弟は姉と彼の地にて斯く戦えり   作:バラナリ

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第十九話 姉弟の撮影

撮影当日、咲人と志乃は練馬駐屯地に来ていた。栗林姉弟はこの基地の所属ではないが特地のアルヌス基地で撮影するわけにもいかないためである。ここが今日の撮影場所だ。

 

「いいか、くれぐれも特地のことはしゃべらないこと。聞かれても絶対に答えるなよ」

 

今日の撮影で来ている陸自の広報官である。

 

「それぐらい分かってますよ」

「信用できるかそんなもの、君たちは前科がある」

「前科といいますと?」

「銀座のインタビューだよ。全国放送で言っただろ」

「あれについては自分の姉が言ったこてでして、決して自分が言ったわけでは・・・」

 

全力で罪から逃れようとする咲人。志乃はこの場にいない、今は撮影の打ち合わせに行っている。

 

「あれを止められなかった君も同罪だ」

「そんなこと言われましても」

「うっかりしゃべったなんてことは許されないからな、絶対にしゃべるなよ。絶対にだ」

「それフリですか?」

 

頭をひっぱたかれました。

 

 

 

 

 

そんなこんなで咲人の撮影が始まった。始めにちょっとした訓練の映像を撮るらしい。咲人が今か今かと始まりを待っていた。

「それでは撮影始めまーす」撮影スタッフの声がかかる。訓練の映像と言っても、いつもここで訓練している訳ではないのでお得意の射撃訓練だけになった。

 

咲人に用意されたのはいつものM24 SWSだ。そして500m先に二つの人を模した的が立てられている。この標的を狙い撃つのだ。そしてカメラが回り始める。

 

咲人は弾倉に二発弾をこめる。ボルトを前に戻して弾を装填、三脚で固定している銃身を構える。スコープを覗き、標的を捉えた。

 

引き金を引き、銃声と共に弾が撃ちだされる。撃ち出された弾は人形の的の頭部に吸い込まれた。ボルトを手のひらであげて、手前に引く。すると薬莢が飛び出し、ボルトを前に戻して弾を装填する。そして二発目の弾も的の頭部を捉え砕け散った。

 

これには撮影スタッフも息を飲み、口をあんぐりと開けていた。まさかここまで凄いとは思ってなかったようだ。的が砕け散った様を見せつけられ、唖然としている。暫しの沈黙が流れた。「はい、オッケーでーす」スタッフの声でカメラも止まり、咲人個人の撮影は終わった。

 

「お疲れ様です。次は皆さんでの撮影ですので宜しくお願いします」

「分かりました。ありがとうございます」

 

スタッフから連絡を貰ってさっさく最後の撮影は場所へ向かった。

 

 

 

 

 

一方の栗林姉、志乃の撮影はというと・・・

女性とは思えないほど猛々しい声をあげて次々と若手隊員を投げ飛ばしていく。若手隊員たちは最初は手加減しようと考えていたらしいが、投げ飛ばされて手加減どころか恐怖を感じていた。若干何名かは既に涙目になっている。

 

見た目は小さくて可愛いらしいが、見た目と中身が必ずしも一致するとは限らない。栗林志乃はその典型である。

こちらの撮影スタッフも口をあんぐりと開けていた。妹の栗林菜々美とは全く違う姿である。むしろ菜々美しか知らないスタッフたちは志乃も似た感じなのではと思っていたが検討違いも甚だしい。

 

若手隊員がまた投げ飛ばされて、やっと個人での撮影が終了した。投げ飛ばされた隊員たちと違って志乃は久々に大暴れできて大満足だ。

 

「ふぁ~、超スッキリ! ストレスもぶっ飛んだ~!」

 

志乃の相手をしていた隊員たちは本当に災難である。これをきっかけにトラウマになるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

そして栗林三名のインタビューの準備が進められていた。集められた三名の栗林はそれぞれ違う形で待っていた。長女は特に緊張している訳でもなく、のんびりとしている。弟は既に眠気が来ているのか、こっくりこっくりと首が動いている。この二人から緊張感というものがまるで感じられない。

 

そして問題の栗林の次女はというと、初めての自分のコーナーのインタビューということで緊張が最高潮に達していた。何度も何度も台本に書かれたインタビューの質問内容を復唱している。実は本番はカンペが出るので覚える必用は無いのだが緊張でそんなことまで頭が回ってない。そして、いつかの時のように手のひらに人の字を書いて飲み込んでいる。次女だけから緊張がひしひしと感じられる。

 

「菜々美ちゃん、そろそろ始めるよ」

「は、はひ!」

 

スタッフから声をかけられ、裏返った声で返事をする。そして栗林勢揃いのカオスなインタビューが始まろうとしていた。

 

 




更新遅れてすみません。何とか上げることができました。
活動報告でお知らせする場合があるので、たまに覗いて頂けると幸いです。

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