弟は姉と彼の地にて斯く戦えり   作:バラナリ

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第十一話 幕開け

市ヶ谷にある防衛省にて、咲人にとって思いがけない人が待っていた。咲人が自衛隊に入ることを決定付けた人物だ。

 

「久しぶりだな栗林咲人三曹」

「お久しぶりです。大島さん」

 

大島と呼ばれた人物はにっこりと笑って咲人に近づく。大島は身長も高く、筋肉質な体のため咲人がよけいに小さく見えた。

 

「今回はすまなかったな。急に呼び出して」

「いえ、突然で驚きましたが自衛官である以上仕方のないことです。ですがなぜ自分を特戦群の任務に?」

「狙撃手の人手が足りないんだ。せっかくだからお前を推薦させてもらった。それにお前にはいつか特戦群に入ってもらいたいんでな」

「自分はレンジャー資格持ってないですよ」

「大丈夫だ。レンジャー資格を無理にでも取らせてやる」

 

咲人は深い溜め息をついて「相変わらず強引な人だ」と呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

それは咲人が高校三年生のときである。咲人は当時から射撃のセンスがあった。部活は珍しい『ライフル射撃』というもので、全国大会で優勝したときのことだ。

 

大会が終わり会場の外に出た直後、大島が話しかけてきたのだ。最初はてっきり大学のスカウトかと思ったが名刺を渡されて全く違うことを知る。

 

名刺にあったのは防衛省と自衛隊の文字である。大島は咲人にずっと目をつけていたのだ。

 

「栗林咲人くん、ずばり自衛隊に興味はないかい?」

「自衛隊ですか?」

「君の一番上のお姉さんも陸上自衛隊にいるだろ? だから君もどうかな?」

 

当時の咲人は頭は普通だった。運動神経に関しては良い方で何をやらせてもそれなりにできた。そして進学については明確に考えていなかった。

 

「どうなんですかね。俺は進学とかまだ決めてないんでよくわからないです」

「まあそうだろうね。だけど君なら自衛隊で活躍できる。君の腕を生かすチャンスだ」

 

咲人は自衛隊に元々興味があった。理由は単純で一番上の姉の志乃の存在である。当時からシスコン気味の咲人なら当然である。もう一人の姉の菜々美はアナウンサーを目指しているが、咲人の頭では届かないため姉の後を追うことができるのは実質志乃だけであった。

 

「まあ興味はありますけど」

「なら話は速いぞ咲人くん! ぜひ試験を受けてくれ」

「なんでそれで俺なんです? 別に射撃が上手いやつなら他にもたくさんいますよ」

「君の腕は日本で一番だ。おそらく自衛隊でも君に勝てるやつはいない。それに君が自衛隊に入ったら君のお姉さんも喜ぶんじゃないか?」

 

『姉さんが喜ぶ』という言葉は大島が思っているよりも効果があったらしく、反応が大きかった。

 

「というか姉ちゃんの知り合いなんですか?」

「いや、面識は全くないよ」

「じゃあなんで知ってるんすか」

「それは俺は偉い人だからだ」

 

そして、この日はこれで別れたのだ。しかし、その後どうやってか咲人の家を訪問してきて色々と聞かされ、試験を受け合格し入隊したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

昔からこの人はこんなんだなと、改めて感じた咲人である。

 

「それで自分はこれから何をすればいいんです?」

「今日については説明だけだ。明日から本格的にやってもらう。現場ではむこうの指示に従ってくれ」

「分かりました」

 

そして、ある一室に通された。そこからは遠山と柏田が明日からの作戦について説明し、明日の任務のためホテルが用意された。今日はそこに泊まって、直接任務にいくのだ。

 

「俺の武器はどうするんですか? 俺何も持ってませんが」

「武器については栗林三曹の待機場所にこちらが持っていくので大丈夫です」

 

そして、ここから咲人の大変な毎日の幕開けとなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お気に入り数が90を越えました。もう少しで100になると思うと待ちきれませんね。本当にありがとうございます!

この前、陸上自衛隊の82式指揮通信車の銃座に乗せて頂きました。それとヘリのコブラも近くで見てきました。近くで見るとやっぱり迫力ありますね。

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