ホテルの火災の翌日。
伊丹たちを見失った特戦群はこれから伊丹たちの捜索を行うらしい。らしいというのは咲人はこれに参加しないからだ。咲人はまた大島に呼ばれていた。
「こんどはなんですか? もう仕事はやりました。一介の自衛官にしてはなかなか重い仕事ですよ」
「まあ、そう言うな。これはまだ準備運動に過ぎない。これからもっとキツイのをやってもらうからな」
「えぇ、マジですか・・・・・」
咲人は徹夜明けだったため、丁寧な口調も吹き飛んでいた。
「お前さんをいつか特戦に入れるためだ。今のうちにアピールしておかないとな」
「俺、特戦群に入りたいなんて一言も言ってませんけど」
「日本一の射撃の名手を腐らせるのはもったいないだろ。俺は元から特戦群に入れるつもりでお前を自衛隊に誘ったんだから」
これについては咲人は初耳であった。入隊後もそんなことは微塵も聞いていない。
「あぁ・・・・・・えぇ・・・・・」
相変わらずの無茶苦茶っぷりに言葉も出ない咲人。
「それでお前さんの次の任務だが、山海楼閣という旅館でご来賓の防衛だ」
「ご来賓って言っても伊丹二尉の場所は分かってないんじゃ?」
「ああ、今も探してる最中だ。だが大臣が伊丹に予定通り旅館に来るように言ったらしくてな。こちらも予定通り展開することになった。それで今から向かってもらう」
「また今からですか!? 勘弁して下さいよぉ」
その嘆きもむなしく、咲人は車で山海楼閣へと向かうことになった。
山海楼閣に到着すると、休む暇なく特戦群との作戦確認が始まった。今回はマスター・サーヴァントシステムであり、咲人は八人目のサーヴァントである。咲人にも
基本は指揮官の指示に従って行動をするわけだ、ちなみに咲人のコードネームは『ルーラー』である。
「コードネームがルーラーねぇ。ジャンヌダルクのポジションかぁ。全然聖人っていうキャラじゃないんだけど」
と元ネタを知っている咲人は呟く。個人的にはアーチャーがいいのだが元々それに該当する人がいるためそれは叶わない。ちなみにこのマスター・サーヴァントシステムは伊丹が布教した効果である。
その後も、幾たびの作戦確認をし夜を迎えた。
夜の森の中では特戦群と敵集団との静かな闘いが始まっていた。咲人も森の茂みに身を隠し敵を撃ち抜いていた。木の合間を進む敵を残らず撃ち抜いていく。引き金が引かれる度に人が倒れていった。
「こちらルーラー。目標群
『ルーラー、ポイント6へ移動』
「こちらルーラー。了解」
咲人は次のポイントへと向かう。その手にはサプレッサーの付いたM24がある。素早く移動し、地に伏せて次の目標を狙う。スコープで森を進む敵を捉える。
「こちらルーラー、目標を捉えた」
『ルーラー、対処03よろし?』
「ルーラー、了解」
そして引き金を引く。
撃ち出された弾丸が木々の間を通り抜け、頭蓋を貫通する。
そして撃たれた者は二度と立ち上がることはない。
そして咲人は次の目標を狙い撃つ。
咲人のスコープに捉えられた人間は突然の死が襲いかかるのだ。見ない場所からの狙撃は旅館へ侵攻する敵の足を遅くさせた。そして遅い足は他のサーヴァントによって排除される。これによって特戦群は一方的に有利な展開を進めていった。
少しでも頭を出せば、容赦なく引き金を引く。また一人倒れて行く。
咲人はまるで現世に現れた死神の如き活躍であった。咲人に狙われた敵は次々と地に倒れ、敵の姿をいっさい見ることなく意識が消える。ここでは死神というより日本風の忍者というのが正しいのかもしれない。
そして三つの敵の集団が退却し始めた矢先である。
『聖杯は砕かれた。繰り返す、聖杯は砕かれた。各位、状況を中止して集合地点まで撤退せよ』
無線からの指示は咲人には信じられなかった。確実に有利に進めている現状での撤退は納得がいかない。それ以前に咲人は他の隊員とは違った思いがあるのだ。
それは旅館にいる姉の存在だ。旅館には伊丹やレレイたちが宿泊している。敵をこのまま進めさせれば、自衛官である姉の命が危険にさらされるのだ。故に咲人は一人も通さまいと引き金を引いていた。
「こちらルーラー。なぜ撤退なのです!?」
『ルーラー、これは命令です。直ちに撤退せよ』
「しかしっ!!」
『命令です。徹夜して下さい』
咲人はクソっと地面を殴りつける。
なんども地面を殴りつけ、自分に言い聞かせた。
自分は命令に従うしかない。
それは自衛官として逆らうことの出来ないものだ。
自分の我が儘で他の隊員を危険にさらすことは絶対に許されない。
そして、姉の無事をただひたすら祈り続けた。
それしか出来なかった。
なにより、何も出来ない自分に腹がたつ。
咲人は他の隊員より少し遅れて集合地点に到着した。咲人は意気消沈しており、自分の無力さを噛みしめていた。他の隊員も撤退に不満があるようだが命令ならば仕方がないのだ。
そして小さく銃声が聞こえた。しかも断続的にである。特戦群が撤退した今、交戦する理由が咲人にはわかなかった。伊丹の部屋を襲撃するならばここまで断続的になるわけがないのだ。そして、この銃声はロシア、中国、アメリカの偶発的な戦闘であることを咲人は後日知ることになる。
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今回は戦闘回でしたがどうだったでしょうか?戦闘回は表現方法で毎回悩んでしまいます。
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