突如現れた異世界からのゲートによって、多くの犠牲者が出た『銀座事件』。その後政府は自衛隊を異世界、『特地』へと派遣を決めた。特地へ派遣される自衛隊は主に一尉から三尉の幹部と三等陸曹以上の陸曹を中心とした編成であった。そして
三度の敵との戦闘は圧倒的とも言える戦力差によって、敵六万人もの死者を出すこととなった。
そして『特地』の調査ということで、第三偵察隊も出ることとなった。この隊には少し有名な姉と弟が所属している。栗林志乃と栗林咲人である。姉と弟はいつものように話していた。
「咲人、そういえばさ新しい隊長が来るって話聞いた?」
「新しい隊長? ああそういえば言ってたなそんなこと」
「どんな人なんだろう?」
「伊丹って言う人らしいよ」
「伊丹ってあの伊丹?」
「そう、あの銀座で大活躍したあの伊丹二尉だってさ。いい隊長さんだと嬉しいんだけど」
この姉弟は仲が良い。そして二人そろって背が小さかった。
桑原陸曹長の号令によって、第三偵察隊が整列、敬礼する。伊丹が話し始めた。
「この度第三偵察隊の隊長に上番した伊丹・・・です。よ、よろしく」
咲人の隣にいた姉の志乃は小さな声で呟いた。
「大丈夫かな、この人」
姉は怪訝な表情を浮かべていた。弟もそれに続く。
「俺も不安になってきた」
姉と弟は意見も合うようだ。
その後第三偵察隊は三つの車両に別れて乗車し、アルヌスを出発した。栗林姉弟は三台の内の先頭の七三式トラックに乗っていた。ちなみ先頭は七三式トラック、後ろは高機動車(HMV)、続いて軽装甲機動車(LAV)である。
始めに一番近くにあったコダ村を訪問した。始めは警戒されたものの黒川二曹が村に近づいて行った。女性ということもあって、すぐに警戒が溶け村人との交流することが出来た。伊丹隊長が村長と何やら話している間、栗林姉弟は村の子どもたちと遊んでいた。二人とも小柄ということもあり、子どもから怖がられることはなかった。
「異世界って言っても子どもは可愛いわね」
「そりゃそうでしょ。俺達と何も変わらない人間なんだから」
「言葉は通じないけどね」
「こうやって遊ぶだけなら話せなくても大丈夫だし」
伊丹隊長が村長との話を終え、乗車の号令が掛かり子どもたちとお別れする。トラックに乗車し、すぐに走り出した。
「それにしても可愛いかったな~。私も子ども欲しい」
「それならさっさとお相手探せば? 別に姉さん顔は悪くないし、それに胸も結構で──」
"デカイ"と言いかけたところで、咲人は志乃のヘッドロックによって塞がれた。姉の志乃は格闘徽章を持つほどであり、近接戦闘において弟は姉に一切敵わない、むしろ敵う男もなかなかいないだろう。
「ちょ苦し・・・・・」
「それ以上言ったら、このまま締め上げるから」
「分かった・・・分かったから・・この手をどけて下さい・・・・」
そんな姉弟の喧嘩を車内では温かい目で見ていた。
姉弟の喧嘩を止めたのは無線から流れてきた。何かの歌だった。おそらく歌っているのは伊丹隊長と倉田三曹だろう。ノリノリで歌っている声は無線によって車内に響いていた。
「何、これ・・・?」
「何かの歌みたいだけど」
「そんなの聞いてれば分かるわよ。ああ、やっぱり隊長って変わってるわね」
「まあでも、いい人そうだけど?」
「まあ悪い人ではないけど、やっぱり変わってる」
その後も無線が駄々漏れのまま進み続けた。今日は森の手前で夜営して、その後森を進み村を目指すことになった。
こうして森の手前まで来た第三偵察隊であったが、森から舞い上がる黒煙が目に入った。隊員全員が車から下りて、全員がその光景に見入っていた。
「燃えてますねぇ」
倉田の言葉に「はい、盛大に燃えてます」と伊丹は返した。
「大自然の脅威っすね」
「というより怪獣映画だろ」
桑原はそう言うと伊丹に双眼鏡を渡した。
「あれま!」
ティラノサウルスにコウモリの羽をつけたような生き物が火を吹いていた。
「首一本のキングギドラか?」
「おやっさん、古いなぁ。ありゃエンシェントドラゴンっすよ」
志乃が伊丹の方へ走り寄っていった。咲人はトラックからスコープ付きの六四式小銃を取りだして、ドラゴンに照準を向けていた。スコープを覗くとドラゴンの姿が大きく写し出され、そこからもドラゴンがいかに大きいかが分かった。咲人も姉のあとを追う形で伊丹の方へ向かった。
「伊丹二尉、これからどうしますか?」
「おう、弟くん。君のお姉さんはなかなか手厳しいねぇ」
「いつものことですよ」
「まあ適当に隠れてさ、様子を見ようか。んでドラゴンがいなくなったら森の中に行こう。生存者がいたら救助したいし」
結局、第三偵察偵察隊が森に入ることが出来たのは翌朝だった。火がなかなか消えず、黒煙によって見通しが利かなかったからだ。
「
「探すって何を?」
志乃の言葉に伊丹は
「う~ん、生存者かな?」
と肩をすくめた。
咲人は建物の焼け跡を捜索していた。今となっては生存者ではなく、ここに住んでいた人の生活の様子が分かるものの捜索に移行していた。遺物の捜索はほとんどが焼け焦げてしまっていて、原形が分かるものはほとんど無かった。
「酷いもんだ。生存者もいないし、やっぱりこういうのは堪えるな」
少し休もうと座っていると、後ろから頭を小突かれた。
「痛っ、なんだ姉さんか」
「そんなとこで休んでんじゃないわよ」
「遺物の捜索って言ってもほとんど焼け焦げてるし、なんかこう・・・精神的に来るものがあるというか」
「まあ、分からなくもないけどさ。この集落だけで、百人近く亡くなってる」
「百人か、この世界はドラゴンが災害に近い被害を出すのか。日本じゃ考えられないよ」
「ほんと酷いわよね、とにかく休んでないで捜索続けなさい。わたしは伊丹二尉に報告行かなきゃだから」
「りょーかい」
志乃が伊丹のいる井戸まで走っていった。咲人は立ち上がって捜索を始める。倉田が咲人に近づいてきた。
「さっきから吐きそうだよ」
「俺もこういうのは慣れてないからな」
焼け焦げた建物の合間には焼けた死体が転がっているのだ。倉田がそこまで言うのは無理もない。
「そういえば咲人はどういうのが好みなんだ?」
好みというのはおそらく異世界特有の女の子ことだろう。咲人は伊丹や倉田とは違い、アニメオタクではないがゲームオタク、ゲーマーと呼ばれるタイプの人間である。もちろんゲームをやってれば猫耳娘も知っているし、魔法少女も分かる。
「俺はそうだなぁ、俺より背が小さくて可愛ければいいや」
「アバウトだなぁ、もう少し明確なのないのか? 猫耳とかさ」
咲人は「そうだなあ」と周りを見ると、伊丹に報告している姉の姿が見えた。
「姉さんみたいな感じの人がいいかな?」
「おまえシスコンか?」
「明確っていうから具体例出しただけ、べっ別にシスコンじゃないし」
倉田と咲人の会話は、伊丹の生存者発見の声によって終わりを告げた。隊の全員が井戸に集まり、伊丹が井戸の中へ入っていった。
「姉さん、良く見つけたね」
「たまたまね、伊丹二尉が木桶を投げ入れた時に変な音がしたから確認しただけで」
「一人でも生存者が見つかって良かった」
「ほんと良かった」
すると伊丹が井戸から生存者と共に出てきた。伊丹の指示によって隊があわただしく動き始めた。
その後、救出されたエルフの少女は黒川二曹が衣服を脱がしたり、ブランケットシートでくるんだりと手当てをしていた。その光景を見物しようとすると志乃の鉄拳制裁で排除されるため男連中は近づくことも出来なかった。
伊丹、倉田、咲人の三人は井戸に集まっていた。アニメオタクとゲームオタクの三人はいつの間にか意気投合していた。互いに似たタイプであるため話がある程度通じるのだ。
「エルフっすよ、二尉。しかも、金髪のエルフっすよ。くぅ~希望が出てきたなぁ!」
「お前、エルフ萌えか?」
「違いやす。俺はどっちかていうと艶気たっぷりの方が好みでして・・・」
倉田の熱弁が少し続き、倉田の熱弁が終わったところで伊丹が咲人に話をふった。
「俺は俺より背の小さくて可愛いのが好みです」
「咲人はお姉さんが好みだそうですよ二尉」
「えっお前シスコンなの!?」
「ち、違いますよ、具体例で言うとってだけで別に姉さんが好きとかそう言うのじゃないんで」
伊丹と倉田はニヤニヤしながら咲人を見ていた。そして伊丹は最後に一言、
「まあ、二人とも頑張れよぉ」
咲人はその言葉の意味がまるで分からなかった。
人物設定
栗林咲人(21歳)
身長158センチ、姉の志乃と違い格闘戦は得意ではない。かなりのゲーマーで姉にそのことで良く小言を言われている。特地では六四式小銃にスコープを付けるという特別使用を許可されている。少しシスコンの要素がある。
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