記憶喪失な雪風と勇者王(改訂中)   作:蒼妃

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第4話(後編)

Another Side

 

 

駆逐艦、響が率いる第77戦隊が軽巡洋艦、那珂率いる護衛艦隊の援護に入る少し前。

高速射出甲板空母タケミカズチから出撃した第1艦隊は、久野島から10海里程度離れた海域で敵の侵略部隊の主力と戦闘していた。

 

 

「チョコマカト……」

 

 

侵略部隊のリーダー、装甲空母姫は目の前の光景を忌々しそうに見つめる。

敵は駆逐艦のみ。対して、自分たちは、深海棲艦の上位個体である姫級の装甲空母姫に加え、戦艦級と空母級――しかも、そのflagship個体。

 

普通なら容易く勝てるような相手だが、戦闘はかなり長引いていた。

 

海上を縦横無尽に駆け回る駆逐艦に至近弾すら与えられない戦艦。

空を舞う艦上戦闘機と強力なビームによって、艦載機を大幅に減らされた正規空母。

 

圧倒的な戦力を誇る深海棲艦は、格下の相手に手玉に取られていた。

 

 

「忌々シイ艦娘共メ…… !! 」

 

 

そう毒づきながら、装甲空母姫は艦載機を発艦させるのだった。

 

 

一方、回避行動に専念していた満潮を率いる第1艦隊に動きがあった。

戦闘海域から離れた地点で偵察機の制御に専念していた大鳳から通信が入ったのだ。

 

 

『こちら大鳳。近海の偵察が完了したわ。敵の増援は発見できず。』

 

 

「そう。なら、大丈夫ね。」

 

 

回避に専念していた満潮が足を止めて、第1艦隊全員に告げる。

 

 

「全員、全力を以って敵艦隊を撃滅しなさい。」

 

 

満潮の命令は通信で第1艦隊全員に伝えられる。

その命令を聞いた艦娘たちは、逃げ回っていたのが嘘のように敵艦隊へと突撃。

同時に全員が、大河長官より授かったGウェポンを展開する。

 

 

「朝潮、突撃します !! 」

 

 

黒い長髪を靡かせながら、幼い艦娘が先陣を切る。

彼女の名前は、朝潮。朝潮型駆逐艦の1番艦であり、満潮の姉である。

 

 

「ウィルナイフ !! 」

 

 

右手に装着していた竜の頭部を模したパーツが変形し、緑色のナイフが展開される。

 

 

「肉薄する !! 」

 

 

ウィルナイフの刃が届く距離まで接近した朝潮は、敵に向かって真っ直ぐ振り下ろす。

何の変哲もないナイフなら戦艦の装甲に弾かれて終わるのだが、彼女の持つウィルナイフは戦艦の装甲を易々と切り裂いた。

 

Gウェポンの中でも切断力に優れるのが朝潮のウィルナイフであり、使う者(この場合は朝潮)の意志によって、切断力が変わる。

その切断力は、戦艦クラスの装甲を容易く切り裂くことができる程。

 

 

「はっ !! 」

 

 

そして、そのままナイフを突き刺す朝潮。

貫かれた身体からはどす黒い体液が流れ落ち、やがて戦艦ル級flagshipは膝を付く。

やがて力尽きた戦艦は海の底へと沈んでいった。

 

 

「まずは1隻。まだまだ敵は一杯居るわね。」

 

 

「朝潮姉、前に出すぎよ~。」

 

 

「荒潮……満潮の護衛はどうしたの ? 」

 

 

「大丈夫よ~。ちゃんと満潮姉から許可は貰ってるから~。

 それに……満潮姉には、ちゃんと別の護衛も付いてるから大丈夫よ~。」

 

 

妹にそう言われ、旗艦の方に目を向けると、真っ赤な瞳の艦娘と大鳳、そして、翼竜を模したメカが護衛に付いていた。

 

 

「護衛にしては、とんでもないくらいの過剰戦力ね。」

 

 

「でしょ ? だから、満潮姉のことは心配しなくても大丈夫よ~。――おっと」

 

 

姉妹の会話を遮るように降って来た砲弾を避ける荒潮。

その後もflagship個体の戦艦タ級から高火力の砲弾があられのように降り注ぐ。

 

 

「邪魔ね~。ボルティングドライバー。」

 

 

荒潮は、左腕に装着したGウェポンの先端を降り注ぐ砲弾に向ける。

すると、2人に直撃、良くても至近弾になる筈だった砲弾が空中で静止し、次々と海の中へと沈んでいく。

 

 

「ふふふ♪ そう簡単にやらせはしないわよ~?」

 

 

荒潮のGウェポンは、ボルティングドライバー。

弾丸のような形状のアタッチメントを付け替えることによって、様々な状況に対応することができる万能ツールであるが、その反面、火力が低い。

 

敵の砲弾が失速したのは、ボルティングドライバーの機能の1つ―空間湾曲を利用して、数㎝の距離を何十倍にも広げ、運動エネルギーを消耗させたからだ。

 

 

『2人とも、その場から動かないでください !! 』

 

 

大鳳からの通信が入った刹那、朝潮と荒潮の間をピンク色のレーザーが通りすぎる。

遠方から放たれたレーザーは的確に戦艦タ級flagshipを撃ち抜いた。

 

 

「大鳳さんのGウェポン、反中間子砲ですね。」

 

 

「相変わらず反則級の威力ね~。あの距離から一撃なんて。」

 

 

「その代わり、かなり細かい計算が必要になるそうよ。それに、威力だけなら満潮の“アレ”の方が高いわよ。」

 

 

「反動が大きいのが欠点だけどね~。」

 

 

『そこの2人、まだ敵は残ってるわよ。ボサッとしない !! 』

 

 

旗艦に怒られ、2人は会話を止め、残りの深海棲艦を駆逐に動きだすのだった。

 

 

 

■    ■    ■    ■

 

 

 

(残りは空母が2隻と戦艦が1隻……これなら大丈夫そうね。)

 

 

戦況を見守っていた満潮は、心の中で呟いた。

残りの深海棲艦は、満潮の姉妹や僚艦が抑え込んでおり、自由に動けるのは敵旗艦の装甲空母姫だけだ。

 

「大潮、頼める ? 」

 

 

「はいはーい。」

 

 

機械仕掛けの翼竜―ガジェットフェザーに跨る艦娘に声を掛ける満潮。

薄い青色の髪をツーサイドアップにした彼女は、朝潮型駆逐艦の2番艦であり、満潮の姉に当たる。名前は大潮。

 

また、彼女が駆る翼竜も歴としたGウェポンである。

高速・高機動力を誇るガジェットフェザーは、戦場で素早く人員や物資を輸送するのに最適な兵器である。また、複数の武装を保有しており、戦闘もこなせる。

 

 

「満潮、しっかり掴まっててね。」

 

 

「ええ。」

 

 

満潮はガジェットフェザーに飛び乗り、大潮の肩をしっかり掴む。

2人の姉妹を乗せた機械仕掛けの翼竜は、敵の艦載機が飛び交う空へと飛翔する。

 

 

「第六〇一航空隊、発艦始め !! 」

 

 

飛翔したガジェットフェザーを援護するため、大鳳も艦載機を放つ。

 

 

「この調子だと、夕立の出番はないっぽい ? 」

 

 

護衛艦隊の白露や春雨たちと同じ黒を基調にした制服を身に纏い、白いマフラーを巻いた赤目の艦娘――夕立は暢気にそう呟いた。

戦況は圧倒的にGGG側の方が優勢で、この状況を逆転させるのは難しいだろう。

 

 

「そうですね。参加してきても構いませんよ ? 」

 

 

「う~ん……今日は止めとくっぽい。」

 

 

「そうですか。そういえば、夕立ちゃんの相方はどうしたんですか ? 」

 

 

「春雨は護衛艦隊の方。人手が足りないから招集されたっぽい。」

 

 

「ああ、それで姿が見えなかったんですね。」

 

 

大鳳は夕立とそんな他愛のない会話を交わしながら、戦況を見守るのだった。

 

 

 

■    ■    ■    ■

 

 

 

「大潮 !! 来たわよ !! 」

 

 

「一杯ですね~。でも、それくらいの戦力じゃあ落とせませんよ !! 」

 

 

装甲空母姫と敵空母の艦載機群が大潮と満潮を待ちうける。

大鳳航空隊が航空戦を開始し、敵の艦上戦闘機を次々と撃ち落としていく。

 

 

「連装メーザー砲、発射 !! 」

 

 

ガジェットフェザーの両翼に取り付けられたメーザー砲が火を噴き、敵艦載機を撃ち落とす。しかし、それでも空母3隻分の艦載機を落としきることはできない。

 

 

「ジェネシックアーマー全開 !! 突撃しますよ !! 」

 

 

ガジェットフェザー全体を特殊なエネルギーが覆い、機体と搭乗者を保護する。

攻勢防御バリアを張り巡らせた機体は突進するだけで近づいた敵にダメージを与える。

長時間維持することはできないが、敵艦載機の網を抜けて満潮を装甲空母姫の許に届けるには十分な時間だ。

 

 

「あんまり無理しないでよ !! 」

 

 

「分かってるわよ !! 」

 

 

満潮は翼竜から飛び降りて、装甲空母姫と相対する。

装甲空母姫も戦艦と同程度の装甲を保有しており、駆逐艦の砲撃で装甲を撃ち抜くのは難しい。が、満潮はそれが些細な問題であるかのように立っている。

 

 

「駆逐艦風情ガ……タッタ一隻デ敵ウトデモ思ッテイルノカ。」

 

 

「ええ、思ってるわ。」

 

 

「ソノ驕リ、スグニ後悔サセテヤロウ。」

 

 

「それは無理よ。だって、アンタは此処で沈む運命にあるんだから。」

 

 

「ホザケ !! 」

 

 

満潮の態度に激昂した装甲空母姫が砲撃を放つ。が、それを満潮は容易く避ける。

 

 

「ガジェットツール !! 」

 

 

満潮の二の腕と首元に装着された合計3つのパーツが分離、再構成される。

再構成されたパーツは、爪のようなナックルガードとなって満潮に装着される。

 

 

「ヘル ! アンド ! ヘブン ! 」

 

 

満潮の持つ|霊水晶〈セフィラ〉とGストーンの働きが極限まで高められ、放出されたGパワーと霊子力が両手に集まる。

 

 

「ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……はぁぁッ !! 」

 

 

両手を組み合わせると、霊子力とGパワーの共鳴現象によって、膨大なエネルギーが生み出される。さらに、EMトルネード(電磁竜巻)が装甲空母姫を拘束する。

 

 

「おぉぉぉぉぉっ !!! 」

 

 

海面を走り、一直線に装甲空母姫へ突進する。

そして、その拳はちょうど胸の辺りに突き刺さる。

 

 

「ガハッ !! 」

 

 

「はぁぁぁぁっ !! ふんっ !! 」

 

 

装甲空母姫の体内から黒い球体が抉りだされる。

それを抉り取られた敵の旗艦は、全身から力が抜けて、海底へと沈んでいった。

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……うっ!!」

 

 

満潮の身体が浮力を失ってしまい、沈んでいく。

だが、間一髪、ガジェットフェザーに跨った大潮が満潮を引き上げる。

 

 

「ふぅ……危ない所でした。」

 

 

「ありがと、助かったわ。」

 

 

「間に合ってよかったよ。あっ、敵は撃滅したから安心していいよ。」

 

 

「そう……じゃあ、こっちの戦闘は終了ね。」

 

 

「向こうは大丈夫かな?」

 

 

「大丈夫の筈よ。確かに新入りは居るけど、熟練の艦娘が大勢居るんだから。」

 

 

『状況終了。久野島防衛に成功したよ。』

 

 

大潮が心配していると、ちょうど戦闘を終えた響から通信が入る。

 

 

「こっちも終わったわ。首謀者の装甲空母姫は撃破、私たちは帰還するわよ。」

 

 

『了解。ジェイクォースを使ったから、少し疲れたよ。』

 

 

「なら、後処理は他の奴に任せて、ウカノミタマに回収してもらいなさい。」

 

 

高速射出甲板空母タケミカズチと一緒に運用されることが多い全域装甲補修艦ウカノミタマは戦闘を終えた艦娘への補給、艤装の整備を担当する。

ウカノミタマで整備を終えた艤装は、タケミカズチに移送されて、次の出撃に備えるのだ。

 

 

『そうさせてもらうよ。じゃあ、通信切るよ。』

 

 

「さすがに疲れたわ。ごめん、大潮。後始末は任せるわ。」

 

 

「オッケー。後のことはお姉ちゃんに任せて、満潮はゆっくり休んでてよ。」

 

 

満潮は大潮に笑みを浮かべた後、黒い球体を渡して、眠りに付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――GGGベイタワー基地――

 

 

「大潮ちゃんから通信です !! 久野島防衛に成功、輸送船への被害もないそうです。」

 

 

防衛作戦成功の報告は、すぐにメインオーダールームに伝えられた。

 

 

「満潮くんのバイタルは?」

 

 

「ヘル・アンド・ヘブンの影響で昏睡状態です。命に別状はありませんが……」

 

 

「そうか……卯都木くん、メンテナンスルームに連絡を。」

 

 

「はい !! 」

 

 

「何事もなく終わってよかった。」

 

 

「長官。ボルフォッグたちが持ち帰ったデータの中に気になる物を見つけました。

 メインスクリーンに映します。」

 

 

そう言って、手元の端末を操作する猿頭寺オペレーター。

メインオーダールームのメインスクリーンに電子化された計画書が大きく映し出される。

その計画書の題名にその場に居る面々が息を呑んだ。

 

 

そこには、大きな字で『人造艦娘製造計画及びハイブリット個体製造計画の詳細報告書』と書かれていた

 




EMトルネードの発生源については指摘しないでください。
原作の方でも、どうやって発生させてるのか分からなかったので暈しました。

今回登場した艦娘とGウェポンの組み合わせは……


満潮……ガジェットツール・ナックルガード(正式名称不明)
朝潮……ガジェットツール・ウィルナイフ
荒潮……ガジェットツール・ボルティングドライバー
大潮……ガジェットフェザー
大鳳……反中間子砲(1門)
夕立(改二)……???


――となっています。
大潮のガジェットフェザーについては、後々説明を入れます。
外観については、ガジェットガオーを小さくしただけ。


2016/5/15 改訂
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