話は突然だった。自衛隊の広報にテレビ局から取材をしたいという電話があったのだ。別段珍しい話ではない、ここ数年自衛隊に対して友好的な感情を抱いている人が多くなりテレビ番組でもたまに特集が組まれるほどだ。
しかし、今回少し変わった点があったとすると取材する相手を名指しで言ったことである。
咲人は上官に呼び出されていた。個人的に問題は起こしてないはずとここ最近の行動を思い返す。コダ村の子供たちと水鉄砲で遊んでて上官に水をかけてしまったこともあったが、今更怒られるのだろうかと思案する。するとばったりと姉の志乃に出会う。
「あっ、姉さんどうしたの?」
「あんたこそ、こんなところで何やってるのよ」
「俺は上官に呼び出しを受けてそれで来たとこ」
「奇遇ね。あたしも一緒」
「姉さんも何かやらかしたの?」
「バカね。何もやってないわよ」
呼び出された部屋に入って進む。二人とも全く同じ方向へ進んでいる。どうやら同じ人に呼び出されたようだ。
咲人は姉弟そろって怒られる何て母親に怒られて以来だな、なんてことを考える。
「君たちにテレビの取材の依頼が来ている」
「取材ですか?」
「そうだ。確か『姉弟自衛官の一日』みたいなテーマらしい。それで取材を受けるかどうかの確認をとっておきたい」
「うーん」と二人とも考える。テレビに出ること自体は悪くない話だ。正直なんでこの二人に取材なのかという疑問もあるが、それは置いておく。
「返事は急がなくていい。今週末までに決めてくれれば大丈夫だ。それまでじっくり話し合ってくれ。以上だ」
栗林姉弟はこれからについて話し合っていた。
「それで姉さんはどうしたいの?」
「あたしは受けてもいいかなって思ってるけど、そっちこそどうなのよ?」
「姉さんがいいなら俺もそれでいいよ。別に嫌なわけじゃないし」
「嫌じゃないって、あんまり乗り気じゃないでしょ」
咲人的にはあまり乗り気ではない。理由は単に面倒くさいから。取材を受けるとなると言葉づかいなどをより気をつけて話さねばならない。それが嫌なのだ。
「姉さんが受けるなら俺も賛成だよ。面倒だけどたまには悪くないかな」
「やっぱり乗り気じゃないじゃない。嫌なら断ってもいいんだから。まあ、急いで決めなくていいみたいだからゆっくり考えよう」
「そうだね」
夕方、訓練や整備を済ませた咲人は宿舎でゴロゴロしていた。取材の件を受けるかどうかは正直決めかねていた。ゴロゴロしながら考える。数回ゴロゴロした時、スマホが鳴った。体をローリングさせて、スマホの元にたどり着く。画面に表示された名前は『栗林菜々美』。ボタンを押して電話をとる。
「もしもし菜々美姉? どうかした?」
『ねえ咲人、取材受けてくれた?』
「取材?」
『テレビ局から取材の申し込みがいってるはずなんだけど』
「あぁ、あれね。正直今決めかねてるんだ」
『えっ、そうなの・・・』
電話の向こうからいかにもショボーンとした声が聞こえてきた。
「どうしたの菜々美姉?」
『その取材のコーナーね。私にやらせてくれるかもしれないの。夕方のニュース番組なんだけどね、初めて夕方のコーナー任されたの。だからお願いだから断らないで・・・』
菜々美の声はいつしか今にも泣き出しそうなほどになっていた。そんな声をされたら答えは一つしかない。
「わかった、わかったから。菜々美姉泣かないで、ちゃんと取材受けるから」
『本当に?』
「ほんとだって、だから菜々美姉も頑張って。俺も頑張るから」
『ありがとう、咲人! 本当にありがとう。私頑張るから』
電話の向こうで心底嬉しそうな声が帰って来た。咲人も姉のためならば面倒くさいなんて言ってられない。明日にでも取材のことを志乃に話さねばと決意する。この電話で咲人の心は180度変わっていた。熱い手のひら返しだ。
こうして二人は取材を受けることになった。
テレビ取材のお話しをこれから数話にかけてやっていきます。ですから本編は少し先になりそうです。
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