恋する宇宙人 〜Les amours et des peurs〜   作:L.DuRouge

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それは怖い記憶だった

恋する宇宙人 〜それはとっても素敵だな〜 完

勇が死んだ。いや殺されたんだ。地球人に殺された。

手に残る透き通った光を放つ、あのペンダントがより一層私を虚しく思わせるのであった。

花をあしらった勇とのペアペンダント。ネックレスにしていつも首にかけていた。私はそのペンダントを外し強く握った。

小さい頃勇と出逢ってから、私は勇だけを追って生きてきた。勇がいなくなった今私はどうすればいいの?

もう、こうするしかない。私はネックレスの紐を首に巻きつけていていた。

「さようなら。」

 

恋する宇宙人

〜それは怖い記憶だった〜

【市野藍】

目が覚めたのは病院のベッドの上だった。

宇宙船で気を失っていたのだという。なんで宇宙船に乗っていたんだっけ?

どうやらチキュウという星から宇宙船に乗ったらしい。でもそれがどんな星なのか全くわからない。

お医者さんから言われた、首を絞めたことによる記憶喪失だと。

私の名前は市野藍。益川勇の幼馴染。今思い出せることはそれだけだった。

こんなときに勇が来てくれればいいのだけどな・・・。

「藍お姉様!」誰だっけ?全く思い出せない。

「えっと・・・誰だっけ?」

「勇の従妹のゆかです。地球から帰ってきてすぐに病院に運ばれたと聞いて急いで来たのですが・・・記憶喪失とは・・・」

地球?なんだか聞いたことのある名前の気がする。でも思い出せない・・・。

「今、勇の従妹って言ったよね?」

「はい」なら勇のことも知っているはず。

「勇はどこにいるの?」ゆかの顔色が変わった。

「お兄さまは、・・・亡くなりました。」勇が死んだ?

「お兄様は地球に行って、地球人によって殺されたとお姉さまから聞きました。」・・・殺された?

チキュウ。また出てきた。聞き覚えのあるような無いような・・・。合って当たり前なはず。だって私はそこから来たみたいなんだから。

 

見たことも無い街。よく見るとアレゼンルブじゃ無い星だった。

でもこの星の名前はわから無い。

私はこの星の人と同じ格好をしていた。他の星から来たことを隠すように。

でもこの星の住人は他の星から来た人に優しかった。

歓迎すると言った。

もし元の格好になっても過ごしやすそうな星だと思った。

 

・・・夢か。

真っ白な病室に一人。静かだ。

先生は言った、時間が経てば思い出すこともあるでしょうと。

何も思い出せない。でも・・・昨日の夢はなんだったんだろう。

なぜかその世界に行ったことがあるような気がした。私の失われた記憶なのだろうか。

一日中何もし無いのもものすごく退屈だ。

こんな時に勇が来てくれれば・・・なんてね・・・。

勇はもういない・・・いないんだ。

ベッドの横に置いてあるペアペンダント。半分の花の形をしたペアペンダント。

普通は男子から送るものなのに待ちきれなくて私から渡しちゃった。今じゃあ懐かしい思い出。

・・・思い出してる。

でも思い出せるのは勇との思い出だけだった。

 

私はさくらと名乗っていた。

さくらとして学校に通って友達もできた。

仲良し三人組でいろいろなところに行くのが楽しかった。

二人はまだ私がこの星の住人じゃない事を知らない。

 

またあの星の夢だ。私は小さいころ頃から親の影響で色々な星に行ったらしい。

メルラゼイユやロニー、それにチキュウにも。

何にも覚えてない。ただチキュウだけはなぜか覚えていそうな気がするだけみたいだけど。

またゆかが来てくれた。

ゆかは勇のことを兄のように慕っていたらしい。ゆかも勇のことが好きだったんだ・・・。

勇のことをなんでも知っているつもりだった。でも私の知らなかったことをゆかはいっぱい知っていた。

ゆかも勇に愛されていたんだ。

勇・・・。

優しい心の持ち主だった。決して人のせいにはせず、全ては自業自得だと笑っていた。

どこまでもあかるく考えようとする勇は、自由で時々無謀で、でもなぜかそれもかっこよくて・・・。

本当に勇のことが大好きだったんだ、私って。改めて思った。

 

芽蕗という名前の友達が宇宙人と出会ったという。

私の幼馴染だった。でも私は今はこの星の人として生活していた。

ただ見守る事しかできなかった。

でも近くにいられて幸せだった。

 

数日が経って、私は退院する事ができた。

お父さんは仕事で他の星にいる。お母さんもアレゼンルブにはいない。私はゆかの家にお世話になる事になった。

ゆかの家は広かった。昔からの財閥らしい。勇はゆかのお母さん側の従兄らしい。だから勇はこの家にはよく遊びに来る程度だったらしい。

勇が地球に行ってからゆかは暇で暇でよく勇のお姉さんが遊びに来ていたそうだ。

財閥の一人娘というのも大変だろうな・・・。

引っ越しも終わって疲れて眠ってしまった。

ある日宇宙の博覧会があってそこでその星の人たちは異星人に

『友達になりましょう』と声をかけた。

しかも私たちの使うメルラゼイユ語で書かれていた。

この星の人たちは私たちを歓迎してくれそうだと思った。

でも私はまだその手を取れなかった。

 

最近ずっとこんな夢を見ている。

なんて名前の星なんだろう?まだ思い出してない記憶も多い。多分いずれ思い出すんだろう。

久々の登校。本当に久しぶりだ。

「おはよー」ん?上?

「茉莉花だよ!もしかして忘れた?」えーっと・・・。だめだ・・・思い出せない。

「ごめんね・・・ちょっと思い出せないみたい・・・」飛べるし黄色い髪ってことはメルラゼイユから・・・

「あ、久しぶり。藍」

「あ、凛斗。」今、とっさに出たけど凛斗だよね?

「凛斗ずるーい」ごめん茉莉花・・・。今思い出したよ。

私が地球に行く前はこの三人でよく一緒に登校していた。

またこうして登校していけるとは。私は幸せ者だなー。

・・・なんで急にそう思っているんだ?まあいいや。

懐かしい授業。でもなんかいつも通りの感じがする。

最近の記憶がないせいかな?

その夜はあの夢を見なかった。結局なんだったんだろう。あの夢は。

 

「おめでとう!」

今日は茉莉花の誕生日パーティーに来ている。

と言っても今ここにいるのは茉莉花と凛斗と私で三人だけ。

なんか懐かしいようなこの光景。どこの記憶なんだろう?まだまだ思い出せてない記憶も多い。特に最近の記憶は勇との思いですら思い出せない。でもこの首の傷、確かに首を絞めたということは最近にそれだけ忘れたいような事があったんだろうな。

「どうしたの?暗い顔して」あ、凛斗。

「ううんなんでもない。」

「ケーキあるよー」花火のついたケーキが出てきた。高さは八〇センチはあるだろう。

「三人で食べれる量じゃないよね?これ」大人でも何人がかりくらいじゃないか?

「わーい!ケーキだー!」茉莉花が飛んできた。そうだった。茉莉花は小さいのに他の人の数倍は食べるんだった。足りなくないか?ケーキ。

案の定、茉莉花はあっという間にケーキを平らげてしまった。ほっぺにクリームついてる。

私はずっとここにいたような気がした。

でもそんな事はわからない。

でもいいんだ。今ここにいられるただそれだけで。茉莉花や凛斗と一緒に居られるだけで。

 

しばらく時が過ぎ季節が変わった。

あれ以来、あの星の夢を見ることもなかった。

いつから見なくなったんだっけ?確かゆかの家に来た最初の夜が最後だったか。

今だにあの夢がわからない。

「お姉さまどうしたんですか?」食後、食堂でぼーっとしていたらゆかが声をかけてきた。

私は夢の事を話す事にした。

「そうですか・・・私は生まれた時から片時もこの星を離れていなくてわからないのですが、お姉さまは色々な星に行かれているのでしょう。そういう星に行かれたのではないですか?」多分そうなんだと思うんだけどどの星なのかそれが分からない。

「それよりお姉さま。色々な星の話を私に聞かせてください!」なんか急にテンション上がって目をキラキラさせて見つめてきた。まあ私もそんなに覚えてないんだけどね。

「じゃあロニーに行った時の話」

「はい!」ロニーは私の両親の出身地。今はトレンムイユ領になってる。

私が生まれた時にはもう大半の都市がトレンムイユに占拠されていたらしい。それ以前に危険を感じて両親はアレゼンルブに来たらしい。ロニーとアレゼンルブは最接近時の距離が一番近い星で文化も近い、またメルラゼイユ語の訛りも近い。

ずいぶん話が逸れちゃったから戻そう。

私が行った頃のロニーはすっかり変わっていた。らしい。

でも街の看板がトレンムイユ語に変わっていたりしていたそれにピンク系の髪が特徴のロニー人は少なく緑系のトレンムイユが多かった。

でも変わっていたのはそれだけではなかった。

ロニーの作物も技術も製品も労力も全てがトレンムイユのものになっていた。

生活は壊され、多くの人が捕らえられて人々は怯えて生活をしていた。

幸い私たちは気付かれずに済んだ。気づかていたらタダで済まなかったであろう。あの時も親の仕事だったな。

ってゆかは寝ちゃった。私も眠い。

その星の人たちは異星人の存在を知らなかったようだった

宇宙博でその存在を知るとすぐにブームが沸き起こった。

誰も宇宙人を怖がらなかった。

これほどまでに宇宙人が歓迎される星があるだろうか?

 

またこの星の夢だ。ずいぶん前にもう見なくなったのに。

なんで急にこの夢を?これが昔のロニー?

そもそもこの夢のような星に私は行ったことがあるのだろうか?それともこれは私の希望的妄想?

凛斗や茉莉花に聞いてみようかな。

「ねえ!帰る前にまたパーティーしない?」茉莉花が突然誘ってきた。

もうそんな時期か。もうすぐ年が変わる。みんな実家に帰る。

パーティーか。茉莉花とパーティーすると一ヶ月分の食料がなくなっちゃうもんなー。

でもいいや。楽しいし。

でもやっぱり二人ともあの星のことは知らなかった。

茉莉花もメルラゼイユに帰るみたい。

それと地球にいた勇のお姉さんが数日後に帰ってくるそうだ。

 

一部の宇宙人たちがアイドルとして活動し始めた。

今までにないということでかなりの人気になった。

やっぱりこの星は宇宙人にも住みやすい星だったんだ。

でも私はなかなか手を取れなかった。

 

わからない。この星の夢を見続ける意味が。それになんで私はその手を取らないんだろう?

わからないわからないわからないわからない・・・

私はどうにかなってしまいそうだ・・・

今日もまたこの夢なのだろうか?

もう明後日か。茉莉花が帰っちゃうのも。

 

世の中が騒がしかった。

何やら事件が起こったらしい。

大きな建物から火の手が上がってた。

どうやらテロがあったらしい。狙われたのは宇宙の研究をしている研究所だ。

研究所は宇宙人が関係していると発表した。

 

今日の夢は前と同じ星なのに少し違った?

火の記憶・・・宇宙研究・・・テロ

なぜか鼓動が早くなる。震えが止まらない。なんで?この夢は一体なんなの?どこのなんて言う星なの?

夜が来ても怖くて眠れない。今日のこの夢を見たら私が壊れてしまいそう。でも知りたい。きっとこれは私の失われた記憶。

 

アイドルグループがその星の住人に襲われた。

次々に宇宙人が襲われていった。

私の幼馴染が行方不明になった。

人々は言った。宇宙人は地球から出て行けと。

地球。この星は地球だったんだ。

思い出した。全てではないかもしれないけど思い出した。

私は地球人として地球にいた。勇も地球に来た。

宇宙人は歓迎された。でもそれはあの事件が起こるまでのことだった。

地球人は宇宙人を歓迎して出てきた宇宙人を・・・。

今日は茉莉花が帰省する日だ。凛斗と空港まで茉莉花を送りに行った。ちょっと前までは地球に行く便があったけど今は廃止になって空港の混雑も和らいだ。

もう茉莉花はチェックインした後で凛斗と二人で待っている時だった。

『臨時便の影響でメルラゼイユ行きの出発が遅れることをお詫びします』

臨時便。空港でなんてかなり珍しい。

「ちょっとトイレ行ってくる。」凛斗がトイレに行った。

ロビーで一人で待っていると少し年上くらいの女の人と、まだ小さい女の子に声をかけられた。

「久しぶりー!」誰だっけ?思い出せないけど確かに会った事ある声だ。

「私の事も忘れちゃってるんだね。まあ無理もないか。益川鵙。勇の姉だよ。」姉?鵙えーっと?

・・・思い出した。

「鵙姉さん」あともう一人の子は?

どうやら地球から来たようだ。会った事があるらしいけどわからない。その子が何をしゃべっているかもわからない。

地球・・・。

かつて私が住んでいた星。勇もいた星。そして勇が殺された星。

恐怖以外を思い出せない。

この子は恐怖の星から来た存在。

 

いや違う。地球が恐怖なのではない。

地球に住む地球人が恐怖なのだ。

 

この子は地球人

 

小さいけど地球人。

 

この子は恐怖。

 

この子は恐怖この子は恐怖この子は恐怖この子は恐怖この子は恐怖・・・・・・

 

恐怖は排除しなければ・・・

 

「さくら・・・さん・・・」

その子は血を流して倒れた。

私は恐怖を排除した。これで安心して暮らせるわ。

 

 

 

こんな時間にメール?

『姫ちゃんが藍に殺された。』

え?藍ってさくらのことだよね・・・

安全な宇宙人もいる、信用できる宇宙人もいるって信じてた・・・だからあの事件のあとだって信じ続けた。あの時の私はなんだったの?

 

「やっぱり宇宙人は信用しちゃいけないのね。危険なのね・・・。」

恋する宇宙人 〜それは怖い記憶だった〜 完




初めましてLyriane DuRougeです。
この恋する宇宙人は私が中学生の頃から書いていたものでやっと完成させました。
普段、あまり長い文章を書かず、10000文字を超えることは珍しいです。
分かりづらかったかもしれませんが恐怖の恐怖をテーマに書きました。恐怖心から排除した末の悲劇です。
周りを見ていても自分の気に食わないものを排除しようとする人も多い気がします。
恐怖に流された行動はいいことなんてないと思います。と言いながらも私自身怖いものは怖いんですけどね。
個人的に好きなキャラクターは市野藍です。芽蕗を羨ましく思いながらも勇の幸せを願い、ずっと勇だけを思い続けて・・・記憶を失ってもなお勇のことだけは忘れず、テーマとはあんまり関係ないのですがそういう人って素敵だなって思います。
そしてこれを書くにあたって、セリフの手伝いをしてくれた、はるか。その他にもアドバイスをくれたりした皆さん。ありがとうございました。

読者のみなさん、ここまで読んでいただきありがとうございました。
29 janvier 2016(3.3.0) Lyriane DuRouge
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