

 

 

「「「てぇっ !! 」」」

 

 

響の合図と同時に4人の魚雷発射管から酸素魚雷が発射される。

駆逐艦最強の威力を誇る魚雷は海中を直進し、重巡クラス数隻を沈め、戦艦クラス数隻に大ダメージを与えた。

 

 

「ジェイクォース !! 」

 

 

さらに残った戦艦クラスの中でも強固な戦艦タ級flagshipに向けて不死鳥が羽ばたく。

魚雷に勝る威力を誇るJクォースはその体を貫き、響の元に舞い戻る。

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

 

「大丈夫ですか、響ちゃん ? 」

 

 

「うん。霊水晶《セフィラ》が活性化してる今なら、もう一発ぐらい撃てるよ。」

 

 

「戦艦タ級はもう残っていないけど………」

 

 

「あいつがまだ残ってるね。」

 

 

響と潮の視線の先に居るの敵の旗艦、戦艦棲姫。

その火力や装甲はつい先ほど倒した戦艦タ級flagshipを超えており、Gウェポンという強力な武装を持つGGGの艦娘でも易々と倒すことはできない相手だ。

 

 

「響ちゃんのJクォースで倒せないの ? 」

 

 

「難しいと思う。シミュレーションでも、倒せたことはなかったし……」

 

 

「何か方法はないんですか ? 」

 

 

魚雷の再装填を終えた初霜と雪風が帰還し、響に問う。

 

 

「我らが総旗艦なら倒せると思うけど、彼女はさっきの攻撃で……えっ !? 」

 

 

「あ、あの傷でどうやって……」

 

 

響と潮の視線の先には、いくつかの骨が折れてるにも関わらず、戦艦棲姫の前に立つGGG艦娘部隊総旗艦、朝潮型駆逐艦2番艦 満潮の姿があった。

 

 

________________________________________

 

 

「ミミザワリダ……シズメテヤロウ」

 

 

「待ちなさいよ、戦艦棲姫」

 

 

マイクに向けって砲口を向けようとした戦艦棲姫がその動きを止める。

 

 

「シニゾコナイガ……」

 

 

「あいにくと、あれくらいで沈むような軟じゃないわ。」

 

 

そう言いながら満潮は斧を後ろ腰に装着し、戦艦棲姫を睨む。

 

 

「アンタはここで倒すわ。この私がね !! ガジェットツール !! 」

 

 

満潮の両手に黒いナックルガードが装着され、Gストーンが強い光を放つ。

 

 

「ヘル・アンド・ヘブン !! 」

 

 

左手にGストーンのエネルギーが、右手に霊子力が集束する。

満潮の行動に危機感を覚えたのか、戦艦棲姫は巨大な艤装に生えた砲口を彼女に向ける。

「シネェ !! 」と怨嗟の声と共に主砲が火を噴くが…………

 

 

「残念だったわね~」

 

 

満潮と戦艦棲姫の間に割り込んだ荒潮が戦艦棲姫の砲弾を防いでいた。

ボルティングドライバーのアタッチメントの1つ、プロテクトボルトの力は空間湾曲。

その余波によって砲弾の方向を逸らして、満潮を守り切ったのだ。

 

「ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……はあっ !! 」

 

 

両手を組み合わせ、霊子力とGストーンのエネルギーを融合。

同時に電磁トルネードが発生し、戦艦棲姫の体を拘束する。

 

 

「ウィィィィタァァァァ !!!! 」

 

 

機関をフル稼働し、最大戦速で戦艦棲姫へと突撃する満潮。

その膨大なエネルギーを纏った拳がその身体に突き刺されば、コア諸共ボディは破壊されるだろう。

 

 

「ソウカンタンニ……ヤレルトオモウナ !! 」

 

 

敵の拘束に使われる電磁トルネードは強力で、並みの深海棲艦にその拘束を解くことはできない。しかし、戦艦棲姫は姫級と呼ばれる上位個体であり、その力は並みの深海棲艦を凌ぐ。

まったく身動きが取れない筈の拘束をどうにか振り解き、身体を反転される。

その結果、満潮のヘル・アンド・ヘブンは戦艦棲姫の艤装の方に突き刺さり、内部から大爆発を引き起こした。

 

 

「はぁ、はぁ……くそっ、逃げられた。」

 

 

煙が晴れると、そこに戦艦棲姫の姿はどこにもなかった。

艤装を破壊した時に発生した煙に紛れて撤退してしまったようだ。

 

 

「満潮姉、大丈夫……には見えないわね~」

 

 

「かなり無茶をしたからね。正直、動くのも辛いわ。」

 

 

「HEY !! 無事かい、レディたち ? 」

 

 

「アンタは……長官が隠してた秘蔵戦力ね。さっきは助かったわ。」

 

 

「仲間を助けるのは当然のことだぜ。」

 

 

そう言いながらマイクは満潮と荒潮を両手で拾い上げると、スタジオ7を上昇させ、戦域から離れる。

海上の戦闘もほぼ終わり掛けており、残党処理を行っている段階だ。

 

 

「無事に守れた……みたいね。」

 

 

「ええ。轟沈した娘も居ないみたいよ~」

 

 

「最後の一撃、ナイスガッツだったぜ。」

 

 

「ありがと。」

 

 

「おっと、ドクター・雷牙のお出迎えだ。」

 

 

「ご苦労だったな、マイク。荒潮、ストレッチャーに満潮を寝かせるんだ。」

 

 

「は~い」

 

 

荒潮は満潮を御姫様抱っこすると、マイクの手のひらから降りて、雷牙博士が用意したストレッチャーに彼女を寝かせる。

 

 

「マイク、まだいけそうか ? 」

 

 

「もちろんだっぜ !! 」

 

 

そう言うと、マイクは再び大空に飛び上がり、エネルギーウェーブで戦闘海域全域に響かせるのだった。

そして、戦闘が終了したのは、満潮が医務室へ運び込まれた後だった。

 

 

________________________________________

 

 

「ふぅ……なんとか乗り切れたな。」

 

 

「氷竜たちが目覚めてくれたおかげだな。一時はどうなるかと思ったぜ。」

 

 

「だが、こっちの被害も大きいな。」

 

 

そう言って、凱は各戦隊の被害状況を眺める。

確かに深海棲艦の大規模攻撃を凌ぐことはできたが、艦娘たちは大なり小なり傷を負っており、無傷の艦娘の方が少ない。

 

 

「それに、ぶっつけ本番でのディスクPによる霊水晶《セフィラ》の活性化。

 彼女たちの艤装にどんな影響が出てるか分かりません。」

 

 

「万全の状態に戻すのには、かなりの時間がかかりそうだな。」

 

 

「まあ、あれだけの大戦力がやられたんだ。奴さんもすぐには攻めてこないだろ。」

 

 

『メインオーダールーム、聞こえる !? 聞こえるなら返事して !! 』

 

 

勝利の余韻に浸っていると、メインオーダールーム内に切羽詰まったような声が響く。

声の主は、本土から派遣された艦隊をスニーキングしている陽炎だ。

 

 

「陽炎くんか ? 通信が繋がらなかったが、何かあったのか ? 」

 

 

『深海棲艦のせいで通信が妨害されてたのよ。それより、長官の読みが当たったわ。』

 

 

「やはり、陽動だったか……」

 

 

『ええ。艦隊は壊滅して、退路も防がれてる。今は無人島に立て篭もってるわ。

 それから……事後報告になるけど、勝手に救助に入ったわ。』

 

 

「いや、陽炎くんの判断は間違っていない。だが、こちらも小さくない被害を負った。

 救援部隊の派遣には少し時間が掛ってしまう。」

 

 

『了解。それまで、何とか守ってみるわ。それから島の座標も送っておくわ。

 深海棲艦の通信妨害のせいで通信はできないから。』

 

 

それだけ伝えると通信が切断される。

 

 

「どうするんだ ? このまま助けに行くと、俺たちの存在が露見するぜ。」

 

 

「致し方ないだろ。見殺しにすることなどできん。」

 

 

そう言って、大河長官は地下の秘匿区画に通信を繋げる。

通話の相手は、GGGの勇者ロボの修復を行ってくれた協力者であり、艦娘について誰よりも詳しいと自負する少女―ソールである。

 

 

「ソールくん、頼みがある。」

 

 

『無理難題じゃない限り引き受けてるけど……内容は ? 』

 

 

「艤装の整備を翌朝までに終わらせて欲しい。少なくとも2艦隊分は欲しい。」

 

 

『無理とは言わないけど、キツイ内容だね。何か訳ありかい ? 』

 

 

「うむ。以前話した作戦が失敗し、多くの艦娘たちが助けを求めている。

 GGGとしては、彼女たちを見殺しにすることはできん。」

 

 

『……分かった。すぐに行くから、牛山氏とドクター雷牙に声を掛けておいて。』

 

 

「すまないが、頼む。」

 

 

『気にしなくていい。』

 

 

「やれやれ……これから大変そうだ。」

 

 

大河長官はこの後に待ち受けているであろう未来を予想して、小さく呟いた。

 

 




所々、キャラクターの口調がおかしいかも……?
何分、執筆活動から離れてしまっていたので、感覚が分からなくなっています。



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