記憶喪失な雪風と勇者王(改訂中)   作:蒼妃

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Jack_tさん、琥雨さん。このような未熟な作品に8点評価を入れてくださってありがとうございます!!


第4話(中編)

Another Side

 

 

―――久野島周辺海域―――

 

 

久野島周辺海域では、輸送船の護衛を頼まれていたGGGの艦娘たちが深海棲艦の艦隊と戦闘を繰り広げていた。そして、彼女たちの背後には輸送船が撤退の準備を急いでいた。

上空には敵の艦載機がハエのように飛びまわり、すぐ近くまで駆逐級の深海棲艦と重巡級の深海棲艦が迫っている。

 

対して、護衛の艦隊は軽巡洋艦娘を旗艦とする水雷戦隊。

制空権を確保されている上に敵は駆逐艦や軽巡洋艦よりも堅い装甲と高い火力を保有する重巡洋艦で構成されているため、苦戦を強いられるのは自明の理。

 

しかしながら、防衛戦が展開されている久野島周辺海域では、その予想を裏切るような光景が広がっていた。

 

 

「フリージングガン !! 」

 

 

青い銃から放たれる冷線が海面を氷結させ、敵の身動きを止める。

Gウェポンの1つ―フリージングガンを携えるのは、薄い茶色の髪をツインテールにした少女。その名は、白露型駆逐艦三番艦 村雨。

 

 

「切り込み隊長、白露!! 一番に突っ込むよ!!」

 

 

村雨が作り上げた氷の床を1人の艦娘―白露型駆逐艦一番艦、白露が駆ける。

その手に握られているのは、クレーン車のクレーンをそのまま小さくしたような武装だ。

 

 

「ウルテクライフル !! 」

 

 

身動きが取れなくなった重巡リ級eliteに向かって、至近距離からエネルギー弾を連射する白露。

 

 

「これでトドメだよ !! 」

 

 

トドメに虎の子の九三式酸素魚雷を投擲。

戦艦級の主砲に匹敵する炸薬量を誇る魚雷の爆発は、身動きを封じる氷ごと敵艦を沈める。

 

 

「白露、いっちばーん!!」

 

 

「白露姉さん、前に出過ぎです。今回の戦いは防衛戦なんですよ?」

 

 

敵艦を沈めて、テンションが上がっている白露を諌めるのは、ピンク色の髪をポニーテールにした艦娘―白露型駆逐艦五番艦の春雨。

彼女の言う通り、敵を撃滅しても輸送船の方に被害が出てしまうと、この戦いの意味がなくなってしまう。だからこそ、後ろを省みずに前進する姉を諌めたのだが、本人はさほど気にしていない。

 

 

「大丈夫だよー。だって……」

 

 

白露が何か言おうとした時、2人の上空を敵艦載機が通りすぎる。

敵の艦載機は腹の下に抱えた爆弾を撤退中の輸送船に向かって投下する。

しかし、それは船体を貫く前に不可視の力を受けて弾かれてしまった。

 

 

『輸送船の守りは那珂ちゃんにお任せ~♪』

 

 

装着したインカムから聞こえてくるのは、軽快な音楽と陽気な声。

爆弾を弾いた不可視の力の正体は、護衛艦隊の旗艦を務める軽巡洋艦、那珂のGウェポン――ギラギラ―ンVVの力である。

 

 

(―――とは言っても、あんまり一度に来られると厳しいんだよね~)

 

 

那珂は口に出さずに心の中で呟いた。

先ほどはギラギラ―ンVVから放たれる衝撃波によって、爆弾を弾き飛ばすことで輸送船を守った。しかし、衝撃波はそれほど広範囲に放つことはできないので、敵の攻撃を的確に見抜く必要がある。

 

 

(できれば、早く援軍が来て欲しいな~)

 

 

心の中で呟いた瞬間、村雨が声を上げた。

 

 

「2人とも!! 敵機直上!!」

 

 

村雨の声に反応して、空を見上げると同時に敵空母の艦載機が爆弾を投下。

投下された爆弾は一直線に2人へ向かっていくが、その前に熱線が爆弾を破壊する。

 

 

「ふぅ~……危ない所でした。」

 

 

「あ、危なかったぁー。ありがと、春雨」

 

 

「油断しないでください。こっちに空母は居ないんですから。」

 

 

そう言いながら春雨は、赤い熱線銃―メルティングガンで次々に敵の艦載機を落としていく。

 

 

「空母が居ないと、ちょっとキツイわね」

 

 

そう呟きながら駆逐イ級後期型を倒す村雨。

現在、彼女たちが対処しているのはあくまで先遣隊であり、その奥には空母級や戦艦級、さらには姫級の深海棲艦が控えている。敵の旗艦にたどり着くには、敵の艦載機による攻撃を避けつつ、射程範囲内まで近づく必要がある。また、近付けても早急に旗艦を倒さなければ、集中攻撃を浴びることになる。

 

 

「こういう時、私たちだと辛いわね……」

 

 

「でも、やるしかないです!!」

 

 

「だね!!」

 

 

3人は、Gウェポンを握りしめ、敵艦隊に突貫しようとする。

だが、その時。インカムから「その必要はないよ。」という通信が届けられる。

援軍が到着したのはその直後だった。

 

 

「ごめん、遅れた。」

 

 

「遅いわよ、響ちゃん。主力の方は ? 」

 

 

「敵艦隊の背後だよ。ほら、一瞬で戦艦が沈んだよ。」

 

 

そう言って、敵本隊を指差す響。

戦艦級、空母級、姫級の深海棲艦から構成される敵艦隊では、早速火の手が上がっていた。

 

 

「雪風ちゃんと初霜ちゃんは……大丈夫?」

 

 

「「だ、大丈夫です……」」

 

 

盛大に海面に叩きつけられた2人は、顔が叩かれたように赤くなっていた。

 

 

「2人は対空戦闘を。1機も輸送船に近づけたらダメだよ。」

 

 

「「はい!!」」

 

 

「さて、やりますか。」「うん。」

 

 

響と潮は、Gウェポンを構える。

 

 

「潮、行きます!!」

 

 

真っ先に前に出たのは、潮だった。

春雨たちを追い抜いて、重巡ネ級eliteに肉薄する。

そのアルビノのように白い身体にランスを突き刺そうとするが、障壁のようなモノによって防がれてしまう。

 

障壁の正体は艦娘と深海棲艦が持つ霊力フィールド、通称“装甲”。

艦船で言う装甲の役割を果たすそのフィールドは、艦種によって強度が異なる。

重巡ネ級、それもelite個体となれば、その堅さは戦艦級に匹敵する。

駆逐艦娘がその装甲を抜くのは簡単ではないが、それは一般論にすぎない。

 

 

「ストレイトドリル!!」

 

 

潮のGウェポン―ストレイトドリルが回転し、重巡ネ級eliteの装甲を突き破る。

そして、金色の穂先が白い肢体に突き刺さる。

 

 

「―――――ッ!!!!」

 

 

「ごめんなさい。」

 

 

心臓を貫かれた深海棲艦は膝から崩れ落ち、そのまま海中へと沈んでいく。

 

 

「さっすがー♪ でも、一番は譲らないよ!!」

 

 

「もう……夕立姉さんと一緒で言う事聞かないんだから」

 

 

潮に続くように白露、春雨が残った駆逐級や重巡級と戦闘を始める。

 

 

久野島近海の戦いはそろそろ終焉を迎えようとしていた。

 

 

■    ■    ■    ■    ■

 

 

 

「す、すごい……」

 

 

自分たちの先輩に当たる艦娘の戦いぶりに初霜と雪風は驚嘆した。

 

彼女たちの人の姿を活用した戦闘法は、荒々しくも合理的だった。

遠距離からの攻撃で装甲を抜けないなら、至近距離まで近づいて強引に火力を上げる。

もしくは、近接格闘戦用の装備を用いて、強引に装甲を切り裂く。

 

そんな方法で敵と戦いながら、敵を駆逐して行く。

 

 

「凄いでしょ? これが那珂ちゃんたち、GGG海上機動部隊の実力だよ。」

 

 

「えっと……どなたですか?」

 

 

「川内型軽巡洋艦3番艦の那珂ちゃんだよー♪ よろしくね♪」

 

 

茫然としている2人に話しかけてきたのは、お団子頭の少女―那珂だ。

そのオレンジと白を基調にした衣服の裾には、GGGの紋章が刺繍されている他、首からはギターのような武器―ギラギラ―ンVVを掛けている。

 

 

「いや~援軍が間に合ってくれてよかったよ~。

 あのままだと絶対に押し切られたし。―――っと、また来たよ !! 」

 

 

「撃ちます !! 」

 

 

大鳳が撃ち漏らした敵の爆撃機に向かって、対空戦闘用の砲弾を撃ち出す初霜と雪風。

撃ち出された砲弾―駆逐艦用の零式通常弾が破裂し、飛び散った破片が爆撃機の身体に穴を開ける。しかし、撃ち漏らしが存在した。

 

 

「弾種、対空用気化弾。撃てぇ !! 」

 

 

2人が撃ち漏らした爆撃に向かって、那珂が装備した20.3cm連装砲から対空砲弾が放たれる。

放たれた対空砲弾は炸裂と同時に強い爆風を巻き起こし、撃ち漏らした敵の爆撃を薙ぎ払った。

 

 

「危ない危ない。でも、敵の航空攻撃ももう終わりかなぁ ? 」

 

 

「どうしてわかるんですか ? 」

 

 

「那珂ちゃんの偵察機からの情報だよ。

 第1艦隊が空母をサクッとやっつけてくれたみたい。」

 

 

「こんな短時間でですか !? 」

 

 

援軍が到着したのは数分前。つまり、第1艦隊の面々はこの数分間の間に敵の空母を無力化、もしくは撃沈してみせたのだ。

 

 

「まぁ、第1艦隊はそれができるくらいの実力者しか居ないからね。

 おっと。いつの間にかこっちの方も終わってるね。」

 

 

少し話している間に敵の先遣隊は全滅しており、残されたのは敵の本隊から派遣された戦艦級の深海棲艦だけだった。

 

 

■    ■    ■    ■    ■

 

 

「さて、あの大物を頂こうかな。」

 

 

響は、Gウェポンを装備した右腕を上げる。

その先に居るのは、間に合わなかった敵本隊からの援軍――戦艦タ級flagshipだ。

そして、白い籠手のような装備にはめ込まれた宝石に「J」の文字が浮かび上がる。

 

 

「ジェイクォース!!」

 

 

錨状のGウェポンが赤い光と纏うと同時に、射出。

それは、まるで不死鳥のような炎の鳥となり、戦艦タ級flagshipへ向かっていく。

籠められた膨大なエネルギーの恐れをなしたのか、敵は射線上から退避する。

 

 

「無駄だよ。」

 

 

―――が、響が放ったジェイクォースは敵を追尾するように軌道を変える。

 

 

「――――――ッ!!!」

 

 

追い付いた炎の鳥は、敵の装甲を容易く貫き、心臓をも貫く。

心臓を貫かれた戦艦タ級flagshipは断末魔の悲鳴を残して、海に沈んでいった。

 

 

「……やっぱり姫級じゃないと、核が耐えれないか。」

 

 

ジェイクォースが戻ってくると、響の手には黒い結晶が握られていた。

しかし、その結晶はすぐに粉々に砕け散ってしまい、破片は持ち主を追い掛けるように海に沈んでいった。

 

 

「状況終了。先遣隊の方は倒したよ。」

 

 

『こっちも終わったわ。旗艦の装甲空母姫は撃破、私たちは先に帰還するわよ。』

 

 

「了解。ジェイクォースを使ったから、少し疲れたよ。」

 

 

響の必殺技―ジェイクォースは、膨大なエネルギーを消費する。

霊力を使い過ぎた場合は空腹という形で現れるが、ジェイクォースの場合は強い疲労となって現れるのだ。

 

 

『なら、後処理は副艦に任せておきなさい。そのための役職でしょ』

 

 

「そうさせてもらうよ。じゃあ、通信切るよ。」

 

 

満潮からの通信を切り、響は一息入れる。

そして、右腕にある紫色の宝石―Jジュエルをそっ、と撫でる。

 

 

「あの人たちは、今頃何処に居るのかな……」

 

 

響の呟きは、降下してきたタケミカズチのエンジン音でかき消されてしまった。

 




Gウェポン、本格登場。今回登場したGウェポンとそれを持つ艦娘は以下の通りになっています。


白露…フリージングライフル(氷竜の武装)
村雨…フリージングガン(氷竜の武装)
春雨…ミラーシールド+メルティングガン(炎竜の武装)
那珂…ギラギラ―ンVV(マイクの武装)
潮 …ストレイトドリル(ジェネシックの武装)
響 …ジェイクォース(キングジェイダーの武装)


2016/5/15 改訂
なお、明確な描写はありませんが、潮と那珂は改二改装済み。
白露、村雨、春雨、響も改装済みになっています。(響は改二改装を拒んでいるだけで、改二改装できるくらいの練度はある。)



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