弟は姉と彼の地にて斯く戦えり   作:バラナリ

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第十七話 シスコンは投げ飛ばされる

自衛官が運転している車の中で、咲人は先日の国会中継を動画サイトで見ていた。咲人はずっと任務だったためまだ見ていないのだ。

 

そして動画は進み、ロゥリィの「貴女お馬鹿ぁ!」の発言まで来ていた。ロゥリィが自衛隊を誉め称えたことに咲人は嬉しかった。自衛官をやっているとたびたび傷付くこともあるのだ。だから素直に誉められるとそれだけで救われた気持ちになる。

 

時刻は朝の5時を回ろうとしていた。作戦が終わって的射と会話した後、咲人は姉に会いたい一心で無理を言って送ってもらっているのだ。運転している自衛官には申し訳ないが、そろそろ姉成分を補充しないとどうにかなりそうなので仕方ない。

 

そして東京近郊のサービスエリアに近づいた。

 

「少し休憩しますか?」

 

運転している自衛官からだ。咲人は特にトイレの用事もないので必用ないとの趣旨を伝えた。それによって車はサービスエリアを通過する。

 

咲人は知らないがこの時、このサービスエリアには伊丹たちが小休憩を取っていた。咲人はいつの間にか追い越してしまったのだ。そんなことも知らず咲人はやっと姉に会えると心踊らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱりというか、相変わらずというか咲人は銀座についたものの何をすればよいかに悩んでいた。実際ゲートの前で待つというのは現実的ではない。志乃に電話して場所を聞くというのも考えたが、盗聴とかを考えて止めにした。

 

「さてこれからどうしよう・・・」

 

本当に何をすればよいのかが分からない咲人は近くの牛丼屋に入った。ちょうどお腹も減っていたし、ゆっくり座れる場所が欲しかった。席について牛丼が来るまでの間、スマホを見ていた。

 

スマホを眺めていると、一つ目に引くニュースがあった。それはレレイ、テュカ、ロゥリィが慰霊碑に来た後、帰路につくというものだった。これは咲人にとっては嬉しい情報であった。やった来た牛丼を口にかけ込んで、噂の場所へ向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

咲人が着いた頃には既に人が集まり始めていた。咲人もなんとなくそれに続いた。とりあえずここにいれば会えるという安直な考えだ。そしてあっという間に人でいっぱいになっていった。

 

それからしばらく経った頃、人の群れが別れていき道をあけていった。何事かと咲人も見ようとするが背が小さいためよく見えない、そこで思いっきりジャンプしてみた。すると一瞬だがロゥリィの姿を捉えることができた。見間違えじゃないのを確認するために何度も跳び跳ねた。そして咲人の周囲もロゥリィを前にして道をあけていった。

 

咲人は周りが道をあける中、その場にとどまった。人がいなくなったので、よく見えた。何が見えたのか、それはもちろん姉の栗林志乃である。咲人はたまらず駆け出した。

 

「姉さーん」

 

咲人は志乃に抱きつく勢いで駆けていく。このシーンにBGMを付けるなら『I always love you』を付けるのがふさわしい。分からない人のために分かりやすくすると『エンダアアアアアアアア』と言えば分かって頂けると思う。

 

「姉さーーーーーーん」

 

まさしく感動の再開。咲人の脳内でもエンダアアアアアと流れている。端から見ればおかしな人っぽいが咲人はいたって真面目だ。

そして志乃に近づいていく、そして志乃も両手を広げた。やっと感動の再開。

 

襟を掴まれる。腕の裾もしっかり掴まれた。

 

この時点で「ん?」と誰でもなるだろう。その直後、咲人の視界は見事に一回転した。お手本のような背負い投げである。そして肩から背中にかけての傷みが襲う。そしてそのまま腕を外す勢いで腕を背中にガッチリと固める。

 

「痛い痛い痛ーーーーい。ね、姉さん痛いってばあ」

 

しかし、その痛みはまだ続く。

 

「姉さん、俺だよ、俺だってば。あっあああああああ」

 

咲人の断末魔が銀座に響く。

 

「えっ、咲人!? 何やってるのよっ!」

「(それはコッチのセリフだよ) と、とにかく腕、はな・・して・・・」

 

そしてやっと気づいた志乃は腕を離した。

 

「ごめん、ごめん。てっきり変質者かと思って」

「実の弟を変質者あつかいなんて、俺泣きそう」

 

既に咲人は断末魔を放った段階で涙目になっているたのだが言わないことにする。ヨロヨロと立ち上がって咲人は腕を回して問題無いかを確認する。

 

「それじゃ咲人も護衛手伝って、人手は多い方がいいし」

「りょーかい」

 

そしてマカロフ手渡され、ジャケットの内ポケットに入れた。少々ゴタゴタしたものの、咲人を護衛に加えて先へ進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって新人アナウンサー、栗林菜々美は献花台が最もよく見える場所にカメラを捉えて、一番の映像をモノにしようと待ち構えていた。手のひらに「人」の文字を書いて飲んで緊張を和らげている。既に中継されているとも知らずに。ちなみにそのバストは豊満であった。

 

「栗林さ~ん、音声の調子が良くないようですね。栗林さ~ん」

 

映像では彼女とその背後に開かれていく道筋を花束を抱えた黒ゴス少女や金のサラサラ髪のエルフ娘、銀髪ショートの少女、華奢な赤毛女性と金髪縦巻きロールの女性と案内役、もしくはボディーガードの日本人男女が映っている。

 

「栗林さ~ん」

 

音声に指摘されて気付いたのか栗林は慌てて外れていたイヤホンを耳に装着した。

 

「あ、はい、こ、こちら銀座ですっ」

「今そちらの様子が映ってますが、現場は今どうなっているのですか?」

「はい。こちらでは、今お三方が周囲の声援に手を振りながら、ゆっくりと献花台に近付いてきてます。集まったファンの方々も道路にはみ出して交通渋滞を起こしたりとはた迷惑なことばかりしているわりに、彼女たちに対しては不思議と行儀が良く、まるで何かに操られたように道をあけて彼女たちが前を通るのを待っています」

「こちらの映像から見ると、お三方だけでなく、他にもおいでのようですね?」

「はい、見たところ八名の方がいます」

「他の五名も特地の方なのですか?」

「いえ。見たところ・・・見たところ・・・お姉ちゃん?」

「はい? 栗林さん?」

「い、いえ。なぜか私の姉がいました。それと弟も」

 

弟がついでに言われたように聞こえたが、たぶん気のせいだ。

 

「栗林さんのお姉さんと弟さんですか?」

「はい。姉と弟は自衛隊に勤めていて、今、特地にいるはずなのですが、こちらにいるとは聞いてなくて・・・ちょっとお姉ちゃん、何やってるのよっ?」

「あれ、菜々美ったら、こんなところで何やってるの?」

「菜々美(ねえ)だ。久し振り、元気にしてた?」

 

栗林姉は目の前に出てきた妹の姿を見て、道ばたで出会ったがごとくの気安さで返した。とは言いながらも、警戒を周囲に向けている。本業ではないSPでありながら、充分に頑張っている。栗林弟も周りへの警戒しながら頑張っている。

 

「テレビ中継だけど・・・」

「もしかして、今映ってる?」

「全国ネットだけど」

「やっほーお母さん、元気?」

 

と栗林姉がカメラ目線で左手を振る。そのせいで全国ネットでMP7が握られた右手がちらちらと見えてしまった。姉の後ろでは咲人も手を振っていた。つっこみどころ満載だが、注意力の70%以上を警戒に費やしてたため、正常な思考が働いていなかった。さっき咲人を投げ飛ばしたのも頷ける。

 

伊丹たちが周囲を警戒する中、ロゥリィたちが献花していく。献花を済ませると、ロゥリィは周囲を見渡す。

 

「鎮魂の鐘が必用ね、誰かぁ鐘を鳴らしてくれるかしらぁ?」

 

その時、彼女の求めに答えたかのように銀座の時計塔がチャイムをならし始めた。

 

「うん。ありがとぉ」

 

と微笑むと、静かに瞑目を始め周囲は厳粛な雰囲気に包まれた。

テレビカメラも栗林きょうだいから画面を外してロゥリィたちを映していた。しかし、音声は栗林きょうだいの会話を拾っている。

 

「ねぇ特地からの三人にインタビューできない?」

「無理無理。献花が済んだら早く特地に帰らないと」

「何でよ? 少しならいいじゃない? 咲人もお願い」

「菜々美(ねえ)の頼みでもそれは難しいかな?」

「一昨日から狙われてるのよ」

「狙われてるって? 何に?」

「アメリカかなぁ、もしかして中国とかロシアかも。乗った電車は事故って止まるし、泊まってたホテルは放火されて火事になったりするし、他にもいろいろでさ。こうしてる今だって・・・うぐぉ」

 

後ろに立っていた咲人は流石にまずいと思い、志乃の口を手でふさいだ。正直ここまで言ったらほとんど言ったも同然である。

 

「そ、そういうことだから、じゃあね菜々美姉」

 

咲人は志乃の口を押さえながら離れていった。菜々美はそれに手を振って返した。この段階でテレビ局内での菜々美の評価がうなぎ登りであったことは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでなんとか『門』にたどり着いた伊丹たち。門を越えるために手荷物検査を受ける。咲人は特に荷物があるわけでもないのですぐに終わったが、ピニャとボーゼスの検査でゴタゴタがあったり、そもそも荷物が多かったためか凄く時間がかかってしまった。

 

「そういえば何で咲人が今日いたの?」

 

栗林姉から素朴な質問がとんだ。

 

「俺も休暇だよ、休暇。そしたらた・ま・た・ま会ったってだけで・・・」

 

たまたまという言葉を強調する咲人。ましてや前日特戦の手伝いしてたとか言ったら、理不尽に殴られそうなので止めておいた。

 

「へぇ、でも休暇のクセになにも買ってないのね」

「まあ、いいものに巡り会わなかっただけだよ」

 

そもそも咲人にとってこの数日は休暇ではなかった。仕方ないとしか言えないだろう。

 

「にしては疲れて見えるけど」

「疲れてない、疲れてない。ほらこの通りめっちゃ元気!」

 

と咲人はガッツポーズをする。変な心配をさせるのは咲人としても不本意だからだ。

 

「ならいいけど」

 

栗林姉はあえて追求はしなかった。いくら元気を装っても流石は姉、見事に見破っていた。本人が言いたくないなら別にいいやと、結論をつける。

 

この弟は姉には一生勝てないかもしれない。

 

 

 

 

 




こんにちは。元くりくりパーマです。今回から作者名を普通に戻しました。理由として、前の名前はちょっとした遊び心と正直長続きする自信がなかったからでした。皆さんのおかげでここまで来れました。ですので更新を止めないためのきっかけにしようと思いそうしました。改めて宜しくお願いします!

今回は珍しく少し長くなりました。まあ、たまには長くてもいいかなって。他の作品だとこれぐらい普通なんでしょうけど笑。

久し振りの栗林きょうだいの回でした。それに菜々美が登場です。全員集合と言った感じですね。きょうだいの回はこれからもオリジナルでやろうと思ってます。

感想、アドバイス、質問などお待ちしています!
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